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大型蒸気機関車:   D51 498 B 動力改良

 

 

 

実車プロフィール

 D51形は、昭和11年(1936)に本線用大形貨物用蒸気機関車として、当時の最新技術が投入されて誕生した。D51形は全体で1115両が量産されデゴイチの愛称で広く親しまれています。

 D51 498号機は、昭和63年(1988)に動態保存機として復活し、高崎車両センターに所属してJR東日本管内のイベント列車を牽引し、現在も走り続けている現役の蒸機である。

模型プロフィール

メーカー : MICRO ACE
商品名 : D51-498 動力改良
品番 : A9536
車両番号: D51 498 B
発売日 : 2008年
入手日 : 2012年3月 中古品入手
定価 : \9,900.-
● 車両番号に B を付与しているのは、同じ番号の車両が揃ってきたので、識別のために便宜的に付与したものである。

分解調査

● 1996年12月に発売されたマイクロエース初の国内型蒸機の後継機として、動力部を手直して(マイクロエースは“動力改良”と称している)発売された。 この動力部の手直しは2008年から始まり、ウェイトを省略した簡略型(後期型と分類されている方もみえる)とか、単に“改良品”とも呼ばれ、マイクロエースの多くの機種に展開されている。
● ヘッドライト点灯(電球色)
● カプラーの交換: アーノルドカプラーからKDカプラーに交換。

連結面間距離(KDカプラー) 142.5 mm 先輪車軸荷重 1.6 gf 動輪車軸荷重 61.9 gf ギャ比 i = 33.23
車体全重量 91.3 gf 従輪車軸荷重 1.2 gf テンダー車軸荷重 26.5 gf 動輪直径 D = φ9.3 mm

● 動力ユニットの状態を下に示す。 トラクションタイヤは第4動輪に履いている。

● 部品を分解した状態を下に示す。 

● 下左の写真は右側のフレームの裏側を、右の写真は左側のフレームの裏側を示す。 品番がA9501のD51原型モデルと比較すると、フレーム前方の切欠け部が埋められている事が分かる。 この部分は、ドームまで埋める別体の重りが装着されていたが、この別体の重りを廃止して、フレームで埋めている。 ダイカスト型を新規に製作したのか、あるいは旧型を修正したのか不明であるが、形から判断して型修正で対応しているようである。

● 下左の写真はモータを示す。  回転子には約10°のスキューが見られる。 回転子には白ペンキのマーキングはあり、 さらに電極端子は白色(洋白?)を使用している。 そして右の写真にギヤ類を示すが、アイドラギヤとウォームホイールを並べてみた。 旧モデルでは3個あったアイドラギヤは、2個に減っていいる。

    

● アイドラギヤの歯数は、2個とも z = 29 であり、左下のイラストに示す様に配置されている。 ウォームホイールは、歯数 z = 24 のホイールと、 z = 13 の小ギヤによる 2段ギヤとなっている。

● 動輪のギヤは、歯数 z = 18 で、第1、第2、および第4動輪に設けられているが、第1動輪に噛合うアイドラギヤが無いので、第1動輪のギヤは無意味となっている。

● 右側のフレームには、第1動輪と噛合うアイドラギヤの軸が残っているので、(上の写真を参照)、アイドラギヤを組付けるのを忘れたとも考えられる。 自分が分解・組付けした時に紛失すとは思えないので、以前の持ち主が忘れたのか抜いたのか、あるいは工場での組付け忘れなのか、あるいは正式に廃止したのかは判断できない。

● ロッドセットと動輪の様子を左の写真に示す。 第2動輪はサイドロッドと連結していない。 

● 第1動輪と第4動輪はサイドロッド連結されている。 そしてこのサイドロッドは、第3動輪とガタの多いピンで連結されている。 また、第2動輪にはロッドとは連結されていないので、ギヤ連結のみになっている。

● 動輪を1回転させるために必要なモータ回転数、即ち減速ギヤ比は、

     ギヤ比  i = 24×18/13 = 33.23

である。

● トラクションタイヤはギヤ駆動されている第4動輪に装着されている。

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● 左右のフレームを組付ける時、ギヤ類と共に、モータとウォームも組込む必要がある。 この時、ウォームの軸受けをきちんと溝にははまっているのかどうか、左右のフレームの間から覗きこんで確認しながらネジ止めするので、注意が必要である。

● 動輪セットを組込む時に、ギヤとロッド連結の位相合わせをする必要が無いため、スムースに組み付ける事が出来ます。

● メーカーは “動力改良” と称しているが、単に、ウエイトを廃したストレートなダイキャストブロックに変更されているというだけのもののようです。 アイドラギヤと別体の重りが廃止されているので、部品点数が少なくなっているのですが、製造工程的には意味のある改良なのかもしれません。  期待して分解調査を実施したのですが、期待外れですね。

● カプラーは、右の写真に示すように、KDカプラーを装着する。  ( 2013.7.1 分解調査実施)

 

動力特性

 ここに示す動力特性の測定は、安定化電源を使用した自動測定システムにて実施する。

 

 測定実施日: 2013/7/11

 

速度特性:

 スケール速度の80Km/h を出すには、 5Volt 必要であり、一般的なNゲージとしては遅めである。 電流も、150 〜 190 mA もあり、意外と大きく、バラツキもあるが走行は安定している。

 速度と電圧のパターンは、歪みもなく線形特性を示している。

 

牽引力特性:

 何時ものように牽引力特性を測定していたが、測定途中でパターンがおかしい事に気が付いた。 車両を良く見ると、トラクションタイヤが外れていることに気が付いた。 その時の測定データを右に示す。 制動領域の牽引力が小さくて、バラツイテいる。 また、その時の状態を下の写真に示す。 トラクションタイヤが見事に外れているのが判る。

 このまま、組付けても正常に戻るようであったが、また再発するのではないかと思った。 これはマイクロのC62の例で経験していうように、緊迫力が小さいのではないかと考え、寸法をチェックすることにした。

 まず、動輪を分解してトラクションタイヤを取り出したが、傷や破損は見当たらなかった。 寸法を測定するため、描画用のテンプレートを持ち出し、円形の中にトラクションゴムをはめ込み、ピッタリするサイズを探した。 この時の状態を下右に示す。 脱落したタイヤは、8.5mmの円にピッタリであった。

 このテンプレートは、PENCIL ALLOWANCE 0.5 と明記されており、芯が0.5mm の鉛筆(シャープペンシル)で円を描くと、丁度 8.5mm の円が描けると云うものなので、タイヤの外径は 9.0mm と言う事である。 実際にテンプレートの内径をノギスであたってもピッタリ 9.0mm であった。 また、厚さと幅を測定すると、幅が 0.8mm 厚さが 0.3mm であった。 動輪の溝の幅は 1.0mm で、溝の底の径は 8.8mm 外径は 9.3mm であった。

 トラクションタイヤの内径は、 9.0 - 0.3×2 = 8.4 mm であるので、溝の底の径との差は 0.4mm しかない。 この差により、トラクションタイヤを装着した時の緊迫力が発生するが、 0.4mm では緊迫力は殆んど期待できない。 タイヤが空回りしても不思議では無い値である。 手で触ってもタイヤは溝の中で動いてしまう状態である。 通常走行では問題無いようであるが、スリップ状態に近ずくと、タイヤが変形して容易に脱落するものと思われる。 事実、牽引力測定時ではこのスリップ状態でタイヤが脱落したと考えている。

 手持ちのストップ品から適切なトラクションタイヤを探してきた。 KATO のトラクションタイヤφ7 (品番: Z02-1575 )である。 このタイヤは、C56(2020-1) と D51-498(2016-1) に使用されているもので、幅 1.0mm で厚さが 0.3mm である。 タイヤの内径と溝底の外径の差は、1.9mm もあり、かなりの緊迫力でもって溝にピッタリと組込む事が出来た。 下右の写真にKATO製のタイヤもテンプレートに入れてみたが、これだけの差がある部品である。

 

再測定:

 トラクションタイヤを交換して、牽引力特性を再測定した。 今度はタイヤの脱落トラブルは発生せず順調に測定することが出来た。

 この車両は、動輪荷重が約62グラムで、トラクションタイヤを第4動輪に履いている。 粘着領域での牽引力は約30 グラムであり、SLとしては大きいと言えよう。 さすがはD51 であると言える牽引力である。

 制動側において、ウォームギヤに掛る力が逆転する遷移点は - 15グラム前後と大き目であり、制動領域は垂直パターンのようである。 また、滑り始めは、-30グラム付近で、駆動側と似かよった値である。

 電流と牽引力の関係は、電圧の変化によって多くの車両のように電流がやや増加している。 また、遷移点付近のパターンが少し凹んでいるのも特徴的である。、

 マイクロエースの国内型蒸機第1作目の D51-498-C号機と比較して、 『動力改良』 品として命名しているぐらいだから、と期待していたが、何が改良されてたのか不明ですね。 構造面と同様に、性能面も期待はずれです。

 今回の測定データから推察して、このD51-498-B号機とD51-498-C号機を重連させても、何ら問題は無さそうである。 協調走行はバッチリと言えるが、前面のカプラーをどのように細工するのか? また、同じ車体番号の機関車を重連させるの? といった課題をクリアーしなければならないのですが・・・・・・・・・・・。

(2013.7.13 追記)