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鉄道模型実験室 No.294  引出し特性 電流を制御しながら走らせる

 引出し特性という現象を観察しているが、今回は電流を制御しながら測定してみた。でもその結果は見事に裏切られてしまった。自分の解析力が不足していたのである。

 

■ 電流制御による引出し実験

 実験装置は先回と同じ装置を使用し、線路に供給する電源として、何時も使用していいる安定化電源をそのまま使用した。菊水製の可変直流定電圧・定電流電源 PAB 18-1A である。下左の写真。

 この装置には、負荷の値に関係なく設定された電流を一定に保つ機能が搭載されています。この機能を活用し、電流の値を調整しながら走らせることにした。この時、電圧側の値を10volt に設定にしておくと、電圧の最大値をこの値に制限してくれますので、安心して電流側のつまみを調整することができます。

 今回、走行させるのは、先回も使用したEF81-119号機です。下右の写真。

 停止時より、供給する電流値を少しずつ上げていき、動き始めると電流値を一定にしてしばらく様子をみた。その後、車速が一定になったと思われる時点から、さらに電流を上げていき 300mA の時点で再び一定値にして様子を見た後に電源を止めて終了した。この時の測定データを下に示す。速度データは距離と時間データの差分から平均化処理を実施した値である。

  

 距離と速度のデータはそれらしく取得できており、引張力も波打っているが、その傾向は判別できる。また、電流と電圧は、その動きがほとんど一致していることも読み取れる。次に、これらのデータを、引張力−車速、引張力−電流、電流−電圧の関係を示すグラフにして、その様子を観察した。

 どのグラフを見ても・・・・・・・・不思議なグラフだな?・・・・・・・・・・・と、しばらくボーとして眺めていた。ただ、電流−電圧のグラフはオームの法則に従っているものと推察できるが、途中の凸凹は何の現象だろうかと疑問点が湧くばかりであった。

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  さる鉄道模型のブログにおいて、”こんな測定器を作りました。そしてその測定結果のグラフはこうです。” という報告に対して、さる大御所のブログ主は、”測定器を与えられた子供が測定データが取れた、取れたと喜んでいるのと同じだ!” と揶揄していることがありました。

       この状態と同じですね・・・・・・・・・・・・・・。

  そして、その大御所さんが曰く、”測定というものは、その結果がどうなるかを予測して行うものである。結果が見当もつかないものは測定できないのだ。” との事だが、確かにそうの通りであるが、でもこの考えに少し違和感が湧いてきました。

  そこにどんな現象かあるのだろうか? なぜそうなるのだろうか? などと疑問になった時、いきなり測定を始めるのだろうか? 否、まず始めるのは”観察” である。どんな現象が発生しているのか、様子はどうなっているのだろうか・・・・・・等々、いろいろな観点から、まず始めるのは、とにかく観察してみるのが実験の常套手段である。結果は不明であり、予測不可能かも知れないのである。
  そして、その観測結果を分析して、ある仮説を立てて実験を始める、あるいはさらに詳しい様子を観察する等のステップに移行するものと考えます。

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■ データを解析してみよう

 グラフを眺めていても前に進まないので、データを色々加工してみることにした。まず、今回の実験は色々な操作を実施しているので、その操作別に区切ってみることにした。その様子を右のグラフに示します。

 このグラフは上記のグラフをもとに、距離のデータの代わりに電流の値を追加した。この電流、速度、引張力の値を見ながら、四つの操作ゾーンに区分しました。

 Aゾーンは、 モータが回転していない状態であり、Bゾーンは電流一定状態で加速を始めた状態です。そして、Cゾーンでは電流を上げて加速させて状態であり、Dゾーンではまた一定電流の状態にした様子です。

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 後から気付きましたが、Dのゾーンでは電流と電圧がピタリと止まっています。これは最大電圧 10volt として設定したクロスオーバー・ポイントに達していたためであり、負荷状態に関係なく電圧と電流を制限している状態でした。

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 そして、各ゾーンが判別できるように色分けして、その時の各項目の関係を下のようにグラフに示しました。

 このグラフより、各ゾーンの特徴的な様子をまとめてみました。

操作ゾーン グラフの色 操作内容 車速状態 電流と電圧 引張力と電流 引張力と車速
A 濃紺 動力車は停止状態で電流値を上げていく。 停止状態 比例状態 引張力はゼロ 両方ともゼロ
B 緑色 電流一定状態にて加速を始める。 ゼロ発進から加速状態 電流一定なのに引張力は変化している? 車速とともに引張力が右下がりで減少している?
C 橙色 速度が一定状態になったので、今度は電流を上げていく。 さらに加速継続 はぼ比例 ほぼ比例 ほぼ比例
D 茶色 電流を一定にして状態をみる。電流と電圧の制限している状態。 ほぼ一定状態で走行 一点集中 電流一定なのに引張力は変化している? 変化はあるものの、ほぼ一定値

 さて、これらの観察結果より何が分かるのか考えてみた。

  1. Aゾーンはモータ停止状態ですので、電気回路は単なる抵抗回路、即ち電熱器状態です。従って電流と電圧は比例して上昇し、モータを温めている状態です。3グラム程度の引張力は、糸をピンとさせるために少し力のかかった状態で停止させていたからです。
  2. Bゾーンの様子が不思議です。特に電流が一定なので引張力も一定のはずだと思っていた事が見事に裏切られています。そして、引張力は車速とともに減少している?これも不思議ですね。
  3. Cゾーンは、電流を上げているのでトルクも上昇しています。これによって車速が早くなるのも納得です。
  4. Dゾーンは、電流と電圧が一定値ですが、トルクだけは変動しています・・・・・・・・なんで?

 以前に測定したモータ特性や車両特性をひっくり返して見直してみましたが、どうも解せません。測定装置と測定方法は間違えていないと思っていますが、だんだん自信がが揺らいできました。

 Bゾーンの現象について考えられることは、動力車の機械的摩擦抵抗しか思い当たりません。こんなに大きかったのか?回転数がこんなに影響しているのだろうかと考えているうちに、次の事にやっと気がt来ました。

  1. 電圧-車速 関係
    モータの回転数は、逆起電力との関係もあり電圧と比例します。そして、モータと動輪の間にはギヤがガッチリと噛合っているいるので、モータと動輪の回転数は完全に比例関係にある。そして、動輪とレールの間には滑りが発生する可能性があるものの、モータの回転数と車速とは殆ど比例します。このため、電圧と車速との関係は把握することができるのだ。これは、電圧によって車速を制御できることも意味しています。
  2. 電流-引張力 関係
    電流とモータのトルクは理論上でも比例関係にあることは証明されています。そして、モータのトルクと動輪のトルクは、ギヤ比の関係以上に、動力伝達部の摩擦抵抗が関係し、内部の動力損失が大きく影響しています。動輪のトルクは車両の引張力と関係しますが、電流と引張力の間では、電流が一定なので引張力も一定のはずとは言い切れないのです。しかもこの関係は、制御しようとする見方で今までは整理していないことに気が付きました。

 電流が一定なので引張力も一定のはずだと思っていたことは、間違いだったのです。関係式を整理していけば判明することなのですが、もうその気力がありません。

 

■ まとめ

 何のことは無い! 自分の解析力が不充分だったのです。でも、電流制御は、なんだか面白しろそうな気がして来ました。

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 関係式を整理するよりも、実験、いや、観察している方が楽しいので、あれこれ観察していこうと思います。このためには、課題であった装置の回転ムラにたいして、改善を実施しておくことにします。

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 2026/4/2