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鉄道模型工学概論 

§4 まとめ

 

§4.1 動力特性の基本式について

 1) 工学といえるか?

 静的特性として、測定データと理論式は、その傾向が良く合っていると言える。 このことは、「理論式が間違っていない」と共に、「測定方法およびそのデータについても間違っていない」と言えるのではないか。

 しかし、部品や構成要素の特性をもとに、計算によって求められた車両としてのASSY特性が、実際の測定データと合致して、始めて「工学」と言える。 これによって初めて車両としての設計が可能となるのである。 作ってみなければその性能が分からないというのであれば、たんなる工作作業員であって、「工学」を云々する技術者とは言えないと思う。

 しかし、今回の概論によって、ASSY特性を求める基礎が出来たと思っている。 今後、モータ特性やギヤ比、動輪径など、特性に影響する要素を調査し、その値から計算された線図と測定データを比べていけば、やっと「工学」と言える領域に入れると思う。

 

 2) 測定値の精度について

 今回製作した実験装置は、自分なりに工夫して測定データの校正を実施してきた。 しかし、その精度は? と聞かれると、自信は無い。 検証するにも、比較するデータも無いし、測定されたデータの絶対値には自信がないが、 ただ、そのデータが示す特性の傾向については間違いないと確信している。 測定の精度を上げることは必要かも知れないが、今の自分の追求していくテーマでは無いと思っている。 精度を上げて何をするのか? 製品の良し悪しを評価するのか? 不良品を見つけてメーカーにもの申すのか? 自分はそのような事をするつもりはない。

 あくまでホビーの範疇での実験解析であり、趣味として実施しているものである。

 

 3) 疑問に答えられたのだろうか?

 この鉄道模型工学なるものを始めた理由の一つに、「なぜ、鉄道模型ではギクシャクするのだろうか?」 と言う疑問があった。 はたしてその疑問は解決されたのであろうか。 否、そんなに簡単に解析出来る問題ではなかった。 ギクシャク状態を再現できる実験装置もまだ出来ていないし、どうすれば良いかも分かっていない。 この状態を観察する手段も今は無いので、解析していく方法がまだ見つかっていない。 今後も追求していくテーマと考えている。

 でも、今回の検討によっていろいろ勉強も出来たし、鉄道模型、いや鉄道そのものに、より一層興味が湧くようになったのは、一つの収穫であると思っている。

 

§4.2 定置実験装置について

1) 実験装置の特徴

 とにかく鉄道模型の牽引力を測定したいと言う思いで、いろいろ試行をしてきた。 今回の円盤式の走行装置と、やじろべい式の牽引力測定装置によって、その目的をなんとか達成する事が出来た。 趣味で始めた工作であるが、道具、材料、加工場所、簡単な電気工作、木工作業、資金面、時間等々、手ごろな範疇であり、定年後の趣味としてどっぷりと浸かっている。 

 しかし、§3 動力特性の測定結果と考察でも述べたように、制動領域での測定方法の課題も残っている。 これは、今回の測定方法の限界とも思われるので、さらなる実験検討が必要である。

 

2) 装置の改善

 しかし、この装置は完成と言い難い。 またまだ多くの課題を抱えたままである。 改善してみたいと思っている個所はあちこちにある。 その幾つかを列挙してみよう。

 測定方法の検討として、色々なアイディアがあるが、その幾つかを紹介してみよう。

 

(アイディアA) 自転車の車輪を活用する。

 ベニヤ式の回転円盤は、湿気で反ってしまうし、回転抵抗も大きい。そこで、自転車の前輪を使用した回転円盤を考えてみた。

 そして、もし、回転抵抗が小さくなれば、リブに内蔵されている発電機を使用して、負荷抵抗用のダイナモに使えないか検討してみたい。 電球の代わりに可変抵抗を使用すれば良い。 また、モータとして使用して制動領域での測定も可能かもしれない。 いずれにしても、円周部での回転抵抗が1グラム程度であればの話であるが、検討してみる価値がありそうである。 うまくいけば、制動領域での測定課題も解決出来るかもしれない。

 

(アイディアB) 傾斜台を使用した測定台。 

 円盤を強制的に回転する方法の見直しとして、傾斜を利用して車両の負荷を掛ける方法を考えられる。車両に掛る負荷に応じて、車両自身が速度を決めるので走行上の不安定性が解消されるのではないかと考える。

 当初は、直線路を往復させていたが、これを周回路に改良すれば、連続的に測定出来ると考える。装置がやや大きくなるが折りたたみ方式など、工夫の余地がある。

 速度計測には、マーク間をストップウオッチで測れば良いが、手間がかかるので計測装置の工夫が必要であろう。 また、重りで加重した車両を連結すれば、大きな負荷状態も設定できる。

 

(アイディアC) 円盤式傾斜台を使用した測定台。 

 回転する円盤を傾斜させ、傾斜を利用して車両の負荷を掛ける方法と回転円盤を組み合わせる。

 車両は、円盤の回転と傾斜を登る負荷とがバランスして、ある一定位置に留まる状態を保持する。このときの角度位置を測定し、車両重量と傾斜角、回転角から負荷状態を計算する。 負荷の大小は傾斜角の調整と、おもり車両の連結で設定出来るであろう。

 試しに、現在の測定装置を傾けて試験走行させて見た。 走行は予想通りに、ある一定位置に留まっており、走行特性の測定可能であった。

 さらに、意外な現象が幾つか見つかり、「なぜなぜ?」屋の小生には非常に興味が湧いてきた。 その内容は後日報告しよう。