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鉄道模型調査室   KATO製ポイントの動作特性

 

■ いきさつ

 現在、物置部屋のレイアウトのリニューアルを実施中であるが、そのレイアウト工作は手が止まっている状態である。 理由は、先日偶然にも 「Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記」 さんのブログを見てしまったのだ。 TOMIX製ポイントの通電不良や作動不良の原因を調査しておられ、自分の経験とも合致するので、納得しながら拝見させていただいた。 今回、リニューアル中のレイアウトは殆どがTOMIX製であり、一部のポイントには作動不良や通電不良のままの物を、諦めながらも使用している状態ののである。

 本当にKATO製ポイントの方がベターならKATO製に変更するなら、今からでも間に合うのだ。 そこで、自分なりの調査でも確認しようと、分解調査や特性測定を実施している。 今回はいよいよ、ポイントスイッチを使って作動状態を観察することにした。

 なお、自分が所有しているKATO製のパワーパックは Standard S 2台だけなので、KATO製に変更するとしてもこのパワーパックを使用する前提で調査を進めている。

ひとつ前の古いタイプなので、最新式とは特性が異なると思われるが、我がレイアウトでは、この古いタイプを使用するので、最新鋭機器を所有する方には参考にはならないかもしれませんが悪しからずご了解ください。

 

■ 調査に使用した製品

 調査に使用した製品を示す。 パワーパックはStandard S 品番が 22-012 の物である。 ポイントスイッチは 24-840 である。 下左の写真。 KATOのポイントは、6番と4番のポイントがあるが、ヤードには長さの短い4番ポイントを使用するつもりである。 調査のために、電動4番ポイントのR (20-221) とL (20-220) 、および電動6番ポイント (20-202) をチョイスした。 内部の構造はほとんど同一なので、N増しのつもりである。

 

■ 各要素の測定

 波形を観察する前に、関連する要素を測定しておくことにした。 まず最初に、ポイントの電気抵抗の測定を測定する。

 

◆ ポイントの電気抵抗の測定

 測定はテスターを使用して抵抗値を直接測定した。 と言っても分解したわけでなく、先の解体したレイアウトのATS回路で使用したKATO製コネクタを活用した。

 下左の写真に示すコネクタを使用してテスターに接続し、ポイント駆動線とも接続して右上の写真のようにしたテスターで読み取った。 また、下右の写真のように分岐コネクター(品番:24-827)を使用して、2個あるいは3個接続した場合の抵抗も測定した。 この場合は、コネクタ部分の抵抗は加算される。

部品 実測抵抗値 平均 計算値 実測値と計算値の差
電動ポイント4番(右) R
20.3 Ω
20.5Ω
 -  -
電動ポイント4番(左) L
20.8 Ω
電動ポイント6番(左) Long
20.4 Ω
R + L
10.7 Ω
 -
10.3Ω
0.4Ω
R + L + Long
7.5 Ω
 -
6.8Ω
0.7Ω

 測定した結果を左の表に示す。 ポイント駆動のソレノイドの抵抗値は平均で20.5Ωであった。 また、分岐コネクタを使用した場合には、回路の抵抗分と推定される抵抗も加算されるので、単純な計算値よりも大きくなっていた。

 

■ シャント抵抗の抵抗値

 次に電流測定に使用するシャント抵抗についても測定した。 単にテスターで測定すると、0.2 Ω と、コンマ一桁までの値しか計測できなかったので、もっと精密に測定する必要があると判断した。 まず、電流検知部を説明しておこう。 下左の写真のようにブレッドボード上に、今までいろいろな電流測定回路に使用してきた 0.2Ωのシャント抵抗を取り付け、ポイントスイッチのマイナス極に接続するようにした、抵抗の上流側んはポイントと接続するようにし、この抵抗の両側の電圧差を測定するようにする。 そして、抵抗のの下流側、即ちポイントスイッチのマイナス極を電圧と電流測定のためのGND とする予定である。

 シャント抵抗値の精密測定(?)には、安定化電源を使って電圧を掛け、シャント抵抗での電圧を測定する。 上右の写真。 また、50Ωのセメント抵抗を回路の負荷としている。 下左の写真。 電圧差はテスターで読み、電流は安定化電源の電流表示を読み取った。

 その測定結果を下のグラフに示す。 50Ωの抵抗では 0.35A までの値しか測定出来なかったので、同じ抵抗を2個並列にして測定している。 この電流と電圧の関係をゼロ点を通る直線として近似し、その勾配値を計算させた。

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 その値、 221.41 が測定結果より推定するシャント抵抗値である。 単位がmV であるので、抵抗値は、0.221Ωとなる。

 なお、測定は負荷抵抗の発熱を心配して素早く実施したが、測定後触ってみるとかなり温かくなっていた。 電熱器なのである!

◆ ポイントの出力状態の確認

 次に、ポインスイッチの操作途中で、出力の極性の方向と出力電圧を測定しておく。 測定状態を上右と下に示す。

 ポイントスイッチの出力端子に接続した白線をテスターのプラス側に、青線をマイナス側に接続し、ポイントスイッチのレバーの操作途中状態で保持し、その状態での電圧をテスターで読み取った。 負荷は接続していないので、テスターのハイインピーダンス状態だけである。

 レバーの位置が上の位置にある時には、表示されているマークのごとくポイントが直進状態になっており、下の位置にある時は、分岐状態になっている。 鉄道マニアの方には、ここで小生の知識が幼稚であることがバレバレとなってしまったのだ。 鉄道関係の方は、ポイントが直進状態の時は 定位 と呼び、分岐状態のときは 反位 と呼ぶそうである。 確かに、Yポイントの場合は、どっちが直進なのか分からないのである。 従って定位と反位と呼ぶのが理解できる。

切替方向 測定値 平均値
定位から反位へ +14.99 +14.92 +14.96 +14.90 +14.92 +14.94
反位から定位へ -14.96 -14.93 -14.90 -14.93 -14.95 -14.93

 レバーを下に降ろす時、即ち定位から反位へ変換する場合には、白線側に 14.9 ボルトの電圧が掛かり、レバーを上に挙げる時、即ち反位から定位へ変換する場合には、青線側に 14.9 ボルトの電圧が掛かるのである。 電圧はテスターのDCレンジで読み取っているので、脈動直流の有効値であると推察する。

 

■ ポイント駆動波形の観察方法

 このポイントスイッチは、そのプラスとマイナスの方向を切替た上に、切り替え時のみ通電する構成なので、パワーユニットからの脈動直流をON/OFF した波形となるものと推定されます。 実際の波形をオシロで確認してみることにしましょう。 まず、その道具立てを紹介します。

 まず、オシロを持ち出し、ポイント駆動の電圧と電流を測定する配線を実施した。 ブレッドボード上に設けたシャント抵抗の下流側を GND とし、その上流側にCH2 のプルーブを取り付けシャント抵抗の電圧差を検知する。 また、白線側にはリード線を使ってCH1 を取り付け電圧を検知する。

 オシロはパルスが検知して表示するようにし、波形等をUSBに保存してパソコンに取込んでいる。

 

■ ポイント切り替え時の駆動波形

 まず、電動4番ポイントのL (20-220) のみを使用して観察してみた。 予想どうりのパルス波形に 120Hz の脈動波形が重なった波形であった。 まさに連続パンチのようである。

 波形を拡大して電圧と電流の関係を見ても、殆ど同期しているが電流がわずかに遅れているようである。 小生の知識ではおぼつかないが、これはソレノイドのコイル作用による時間遅れにより発生するものと思われるが、脈動周波数が低いためその遅れは少ないもの考えられる。

 また、電源の脈動のタイミングとポイントスイッチの作動タイミングは完全に無関係のため、スイッチの開始や終了が、脈動とのタイミングとは合致せず、その時まかせである。 電流遮断時のフリーホイール電流の発生状態は、どのタイミングで遮断されるかによって変化しており、大きく発生したり、全く発生しなかったりとさまざまである。

◆ 定位から反位への切替時

 定位から反位への切替える時の波形を下にしめす。 中央と右の画面は、左の画面の拡大図で、パルスの開始部と終了部に時間軸をずらして表示している。 拡大図はデータ収集後、画面操作で実施しているのでデータ自身は同一のデータである。 表示する時間軸や上下方向の位置は、データに合わせて移動や変更を実施している。

 電圧のピークは 20V、電流のピークは 200mV 即ち 0.90A であったことを示している。 切替時の通電時間はおよそ 120msec と読み取れる。

 2回目のデータも同様な値をしめしており、パルスの開始と終了時の波形がタイミングのズレにより異なっていることが分かる。 通電時間は約 80msec と読み取れる。

◆ 反位から定位へ戻る時

 同様に 反位から定位へ戻る時の波形を下に示す。

 電圧のピークは 21V、電流のピークは 220mV 即ち 1.0A であったことを示している。 切替時の通電時間はおよそ 160msec 、170msec と読み取れる。  なおポイントの切り替え作動は、カチャカチャと気持ちの良い音を立てて最後まで確実に切り替わっており、安心感が湧いてきます。

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◆ 切替時の通電時間

 切替時の通電時間は、レバーの操作具合によって大きく変動するが、その様子をチェックしてみた。 ポイントを接続した状態で通電時間を読み取った値を右のグラフに示す。

 素早く操作したとき、ゆっくりと操作した時など、ランダムに10回測定した。 その結果、50 〜 550 msec 掛かっていることが分かったが、通常は、50 〜 100 msec と考えて於いて良いだろう。

 

■ 複数のポイントの同時駆動の場合

 待避線やヤードでは、複数のポイントを同時に駆動させることが必要となる場合が多い。 KATOの場合、分岐コネクタを使用すると容易に3個のポイントを同時駆動させる配線が容易に実現できる。 しかも、切り替えは着実に実行できることを経験的にしっているが、実験でも確かめておこう。 

   *********  つづく ******

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  2017/11/4