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鉄道模型実験室 No.194  KATOのパワーパック スタンダードSXを導入

 最近は、コアレスモータとPWM制御の関係について首を突っ込んでいます。 しかし、調べれば調べる程、いろいろな疑問が沸きだしてきました。 デューティ比と車速の関係が なぜ非線形になるのか はまだ解決していせんし、マイコン式運転操作台のモータドライバの過熱についても、その本当の原因は未解決のままです。 この調査の一環として、数年前に発売されているKATOのパワーパック スタンダードSXを購入してみることにしました。

 今までの色々な疑問を理解するための手掛かりとなると考えたのですが、なんと、また新たな疑問にはまり込んでしまったのです。

 

■ いきさつ

 先回の報告で、電磁気関係の知識の乏しい機械屋の老いぼれには、理解困難な現象ばかりで、厚い壁にぶつかってあきらめざるを得ませんでした。 そして、「コアレスモータ搭載車とPWM制御は、相性が悪いと言われているが、これはコアレスモータの特性を考慮したパワーパックになっていないからである。」と結論付けて、さらに、自分はPWM制御方式のパワーパックとして、TOMIXのメーカーのN-1001-CL しか持っていませんので、このプロジェクトを終了することにしていました。

 そして、工作してきたマイコン式運転操作台のまとめとして、muragon のブログに記載しました。 これで全て完了にするつもりでしたが、偶然見つけた不思議な現象によって、再び火が付いてしまったのです。

 それは、 「危ない! モータドライバが過熱する」(2021/6/3)にて報告しています。 そして、1μFのチップコンデンサ(実質は0.2μF程度か)でこれだけの影響があるなんて、今更ながら思い知らされたのです。 そして、説明書には、”本製品は海外製品の安全仕様に合わせるため”との記述にあるが、本当だろうか? 海外ではパルス式ユニットを使っていないのだろうか? 日本だけなの?などの疑問が沸き上がります。
  それなら日本仕様と海外仕様と分けて発売して欲しいよね。ユーザーにハンダ工作を強要させる会社としての姿勢が許せない。 また、KATOではPWM方式のパワーパックを発売しているようですが、この製品には対応しているのかな? どんな工夫をしているのか知りたいものです。 などの疑問が次々と湧いて来たのです。

 

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 その後の調査で、マイコン式運転操作台のモータドライバの過熱現象は、KATO製の「アルプスの氷河特急」の機関車 Ge4/4V-644号に装着されていたライトユニットの、コンデンサの取付け位置が原因であることが分かりました。 右の写真に示す様に、なんとコンデンサが二つも取り付けてあったのです。

 このライトユニット(品番:3101-16)は、品番から推定すると、このモデル専用のライトユニットの様で、コンデンサ1とコンデンサ2が取付けられていました。 ユニットの配線パターンをたどると、コンデンサ1は抵抗560Ωと直列に配置されており、従来の電気機関車に装着されているライトユニットと同じ位置にあります。 このため、こちらのコンデンサは、後方ライトのチラツキ防止用と推測します。

 一方、コンデンサ2は、モータに配線される端子に直結していました。 即ちDCモータと並列に配置されたコンデンサなのです。 これは、ズーと以前のモデルの様にモータ端子に取り付けられていたコンデンサと同じ働き、即ちモータのノイズ対策では無いかと思います。 すると、海外製品の安全仕様に合わせるためとの説明に合致するのです。 そして、このコンデンサを撤去すれば、今までの電気機関車と同等の状態になるのです。

 コンデンサ2は560Ωの抵抗に関係なく電源と直接接続されているので、蓄電と放電は電源とダイレクトに実施しています。 このため、パルス制御のON/OFFに応じて過大な電流が流れていたのではないかと考えています。

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 そして、次なる疑問である、数年前に発売されたKATOのPWM方式のパワーパック「スタンダードSX」は、この製品には対応しているのかな? どんな工夫をしているのか知りたくなったのです。 それには、この製品を入手する必要がありました。

 

■ KATOのパワーパック スタンダードSXを購入する

 このような何故、何故の好奇心に駆られて、遂に手を出してしまいました。 そこで、販売店に行ったのですが田舎の店では売っていませんでした。 しかし、下左の写真のようなスタータセットが眼にとまりました。 前から欲しいなと思っていたキハ58系の気動車もセットになっていましたので、ゲットすること事にしました。

 そして、このパワーパックを使ってテストすることにしました。 実は、その前に、下の写真に示す様にPWM制御方式のパワーパックと動力車の組合せによって、電圧と電流の波形はどうなるかと調べていたのです。 この調査の一環としてスタンダードSXも加えることにしたのです。

 しかし、狭い机の上では走行に限界がありましたので、今までの卓上レイアウトを撤去して、下の写真のような実験場をセットしました。 本来は、これらの調査を順序だてて報告すべきですが、実験を始めてアーと驚いたので、あわてて報告することにしたのです。

    スタンダードSXは特殊な制御を実施している?

 

 実験は、スタンダードSXを使って、床に設置したレールに給電します。 給電途中には、電圧と電流を検知する簡単な基板を作り、そこからオシロへの信号を取り出します。 電流は0.2Ωのシャント抵抗の電圧降下量を測定します。

 

■ 波形を観察する

 まず、キハ58の3両編成を走らせて電圧と電流の波形を観察しました。 PWM波形としては矩形波とは程遠い崩れた波形でしたが、先人の方々の報告にて或る程度は予想していました。 キャリヤ周波数も100KHz もありました。 黄色のCH1が電圧で、青色のCH2が電流(シャント抵抗の電圧降下量)を示します。

   

 しかし、波形が安定せずオシロの設定をいろいろいじって見ましたが安定しません。 キャリヤ周波数の値もフラフラしていますし、デューティ比の値もコロコロ変化します。 これって本当にまともなPWM制御を実施しているか? 変だなと疑いの目で見ながらもが、動力車を測定実績のあるEF210-114号機に替えて実験しました。

   

 状況は同じでしたが、いろいろいじっているうちに上左の画面に気が付きました。 見ていて変だとは思いませんか? 何で右半分と左半分の電圧の高さが違うのか? 素人には不思議でたまりませんでした。 電流ならまだしも電圧ですからなおさらです。 PWM制御の電圧は一定のはずです。 試しに、時間軸を荒くしてみました。 ひと目盛 5μ秒から 2.5m 秒に替えたのが右上の画面です。 時間軸を500倍にしたのです。 アーと思いましたね!

     皆さんはこの波形をどう解釈しますか?

 4目盛ごとに同じ波形が表れている! 即ち、1÷(2.5×4)×1000 = 100 Hz の繰返し波形となっているのです。 さらに、この波形は綺麗に50対50の割合でON/OFFしています。 電源周波数ではと思ったのですが、我家は中部電力地区なので違うことは明らかです。 ではどうなっているのだろうか。

 素人考えでは、100 Hz 制御の中に100 KHz 制御を潜り込ませた合成波での制御を実施しているのではないかと考えますが・・・・・。 100 Hz 制御はLEDのチラツキ防止で、100 KHz はモータのノイズ対策? いや逆かな? よくわかりません。

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 さらに、独学で学んだオシロ操作ですので、あちこちさわっていると、AC結合とDC結合の設定の違いによって下記のような波形が異なってきました。 フィルタについても設定してみましたがよくわかりません。

   

 よくわかりませんが、交流分の処理の仕方の違いと思います。 また、右の状態でパワーパックのダイヤルを上げて行くと、100 Hz 波形の50対50の割合は変化せず、100 KHz の波形が変化して行きます。

   

 すると、デューティ比が変化するものの、周波数も変化しているようです。 上左の状態で少しダイヤルを上げると右の画面のように、ひとつの山が消えてしまうのです。 波の形も変わっていくので、もうPWM制御とは言い難く、小生にはお手上げの領域です。 電圧が7ボルト程度しかないのも解せません。 ちなみにその様子を動画として紹介しましょう。

 

 どうですか? オシロ画面のデューティ比データを読み取って、車速との関係を調べようとした目論みも見事に打ち砕かれてしまいました。 いろいろな狙いがあっての設計と思いますが、我が知識では手も足も出ません。 ここら辺で諦めることにしましょう

 

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 2021/6/8 作成