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鉄道模型実験室 No.160  室内灯のチラツキを低減したい -- テープLEDの特性

 車両整備の一環として、室内灯としてテープ式LEDの工作を実施しましたが、走行時のチラツキがひどいため手が止まってしまいました。 でも、このテーマは避けて通れないので、少し首を突っ込んでみたいと思います。 今回はテープLEDに関する特性を把握しておきましょう。

 

■ 使用したテープLED

 実験を始めるにあたって、使用したテープLEDの特性を把握しておく必要があります。 使用した製品は、Amazon から購入した格安品です。

製品名: LEDテープ 白ベース 5m 300連SMD 正面発光 12V 電球色   ネットショップ: CarTopAudio (Amazon にて)  

価格: ¥399 & 配送料無料  SMDタイプ:: 3528   SMD個数: 60個/m   動作電圧: DC12V   消費電力:4.8W/m
カット可能間隔: 50mm (100mm の間違い!)   発光色:電球色(ウォームホワイト)   背面には両面テープ付

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 このテープLEDは、他の物よりも長く、一つのユニットが 100mm もあります。 しかし、Nゲージの車両にはピッタリの長さです。 この長さに6個のチップLEDが挿入されていますが、その回路は左の図のように2個ずつの並列配置が3段となっており、その間に100Ωのチップ抵抗が挿入されているという、特殊な作りです。

 LEDを並列に配置するこのような配置は、本来は避けるのがセオリーなのですが、よっぽど特性を揃えているとの自信なのでしょうか? 

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 テープの長さを 10cm、即ち LEDを6個ごとに切り離して使用すると、50本のテープLEDとして使用出来ます。 1個当たりのお値段は、\400/50 = 8.-  たったの8円なのです! 安い!

 

■ 特性の測定

 安いのが取り柄ですが、さて、特性はどうでしょうか?

 まず、テープLED単体での電流ー電圧特性を測定しました。 測定装置は右の写真に示す様に安定化電源を使い、そこに表示される電圧と電流を読み取っていきました。

 その結果を下左のグラフに示します。 テープ単体と、750Ωの抵抗を挿入した場合の電流値を比較しています。

 電流の立上りは7.5volt ですが、LED 3個の直列配置ですので一個当たりでは 2.5volt となり一般のLED と同等の値と考えます。 このようにテープLED は、7.5ボルト以上の電圧を掛けないと点灯しないので、鉄道模型に使用する時は、12volt のPWM制御は必須なのです。 また、明るさを抑えるために750Ω の抵抗を使用していますが、これによって、約 6mA に抑えている事が分かります。

     

 このような小さな電流の場合には、安定化電源の電圧・電流メータでは精度に不安があるため、抵抗付の場合をテスターを使って測定し直しました。

 テスターはデジタルとアナログの2台しかなかったので、上の写真のような状態で測定しました。 その結果を上の右のグラフに示します。 電圧はアナログメータで測定し、10volt 以上では測定レンジを変えていますので少しドリフトしていますが・・・・・・・。

 

■ 電流制限は定電流ダイードか抵抗か

 次に、電流制限について実験してみました。 LEDの電流制限として、今までは定電流ダイードを常用してきましたが、PWM制御の場合は通電ON時の電圧が12volt と、ほとんど一定であるため、これに合わせた抵抗を使用すれば、一定の電流として制限することが出来ます。 制限する電流値が調整で来ますし、何よりも価格も安いのが魅力です。

 今回の制限電流を 6mA とするならば、定電流ダイード( CRD )としては、代表値 5.6mA の E-562 を使ってその電流ー電圧特性を測定しました。

 測定結果を下のグラフにに示します。

   

 定電流ダイードといっても、ピタリ(!)と電流を一定にしてくれないのですね。 カタログの静特性グラフを見ていたはずですが、今更気が付くとはトロイです。 そこで、抵抗 750Ωの場合と比較したのが上右のグラフです。 高価なCRDのメリットはありませんね! 抵抗で充分ですね。 取り付け方向も気にすることは無いしね。

 

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■ コンデンサの放電時間は?

 次に、気になっていたコンデンサの放電時間を測定してみました。 もし、0.05秒以下の放電時間しか保てないのであれば、人の残像効果よりも短いので、点灯時間確保への影響が小さくなります。 コンデンサを付けることによって、連続点灯として認識できる 残像時間+放電確保時間 がどれだけになるのかを推定するためです。

 実験は、右のような回路を組んで放電時間を測定しました。

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 電流測定のために、シャント抵抗として、以前のように0.2Ωの抵抗を使ったのですが、値が小さくかつノイズが目立ったので、思い切って10Ωの抵抗を使用しました。 回路には750Ωという大きな抵抗が挿入されているので、その影響は小さいと判断したのです。 このシャント抵抗の電圧降下を直接計測するため、オシロのGND 端子を 10Ω抵抗の下流に設置しました。 このため、CH2はマイナス電圧として表示されます。

 測定状態を上に示す。 回路に示したスイッチの代わりに、ジャンパー線の抜き差しで実行しました。 また、測定対象は、5.6mAのCRD E-562750Ωの抵抗を使用し、750Ωの場合は、抵抗の下流、即ち、抵抗とテープLEDの間にコンデンサを置いた、三つのケースで実験しました。

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 測定時のオシロ画面を左に示します。 CH1 の電圧は、シャント抵抗の電圧降下量、即ち電流値を示しています。 CH2は750Ωの上流の電圧をマイナス電圧として表示しています。

 このオシロ画面より、電圧は少しさがっているものの、電流はゼロまで落ちている事が分かります。

 これは、LEDの電圧が、立上がり電圧である7.5voltであったとしても電流はゼロであり、LEDは点灯していない事を示しています。 従って、LEDの実験に於いて、電圧だけの測定値では点灯確認にはならない事を示しています。

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 また、どの時間を読み取るのかも決めておく必要があります。 上図の場合、黄線のCH1 の電圧は 40mV を示していますが、40mV/10Ω = 4mA の電流が流れている事が分かります。

 上に示した実験より、1mA 程度の電流が流れていればLEDは点灯していますので、10mVまで落ち込んだ時点の時間を読み取ることにします。

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 こうして測定した結果をグラフにしたのが、右のグラフです。 横軸はコンデンサの容量で、縦軸が読み取った時間です。

 このグラフより、自分が使おうとしているテープLEDについて、10μFや20μFのコンデンサでは 10msec程度しか持ちませんので、コンデンサ追加の効果を期待出来ない事を示しています。 スペースが許すなら、100μF程度のコンデンサを使いたいですね。

 また、コンデンサを取付ける位置も重要ですね。 電流制限抵抗とLED の間にコンデンサを付けても、効果は 1/5にも激減してしまいます。 これほど差があるとは予想外でした。

 その理由は? 蓄電する電気量が違うからなのだろうか? よく分かりません。

 

 次回は、ダイオードの違いについての実験を報告しましょう。

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 2020/7/3 作成