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鉄道模型 動力車の調査   KATO製 D51-498号機の動力特性

■ いきさつ

 動力特性の調査として、以前調査したことのある車両について、新しい測定方法で再測定したので報告する。 以前の調査結果は「 マイコレクション > 蒸気機関車リスト > D51 498 A」 ( 測定実施日: 2013/8/27 ) である。

 

■ D51-498号機の概要

 このD51-498号機は、2010年11月に発売され、ボイラ内にモータを納めた次世代型動力ユニットの第3弾で、コアレスモータを始めて採用したモデルである。

 分解調査については、以前の報告にて実施されているので割愛する。

  

 

■ 空転回転特性の測定

 測定は、先回と同様に、車体を分解して実施する。 測定状態を右の写真に示す。

 今回も、モータ単体での測定値の比較のためにモータだけの状態にして電圧と電流の特性を測定した。 フライホイール部を取り付けていないので、回転数の測定は実施していない。 データは「モータのみ」としてプロットしている。

 そして、フライホイールを組付けた「ウォーム軸」 (下左の写真)、 減速ギヤ類を取り付けた「ギヤ付き」、 動輪とロッド類を取り付けた「ロッド付き」 (下右の写真)の状態で測定を実施し、グラフに表示した。

 測定結果を下に示す。 

 部品を取り付けて行くに従って電流値を増加しているが、ロッド付の場合は 19,000 rpm 辺りから傾向が変化しているので、共振などの現象が発生しているようであるが、目で見ていていてもよく分からなった。

  

 

■ 速度特性の測定

 動力車の車体にモータ回転数を測定するセンサと、モータ端子電圧を取り出す接触端子を取り付けて、試験走行を始めたがトラブル続きであった。

 まず最初に脱線が多発したので先行台車を取り外した。 さらに、右の写真のようにサイドロッドは外れるトラブルも発生した。 合計3回も発生したので、動輪を外して、クランクピンの入る穴の奥に瞬間接着剤を垂らした後に組付けた。 この時、サイドロッド類がバラバラになってしまったが何とか組み付けることが出来た。 リンク類の固着が無い事は当然ながら確認した。

 次にリード線の処理にまたもや苦労させられた。 結局、モータ端子電圧を取り出す接触端子はテンダー車の金属部分に接触させ、リード線を重みのある重り車両に貼り付けて取り出すようにした。 リード線が多少引っ張られても車両が脱線しないようにしたのである。 直線部での走行にはリード線が緩んで影響ない様子であった。 苦労の後を下の写真に示す。

 これらの作業にほぼ半日を費やしてしまい、やっとのことで測定に入る事が出来た。 単機平坦路走行とは言っても、重り車両の 1.0グラムの走行抵抗が掛かっている状態でのデータとなっている。

 電流値が2本の平行線になっているのが解せないのだ。 回転数には影響していないので、測定上の問題なのだろうか? 不思議である?

 また、スリップ率のデータのゼロ点が少し上にずれていたので、ノギスで測定したΦ9.2mm をΦ9.1mm に変更してデータを整理している。

 

■ 牽引力特性の測定

 速度特性に続いて測定台を傾けながら牽引力特性を測定した。 データを下に示す。

 測定を開始して間もなく、下り坂での走行がギクシャクしていた。 電圧が 4.5Volt のグラフにその様子がしるされている。 制動側の電流データが飛び出しており、かつ速度が少しおそくなっているのだ。 そのまま暫く走行を続けるとその現象は解消されたが、データ的にも正常と思われる値を示す様になった。 このギクシャク現象は、ウォームギヤ部の突っかかりと判断しているのだ。 当たりがついたのか、ゴミが取れたのかは分からないが、その後はスムースに走行するようになった。

   

 電流値と牽引力との関係は、制動領域でのパターンがC59などと異なっている。 これは、1条ウォームによるねじれ角と関係しているのではないかと睨んでいるのだ。 詳しくは新解析法による解析結果に期待しよう。

 電圧降下の傾向は、その要因が見当たらずある一定値でばらついていると判断することにしよう。

 

■ 負荷時の速度特性

 負荷が掛かった状態では、速度によって電流値どのように変化するのかを測定した。 測定台の勾配を一定にした状

かく態で供給電圧を変化させた状態を右のグラフに示す。

 勾配は一定であるが、上り坂と下り坂があるので駆動側と制動側に分けてデータを整理している。 駆動側では負荷無しの状態からほとんど平行移動している様子であるが、制動側では力の掛かり具合が変化しているので、直線的ではあるが平行移動とは言えないようだ。

 

■ あとがき

 蒸気機関車モデルは、大きな動輪の上にそのスパンや短く、重心位置もたかくなっていいる。 このため、車体のローリング、ピッチング、あるいはローリングに対する抵抗力が、電気機関車や電車よりも小さくなっているのだ。 従って、リード線を使った測定では、脱線や横転が頻発するようになってしまった。 それでも、この方法が一番信頼性があると考えているので、より小さな蒸気機関車でも測定できるように、改善、改善・・・・・・をモットーに頑張っていこう!

 また、以前測定したデータと測定値が少しずつ異なっている部分が散見される。 測定上の問題なのか、再組付け時の問題なのか、あるいはオイル点滴による効果なのか原因は未解析のままである。 宿題です!

 

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  2018/6/14