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鉄道模型 動力車の調査   KATO製 C12-42号機の動力特性

■ いきさつ

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 動力特性の調査として、KATO製 C12-42号機についても測定を実施した。 先回報告したロッド類の分解組付け方法を実践してみたが、ノントラブルで再組付けが出来る事を確認することが出来た。

 また、先回報告したように、ロッド付の動輪系の回転摩擦が容易に測定できる事に気が付いたので、そのテストを新たに実施した。 しすて、動力特性の測定もトラブル無くスムースに実施することが出来た。

 

■ KATO製 C12-42号機の分解

 この C12-42号機は、マイコレクション > 蒸気機関車リスト > C12-42 号機 (2015/12/10)にて報告しているものの、まだ分解していない車両であったので、始めてバラスことにした。 

 キャビンやボイラーを分解した後、先回説明したように、加減リンクとメインロッドを外し、動輪をごっそりと取り外した状態を下に示す。

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 この状態で、部品の配置具合を記録しておこう。 スライドーバーやモーションプレートを取り外さなくてもよくなったので、再組付け時が楽になるであろう。

 そして、モータのリード線が接続されているプレートを小さなマイナスドライバーを使って浮かし、ピンセットを使って慎重に取り外した。 リード線は細い線を使用しているので細心の注意が必要なのだ!

 リード線を外すと、二つ割になっているフレームの隙間にマイナスドライバーを差し込んで、こじりながら隙間を広げていき、二つに割るとギヤ類が見えてくる。

 ここで、ギヤ類の部品を取り出し、ノギスを使って寸法をチェック、また、歯車の歯数などを数えた。

 ウォームは外径が Φ5.3mm でモジュールが m = 0.3 の2条左ねじであった。 ウォームと噛合うホイールは、歯数が Z = 23 である。 そしてこのホイールには、歯数 Z = 11、m = 0.25 の小歯車との2段歯車を構成している。 また、この小歯車は、Z = 25、Z = 34 のアイドラギヤを介して、Z = 29 の動輪ギヤに伝達している。 従って動輪を1回転させるには、ウォーム軸を23*29/11/2 = 30.32 回まわす必要があるので、減速ギヤ比 i = 30.32 となる。 動輪の直径はφ9.1mm であった。 これらの構成と諸元は C56 と同じであった。

 分解したフレームの表と裏の状態を下に示す。

 また、動輪の状態を下に示す。 トラクションタイヤは問題なさそうであったのでそのまま使用した。 また、先台車と従台車を下右に示す。 集電のために配線が工夫されいるが分かる。 KATOの50周年記念誌によると、このC12モデルのために開発されたポイントなる技術とのことである。

 また、梨地状の車輪をみて、冷間鍛造品の車輪かな? 低コスト化? 精度は大丈夫か? と疑問に思っていたのであるが、テカリ防止のために、切削にて形を作り、メッキ処理後にブラスト(サンドブラストかな?)処理を実施したとのことである。 手を抜いていませんね・・・・・・・!

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 タンク式機関車はキャビンやコールバンカ等、モータを収めるスペースは充分にあるのだが、このC12モデルがあえてコアレスモータを共通使用して他モデルと同様な性能を確保しつつ、キャビン内の空間を確保している。 窓から覗き込む楽しみを提供されているんだ。

 そのかわり、不足重量は左右の水タンクを活用している。 右の写真。 中に重りを仕掛けているが、左右合せて 3.9 グラムを稼いでいる。 

 

■ 空転回転特性の測定

 動力伝達部分を分解したので、先回と同様に、モータのみ、ウォーム軸付、ギヤ付と部品を組み付けて行き、ロッド付の状態までの空転特性をそれぞれ測定した。 ロッド類の組付けは手順どうりに実施したが、今までの苦労が嘘のようにスムースに実行することが出来た。

 測定結果のグラフを下に示す。 ウォーム軸を組付けた状態では摩擦抵抗が大きくなっているが、その後はギヤやロッドを組付けても余り抵抗にはなっていないようだ。 また、極低速では抵抗が増えていくと言う珍しい現象に出くわしたが、その現象が理解できていないのだ。 スプーンのように曲がっているのは何故? これを数式にモデル化するのは大変なので、極低速は無視して直線近似するしか無いようだ。

 

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■ 動輪系の回転摩擦の測定

 先回報告したように、ロッド付の動輪系の回転摩擦が容易に測定できる事に気が付いたので、そのテストを実施した。

 方法は、右の写真に示す様に、滑車で吊るした重りによって、車両の走行抵抗を測ろうとするものである。 この測定は、ウォーム部分に小さな詰めもを噛ませてウォームとホイールの噛合いを外し、車体を自由に走らせる事が出来るように細工して車体を自由に走らせる状態にしている。 しかし、モータを切り離しての測定であるため、ごく低速での摩擦しか測れないが、幸いに摩擦抵抗は、速度にほとんど依存していないという事を、多くのデータが示しているので、これで良しとすることにする。

 滑車や籠は、以前どこかで使用したものを活用した。 重りは、重さ 1.0 グラムの一円玉と、 水草の重りで作った0.2 〜 0.5 グラムの手製の重り玉を使用した。 絹糸で車両のカプラー部分と結び、籠に重りを乗せて走り具合を見ていくのである。

 静止している車両の後ろを指でチョンと押し、そのまま走り続けるのか、あるいは止まってしまうのかで判断する。 ロッドの位置によっても異なって来るであろうかとその位置を変えて何度かテストする。

 籠に載せたおもりを増やして行き、その限界をチェックした。 おもりの重さは籠ごと秤に載せて確認している。

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 簡単な測定と思っていたのであるが、車両の調子が微妙であり、データは意外とバラついてしまった。 軽くスルスルと動くかと思ったら、急に重くなってしまった事も何度かあったが、最終的には、2.4〜2.5グラムではないかと結論付けた。

 この値は、下に示す牽引力測定での遷移点データと、はぼ合致している事が分かる。

 

■ 速度特性の測定

 動力車の車体にモータ電圧を取り出す検出端子や、光ゲート用遮蔽板を取り付けて、さらに重量調整用の重りを付加した。 右の写真。 そして、リード線の支持部兼用の重り車両を連結して測定を実施した。 下に、連結した状態を示す。

 速度特性の測定結果を下に示す。

 電流値はバラツキはあるものの、安定した小さな値を示しています。  また、電圧降下量が 0.2volt 以下と非常に小さく、新しい集電構造の効果はあったようです。

 

■ 牽引力特性の測定

 速度特性に続いて測定台を傾けながら、牽引力特性を測定した。 データを下に示す。 遷移点は明確に表示されており、正常な状態で測定されていると判断できる。

   

 電圧降下は、速度特性の測定時よりも増加しているが、安定した状態を確保している。 また、スリップ率のグラフなどから判断して、動輪のスリップ限界はおよそ 10 グラム程度と判断する。

 また、駆動側のスリップ率が二手に分かれる状態が発生していますが、何でしょうかね?

 

■ 負荷時の速度特性

 負荷が掛かった状態では、速度によって電流値がどのように変化するのかを測定した。 測定台の勾配を一定にし、供給電圧を変化させ測定したデータを右のグラフに示す。 勾配は一定であるが、上り坂と下り坂があるので駆動側と制動側に分けてデータを整理している。 駆動側では負荷無し( ただし、重り車両の走行抵抗分 0.8 グラムが負荷として掛かっている。) の状態からほとんど平行移動している様子であるので、各特性は直線的でり、平行移動と言えるようだ。

 

■ まとめ

 今回の測定結果と、2015年12月に実施したデータと比較すると、色々な相違点が見受けられる。

  1. 速度特性での電流・電圧特性において、電流値が半分近くに減少している。
  2. 遷移点以下の制動状態において、電流の増加傾向が異なっている、制動力が増えても電流値が増加していないのだ。

 これらの原因は何であろうか? 測定方法が異なっているがそれが原因とは考えられない。 分解組付けも今回が初めてである。 考えられるのは可動部分への注油の有無ではないかと思っているのであるが、それを証明するにはどすれば良いのだろうか。

 未分解状態の新しい状態で特性を測定後、分解せずに外からたっぷりと注油して、再測定を実施すれば良いのであるが、そのような車両は今は無いのである。 新しく購入する必要があるのだか、そのために万札を投資するのは・・・・・・・? それも一台だけとは言えないだろうし・・・・。

 

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  2018/7/5