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鉄道模型工学  電圧・電流測定ユニットの不思議な振動

■ 電圧・電流測定ユニットの問題

 先回の報告で、Excel が受信したデータには、テスターで計測した値とかけ離れた値を表示する場合が多くあり、シリアルモニタで送信データを見てみると、同じ様な現象を示しているので、Arduino 側に原因があることは確かです。 このままでは、使い物にならにので、原因を探ることにしました。

 

■ 原因の推定

 電圧・電流測定ユニットのどこかで不安定になっているところがあると推察し、不安定要因を取り除いてみる。
   1) デジタル電圧計をこのユニットから外し、独立した電源と場所で表示させる。
   2) コンデンサを取り替えて見る。  10μF ⇒ 0.1μF 、 
   3) 電流検知回路ではコンデンサの位置を変えてみる。

 取りあえず、電圧・電流測定ユニットの回路を修正し、様子を見たが、改善されなかった。

 ◆ マイコンのAD変換の安定性を疑ってみる。
Arduino の5Volt 出力やGND をアナログIN につないでシリアルモニタで観察するも、ぴたりと安定していた。
ブレッドボード上で10kΩの抵抗を3ヶ並べて分圧を測定するも、これもぴたりと安定していた。

 もう、使用している電源( KATO: Power Pack Standard S )しかないと判断する。 アナログやデジタルのテスターでは表れない、こまかな脈動を拾っているに違いないと思う。 すると、コンデンサのせいで振動を起こしていると考えてその値を小さくしていたが、逆にもっと大きくしなければならないのではと考えられる。 この検討のために、もう一度ブレッドボード上に回路を作り、最適なコンデンサの値を探ることにした。

 

■ 回路の検討

 ブレッドボード上に電圧・電流測定回路を作り、 Arduino およびパソコンと接続して、コンデンサの値の変更による影響を調べた。

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 また、スケッチの内容は、電圧と電流をそれぞれ3回ずつ測り、最後に“ E ”の文字を付けてパソコンに送信し、1秒間待つ。 それを繰返し動作をさせるもので、「送信テスト4」 として作ったスケッチの押しボタン待ちの部分をコメント行に修正したものである。

 この送信されたデータをシリアルモニタに表示させ、ある程度のデータが溜まった時点で、USBケーブルを取り外すと、シリアルモニタはデータを表示した状態で止まっている。 このデータ部分をコピーして、メモ帳にペーストしたものが、右の状態である。 シリアルモニタを表示させたまま、それを停止する方法が見当たらなったので、強引にケーブル取り外しの手段を取ったもので、お勧め出来る方法では無いと思っています・・・・・・<(_ _)>  。

 このメモ帳のデータをコンマ区切りのデータとしてExcel に 取り込み、グラフ化したものが下のグラフである。 横軸を時間として表記しているが、おおよそ1秒毎に送られた来たデータを行毎に並べたものであるので、“秒”と考えれば良いであろう。

 周期が約4秒の波を打っており、ゼロの場合もあるのには驚いている。 もし、この様な周期で変動しているのであれば、いくら安もののテスターと言えども表示してくれるはずである・・・・・・! テスターのデータや針は殆んど動かないである。 テスターでは表示出来ないメイン回路の脈動と、電圧・電流測定ユニットの固有振動との僅かな周波数の差がうねりとなってこの様な周期の波となっているとしか、解釈のしようがないのである。

 こうなると、実際の波形が見たくなり、オッシロスコープが必要となるものの、持っていません!!。 電気回路も素人だし、回路を見直すことも出来ないので、コンデンサを取り替えてその影響をみることにしました。 電圧と電流の検出回路に挿入しているコンデンサを両方とも、0.1μF

から、10μF、および 100μFに取り代えて、同様の測定した結果が下のグラフです。

 自分でも驚いているくらいに変化しますね。 コンデンサの影響がバッチリです。 もしやと思って発注していた電解コンデンサが生きて来ました。

 やはり、電源として使用しているコントローラの影響があると思い、種類の違うものに取り替えて同じ様な実験を実施してみました。

 もう何も言うことが有りませんね。 コントローラとしては一番安価な(週刊 「昭和の鉄道模型をつくる」 でプレゼントされたもの ) TOMIX の N401 を使う事にしました。

  今後、実際の模型を走らせながら測定する場合、モータによる電流変動が発生するはずである。 この対策として、測定値の平均を取ることで対応する予定ですが、単純な抵抗だけの負荷でも、この様な現象が起こると、本当に大丈夫だろうかと心配になってきます。

 この実験結果より、パワーユニットとコンデンサの値のマッチングを考える必要が有ると判断しますが、現在のN401と100μFの組合せで、とりあえず進める事にします。このため、測定ユニットのコンデンサを変更しました。 と言っても、0.1μFを取り外すのも面倒なので、100μFの電解コンデンサを並列に追加しました。 下に修正後のユニットの写真と書き直した回路図を示す。

 

 

■ 電圧値と電流値の校正

 やっと、電圧値と電流値の校正作業が出来るまでにたどり着きました・・・・・・。 N401と100μFの組合せで、電圧と電流をテスターで測定しながら、パソコンにデータを送って行きました。 スケッチは押しボタン使用の「送信テスト4」を使用しています。 その実験風景を下に示します。

 Arduino が送信した電圧と電流の指示値と、実際にテスターで読み取った値をグラフにしてみました。 AD変換の範囲は0〜1023ですので、常用としてこの程度でピッタリと考えています。 また、データは直線に乗っていますので、グラフに示す近似式が、電圧と電流に換算する時の換算式になります。

 また、一回の測定には電圧と電流を3回ずつ測定していますので、そのデータのバラツキを見て見ました。 Arduino から送信してきた3個の指示値の差は、±1の範囲であり、データが安定している事を示しています。

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 なお、電圧のグラフを見ていると、中間部でデータが少しバラツイテいるのが判りますが、これは電流値の差による微妙な電圧降下の影響とみています。

 最初は負荷抵抗として12Ωの抵抗を4個直列にして測定していましたが、電流が200mAまでしか出せませんでした。 そこで、負荷抵抗を半分にして追加測定をして測定したものです。 右上の写真は測定後に撮影したものでなので、この状態を示しています。 また、電流と電圧の関係を右のグラフに示します。 測定点の勾配は負荷抵抗を示していますので、23Ωと47Ωとなり、実測値と一致します。

 このデータのバラツキは、テスターと検出回路の測定点の違いと考えていますので、電流値を使って補正する事が可能と思われますが、この程度は測定誤差として扱い、前に進む事にします。

 電流検知の抵抗は0.22Ωですが、この抵抗による電圧降下は、150mA の場合で 0.033 volt です。データのバラツキはこの値より大きいので、もっと大きな電圧降下部分が有りそうです。 そして、この問題は、我が自動測定システムは、どの部分の電圧を測るのか、線路上なのか、コントローラの出口なのかなどの問題に発展しますので、誤差として目をつむることにしました。 システムが完成した暁には、さらなる改良点としておきましょう。

 

 次回は、現在工事が進んでいる速度検出部の報告を予定しております。