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鉄道模型調査室   TOMIX製 車載カメラ車を使う

■ いきさつ

 今、新ATSシステムをレイアウトに組み込む工事を実施している。 一部開通した状態を車載カメラ車を使ってATSの信号機の見え具合をチェックしてみることにした。 ところが、手持ちのTOMIX製車載カメラ車の思わぬ落とし穴に落っこちてしまって、四苦八苦することとなってしまった。 そして、最終的には、この車載カメラ車はお蔵入りにすることにしたが、その顛末を紹介しよう。

 

■ 最初のつまずき

 運転台から見える信号機の状態をワクワクして、期待いっぱいの状態でカメラカーを走らせてみたが、相変わらずのモタモタした Wi-Fi 接続と動作開始までのイライラは何時もの通りであった。 しかし、最大の欠点は信号機で停車すると Wi-Fi 接続が切れてしまう事であった。 これには参ってしまった。 信号による停止と緑信号による出発進行の状態が観察できると期待したものの、見事に裏切られてしまった。

 線路からの給電による電力で Wi-Fi 接続を実施しているので、当然と言えば当然である。 愚かな期待であった。 我がレイアウトでは、このカメラカーは使えないのである!

 と言っても諦めきれないので、線路からの給電に頼らずに給電させるには・・・・・・・・、電池を搭載した電源車を連結すれば良いではないか! と言うことで工作することにしたが、そのためには、まず、どれだけの電力、即ち電流を消費しているのか調べることにした。

 

■ 車載カメラ車の分解調査

 とりあえず内部の状態を把握するために、分解するkとにした。 車体を開けると細長い基板が出て来ました。

 カメラ本体は車両前方に設置されており、フレキシブル配線にて基板とつながっていました。

 電源は、車輪から集電したものをヘッドランプや室内灯の場合と同じような集電方法で基板に取り込んでいました。 目につくのは 3.3F と書かれた大きな電解コンデンサでした。 また、バネから通電された部分に接続されていたのは大きめの4個のチップダイオードです。 ダイオードでブリッジを組んで電気の極性を調整しているのだ。 従って、供給させる電源の電極はどちらでも対応できるという事なのだ。 集電のコイルバネは簡単に取り外せますね。

 その他の回路はさっぱり理解できませんでしたが、二つの立派な IC があり、ひとつはカメラの映像処理で、もうひとつは Wi-Fi 通信のための処理部分ではないかと理解しています。 アンテナの様なパターンも見えますね。

 

■ 消費電流の調査

 実験状態を下に示す。 電源は、いつも使用している安定化電源を使用した。 そばにはスマートフォンを置いて Wi-Fi 通信の状態もチェックする。

 

◆ テスト1: 電圧をゼロから上げて行き消費電流を測定する

 この安定化電源は制限する電流も調整できるので、最初は電流を小さく絞って慎重に測定を始める事にした。 電圧を徐々に上げて行くと5ボルトを過ぎる辺りから増加を始め、5.5ボルト辺りから急激に増加して不安定となった。 電流制限のスイッチがパチパチと作動するので、ここで一旦テストを終了し、電圧を思い切って12ボルトに上げてみた。 するとしばらくすると電流が安定した。 これは、コンデンサに電気をためるための現象で、蓄電が完了すると電流が安定するものと推察する。 その測定結果を右のグラフに示す。

◆ テスト2: 電圧を12ボルトから下げて行く。

 今度は一度コンデンサに電気を充分に蓄電させ、そこから電圧を下げて行った時の電流を測定した。 これは、この装置が通常的に消費する電流となると考えたのである。 当初は、電圧を下げると電流も下がるものと考えていたが、結果は逆であった。 電流はだんだん増えて行ったののである。 ピンときましたね! 通信のためのエネルギーはある一定の電力で必要であると考えると納得がいきます。 電圧と電流を掛けて、電力を計算すると、右のグラフに示す様に、ちょうど 1.0 ワットの電力を消費していることになります。

◆ テスト3: スイッチON からの通信状態の確認

 消費電力の状態がわかったので、今度は、立ち上がり状態を観察することにしよう。 一定電圧にセットして置き、電源を切ってしばらくして再投入するのである。 そして充電具合と通信の接続具合を見るのである。 テストは通信履歴を残したままで、接続が切れたことを確認して実施した。

12 volt すぐに電流は安定し、通信もほどなく接続される。
10 volt 少し時間が掛かるが、通信も接続出来た。
8 volt かなり時間が掛かるが、接続出来た。
6 volt さらに時間がかかったが、接続出来た。

 かなりいい加減な観察記録であるが、時間がたてば接続出来るとは確認できた。 しかし、電圧は高い方がイライラは少なくて済むのである。

 

■ 電源車の製作

 必要な電圧と電流が把握できたので、電源車を作ることにした。 イライラを解消するのも目的の一つであるので、12volt 仕様にすることにした。 使用する電池は、手持ちの充電式ニッケル水素電池 単四型とし、容量が 750mAh のもの10本である。 この電池は一本で 1.2 volt なので10本必要である。 一本で 12 volt 仕様の電池もあるが使い捨ては良くないし、短時間しか使えないと判断したので、採用しなかった。 計算上では 750mAh ÷ 84mA ≒ 8.9 h であるので、ON 時の消費を考えても充分な持続時間を保てると判断した。 また、この単四型は長さは44.5mm で直径が 10.3mm もある。

 まず、車体を作ることにした。 1次作品は失敗したので、下のような2次試作品を作った。  この単四型は長さは44.5mm で直径が 10.3mm もある。 長手方向は3本直列に設置できる長さを確保できるが、2本を横に並べると幅が20mm を越えるので、ホームの端と干渉する恐れがある。 このため、ホーム部分までの高さは、20mm 以下に抑えなければならないので、電車の車体の様に裾を絞った形にするのに苦労したのである。

 車体は厚さ 0.5mm のプラ板を使い、妻板とシャシーは 1.5mm の板厚のものを使用した。

 こうして出来上がった車体を上に示す。 中央部の下部には、裾の広がりを防止するため梁を入れている。 上部は電池を収められるようにトンネル状にした。 上右の写真。 こうして電池10本を収め、中央部から電源を取り出せるようにセットした。 なお、ショート時の過電流防止のために、ポリスイッチをプラス回路に挿入している。

 電源線は車体側面から上部に引き出し、ピンホルダにハンダ付けした。 一方のカメラカーからは、0.29mm のポリウレタン線を使って、基盤のに巻き付け、ピンヘッダに繁多付けした。 ピンヘッダをピンホルダに接続させるのである。

 完成した電源車を下に示す。 ここでも白いマスキングテープを使用して補強してある。

 電池は10本も収めているのでずっしりと重かった。 125グラムもあった。

 

■ テスト走行の実施

 先頭にカメラカーを、後ろからは電気機関車を配して、テスト走行を実施した。

 最初に、走行に不具合は無いかどうか、単なる走行テストを実施した。 ホームとの干渉はクリー出来たが、配線部分が一部の架線に引っかかったので、今回は架線柱を取り去って走行させた。

 色々なトラブルがあったが、なんとかそれらしき映像を撮影することが出来た。 Wi-Fi 接続は以前ほどのイライラは無く、少し待てば何度でも接続出来た。 この問題は回避できたのであるが、走行を楽しむほどの余裕は無かったのである。 何度か撮影録画できた動画を下に紹介しよう。

 でも、トラブルの多さには閉口してしまった。 まず車両側の問題として脱線転覆の頻発であった。 下左の写真。 これは重心が高くなって為であり、ちょっとしたバランスを崩すと横転してしまうのである。 この件は車両側の改善によって対策出来そうである。 電源車を2両にするとか、床下に電池を配するとか、電池の本数を減らすとか、対策可能である判断する。

 もっとも嫌ったのは、アプリのフリーズである。 上右の写真。 この状態でニッチモサッチモ進まなくなってしまうのである。 スマホの電源を切って、スマホを再び立ち上げ、アイコンをクリックしてアプリを立ち上げても、この画面が再び表示されてスタート画面に戻れないである。 パソコンでのソフトの場合ではこのような経験は無かったはずだ。 パソコンを立ち上げ直すと、フリーズ現象は解消出来たはずである。

 仕方なく、このアプリをスマホから削除し、念をいれてスマホも再スタートさせ、アプリを新しくインストールし直した。 何度かこれを実施して対応したものの、ついには諦めることにした。

 どこが悪いの? 操作が間違っているのか? 使い方が間違っているの?

 

■ 結果

 何とか撮影できた動画より、橙と赤信号での停止と緑での進行など、ATSシステムは正常に作動していることが確認できた。 そして、我がレイアウトは変化が乏しく、車載カメラでいつまでも楽しめるような風景ではない事も分かった。 このため、このシステムをお蔵入りにすることにした。

 との結論であったが、まだあきらめきれなかった。 ゴソゴソ操作をするのが悪いのであれば、ジーとさせておけばよいのでは・・・・・・・。 防犯カメラの様にカメラを固定して列車の走行状態を映し出す。 12ボルト電源はレイアウトに張り巡らしている照明用電源を使えばよいのだ。 カメラシステムを取り外した電車は、E233系として走行させよう。

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  2018/11/28