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システムの構成要素 車両検知センサ

■ 車両検知センサの目的と機能

 自動運転システムを構成する要素として、車両の通過や存在を検知するセンサが欠かせません。 車両がどこにいるのか、列車は来たのか、列車は通過したを検知して次の処理を判断します。 車両検知センサは、このような色々な情報を提供する手段であり、システムにとっては必修手段であります。

 この車両検知の方法は種々な手段が考えられているが、その必要機能として

  1. 車両が今、通過したことだけを知らせる場合。
  2. 車両が通過した時刻を正確に知りたい場合。
  3. 車両が通過中であり、通り過ぎた事も知りたい場合。
  4. 停車中であっても、車両がそこにいる事を知りたい場合
  5. 機関車などの動力車以外の車両であっても検知したい。

などが挙げられる。

 実際の鉄道では、両側のレール間の通電状態を検知し、車輪がレールにある場合は必ず検知するといる簡単で正確なセンシングを実施し、閉塞区間の制御などを実施ています。 しかし、Nゲージの場合は、車輪の両側は電気的に絶縁されており、右のレールと左のレールは電力を送電する送電路の役割を担っているため、このシンプルな検知方法が使用できないのであります。 

 特に、閉塞システムを採用したい場合には、閉塞区間に車両が存在していることをどうやって検知するのかと言う、この難題に直面するのである。 この問題についてはATSシステムで解説しよう。

 Nゲージでは、レール間の通電具合で車両を検知するのが困難なので、色々な方式や工夫がされてきたが、小生が検討したり、工作して来た実施例を紹介する。

 

■ TCSワンタッチ装着センサ

 自動運転システムに使用するセンサとして、既成品であるTOMIX のTCSワンタッチ装着センサを活用することが出来る。 このためには、3本ある信号線の使い方を知る必要があるが、TOMIXからはこのセンサの解説書は出されていないので、自己責任として調査する必要がある。 このため、分解して回路を見てみることにしよう。

 このセンサの構成は、2本の足があり、それぞれの足にある金属部分が、左右のレールのうち一方は常時接触し、他方はレールとは非接触の状態にある。 そして車輪がこの非接触部に差しかかると、金属製の車輪によってレールとセンサの金属部が通電状態となる。 この通電信号を信号線を通して制御装置に送信している。

 まず、センサを分解してその中身と回路状態を見ることにしよう。

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 部品に隠れた部分も含めて回路を追って行き、その構成をメモして行った。 222 と記された小さなチップ部品は 2.2KΩの抵抗と直ぐに解ったが、黒い二つのボックスはフォトカプラらしいと睨んで、ボックスの上に記された「738」の数字を頼りにネットで調べてみた。 しかしヒットする情報は無かったが、似たような番号の部品はフォトカプラとして存在していた。 もう生産中止になってしまった部品か、あるいは特注品かもしれない。

 とにかく、この情報をもとに回路図にしたものを右に示す。 ただし、フォトカプラの仕様が不明なためダイオードやトランジスタの方向は不明であったので、実験で確かめることにする。 

 まず、3本の信号線の中央の線を電源線と判断して、+5ボルトを供給し、両側の信号線から出る信号によって、二つのLEDが点灯する回路をブレッドボード上に構成して実験してみた。

 ところがLEDは全く点灯しなかったので、もしかして負論理での構成ではないかと気が付き、極性を反対にしてみた。 即ち、中央の線をGNDにし、両側に+5ボルトをかけて、LEDを点灯させるようにした。 すると、結果は見事に正解であった。 こうして右の様な回路であるとの結論に至った。 フォトカプラはレールの供給電力回路と信号線回路を遮断するもので、信号線を独立回路として保護する常套手段と認識した。

 このセンサでは、動力車やトレラ車に関係なく、金属車輪が通過する毎にパルス状の信号を送信するもので、当然、プラスチック製の車輪では反応しないであろう。

 このワンタッチ装着センサ以外に、センサ・レールやスラブレール用のセンサも発売されているが、同じ信号線を使用しているので、電気回路は同一と判断している。 なお、使用にあたっては、自己責任で実施してください

 

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■ CdSによる光センサ

 次によく使用されているセンサとして、光センサがある。 タイプとしては、CdSセンサ、フォトダイオード、フォトトランジスタなどがある。

 ここでは、CdSセンサを使った例を紹介する。 CdSとは、硫化カドミウム( 化学記号でCdS と書く )のことで、これを使うと光によって抵抗値が変化するセンサにすることができる。 直径が5mm ほどの小さな部品で使い易いセンサであるが、使用しているカドミウムが、有害化学物質規制であるRoHS指令の規制対象元素のため、電気電子製品に使用できなくなっている事を認識しておこう。 イタイイタイ病の原因物質なのである。

 この小さなセンサを線路の中央部にはめ込み、車両がその上を通過すると光が遮断されて暗くなるので、その抵抗値の変化をセンサとして利用するのである。

 実際に使用した CdSセルは、Linkman 製のGL4516 で、外径がφ4.1 の物である。 その仕様は、明抵抗が 5KΩ〜10KΩ(10Lux時)、暗抵抗が0.6MΩ、応答時間が30msecである。 線路にはφ5mm の穴をあけ、横からの光をなるべく遮るように厚手の紙で筒を作り、その奥にCdSセルをはめ込んだ。

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 CdSセンサは、その明るさによって抵抗値が大きく変化する。 このため、センサとして使用する時は、抵抗と直列にしてその分圧をそのまま処理回路に入力させることができるが、感知する閾値を調整するため、抵抗は半固定抵抗を使用するのが望ましい。

 このセンサは、光を遮る車体が通過した時に反応する。 従って、車両が到着した場合や、通り過ぎた場合の情報として活用できるものの、車両の連結部分で信号が途切れるし、空のコンテナ車両の場合は反応しない恐れがある。 また、部屋の明るさによっても閾値が変化するので、これらの欠点をカバーする必要がある場合には、何らかの工夫が必要である。

 

■ 列車の通過センサとして使用するために

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 自動運転システムによっては、先頭車だけでなく通過中の客車や貨車なども連続状態として検知すること、即ち、ひとつの列車の間でON/OFFさせないことなどが要求される場合があります。

 このような場合には、ソフトで対応する方法もあるが、少しの工夫でハード的に対応可能である。 そのアイディアは、道路の様な街灯を線路上に設けて光源とし、受光側のセンサを複数にしてカプラ連結部による光のON/OFFを防止させる方法である。 また、センサ専用の光源を持っているので、部屋が暗くても作動させることが出来、部屋の灯りを消した状態でも夜行列車の運転を楽しむ事ができるようになります。

 上記のCdSセンサを使ったダブルセンサ方式について紹介しよう。 センサの信号処理回路は右の様に、CdS センサを直列に接続し、どちらかのセンサが反応しても高い抵抗値を示せばOK なのである。 もっともシンプルなOR回路なのである。 

 このため、線路の中央に25mm の間隔を開けて二つの穴を開け、ここにCdS センサをはめ込むことにする。 そして 40×40mm のプラ板を使ってベースとした。

 投光器としての光源は街路灯と同じように、チップLEDを使った工作である。

 白色のチップLED、φ0.6mm のスズメッキ線、φ0.29mm のポリウレタン線、使い切ったボールペンの芯を準備した。 チップLEDのマイナス側にスズメッキ線をハンダ付けし、プラス側にポリウレタン線をハンダ付けする。 そして、先端を切り取ったボールペンの芯の中を通し、点灯部を折り曲げて街路灯風に仕上げる。 点灯テスト後OKであれば、タミヤパテを使ってLED部を覆い、絶縁と保護を実施する。

 ベースの裏側で配線を実施してレールに取り付けると完成である。

 

■ 信号処理部分もまとめる

 上記の信号処理回路もセンサ部分と合わせてユニット化したセンサも工作した。 下左の写真。 さらに、そのユニットを細長くして線路脇のスペースに設置できるようにした例もあります。 下右の写真。

 このような丸出しの回路を線路脇に置くなんてと思われるが、その場所の明るさに応じてセンサの閾値を調整する必要があるので、半固定抵抗の調整と、信号状態を示すLED は表から見える様にしておく必要があるのだ。 線路と組み合わせた例を下に示します。

 回路部品の露出が気になる場合は、作業小屋などの建物でカバーする方法もある。

 

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■ 光のビームと受光センサ その1

 自動運転システム用の要素ではないが、同様な光センサとして製作した例を紹介しよう。

 それは、二つの測定ゲート間を通過する時間を計測し、車両の走行スピードを計測しようとする場合には、通過した瞬間をより正確に計測したいニーズがある。 

 このためには、走行中の車両に対して非接触で計測する光センサは最適である。 また、光は細いビーム状に投光するとよりセンシティブに計測できると考えているので、細いスリットとピンポイントで受光出来るセンサが最適である。

 発光部としてのLEDは、細いスリッドの工作に対応できる角型のLEDを使用する。 また、受光部がピンポイントで小さくて、応答性が良く、かつ素人でも容易に使用出来るものとして、浜松ホトニクスのフォトIC ダイオード(品番:S9648-100)を選定した。 このフォトIC ダイオードは、説明書に従って回路を構成したが、カソードに+電位が加わるように構成している。

 計測ゲートとして構成した例を上左に、計測台に設置した例を上右に示す。

 

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■ 光のビームと受光センサ その2

 この方式は、速度計測装置としてはそれほど正確さを必要としないが、レイアウト内に簡単に設置できる速度計用のセンサとしても応用できる。

 レイアウトに応用する場合には、複線の線路を想定しておく必要があるので、光のビームは上下方向に投光する必要がある。 このため、上方に投光器を備えた右の写真の様な速度計を製作したが、そのセンサとして光センサを利用した。

 受光センサは、前記のフォトIC ダイオードを使用し、段付きパイプの中にはめ込む構成とする。 光ファイバーを使って導光するのも良いであろう。 また、投光側もパイプ内に収め、狭い範囲を照射するようにした。

 光の照射状態を下に示すが、光は小さなポイントとして照らされていることが分かる。

 これに、処理回路を追加すればレイアウトのどの様な場所でも設置することが出来る。

 

 車両検知センサとして、この他にも色々な方法があるので、工夫して工作するのも楽しみのひとつである。

 

■ 入力センサの信号整形とロジックについて

  入力センサから送られて来る信号について、安定した信号とするために、トランジスタを使用して、パルス信号のような形に整形しておくのが良いであろう。 このトランジスタを使った回路において、素人ゆえに間違った使い方をして苦労した時があった。 さるネットユーザーからアドバイスを頂き、エミッタフォロア回路という回路の名前と、この用法ではダメであることを教えて頂いた。 そして、トランジスタをスイッチとして使い、信号波形を成型する場合には、このエミッタフォロア回路ではダメであることを実感したのである。 その理由は、巷にあるトランジスタの解説本を参照してください。

 また、センサが作動した場合、信号としてHIGH とするか、LOWとするのかを悩む場合があります。 最初は気にも留めずに気ままに構成していたが、システムをいろいろ触っていくうちに、その重要性に気が付いた。

 

   正論理: スタンバイ状態では出力信号がLOWで、センサがON の時に出力信号がHIGH となる場合

   負論理: スタンバイ状態では出力信号がHIGHで、センサがON の時に出力信号がLOWとなる場合

 

 例えば、通過センサの場合、

     車両が線路の上に来る → センサ部が暗くなる → 抵抗が大きくなる → トランジスタの入力電圧が低くなる

      → トランジスタを流れる電流が切れる → OUT端子の電圧が高くなる

 

 これは、スタンバイ状態ではOUT端子はLOW状態で、車両通過時はHIGHとなる。 ここでは信号処理が正論理で構成されている。  CdSセンサの位置を変えると負論理構成とすることも出来る。

 センサ信号系を正論理で構成した場合には、ノイズに対して弱くなると認識しているので、この回路はベストな方法ではないのですが、あえてこの回路を使用しているのは、トランジスタのプルアップ抵抗を利用してLEDを点灯させるようにしたかったからです。 LEDはスタンバイ状態で点灯しますので作動OKのシグナルとなり、センサの動作状態を確認する手段としています。

 

 待機状態にあるセンサ信号がLOWとなる正論で構成された回路に於いて、ノイズによるプラスの電圧を正式な信号と勘違いして誤動作を招く恐れがあります。 逆に、待機状態にあるセンサ信号がHIGHの状態の負論理で構成された回路では、断線や接触不良の機械的な切断状態にならない限り、ノイズによって電圧がゼロに落ちる事はまずないであろうと考えています。 このため、スタンバイ時にはHIGH状態になる負論理の方が信号回路にとってはベターなのだと認識しています。

 

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 2019/8/16 作成