モハ E233-3403 号車

  .

● この車両はTOMIXの車載カメラシステムセット(E233 3000系 品番:5594 )の動力車である。 我がリストでは、編成名を JR東日本 E233-3000系電車 としている。

● 主要諸元はまだ未測定である。

連結面間距離
 
車体全重量
72.2 グラム
ギャ比
 
台車中心間距離
 
台車軸距離
14.0mm
動輪直径
 

● この動力ユニットは、車載カメラシステム専用にユニットであり、説明書には「車両の動き出しを遅くし、カメラシステムと常点灯システムの親和性をより高めています。」との記載があります。 そこで、その回路の調査と速度特性の測定を実施して、その内容を確認しました。

 

分解調査

  .

● まず、車体を取り外します。 床面には、注目のすべき「へそ」が出ています。 これは何でしょうか? 車載カメラシステム専用ユニットの特徴です。

● もう少し分解しました。 基盤の部分に細工がされているようです。

● 動力機構部も見ておきましょう。

● 部品を大まかに分解した状態を示す。

● ダイカスト一体のシャシーとプラスチックの表側と裏側を示す。

● モータは問題のM9タイプなのでしょうか? 自分には分かりません。

● ウォーム軸とそのフォルダです。 ウォーム軸のスラストはしっかりと保持されています。 また、ウォームの歯形は薄く特殊な形状をしています。 強度や特性を考えたのでしょうか。

● 台車は見慣れた形ですが、集電シューはピポット軸受けではありません。 動力車なので多少回転抵抗が大きくても問題無いと判断しているようです。 ちなみに、同じ編成内のトレラー車はピポット軸受けでした。

● 床下のカバーです。 シャシーと別体にする理由はなんでしょうか? この分重量が少なるなるのですが、側面の形状を実車に合わせるためなんでしょうね。

● さて、問題の基盤を観察してみましょう。

   .

 表面実装されている二つの部品はの表記は、63 HD01 と FM と記されていた。 黒くて四角い部品はブリッジダイオードと判断できるが、緑色のFM部品はネットを探っても不明であった。

 基盤の回路をたどると、右のような回路になった。 ブリッジダイオードの出力側に当たる+−極を連結させている特殊な使い方である。 これは、二つのダイオードを直列に配置した回路となるので、どちら方向にも電流を流せるが、その立上り電圧が2倍になる構成である。

 そこで、テスターのダイオードチェック機能を使って測定してみると、1.12 volt であった。 即ち、モータに掛ける電圧に対して、これだけの電圧の下駄を履かせているのだ。 従ってその分だけモータの起動が遅れるのである。

 FMという部品については、テスターで抵抗を測ってみると、両方共に、0.6 volt であったので、抵抗とかダイオードでは無さそうである。 さるサイトでは過電流防止のポリスイッチの類らしいとのことであった。 また、基盤には用途不明の形状部分があり、何かの製品と共用するのかどうか分かりません。

 

動力特性

  .

 新しい動力特性測定装置と処理ソフトを使用して動力特性を測定しました。 測定装置などについては「動力特性の新自動測定システムを使う」(2022/6/16)を参照ください。

  *************************************

● 測定条件

 

測定時の状態を下に示す。 速度特性はビームカッタ車(重量 11.4 グラム)を連結させています。 下左の写真。 また牽引力特性はおもり車(重量 65.3グラム)追加して連結させています。  下右の写真。

 なお、同じ構造のTOMIX 動力車、名鉄 1051号車のデータを上記のサイトに記載していますので、同時に開いてデータを比較すると、メーカーが説明している「「車両の動き出しを遅くしている」内容が理解できると思います。

 

1)速度特性:

 動力車の速度特性として、速度・電圧特性と電流・電圧特性を下に示す。

 車速・電圧特性について、名鉄1051号車グラフ (グラフのタイトルがmei-1200となっていますが・・・・・ミスです) のデータと比較すると、グラフの勾配は同じですが1ボルトほど右にズレているのが分かります。 これは、ダイオードブリッジの特殊な使い方によって、下駄を履かせた状態になっているのです。 こうすると、電車が走り出すまでの電圧を高くすることができます。 電車を発車させるためにパワーユニットのダイアルを少しずつ上げていくとき、まず前照灯などが点灯する常点灯システムが確実にさどうしたあとで、電車を動き出すようにした細工なのです。

 電流値については、慣らし運転が充分なE233車の方が安定していますが、テープ式室内灯を装着している名鉄1051号車が少し高めに出ています。

 

2)牽引力特性

 スケール速度が100Km/h 前後になるような電圧値を設定して牽引力を測定しました。

 スリップ領域での牽引力は、重り車両の重さ不足で限界まで測定できていませんが、20グラム以上はあるようです。 また、制動領域での偏移点は約10グラム近辺で、ウォームギヤの?み合い状態が変化していると判断します。 この値はKATO製よりも大きいですが、動輪側の摩擦抵抗が大きいと思われ、車輪からの集電機構の違いと思われます。

 

 

3)考察

 ブリッジダイオードを使って電圧の立上りを強制的のズレし、車両の動き出しを遅くし、カメラシステムと常点灯システムの親和性をより高めていますとのうたい文句を実施させていますが、このために、他の動力ユニットとの重連運転が犠牲となります。

  *******************************************

 そこで、重連特性について考察してみましょう。

 上記のグラフより推定するとかなり困難ではないかと推察されます。 その様子をグラフより、右の様に推定しました。

  1. 同じ線路上で走っているので供給電圧は同じです。 このため、供給電圧が5ボルトのデータを同じグラフ上にプロットします。
  2. 重連中の速度は、両車両共に速度はピッタリと同じですので、この時の両車両の力を求めます。
  3. 2両だけで重連中は、他の車両をけん引していないので、合計した力はゼロのはずです。 
  4. 合計した力はゼロですが、右のグラフの示すように名鉄車両は13グラムの牽引状態で、E233車両は13グラムの制動状態です。
  5. 即ち両車両は、13グラムで引っ張りやっこしているのです。 いや、速度の遅いE233車が前の場合は、後ろから押されている状態です。 13グラムという大きな力で!
  6. 速度を変えて、両車両の力を合計した点を赤丸で示しています。 すると、外部の力、即ちけん引する車両の抵抗によて、二つの車両が力を合わせたり、邪魔したりする状態などに変化していきます。
  7. しかし、個々の車両には、動輪が滑ってしまうといる限界があり、多くの場合はどちらかの車両に、動輪の滑りが発生してしまいます。 こうなるとギクシャク運転となってしまい、ポイント等では脱線の恐れが生じるのです。
  8. グラフの傾きから推察して、牽引力が15グラム以上のになると動輪がどんどん滑り始めているものと推察します。

 結論として、メーカーの注意書きのとおり、重連させる場合には同じ動力ユニットを使う必要がありますね。