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中型蒸気機関車:   9600形蒸気機関車 デフ付 69659

 

実車プロフィール

 9600形「キューロク」は、大正2年から大正15年の間に770両が製造された国産初の量産蒸気機関車で、大正うまれの国産標準貨物機である。
 古い機関車ながら使い勝手の良さから、支線貨物や入換用として活躍する。 しかし、太いボイラーのため、重心が高くなり、短足の肥満児のごとくスタイル的にはスマートと言い難いが、小さな動輪と相まってどっしりとした重量感をかもし出している。
  69659号機は、1922年製造、新津、南延岡、直方で活躍後1967年に廃車されている。

模型プロフィール

メーカー : KATO
品番: 2015
車両番号: 69659
発売日 : 2002年10月
入手日 : 2007年1月13日 新品購入
定価 : \8,925.-

分解調査

 

● 長年、Nゲージの蒸気機関車を製造発売してきたKATOが、怒涛のごとく車種展開を実施しているマイクロエースを横目に、次世代のNゲージ蒸気機関車への躍進となる第1歩を踏み出した機種ではないかと思っている。 それは、ボイラー内にモータを収め、フライホイールも搭載した新しい設計思想の動力ユニットを打ち出したからである。

● この96型を “ホップ” とするならば、C62東海型を “ステップ” であり、そしてコアレスモータを搭載した D51-498 を “ジャンプ” と見る事が出来る。 そして、コアレスモータ搭載モデルは、C62型やC56型へと受け継がれ、Nゲージ蒸気機関車の新しい時代を切り開いていくモデルとなったと考えていますが、皆さんはどう思っていますか?
● ボイラー内にモータを収めたためキャブ内の空間が確保され、バックプレートも再現されている。
● ヘッドライト点灯(先頭部、テンダー部、前後進切換式)
● アーノルドカプラーからカトーカプラーNに交換する。 現在はKDカプラーに交換している。
● 140mmの曲線ミニレールを走行可能。  ミニレイアウトを走行出来る数少ないSLの一つとして重宝してきた。

● 鉄道模型を始めた間もない頃の2007年に購入する。 同梱されていた取扱い説明書の印刷年は2002年と記されていたため、初回生産品のグループと思われる。 それにしても5年間も売れ残っていたのかな?

● 主要諸元を下記にしめす。

連結面間距離
119.5 mm
先輪車軸荷重 0.5 gf 動輪車軸荷重 46.3 gf ギャ比 i = 26.09
車体全重量 65.1gf 従輪車軸荷重 --- テンダー車軸荷重 18.3 gf 動輪直径 D = φ8.4 mm

● 従来構造の車両とは異なると言うことなので、分解にあたっては、「Nゲージ蒸気機関車」さんの説明を参考にさせて頂き、無事動力ユニットまで分解出来ました。 それにしても、今までの蒸機とは大違いですね。

● 注目の動力ユニットを下に示す。 96型はボイラーが大きいので、やや小さめのモータを入れる事が出来たようです。 コンパクトに収まっている動力ユニットですが、フライホィールも付いています。 分解のために、ネジ位置を確認しようとしましたが、ネジが見当たりません。 ウソー・・・・・・・・!

● 取りあえず、動輪押さえから分解することにしました。 トラクションタイヤは第3動輪に、ギヤや第2動輪と第3動輪に付いています。

● 後は勢いに任せて、一気に分解して行きました。 それにしても部品点数が多くなっていますね。 無事に再組付けできるか、心配になるぐらいです。

● 左右のフレームは、左側のフレームにある2ヶ所のピンが、右側に設けられた穴にはめ込む形で固定されていました。 ネジ止めはされていません。 穴には絶縁も兼ねて樹脂製のブッシュがはめ込まれており、かなり固い勘合でした。 分解する時は隙間にマイナスドライバを差し込んで少しずつコジリながら開いていきました。

● 今まで分解してきたSLの多くは、右側のフレームにギヤを組付ける構造でしたが、この車両は反対の左側のフレームに付いていました。 従って下の写真は、右側が前方になります。

● 伝達ギヤは二つだけで、一つはウォームと噛合うホィールで、もう一つはアイドラギヤでした。 しかし、ホィールとアイドラギヤは噛み合っていません。 動輪のギヤを介して噛合うには位置がおかしいと思って良く見ると、ホィールの裏側に2段ギヤが隠れていました。 右の写真は、仮にウォームを置いてみたものです。 この様に噛み合っていました。

● 下の写真は、左側のフレーム単品の裏側と表側です。 刻印は、2014L です。

● 下の写真は、右側のフレーム単品の裏側と表側です。 刻印は、2014R です。

● 次にウォームとモータを示す。 ウォームは両端を軸受で軸支し、ウォーム軸にはφ9×7mm のフラーホイールが圧入されていました。 モータは、φ12×10×15mm のカンモータでした。 モータは樹脂製のホルダでガッチリと固定されており、通電用の配線も燐青銅板で構成されていました。 反対側面には、ロッド番号か製造時期を示す印字がされていました。 珍しいですね。 そう云えばBトレ用動力のモータも印字されていましたね。 軸にはジョイントが圧入されていました。

● 下の左の写真は、フライホィールの端部です。 フライホィールの内側にはφ5.0mm の深い穴があいており、さらに十字の溝が彫られていました。 難しい加工ですが既に取得済みの技術のようです。 中央の写真は二つのギャですが、白いマークは歯数を数える時に付けたマーキングです。 ホィールギャが2段ギャになっているのが良く解ると思います。

● 右の写真は、はてなんでしょう? アイドラギャが浮かない様にしているスペーサなのです。 裏表もあり、誤組付け防止のための細工もしてあったのには驚きです。 写真では説明できませんので、ご自分の現物でご確認下さい。

● ロッド類を下に示します。 シリンダブロックが左右分離しているため、ロッドセットと一緒に組んでおく事が出来ます。 分解組付けが楽になった気がします。 第1動輪と第4動輪は、ガタの少ないクランクピンでサイドロッドと連結されていますが、第3動輪とは、ガタガタの穴で連結されています。 第2動輪にはクランクピンがありません。

● 今までの観察結果をまとめて、動力伝達機構を左のイラストにまとめてみました。図の左側が前方です。 フレームについては、ウォームギヤを裏表逆にして組付け、その写真を左右反転させています。 このため、2014Lの刻印が逆になっています。

● ウォームギヤは、第1動輪と第2動輪の間に設けられているため、モータを前方に持ってくる事が出来ています。 アイドラギャは、第2動輪のギャを介して伝達され、そのトルクを第3動輪に伝えています。 第3動輪はトラクションタイヤを履いているため、ここで主に牽引力を発揮しますが、ルーズなピンで連結されたサイドロッドも連動させています。 これによって、第1動輪と第4動輪が駆動されているのです。

● 動輪を1回転させるために必要なモータ回転数、即ち減速ギヤ比は、

     ギヤ比  i = 30×20/23 = 26.09

である。

● この様な構成は、マイクロエースの96と類似していますが、当然参考にされたと思われます。 でも技術レベルはかなり差が有るとみているのですが・・・・・如何でしょうか。

● 部品のクリーニング中にトラクションタイヤがルーズになっている事に気が付きました。 部品表で指定している交換部品の 02-0118 D51用トラクションタイヤを持ち合わせていないので分かりませんが、タイヤがへたったのか、最初から寸法が大きかったのか分かりません。 そこで、Z02-1575 のトラクションタイヤと交換することにしました。

● 次に気が付いた幾つかのポイントを紹介します。 まず、ライトは前後共にLEDを採用しています。 ヘッドライト基板は2014のマーキングを見ると新設されたようです。 バックライト基板は品番が4325ですので、クハ86(準急東海・比叡)などに使用されているものを活用しています。

● テンダーでは、2014のマーキングを多く見られ、それぞれ新設されています。 また、テンダー台車に於いて、ピポット軸受方式の集電板を採用している例に、初めてお目に掛りました。 走行抵抗の改善に期待できますね。

  .

● また、動輪押さえも新設されています。 そして、先台車が一緒にセットになっていました。 分解組付け時が楽になりましたが、さらに、板ばねによって、軽いセンタリング機能と線路からの浮き上がり防止機能も持たせてあります。

 

● この製品は、新しい試みが多く盛り込まれており、分解していても興味深々でした。 中には失敗部分もあるかと思われますが、後に続くモデルに何処まで引き継がれているか見て行きたいと思います。

                        ( 2013.7.18 分解調査  7.20 追記 )

 

動力特性

 ここに示す動力特性の測定は、自動測定システムを使用して実施する。 測定実施日: 2013/4/10

 

暖機運転:

 動力特性を測定する前に暖機運転を実施するも、運転中の測定は実施せず。

 

速度特性:

 スケール速度の80Km/h を出すには、 5 Volt 必要であり、一般的なNゲージと言える。

 電流は、50 〜 80 mA で小さいほうである。 特性のバラツキも少なく、安定している車両である。

 


牽引力特性:

 動輪荷重が約45グラムで、トラクションタイヤを第3動輪にはいている。 そして、粘着領域での牽引力は約14グラムでやや力不足な車両と言えよう。

 牽引力特性は、バラツキはあるものの、安定した走りを見せている。 電流値は綺麗にそろっており、ウォームギヤに掛る力が逆転する遷移点が、- 5グラム前後か。 さらに、この近くでは特性が少しバラつのも、興味が湧いてくる。

 また、牽引力/速度の勾配が変曲しているのも、なぜなのだろうか?

 

 

 また、この測定中の電流と電圧の関係を右のグラフに示す。 電圧変化は、0.5ボルト以下であった。

 

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 先日測定した、KATO の96 ( 29611号機 )と比較すると、同じシリーズなのに、この69659号機の特性が微妙に違っているし、バラツキも大きいようである。 先回の 29611号機は、2009年の再生産品であるため、モータの仕様や駆動機構を改良して、特性をより安定化させているのではないかと思われる。

 ただ単に再生産するのではなく、細かな改良を加えている様なので、このようなメーカーの取り組みに対して、鉄道模型ファンの一人としてエールを送りたい。

     ( 2013.4.10 追記 )

 ************** ( 以下は 2010.6.14 作成のもの) ********************************************************************

 

速度特性:

スケール速度80Km/hは、5.5volt近辺である。
 1volt当たり 20 Km/hの増加で、やや緩やかである。貨物機らしく低速走行仕様となっている。
走行開始点は、2Voltを過ぎたあたりから。 足は同じKATO製の29611号機よりやや遅いが、ほぼ同じ特性と言える。

牽引力特性:

 動力車の牽引力特性を測定する。電圧5.5voltでの牽引力・車速特性と牽引力・電圧特性を右に示す。 

 制動側も意外と安定しており、データも安心して測定出来た。

 最大牽引力は20グラム程度である。