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ATS列車自動停止システム システムの構想

 レイアウト改造に合わせて、ATSシステムの基本構成を各閉塞区間内で制御する分散方式に変更することにした。 その構想を検討しよう。

 

■ 分散制御方式によるATSシステムの構想

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 今回、レイアウトを大改造することにしたが、今まで使用してきたATSシステムは集中制御方式で構成されているため、中央部にある制御盤に集中させる配線だけでも大変なことになりそうである。

 

 そこでレイアウト改造に合わせて、ATSシステムの基本構成を各閉塞区間内で制御する分散方式に変更することにした。

 まず、全体のイメージを絵にしておこう。 右のイラストのように、ひとつの閉塞区間を想定して、その出口近くに車両の通過センサを配置して、線路への通電を制御しようとするのである。 そして、信号機も設置しよう。

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 線路への通電は、給電用の配線を独立して通しておき、各閉塞区間内での制御によって線路への通電をコントロールする。

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 ここで実施する基本構成を左に示す。 進路前方の区間に車両が存在する場合には、その区間に入る前に停止させるため、前方区間のセンサ信号を取り入れておき、自分の区間の状態と合わせて判断させる。 この考え方は、現在実施しているものと同じであるので、すでに実績のある制御方式である。

 今回は、信号までも制御できるようにする。 そのロジックを次の様に考えている。 ここで、“ちょっと待って赤” のイメージは、車両がセンサを通過後すぐに信号機を赤にするのではなくて、しばらく走行させた後に赤を点灯させるのである。 これはセンサを設置している位置が区間の終点から少し手前に設定しているため、車両が通過前に赤信号になってしまってはマズイからである。

 最近の動力車はフライホイールを装着しているものが多くなったので、レールへの給電を停止してもかなりの距離を走行してしまう。 もし、次の区間まで走行してしまうと、せっかく停止させようとしたのに、通り過ぎてしまうので、停止距離を設定しているのである。 前方に車両がいる場合には、信号機の手前でピタリと止まってもらいたいために、このセンサの設置位置は重要なのである。 さて次は、この様な制御が実際に可能かどうか検討してみよう。

 

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 まず、レールへ給電する回路に設けるリレーは、1C接点の小型リレーを使用する。 制御回路が機能していない時でもレールには通電している状態にしておく。 そしてこのリレーを駆動させるトランジスタ回路を設け、センサS1とS2のANDを取れば良いのだ。 簡単には直列接続でもAND回路になるが、今回、信号機の制御も取り込もうとすると、何らかのロジックICを使う必要が出てくる。

 単なるロジックIC回路では複雑になるので、ワンチップマイコンを使ってみることにしよう。 必要な入出力端子を数えると、8ピンタイプのPICマイコンが使えそうである。 そして、回路構成を考えてみた。

 ネットなどで勉強したとは言うものの、素人が考えた初めてのPICマイコン回路であるので機能するかどうかは実験してみないと分からない。 レイアウトのレールの傍に配置するので、細長くかつコンパクトに収める必要があるので、実体配線図も検討してみた。

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 およそ、70×30mmの基板内に収まりそうなので、まずまずの構成と判断する。 センサや信号機との接続はコネクタを使い、先方と後方の区間との信号の伝達は、+5電源と共にこれもコネクタ接続と考えている。 また、レールへの給電配線は少し太めの電線を使用し、ターミナルブロック、例えば秋月で取り扱っているTB111-2-2-U-1-1を使って接続することを想定した。

 このターミナルブロックを使用すれば、制御ユニットがなくても給電回路は構成できるのでレイアウトの試験運転が可能である。 また、センサが設置出来ればATSの機能運転も可能であり、閉塞区間が全区間設置できなくても部分開通が出来る。 レイアウト工作の進行具合に合わせて順次運行が可能と考えているので、焦らずに作業を進める事ができる。

 

 構想は出来上がったが、実現させるためにはだんだんハードルが高くなったような気がする。 その前に、現在のレイアウトを解体し、不用品をすっきりと整理して物置部屋をいったん更地にしなければならない。 その後、新たなレイアウトの骨組みを作り、各プレートを制作してレールを設置する必要もある。 先の長い話しではあるが、ぜひ実現させたいシステムである。

 と言うことで、この一年半もの間、アイディアを温めてきたが、いよいよその実現に向かって進むことにする。

 

■ システムを具体的に詰める

 システムを具体的に進めるためには、課題を詰めておく必要がある。 例えば

  1. 8ピンのPICで入出力は間に合うのか。 また、どの石を選択すればよいのか。
  2. プログラム記述はアッセンブラで行くのか、C言語で行くのか。
  3. 先に実施していたATSシステムでは、列車が通過センサに到達するまでは、走行中や停車中であっても列車は存在していないものとして制御していた。 その閉塞区間に列車が存在することを検知することが出来なかった。 これを解決したいがどうやって判断するのか。
  4. ヤードの出入り口で、本線走行中の列車と衝突しないための工夫が必要である。
  5. 待避線があるホームでの待避と出発進行の制御が出来るのか。 また、信号待ちの状態はホームで停車するものとして実施したい。 ポイント上で停車させるみっともない状態は避けたい。
  6. 多くの制御基板を効率良く作りたい。 特に上記の(4)と(5)にも対応できる標準型の制御基板にしておきたい。 

 今回のシステムの基本構成を下記の様にする。 メインの給電ラインは、レール途中での電圧降下を避けるため、太めの電線ですでに設置ずみである。 このため、各閉区間毎の工作を順次実施して行けば良いのだ。

 メインの給電ラインは、太さ0.85sq のダブル電線を使用してレイアウトの下を通し、異形線配線コネクターを使って取り出している。  これらの部品はホームセンターの自動車用 DIY コーナーで入手しているので、信頼性は充分である。

 上左の写真は、メイン給電ラインからパワーユニットまでの配線である。 このように配線の途中の任意の場所から取り出せるので便利である。 また、右の写真は、分岐したフィーダー線を線路にハンダ付けした状態です。 

 

● 制御の概要

 次に、PIC選定のために制御の概略を見ておこう。 制御の目的は、対象となる閉塞区間の給電の ON/OFF である。 入力としては二つの通過センサーの情報をもとにロジックを組み立てることにする。

 単純に考えると上記の場面1から場面3までの設定で制御できるのである。 今までの方式ではこのロジックをハード回路で実施してきたのである。 しかし、課題(3)で挙げたように、先方のセンサ S2 に引っかかる前の状態を何とか制御内に収める方法をいろいろ検討してみた。

などのアイディアも頭に浮かんだが、先方のセンサ S2 に引っかかる前までは、自分が通過した情報を記憶させて後続の列車を制御するアイディアを取り入れてみることにした。 上記の図の場面4から場面6までの間は、通電をOFFさせるロジックである。 ただし、いろいろなケースが発生するので、それにうまく対応できるのかは自信がない。 例えば、運転中に制御用電源をOFFさせ、再度ONさせた場合には、場面2の場合でS2がOFFであるとこの情報が無いので電車を通過させてしまうのである。 このような稀なケースは、想定外として制御未対応として容認することにしよう。

 追記:
 このロジックには大きな落とし穴があった事を後から気が付きました。 もし、場面4から場面5に移る時に、列車が消えてしまったら、制御は待ちぼうけの状態となり何時まで経ってもそのままの状態となります。 すると、システムをリセットする必要が生じるのです。
     列車は本当に消えることがあるのです・・・・!。
 例えば途中のポイントなどで脱線事故が発生した場合、車両を取り上げて、他の場所から走らせることはたびたびある事です。 また、ヤードに入庫させる場合には、本線から分かれて行きますので、本線から列車は消えて行くのです!

 

■ ヤードの出入口の制御概要

 今回設置したヤードは、右回りと左回り( 一般的には上りと下りと言われているが・・・・・)のヤードを複線の線路の片側に設置している。 このため、外側の線路からの出入りは内側の線を越えて走行する必要があるので、内側の線路を走る列車を停止させておく必要がある。 また、走行しようとする線路に対しても後方から来る列車を停止させる必要があるのだ。 その様子を下のイラストに示す。

 ヤードからの入出庫は手動で実施するので、ここでの制御は手動で充分である。 例えば、押しボタンスイッチとLEDを使ってその操作を設定すれば良いのである。 この情報は、区間前方に列車がいると言う情報と同等なので、先回説明した S2 センサのON 情報と OR 回路で処理して、コントローラの S2 ポートに入力させれば良いことになる。 この回路を押しボタンスイッチと表示用のLEDを組み込んだオプション回路として用意することで対応できる。

 

■ ホームからの出発制御の概要

 信号待ちの停車をホーム部分で実施させるためには、ポイントがどちらの線路を選択しているかを知る必要がある。 このためにはポイントの状態を機械的に検出するか、あるいは通電状態を検出する方法がある。 ここでは、電気的に容易に検出可能なフォトカプラーを使用した線路への通電を検知する方法を選択した。 そして、列車が行き過ぎた場合には、バック運転もあり得ると考えてブリッジダイオードも組み込んでおくことにした。

 この時の制御回路の概要を上に示す。 フォトカプラーはプルアップ回路にて出力させるとすると、通電されている場合にはOFFの状態で、通電されていない場合にはON が出力される。 そして、先方の閉塞区間に設けられている通過センサ の信号とOR 回路で処理すれば良いことになるのである。

 まだ充分に検討出来ていないのだが、オプション回路で対応できそうであると結論した。 いざとなれば、基盤回路の修正を覚悟の上で、出発信号の橙を中止してポートを開ける手もあるのだ。

 

 次に、課題(1)と(2)への対応について検討しよう。

 

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 2019/8/21 作成