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システムの構成要素 ポイントの駆動回路

 自動運転システムの構成要素として、ポイント操作は必ずと言ってよいほど使いたくなるアイテムである。 それを駆動するための制御回路をについて説明する。

 

■ モータドライバIC を使って駆動する方法

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 DCモータ用のドライバIC を使って、ポイントを駆動する方法である。 このモータドライバIC にはいろいろな種類があるが、ロジック用電源と出力用電源を共通に用いているTA8428K を例にしてテストしてみた。

 使用したICは、東芝製TA8428K で、動作電圧 7V〜27V、出力電流1.5A(AVE)、3.0A (PEAK) である。 ブレッドボード上にテスト回路を作り作動確認を実施た。 10KΩの抵抗は、インプットポートをGNDにするために挿入している。 ドライバ用の電源はArduino の電源を利用することを考えて、DC 9volt とした。 入力信号のスイッチは、+5ボルトに接続したリード線 (右の写真の橙色のリード線) を10KΩ抵抗の足に、チョンと接触させる事で入力している。 長時間通電はコイルの焼損の恐れがあるとのネットでのアドバイスを実行しているのである。

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 TOMIX製のいろいろなポイントを持ち出して、テストしてみた。 さらに2個同時に作動させてみた。 その結果、多くの場は作動していたが、

   ・・ ダンマリのポイントがあったり、片方向しか作動しないポイントもあった。

 不作動のポイントをTOMIXの品番 5532 ポイントコントロールボックスを使用して駆動させると問題なく作動した。

 

● 不作動の原因調査

 不作動のポイントについて、駆動電源をDC 9volt から DC 12volt のアップさせたが改善しなかった。 また、単独で作動させても不作動であったので、ポイント本体や、ソレノイド部(正式にはポイントN用駆動ユニット 品番:0107 と呼ばれているもの)をいろいろ取り換えてテストした。

 その結果、ポイント本体側に原因があると判断したが、品番 5532 を使っての駆動では確実に作動するので、切替時の瞬間的な電気パワーが関係するのではないかと想定する。 モータドライバIC での立ち上りパワーと、スナップの利いた品番 5532 のパワーの違いが、少し抵抗のあるポイント本体の動作に影響しているのではないかと思っている。 また、モータドライバICでは、その制御素子の関係で数ボルトの電圧降下があると説明されているので、その影響かもしれない。

 この方法では、確実に作動するという保証が得られなかったので不採用にした。

 

■ スイッチとコンデンサを使って駆動する方法

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 ポイントを駆動する回路として、コンデンサを利用する回路は古くから使われてきた簡単で確実な回路として多くの資料で紹介されている。 そこでこれらを参考にして右の様な回路を構成した。

 電源は12Vとし、高感度小型パワーリレー 946H-1C-12D を使ってスイッチとし、2200μFのコンデンサに蓄電と放電作用をさせるようにした。 また説明書では100Ωの抵抗がコイル回路に挿入されているが、この役割は何なのか説明がないので理解できていないが、コイル焼損の場合の安全抵抗と見ている。

 リレーの仕様書によるとコイルの抵抗は720Ωなので、12V でも17mAであり、通電状態が続いたとしても安全圏であろうと判断している。

 他の資料によると、コイルの電流を切断した時に発生するフリーホイール電流によって、駆動回路が破壊する恐れがあるので、フリーホイール・ダイオードをコイルの両側に接続しておきなさいとあるので、少し心配になって来た。

 

● ブレッドボードでの実験

 ともかく疑問を感じたら実験してみる事にしているので、今回もブレッドボードを使って回路構成して、作動を確認した。 12V 電源はACアダプターを使用し、信号用には乾電池2個を使用した。

 

● フリーホイール・ダイオードの効果

 コイルをOFFした場合のオシロ画面を下に示す。、左はダイオードが無い場合で、右がダイオードを追加した場合である。 回路を切断すると、コイルの両側とも、12Vになるが、2msec程度の間は下流側の電圧が 35 ボルト以上のヒゲ電圧が発生しているのが分かる。 これが逆起電力と想定する。 ダイオードを挿入すると、そのヒゲは無くなり、時間も少しのびている。

 

 この画面の比較より、フリーホイールダイオードが有効であることが分かる。

 しかし、この実験中に、ウンともスンとも言わなくなってしまった。 配線が外れたのかと思ってチェックしても異常は無かった。 試しにダイオードを外すと作動するようになったので、取り外したダイオード単品で通電チェックをしてみた。 両方向とも抵抗はゼロであった。 テスタのレンジを下げてみると両方とも約 1Ω程度であった。 ダイオードがパンクしてしまったと判断する。 使用していたダイオードは汎用小信号スイッチングダイオード 1N4148 で、200mAまでのものであった。 そこで少し大きな汎用整流用ダイオード 1N4007 に取り換えた。 1A まで大丈夫とのことで、その後問題は発生していない。

 フリーホイールダイオードとしては大きめのダイオードが必要なのである。

 

● コンデンサの前後の電圧

 次に、コンデンサの両脚の電圧もチェックしてみた。 コンデンサは 2200μF である。

 

 左が充電時、右が放電時で黄色のラインが出力側ですから、見事にプラスとマイナスの電圧が発生しているのが分かります。

 

● たびたびの作動不良に遭遇する

 このポイント駆動回路を登山鉄道の自動運転システムで使用していたが、たびたびの作動不良に遭遇している。 自分が取ってききた対策は、

  1. コンデンサの容量をアップする。 しかし、その後もとに戻した。
  2. TOMIX製ポイントから、作動がより確実と思われるKATO製ポイントに取り換える。
  3. リレーの接点抵抗が増加していたのでリレーを新品に取り換える。 接点抵抗が増えると充分な電流を瞬間的に流せないため、ポイントを切り替える事ができなくなる。 接点抵抗が増加する理由はリレーの電流に対する容量不足と推定している。
  4. リレーは接点容量に余裕のある仕様を選ぶ。 そして多少は高くても信頼性の高いと思われる製品を選択しよう。
  5. リレーの交換を容易にするため、ICソケットを活用する。
  6. 不具合対策ではないが、安全のために回路にポリスイッチを追加する。
  7. コンデンサの接続回路を、常時充電状態から常時放電状態に変更し、電源ON/OFF時による充放電作動を避ける。

などの対策を実施してきたが、まだ万全とは考えていない。

 上記の対策では、2200μFと3300μFの二つのコンデンサのうち、片一方を切り離して 2200μFだけにした。 コンデンサの容量を大幅にダウンさせることによって、リレーを流れる電流が抑えられるものと考えたからである。 また、通常時はコンデンサが放電状態になるように回路も変更した。 これによって電源スイッチのON/OFF時にコンデンサへの充電も無くなり、必要な時だけ充電することになる。 これによって、リレーに電流が流れる機会が減収するものと考える。 さらに、OFF時に、コンデンサの電荷を放電するようにした150Ωの抵抗は不要となるが、取り外すのも面倒なのでそのままにしている。

 このシステムでは容量の大きなコンデンサを使用するので、電源OFF時と言えども注意が必要である。

 

● 追加の実験

 問題となったポイント駆動回路について、自分としてはまだ理解が不充分であることを知り、自分なりに納得できるようにいろいろ実験をしてみることにした。 まず、安定した実験結果が得られるようにしっかりとハンダ付けされた回路を構成し、接触不良による影響を排除するようにした。 電流測定用のシャント抵抗 R1と R2 を2ヶ所設けている。 さらに、回路の切替は、確実な作動を期待してELPA のトグルスイッチ HK-TGS01H 定格はAC125V 6A のON/OFF スイッチで実施する。 ポイントとの接続線はKATO の配線の端部を切断して直接ハンダ付けしている。

 実験は、下記に様にオシロスコープを用いて瞬間的な波形を記録し、その値から電流値や電圧を読み取った。

 コンデンサの容量と電圧を変えて測定した結果を右上のグラフに示す。

 ポイントが作動しなかった 5volt 時のデータは黒丸で別表示にして、2200μFと5500μFとのプロット点を直線近似させ近似式も表示させた。 近似式はほぼ原点を通り、かつ不作動であった5volt 時のデータ点も乗っかって来るのである。 これは、まさにオームの法則に従うようである。

 ちなみに抵抗値として換算すると、21.0と22.4オームとなる。 原点を通る比例式とすれば22オームとなると推察され、まさにソレノイド単品でのコイル抵抗値19.9Ωと合致するのである。 また、KATO製ソレノイドを作動させるにはおよそ350mA以上が必要なようであることも判明した。

 ソレノイドを流れる電流は、コンデンサの容量には関係ないのだ。 2200μFだろうが、5500μFだろうが電流値は同じであるという結論なのだ。 電流値の計算はコイル抵抗値と電圧から計算できることを示している。

 次に、電圧と電流の関係を観察した。

 

 この回路はコンデンサとコイルで構成されているLCR回路である。 このため、時間遅れや位相差など難しい現象が生じているものと思われるが、門外漢には理解できないので、簡単な実験で自分なりに納得する。 まず、電圧と電流は本当にずれていないのか確認しよう。 実験の詳細は省略するが、スイッチのON時とOFF時の波形を上に示す。 黄色のラインはシャント抵抗の電圧差即ち電流を示し、青色のラインはコンデンサのマイナス電極側(=コイルの上流側)の電圧を測定している。

 コイルを流れる電流は何処を測っても一緒と考えられるので、コイルに掛かる電圧とその時の電流が計測されている。 CH2に示す電圧に対して、CH1で示す電流は、その立ち上がりがわずかに遅れていることが分かる。 その遅れ時間は 2〜3 msec と読み取れ、ONの場合でもOFFの場合でも同じである。 この観察より、時間遅れは発生しているがそれはわずかな時間であることが分かる。

 この他に、リレー接点の抵抗増加を模した実験も行った結果、その抵抗増加分で流れる電流が減少してポイントが不作動になることも確認できた、

 

 今回の実験で多くの事を学習した。 そして、リレーがダウンした理由はやはり未解決のままであるが、一番疑わしいのは信頼性不足ではないかと推察している。

 また、コンデンサ方式のポイント駆動回路に於いて、

との知見を得て、今回の実験のまとめとする。

 最後に、ポント駆動回路ユニットの工作例を下に示す。

 これらのユニットはシステムに合わせて製作しているので、詳細はそちらで説明する。

 

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 2019/8/15 作成