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鉄道模型 動力車の調査   特性グラフの比較(1) コアレスモータを搭載したKATO製蒸気機関車

■ いきさつ

 コアレスモータを搭載したKATO製蒸気機関車の動力特性の調査として、幾つかのモデルを測定した。 これらの測定結果をグラフにて一覧表で表して横並びで比較することによって、測定方法上の問題や、データの整理方法の統一を検討すると共に、解析を進める上でのモデル間の特徴を事前に把握する指針にすることとした。

 

■ グラフ整理の方法

 今まで測定した コアレスモータを搭載したKATO製蒸気機関車の個別データから、各グラフをコピーし、一覧表示する Excel 上にペーストして表示させる。 この時、横並びで比較できるように、グラフ表示のスケールを統一させている。

 また、摩擦係数については、今まで不用意に車両全重量を使用して計算しグラフ表示していたが、やはりデータとして信用できないので、各モデル毎に動輪荷重を測定し直して再計算し、グラフ化している。 さらに、個別ページのグラフもこれに従って修正した。

 この動輪荷重の測定は意外と面倒であるが、次の様な簡便な方法で測定した。 まず、秤の上面と同じ高さになるような台を探してきて秤の傍に置く。 そしてモデルの先台車だけを秤の上に掛ける。 従台車の場合も同様にする。 下の写真に示す。

 この時の荷重を読み取り、エンジン部の重さからこれらの荷重を引き算した値が、動輪に掛かる荷重として計算する。 この方法では、車輪のフランジ部分が台や秤に接触するため、本当は正確ではないが、動輪と他の台車の車輪のフランジ高さは同じと断定しての測定である。 本来ならレール面での荷重を測定する必要があるのだ。 また、先台車に掛かるバネ力や、台車の重量の車輪とフレームへの分担具合などを計算する必要がない点がこの方法の利点なのだ。

 即ち、車体の重さのうち、先台車と従台車から逃げる荷重を差し引いた残りの値が動輪に掛かるものとしているのである。 しかし、どの動輪にどれだけ掛かるのかはこの方法では分からにのだ。

 

■ 牽引力特性の比較

 各モデルの牽引力/車速、および牽引力/電流のグラウを下に示す。 ⇒ 拡大グラフ

 縮小した上の表は見にくい場合は、拡大図をご覧ください。 まず、牽引力と車速のグラウからは、大型機ではほぼ20グラムの牽引力まで発揮していることが分かるが、中型のC11では15グラム程度であることが分かる。 さらに C62 はおなじ電圧でも車速が速い事も明白である。 本来ならこのグラフよりスリップ限界( 即ち、最大牽引力 )を知りたいところであるが、その値はスリップ率のグラフから推定できるので、ここではその測定を実施していません。 スリップ状態でのモデルへのダメージを回避するためです。

 このグラフが示す重要な情報は、負荷が掛かった時の速度の落ち込み具合や、下り坂での増速具合なのです。 例えば、D51モデルは速度は遅いものの、上り坂になってもその速度低下が少なく、粘強く登っていくであろうと推定できるパターンを示しているのです。 即ち、垂直に近い立っているパターンだからです。 負荷による速度の変化具合を観察するのがこのグラフの主目的です。

 次に、下の欄のグラフは、同じ牽引力を発揮するのに必要な電流値を示しています。 (グラウの縦軸と横軸の関係では、その逆なのですが・・・・、即ち、このグラフの本来の意味は、ある電流値でどれだけのトルクが出ているかを示すグラフなのです。)

 モータの電流値はモータのトルクと比例していますので、見方を変えると、このグラフはどれだけのモータトルクが必要だったのかを示していることになります。 すると、動力伝達機構の効率を推察するデータになるのです。

 さらに、牽引力がマイナスであるグラフの下半分は、即ち制動状態にある時の挙動を教えてくれる貴重な情報なのです。 ゼロ点より少し下がった部分でグラフは折れ曲がっていますが、そのポイントを遷移点と呼ぶことにしましょう。 ここでは、ウォームギヤの噛合い状態が変化している重要なポイントなのです。 そして、この点より下に下がる方向も重要な情報です。

 左側の二つのモデル、D51 と C62 は右下の方向に伸びていますが、他のもアデルは下の方に伸びています。 これは、諸元欄に示したように、1条ネジと2条ネジの違いに起因しているのです。 いや、ねじれ角と言うのが正確です。 右下に伸びていくのは制動時でもモータの駆動トルクが必要な事を示しています。

 実際の電車ではどうでしょうか? 降り坂では電磁ブレーキとか、再生ブレーキとかを作用させて、モータを発電機と使用してブレーキをかけています。 この時にモータに流れる電流は逆方向、即ちマイナス方向になるのです。 しかし、鉄道模型では、その逆の事をしているのです。 モータから駆動しないとブレーキが掛かって動かないのです。 これは、逆効率ゼロのウォームギヤか作用して止めているからです。

 右側の4個のモデルは、ギヤ比や動輪径がほぼ同じなので、駆動側の勾配は同じ程度になる筈ですが、C57-33号機だけが勾配が小さいのです・・・・・・・。 なぜ? 測定ミスなのか、計算ミスなのか、あるいは伝達機構の効率が悪いのか? (電流を食いすぎている?)、個別に解析する必要がありますね。 C57-33号機要注意!

 

■ 電流特性

 先に求めたKATO製コアレスモータの計算モデルより、電流値からモータトルクを計算することが出来ます。 そこで、その電流値について注目してみましょう。 この電流値関係のグラフを下のようにまとめてみました。  ⇒  拡大グラフ

 使用したグラフは、単機走行時の電流/電圧のグラフ、空転特性での電流/電圧のグラフ、および、負荷時の速度特性のグラフです。 車速、あるいはモータ回転数によってどれだけのモータ電流、即ちモータトルク側必要とされたのかデータが、グラフとして示されています。 これはとりもなおさず回転摩擦抵抗のグラフなのです。

 単機走行時のグラフは牽引力がゼロの状態で ( 途中から重り車両を使用したので、その抵抗が僅かですが掛かっています。),の摩擦抵抗を示しています。 この情報に追加して、空転回転時の情報を追加測定するようにし、そのデータを中央段のグラウに示す。 空転回転時の情報を追加測定するようにした理由は「C59号機のデータを使っての解析検討」などの一連の報告を参照ください。 また最下段の負荷時の速度特性のグラフも同様です。

 まず、中段のグラフを見てください。 モータ単品時のデータは今までの「モータ特性を測定してみよう」シリーズで実施してきたデータを流用し絵います。 未測定の個体は、たのデータを借用しています。 そして、フレームに組み込まれたモータだけの状態でも、電流/電圧特性を測定していますので、これを重ねて表示しています。 その結果は、殆ど合致していますので、同一データと扱うことが出来ます。

 このグラフ上に、フライホイール付きウォーム軸を取り付けて測定したデータを重ねました。 この時、電流はわずかしか増加しなったモデルもあれば、跳ね上がってしまったモデルも有ります。 構造的には大差ないようですがので、支持方法や部品寸法、あるいはガタ、組み付け方法の微妙な違いが影響しているものと推察する。  特に、C57-195号機は飛抜けて跳ね上がっていますので、大きな抵抗があったものと推察できます。 「KATO製 C57 4次形 C57-195号機の動力特性」にて軸が踊っている様子をビデオでも紹介したモデルです。 やはりたとは違った不具合品(?)の様子がデータとしてもはっきりと示されていますね。

 このウォーム軸状態のデータは、ウォームギヤの解析に使用する大切なデータですが、モデル毎の違いを把握しておく必要があります。

 次に、ウォームホイールなどのギヤを取り付けた状態や動輪とリンク類を組む付けた状態のデータを上乗せしました。 このデータからロッド類の抵抗具合も推察できますが、あまり抵抗は無いようですね。

 次に、上段に示した単機走行時のデータを、ここにも重複させてプロットしました。 空転時は動輪を浮かせた状態ですが、単機走行時は動輪に掛かるj荷重が軸受け部にも掛かり、摩擦抵抗が増えるはずです。 軸受けの良し悪しが判別できます。 また、測定法の問題かもしれませんが、データのバラツキも多くなっていますね。

 最下段の負荷時の速度特性のグラフは、近似曲線の性質を比較しようとしています。 1次直線での近似なのか2次曲線での近似なのか、また、その勾配は平行移動なのかどうかも重要です。 不具合品(?)のC57-195号機のデータが参考にならないとすると、サボってしまったC59-123号機のデータば欲しくなります。 また、プロット点の表示色や順番も不統一なので、再整備が必要です。

 

■速度特性

 速度とスリップ率、および摩擦係数に関するグラフをまとめてみました。 ⇒ 拡大グラフ

 上段は、単機走行時の車速のデータです。 供給電圧による車速の関係を示したもので、同じモータを使用していてもギヤ比や動輪の直径によってその勾配は異なってきます。 C62 は他のモデルよりおなじ電圧でも車速が速い事は、この勾配が大きいからなのです。

 中段のスリップ率のデータは、動輪が滑り始める様子を表しています。 ある限界値に近づくと急激にスリップを始める事がわかりますが、トラクションタイヤの位置など同じような構成なので、だいたい同じパターンと言えるでしょう。 この限界値は動輪荷重に比例している考えていますし、駆動側と制動側ではパターンが違っているのも明らかです。

 下段の動輪摩擦係数のグラフは、Cタイプの機関車では同じパターンで値も同じと言えるでしょう。 Dタイプの動輪配置では少し大きくなっているものと考えれます。

 

 ■電圧降下

 最後に、電圧降下に関するグラフをまとめてみました。  ⇒  拡大グラフ

 苦労してデータを整理する割には得るものが少なく、いつもガッカリしているグラウなのです。 ただ、C11-174号機のデータには拍手を送りました。 この電圧降下の現象に対して、今だにその要因を掴み切れていません。 よくもこれだけランダムに発生するものだと感心しているのです。 この様な中で、品番が 2021 のC11モデルは素晴らしいですね。 先台車と従台車から積極的に集電させる構造が効いているものと思います。

 

■今後の進め方

 一度、個別のモデルに対して、C59-123号機で実施したような解析を進めようと思っていたのですが、電流特性の傾向がしっかりと分かっていないのが気がかりです。 そのため、未だ残っているコアレスモータを搭載した C56 形、 C50 形、 C12 形モデルの測定を先に実施しておこうと考えています。

 

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  2018/6/22