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鉄道模型実験室 No.283  物理実験を始めよう

 さるブログに刺激されて自分も物理実験を実施してみることにした。ただし、実験方法は、ホビーとしての工作範疇で実施出来るように工夫した。その結果は意外と良好であり、Nゲージ車両の実験にも応用できそうな気がして来た。

 

■ いきさつ

 突然、へんてこな実験を始めたが、そのいきさつと最終目標を説明しておこう。

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 しばらく前に、さるブログの内容に疑問があったので自分の考えを投稿したのだが、強烈なカウンターパンチを食らってしまいました。前後のいきさつはある程度知っていたのですが、“相も変わらず「俺は正しい」という態度の人が居ますね。”・・・・・・・・と言われたのには、カチンときました。

 「俺は正しい」という態度の人とは?・・・・・・・・・いきさつから推測すると意味は分かるのですが、言葉尻を捕まえてなんですが、「俺は正しい」という態度の人とは、信念を持った人だと思います。この投稿者は信念を持っていない人なのでしょうか?

 このような人達とは関りを持たないのが得策ですので、これ以上追求することは止めにしました。でも、今回のいきさつから、次のプロジェクトのテーマが得られたので良しとしています。

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 そのテーマの内容は、昨年検討した「μカーブから発進特性を考える その2」(2025/8/23)において、「発進時の負荷と空転状態」を検討した時、負荷の条件に何か抜けているのではないかとの疑問が湧いてきたのです。

 それは、負荷の種類として、牽引される車両の摩擦抵抗と、車両の質量による慣性負荷を分けて考える必要ある気がして来たからです。さらには、坂道等での勾配抵抗もあるのです。その違いは、摩擦抵抗や勾配抵抗は、速度に関係なく一定と考えられので、これらの力には打ち勝たなければ発進出来ません。

 しかし、慣性負荷の場合は、小さな力でも車両を動かす作用はありますので、ゆっくりながら発進可能と考えます。ストール時にレールをガリガリやっていても、列車を発進させることが出来るはずです。先回の実験では、あえて車速を調整しながらその時の牽引力を測定したのですが、今度は慣性負荷を与えた時の発進時の状態を実験してみようと考えたのです。

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 このためには、どうのような手段で、どのように測定するのか考える必要がありました。

 これらの技術的工夫によって実験してみることにします。

 

■ 実験装置の工作

 実験スペースは狭いし、工作力も乏しいので、何時ものように机上で実験できるものを作りました。

 実験装置は、タミヤのテクニクラフトシリーズNO.5 の6速ギヤボックスHE のボディを使用しました。二つの回転軸の端部には、互いにホイールを取り付けています。

 入力軸側にはSP.569の8本スポークホイール(銀)を取り付け、出力軸側には、OP.453 6本スポークホイール(黒)を取り付けています。

 そして、二つの軸の間は、36Tと14Tの歯車によって、2.5714のギヤ比を構成して出力軸を増速させています。

 入力軸には太さ 0.6o の墨ツボ用細糸(材質:ナイロン)を巻き付け、重りを入れる籠を結んでおきます。

 一方の出力軸側には、ホームセンタにて探してきたフジキング製の重量戸車60ミリ をネジで固定してはずみ車としています。かなりの重量ですが、ベアリングを内蔵していますので軽く回転します。出力軸のホイールとは、幅4.5mmの輪ゴムで結んでいます。

 また、出力軸には手製のロータリエンコーダを取り付けました。いつ、何のために工作したのかは忘れてしまいましたが、パソコンで作った32分割の白黒模様です。この模様を読み取るセンサは、これも何時も使用しているフォトリフレクタTPR-105F をセットし(下左の写真)、処理回路もトランジスタを使った回路でパルス状に成型しています。下右の写真。その出力パルス信号をArduino のデジタル2番ポートに入力し、割込み処理を使ってパルスをカウントするようにセットしています。

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 このような構成に於いては、入力軸が1回転すると、32×36/14=82 回パルスをカウントします。従ってひとつのパルスは、入力軸に巻かれた糸が 1.40mm 進んだことを検知します。即ち、距離測定の分解能は、1.40mm である事が分かります。

 

■ 実験方法

 今回の実験は予備テストのつもりです。作成した実験装置が意図した通りに機能するのか、果たして加速度は要求に耐えうる精度で計測出来るのだろうか。さらなる改善点はないだろうか、などを検証してみたいと思います。

 実験方法は、ぶら下げている重りを上に巻き上げておき、手を放して自由落下させます。この時のホイールの回転位置を示すパルスをカウントし、その時の時刻と共に記録していきます。この時刻とカウントからこの系の加速度を計算します。

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 ここで、実験の裏付けとなる関係式を考えておきます。まず、運動は直線運動と仮定して運動方程式を考えてみましょう。重りの重さを F、質量を M とします。そしてフライホイールの質量をm、系の摩擦抵抗を常に一定と仮定して f としましょう。そして、この時の加速度をα1 とすると、

      F - f = ( M + m )α1 ・・・・・・・・・・・・(1)

の関係になります。 さらに、重りが床に届いた後は、フライホールの慣性で回転を続けるのですが、摩擦抵抗によって減速して行き、最後には停止します。この時の関係は、重りが着床しているので関係が無くなっています。この時の加速度をα2とすると、

      - f = mα2  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

となります。この式よりフライホイールの質量をm を消去すると、

     F = Mα1+ f ( α2 - α1 ) /α2 ・・・・・・・(3)

となる。そこで、重りの重さを測定すれば、質量M と重さ F が分かりますので、二つの加速度α1とα2を計測すれば、摩擦抵抗 f と フライホイールの質量m を計算することが出来るのです。

 ここでのポイントは、重力の加速度 G はつねに一定であることを忘れてはいけません。質量M に掛かる重力、即ち系に掛かる力F は常に一定なのです。この力が変化する場合にはこれらの関係式は成り立たないのです。

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 Arduinoのスケッチは、パルスカウントの割り込み処理を実施するとともに、20msec毎に時刻とカウント数を送信する設定にしています。そしてパソコン上のExcelにてData Streamerによって記録していきます。

 

■ 実験結果

 まず、重りを選択してスルスルと動く状態を探しました。そして設定した条件は、重りを 137.8 gf に設定し、実験を実施しました。

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 取り込まれたパルスカウントの状態を時間軸でグラフにしてみました。

 データは綺麗に収得されていることが分かります。うまく行きました!そこで、時間毎のパルス差分を計算してグラフに示しました。

 やはりデジタル値の誤差がしっかりと表れています。20ミリ秒毎のデータ差分ではダメであることが分かります。そこで先回の工夫に従って、10個前のデータの差をプロットしてみました。

 こちらのグラフでは、データの傾向は判別できるます。パルス差分、即ち速度は途中でハッキリと方向が変化しています。これは重りが着床したため、重りに掛かる重力は消えてしまったものの、慣性力によって回転は維持されています。しかし、摩擦抵抗によって減速していき最後には停止したことを表しています。

 でも、この差分データからさらに差分を取って加速度を求めるのは、無理な気がします。クシャクシャのデータになりそうなのは、容易に想像できます。

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 そこでデータ解析の方法を変更することにします。系に加わる力が、重力なので一定の力が掛かっている。このため、その道のりは2次曲線に従うことが明らかのので、パルスの経緯を2次曲線で近似させてみました。

 加速時と減速時では状態が変化しているので、分離して解析しました。近似曲線の適応具合もばっちりですね。でも、注意しておく点は、曲線の原点の取り方です。2次項の係数は影響ないものの、1次項と定数項は時間軸の原点の取り方によって変化します。そこで、式を一度微分して速度項がゼロとなる x を求めて置き、その点を原点とするように時間軸を修正しました。

 

 すると、x = 0 の時がスタート時点であり、停止時点であることが分かります。その時の Y 切片の値も測定した時の値と合致しています。こうして加速時と減速時の加速度の値を求める事が出来るようになりました。

   

■ データの解析

 測定データが得られたので、解析を実施してみましょう。

 まず、単位系をSI単位系の基本単位に換算しておくことにします。まず、パルス数を距離に換算すると、1パルスで1.40mm でした。そこで、SI単位系の基本単位であるmに換算すると、1パルス=0.0014 m となります。また、時間に関しては 1msec = 0.001 sec ですね。次に、質量M は秤で測った重さと同じですから 137.8 グラムです。そして力Fは 0.1378×9.807 = 1.3514 N となります。

 まず、グラフの近似線を式で表すと、

    加速側: y = 0.00004379x2 - 0.00248449x + 501.0

    減速時: y = - 0.00008315x2 + 0.00175452x + 1040.5

 この式を微分すると、

    加速側: dy/dx =2* 0.00004379x - 0.00248449

    減速時: dy/dy = - 2* 0.00008315x + 0.00175452

 さらにもう一度微分すると、

    加速側: 加速度 α1 = 0.00008758 パルス/msec/msec = 0.1226 m/s2

    減速時: 減速度 α2 = - 0.00016630 パルス/msec/msec = - 0.2328 m/s2

 よって式(3)より、 1.3514 N = 0.1378 Kg × 0.1226 m/s2 + f×(-0.1226 - 0.2328 )/-0.2328 = 0.01689 + 1.5266 f

        ∴   f = 0.874 N = 89.2 gf    m = 3.15 Kg

 また、 F = Mg であるから、式(1)より 重力の加速度g を計算すると、g = 9.84 m/s2 となり、なかなか良い線を行っていることが判ります。

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■ 考察

 今回は、予備実験として実施しましたが、納得のいく結果を得ることが出来ました。また、方法としても上々であったと考えています。でも、Nゲージ車両の発進状態を実験するためには、課題も見えてきました。

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 次回の報告は、装置の改善具合ですので・・・・・・・・・。

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 2026/2/21