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鉄道模型調査室   ポイントの通電特性を測定する その4

■ いきさつ

 鉄道模型のポイントは、切替作動が確実に動作する事も大切ですが、動力車に電力を供給するためにレールを介して通電させる機能も大切です。 この通電性能を判断する方法や実際のデータを見た覚えがありません。 鉄道模型界ではこのようなテーマに対して、「通電不良だ」などの感覚的表現しかありませんでした。 そこで、データ的に特性を表現する方法を検討してみる事にしました。

 今回は KATO 製ポイントについて、TOMIX 製のポイントと同様にメンテンナスを実施して、その電圧降下量を測定して比較してみました。

 

■ KATO製のポイントのメンテナンス

 KATO 製ポイントについて、同様のメンテナンスを行った。 分解して刷毛で掃除した後、クリーニングを実施するのですが、その箇所は回転電極の部分だけである。 しかし、その電極も容易に分解できないので、クリーニング液を垂らして電極を何回も動かしてこするだけなのである。

 分解掃除を実施する場合には、部品を失くさないようにいつも菓子箱の中で実施している。 下左の写真。

 

■ メンテナンス効果の確認

 メンテナンスを実施した前後での電圧降下量の変化を測定した。 その測定時の状況を右上の写真に示す。 ポイントへの接続状況と電圧降下の測定状態を下に示す。 負荷抵抗として 50 Ωのセメント抵抗を使用している。 また、測定はTOMIX の場合と同様に、往復回路の電圧降下を測定するために、分岐側に先回報告したUターン線路を接続している。

 測定は、電圧はテスターで測定し、電流は安定化電源のメータを読み取っている。 電流の設定は、測定のたびに 100mA になるようにダイヤルを調整した。

 測定結果を下に示す。

 上のグラフに沿って、状況を説明しよう。

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  1. 左ポイント1は、参考のためにメンテを実施せずに、そのままの状態である。 通常はこの程度の値であると考えられる。
  2. 左ポイント5は、反位位置での電圧降下が大きかったのでメンテナンス作業を行った。 その結果は大幅に改善されたことが分かる。
  3. 左ポイント4も同様に、メンテナンス作業の効果が確認される。
  4. 左ポイント3は、反位位置での効果が見られなかった。 場合によって 1.5volt までも上昇し、データ自身もフラフラしていた。 このため、裏側の選択ネジを非選択位置にして測定してみた。 50mV 以下の値であったので、電圧降下の要因は、回転電極部分にあるのではと推定した。 しかし、レールと電極を接続しているカシメ部分も影響しているのではないかを考えて、レールと特殊ネジの接合部にハンダ付けを試みた。 フラフラ現象は少し落ち着いたが、非選択状態までは行かなかった。
  5. 左ポイント2は、メンテナンス作業の効果が少なかったので、非選択位置でも確認してみた。 その結果は良好だったので、効果の無かった原因は、やはり回転電極 (右の写真) が要因とみた。 そこで、Eリングを外して、電極の反りを大きしバネ力を強めた場合も測定した。 その効果があったので、やはり回転電極での影響が大きいと判断される。
  6. いずれの場合をみても、定位位置よりも反位位置での電圧降下が大きいようであるが、その要因は不明である。

 ここで、上記の説明の中のレールと電極を接続しているカシメ部分を説明しておく。 分岐部の中央のレールは、強く引くと下左の写真のように引き抜くことが出来る。 そして、レールの裏側にてナットで固定していた特殊ネジの頭の部分 (先回の分解調査を参照ください) がレール表面に出ている。 下右の写真。 その頭はカブトムシの様にレールの下側を挟むような形をしており、この部分がレールをカシメるようにして組み付けられている。 外側のレールも同様な方法で接続されていた。

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 カシメ部分はレールに食い込んでいるので確実に実施されているようであるが、通電性が維持されるのかは不明である。 上記のように、強制的に分解した場合には、その通電性能は保障されないであろう。

 上記のハンダ付けは、この部分をハンダによって確実に通電させようとしたのであるが、ハンダコテの熱が逃げて確実にはハンダ付けが出来なかった。

 

 また、先回報告した中の通電不良があった6番ポイント(左)を分解してみたところ、右の写真の中のドライバーの先端部が示す部分が外れており、通電不良となっていました。 ここはレールの底面と電極をスポット溶接(?)にて接合している部分で、その接合部が剥がれていた。 無理な力が掛かる場所ではないので、初期不良ではないかと疑ってしまいます。

 

■ TOMIX製とKATO製の比較

 さて、色々調べてきましたが、そろそろまとめることにしよう。 感じたことを順不同で記述します。

◆ 切替中の作動の様子

 ポイントを切り替えている様子を観察していると、KATOのポイントは、パチパチと 7mm も動き、トングレールはその動きの途中でパチンと切り替わっています。 構造からもうなずける動きです。 一方のTOMIX の場合は、3mm 程度の動きの中で、トングレールは最後によいしょと動いている感じです。 従って、作動不良のポイントは途中で止まって、最後の押しが効かない状態、即ち不完全な状態で止まってしまうのです。

 ソレノイドは近くなるほど吸引力は強くなるので、TOMIX の方が原理的には合っていると思われますが、そのメカニズムの欠点によって、結果的には信頼性の低い製品になっていると思います。 今回の調査より、ポイントの切替作動の確実性についてはKATOの方に軍配を挙げます。

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◆ 通電性の比較

 分解して観察した結果と電圧降下を測定した結果より、どっちもどっちと考えます。 スイッチ部分の確実な通電性や、回路内の接続方法など、どちらの製品も弱い部分をもっており、今回の調査で心配の種が増えたと考えます。 多少の事なら運転に影響ないとは思いますが、この通電不良は今までも泣かされたきた案件ですので、心配になります。

 また、「モジュールレイアウト 小細工と試運転」にて報告したレールのジョイント部の比較からも、KATO方式には不安を持っている一人です。 このために、レールはTOMIX の方を使うようになりましたが・・・・・・・・・ポイントで裏切られています。

◆ メンテナンス性の比較

 メンテナンス性に関しては、TOMIXの方が優れています。 ネジを外せば容易にメンテナンスをすることができますので、気楽に実施出来ます。 しかし、本当はその必要が無い事が望ましいのです。 お座敷レイアウトの場合にはポイントを固定しないので問題ないのですが、レイアウトに組み込んだ場合、取外し作業は周りの線路も一緒に取り外さなければなりません。 これまた一大決心のいる作業なのです。

  レールを取り外さずにメンテナンス出来るような固定レイアウトに適したポイントが欲しいですね。 PECOのレールですかな! 使った事も無いし、地方都市に住む小生としては販売店で見たことが有りません。 ネットしか無いのかな? 配線も複雑で難しそうだし、手を出す勇気がまだ有りません。

 

■ 結論

 今回の調査の目的は、物置部屋の新しいレイアウトにおいて、ヤード部分のポイントを、TOMIX製にするか、KATO製にするのかを判断する事でした。 現在はTOMIX製を設置していますが、未だ工事は完了していません。 KATO製に変更するのは今がチャンスなのです。

 結論として、ヤードのポイントは動作がより確実なKATO 製に変更し、もし通電不良が多発するようでしたら、ポイントを非選択にして、通電回路に手動のスイッチを挿入して対応する方向で検討してみることにします。

 そのためには、現在のスペースにて KATO製レールでヤードが構成できるのか新しい課題なのです。

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  2017/11/15