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鉄道模型実験室 No.167  新室内灯ユニットの保持時間の違いを探る

 室内灯のチラツキを低減したいとのことで、ショットキーバリアダイオードブリッジを使用した新室内灯ユニットを工作してきました。 さらにその改良として、電解コンデンサをチップ積層セラミックコンデンサに変えてコンパクト化を図ってきました。 しかし、電解コンデンサとチップ積層セラミックコンデンサを使用したユニットでは、消灯時間の保持時間が違うことに気が付きました。

 そこで、その内容の把握と原因調査のため、実験を実施してきましたので、その内容を報告します。

 

■ 本当に違うのか?

 どうも納得がいかないので、ベンチテストを実施しました。 まず、対象の車両から室内灯ユニットを取り出して比較実験をしてみました。

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 違いを確認するために、ビデオカメラで撮影し、そのコマ送りで確認することにしました。 このため、2種類の室内灯を同じ電源に接続し、供給側のON/OFFを表示させるために、単独のLEDを取り付けました。 実験方法は、「室内灯のチラツキを低減したい -- 新室内灯ユニットの確認」(2020/7/8)と同じ手法です。

 点灯状態を右の写真に示します。 ビデオを撮影し編集時に確認すると、LEDの消え方に時間差が有ることが確認できました

 

 コマ送り編集は面倒だったので後回しにすることにして、他の方法で計測してみることにしました。 それは、オシロを使って、電圧の落ち方を観察しようとするものです。 LEDの特性はほとんど同じと判断し、電圧を観察することによって現象が把握できる筈と考えたからです。

 そこで、オシロを持ち出し、下の写真のようにユニットの電圧推移を観察しようとしましたが、プローブの取付け部分がありませんでした。 特に、セラミックコンデンサ式のユニットはダメでした。

 このため、実際のユニットでの実験は中止しました。

 

■ 実験 20 :オシロを使って計測してみよう

 オシロを使って観察するために、ブレッドボード上に回路を組んで、電圧の落ち込み具合を観察することにしました。 なるべく実際の回路と同じ構成になるように、ショットキーバリアダイオードブリッジを使用し、同じタイプのテープLEDや、電源もワーユニットを使用しました。 下の写真。

 また、実験対象としたコンデンサは、手持ちの中から、色々なものをかき集めました。 チップ積層セラミックコンデンサは、そのままではブレッドボード上では使えませんので、4個まとめてリード線にハンダ付けしました。 これらの部品を下左に示します。

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 以前多用した 10μFのアキシャルリード型セラミックコンデンサも持ち出しましたが、上右の写真のように、ずらりと並べてテストしました。

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 オシロでの観察のために、1KΩ抵抗の両側にプローブのプラスとGNDを取り付けました。 そして、左に示すような画面のハードコピーをパソコンに移し、 画面を拡大して読み取りまいた。

 ON時の電圧は、3.2 volt でした。 そして、0.5voltまで落ちる時間を読み取りました。

 (正式には時定数を求める必要があるのですが・・・・・・・。)

 その結果を右のグラフに示します。 コンデンサの容量に比例して時間が伸びている事、 また、チップコンデンサもアキシャルタイプのコンデンサのライン上に乗ってきましたので、同じ性質もコンデンサと解釈しました。

 そして、電解コンデンサとセラミックコンデンサは明らかに異なっているのが一目瞭然です。             

 

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■ 実験 21 :テープLEDを外してみる

 コンデンサの放電特性は理論的に計算出来るので、その計算結果との比較のために、回路を簡単にしました。 起動電圧の下駄を履いた特殊な特性をもつテープLEDの場合の計算方法を知らないので、テープLEDを取り去った簡単な回路で実験することにしました。 右の回路図。 なお、LEDに代わる負荷抵抗として、同程度の電流、即ち 3mA 程度が流れるように、4.7KΩの抵抗を使用しました。

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 オシロの使い方も少し勉強して、波形データの数値をCSV 形式で保存し、パソコン上のEXCELを使ってデータを整理すると共に、重ね合わせしました。

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 なお、テープLEDを外すと左の画面の様にノイズが無くなりました。 テープLEDの影響なのか、あるいはオシロのGNDを変えたからののでしょうか?

 今回は、時定数として計算出来るように 36.8% のポイントも計算しました。

 また、理論値の計算のために、コンデンサや抵抗もテスタで計測した値を用い、ネットでの計算サービスサイトで、この様な回路での放電時の時定数も求めました。

 これらの結果を右のグラフに示します。

 

 電解コンデンサとセラミックコンデンサは明らかに異なっており、電解コンデンサの場合は理論値とほぼ同じであることが分かりました。 即ち、

セラミックコンデンサは何かおかしいぞ!            

と言うことがハッキリしました。

 

■ 実験 22 :色々なコンデンサを使って測定してみる

 一つの測定結果で結論を出すのは拙速であると思い、色々なコンデンサの時定数を測定しました。 電解コンデンサは手持ちのストック品から揃えましたが、セラミックコンデンサは種類がありませんでした。 そこで、計測に便利なようにと、リード線にハンダ付けして色々な容量のコンデンサとすることにした。 下左の写真。 使用したチップコンデンサは、下右の写真のものです。

 用意したコンデンサ類は、ひとつずつテスターで静電容量を測定しました。 下左の写真。 これを実験21と同じ回路で測定を実施した。 下右の写真。

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 測定物がたくさんあるので、いちいちCSVファイルの落として整理するのは大変ですので、オシロの説明者を紐解き、オシロ画面上でカーソル操作によって時間を読み取る方法で実施しました。 オシロの新しい操作法をマスターしたのだ!

 その結果を上のグラフに示します。 コンデンサの時定数は、 時定数 τ= C×R とのことであるので、コンデンサ容量に比例するのですが、グラフはその通りである事を示しています。

 さらに、今回使用した抵抗の実測値は、R = 4.597KΩでしたので、電解コンデンサについては、計算値ともピタリと一致します。

  でも、セラミックコンデンサは計算値と合いません!                                  

 電解コンデンサの結果より、我が測定方法やテスターの測定値はまともであると言えるので、やはりセラミックコンデンサは変なのです

 

■ 色々な疑問

 これらの結果より湧き出てきた疑問点を列挙してみます。

  1. 何故、セラミックコンデンサはおかしいのか?
  2. ダイオードブリッジが影響していないのか?
  3. テスターでは、単体のコンデンサ容量を測定できる。 その方法は、充電時間を計測しているとのことであるが、測定結果は、電解コンデンサーでもセラミックコンデンサーでも表示値とほぼ同じ値を示しており、違和感はない。 それなのに、我が測定では何故もこう差があるのか? 測定方法が悪いのか?

■ コンデンサに関する色々な情報を調べる

 もうこうなると、暗中模索の状態である。 たよるのはネット情報しかないので、キーワード検索を実施して探してみた。 コンデンサの解説や動作説明などのサイトは多数あったのだが、求める情報はなかなか見つからなった。 半分あきらめかけた時、コンデンサの直流電圧印加特性というキーワードを見つけることが出来た。 その解説を読んで、目から鱗が落ちる思いであった。

 あった! これだ! と思わず叫んでしまった。                              

 

 改めて、使用したコンデンサのデータシートを見ていると、同じ特性を示すDCバイアス特性のグラフを見つけました。 この特性グラフは、直流電圧が高くなると、コンデンサの容量が劇的に減少することを示しています。

 即ち、両端にDC12voltを掛けると、22μFが4.4μFまで小さくなってしまうのだと、解釈しました。 このため、時定数も表記されている容量から計算される値から、その1/5 と小さな値となってしまうのです。 ただ、この特性は非線形特性なので、単純には計算出来ないと思われます。

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 この現象は、古い資料にも解説されているので、この道の専門家にとっては常識なのかも知れませんが、部外者に取っては気にもしなかった事実でした。 そして、この現象は大容量化した積層セラミックコンデンサ特有の現象だそうで、その材料に由来するそうです。

 このため、電解コンデンサなどには、この様な特性は無いとの事で安心するとともに、今までの測定結果についても納得です。

 また、テスタでコンデンサの容量を測定しても、テスターの測定電圧が低いので測定値には影響しないと解釈すれば、この件も納得です。

 

■ 結論

 結論については、一昨日の速報で報告した通りです。 「改良型室内灯ユニットは失敗作なり」(2020/7/27)参照。

 

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 2020/7/29 作成