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鉄道模型調査室   ポイントの通電特性を測定する その3

■ いきさつ

 鉄道模型のポイントは、切替作動が確実に動作する事も大切ですが、動力車に電力を供給するためにレールを介して通電させる機能も大切な機能です。 この通電性能を判断する方法や実際のデータを見た覚えがありません。 鉄道模型界ではこのようなテーマに対して、「通電不良だ」などの感覚的表現しかありませんでした。 そこで、データ的に特性を表現する方法を検討してみる事にしました。

 今回は TOMIX 製のポイントについて、メンテンナス効果を明確にするために、電圧降下量を測定して比較してみました。

 

■ TOMIX 製のポイントのメンテナンス その1

 まず最初に、比較的新しいと思われる金色回路の製品で、電圧降下量が大きかった測定番号が7、8、9番のポイントをメンテナンスした。 方法は、裏蓋を開き (下左の写真)、 刷毛を使ってゴミや埃を払った。 そして、スライド部品を動かし、動き具合やポイントの切り替わり具合をチェックして作動を確認する。

 作動に問題が無ければ、レールと基板を接続する6ヶ所のバネ端子の先端と、スライドする2本の板バネ(電極)の先端を細かい紙やすりで軽く数回こすり、その後に綿棒に付けたクリーニング液で清掃した。 また基板の回路部分は綿棒でのクリーニングのみを実施した。  最後に、スライドする板バネ(電極)の反り具合を修正する。 下の写真の状態のように水平状態では、電極の接触圧が保てないと思われるので、少し弓なりになるように変形させた。 あまり強く反らすとスライド抵抗が増えて作動不良が発生するので、何度か実施してその程度を会得しておこう。

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 そして、再組付けを実施して電圧降下量を測定した。 メンテ前後のデータを比較したグラフを右に示す。

 先回報告したデータと比べると、測定番号4、5、6番と同等のレベルに改善されており、メンテナンスを実施した効果は明らかである。 どの作業が効果的であったのか追及するのも面白いが、経年変化なのか、使用回数なのか判明出来ないので無理であろう。

 しかし、たったこれだけのメンテナンスで効果があるのは驚きである。 しかし、その反面、この状態がいつまで保てるのかの不安も生じるのだ。

 自分としては、スライドする板バネ(電極)の反り具合が電気抵抗に一番影響しているのではないかと推定している。

 なお、レールと基板を接続する6ヶ所のバネ端子は、ネットにて報告されているように、接続方法として本当に大丈夫なのか、 との意見もあるが、レールとはスポット溶接(?)で確実に接続されており、基板とはバネ作用によって押し付けられているので意外と確実な方法のような気がする。

 それよりも、トングレールを切り替えるメカニズムの方が心配である。 その構造はご自分で分解して理解されるのが一番ですが、工夫されているとは言え、おもちゃ的なメカニズムと思っている。 玩具と言えば、TOMIX さんの得意分野であり、コスト的にもグッドアイディアと言えますが、一般の産業分野ではまず採用されない構造と思います。 実際に支点部分の不具合により、ガタガタになった経験もあるのである。 その時、鉄道模型はやっぱりおもちゃだと思い、不具合にも納得したものでした。

 

■ TOMIX 製のポイントのメンテナンス その2

 次に、作動不良であった測定番号が14、15、1番のポイントと2番のポイントのメンテナンスを実施した。

 14&15番のポイントはダブルスリップポインで、構造については下の写真に示す。

 可動部の構造は、上記のポイントと同様な構成ですが、説明は面倒なので、ご自分で分解して研究してください。 スライド電極として、4本が同時に移動します。 メンテナンス方法は上記と同じです。 また、このモデルには回転電極を用いたギャップスイッチが2ヵ所に設けられいますので、ここの電極もクリーニングしておきましょう。

 次に、1番と2番のポイントは旧式のタイプで、ソレノイドの位置や電極の構造が新しいタイプと異なっています。 一番の違いは、スライドする電極の代わりに回転式の電極構造になっていることです。 下右の写真。 また、ダブルスリップポイントと同じギャップ選択スイッチも組み込まれていました。

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 まず、測定番号が14&15番のダブルスリップポインのメンテナンス結果は、ポイントの切替作動は多少よくなったものの、反位から定位に戻るとには、完全には戻り切れていませんでした。 電圧測定は手動で補助して測定していますが、右のグラフに示す様に、改善効果はありませんでした。

 測定番号が2番の旧式のポイントでは電圧降下量では改善が見られたものの、新式のような効果は得られませんでした。

 また、測定番号が1番の旧式のポイントは、ポイント切替え作動不良であったものですが、メンテナンス後には動く様になりました。 しかし、電圧降下量はアップしています。 電極のクリーニングと共に、回転電極の反り具合を緩くなるように調整した結果です。

 操作が不良であった測定番号3番の旧式のポイントも、同様にメンテを実施した。

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 メンテAでは、回転電極のそりをほとんど無くした状態にした場合であり、ポイント切替動作はスムースであったが電圧降下量は大きくなってしまった。

 そこで、今度はかなりの反りを付けたのがメンテBである。 電圧降下量は小さくなったものの、動きは途中までしか切り替わらなかった。 そこで、中間程度の反りに修正したのがメンテBである。 切替作動性と通電性は相反していることが分かります。 そして、電極をどのくらいの反らすのかは、トライ&カットで実施するしかないようです。

 また、テストの実施が行き当たりばったであったので、電極のクリーニングだけでどれだけ効果があるのかチェックできなかった。 テスト方法を工夫しておればその効果を判明できたかもしれません。

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 次に、作動はOKであるが、電圧降下量が比較的大きな測定番号16と17番のポイントを分解してクリーニングしたのですが、メンテ中に大切な端子を折ってしまいました。 右の写真。 レールと基板の回路を結ぶ大切な端子であるが、ハンダで修復する方法も見当たらない。

 そういえば、触った時の音が違っていたなと思いだしました。 他の端子のようにピンピンと言った音でなく、鈍い音がしていたような気がした。 もう折れかかっていたのであろう。 道理で電圧降下量が大きかったのだと屁理屈をつけて納得することにしたが、ごみ箱行きであろうか!

 分解掃除の時は、細心の注意を!        

 

■ まとめ

 メンテナンス実施後の電圧降下量の結果を追加して、先回報告したグラフを更新してみました。

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 今回のメンテナンスの実験により、切替動作や通電抵抗はメンテナンスを実施することによって改善出来る事を示しました。 しかし、この改善効果がいつまで保持できるのかは分からないのである。

 自分の場合、その使用頻度は多くないと考えるし、保管状態も劣悪な環境では無いと思うう。 また、レイアウト製作時も注意して作業したつもりなので、そんなに悪さをしたとは考えに難い。

 しかし、メンテナンス前のデータを考えると、意外と早くその状態になってしまうのではないかと考える。

 それはバネのへたりなのか、電極の変化なのかは断定できていないので、自分としては無責任な報告になってしまっているが、この程度の実験でご容赦下さい。

 今回の測定データですべてを判断するつもりはありませんが、皆さんの経験から得られたノウハウと合致していれば幸いです。

 

 次回は、KATO製のポイントについても、同様のメンテナンスを実施したので、その効果を報告します。

     ***************    つづく! *************

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  2017/11/15