HOME >> 鉄道模型実験室 > BANDAI 製 Bトレ専用 動力ユニットの動力特性

鉄道模型実験室   BANDAI 製 Bトレ専用 動力ユニットの動力特性

 

■ 製品概要

 

 Bトレインショーティー専用の動力としてBANDAI から3種類の動力ユニットが発売されている。 この製品シリーズについては、皆さんがご存じのごとく、下記の3種類がある。

製品名 用途 特徴 定価 測定台数
動力ユニット1 機関車用 2軸形式、両軸駆動
2,100円
機関車用 グレー
2,100円
動力ユニット2 電車・気動車用 ボギー形式、片台車の動輪駆動
2,520円
2台
動力ユニット3 電車・気動車用 ボイー形式、両台車の動輪駆動
2,625円
3台

 これらの動力のうち、動力ユニット2と動力ユニット3を数個入手したので、その動力特性を測定した。

 

■ 動力特性のの要約

 幾つかのユニットの測定結果より、この動力ユニットの特徴を要約する。

  1. 速度特性は、一般のNゲージ車両とほぼ同じ特性に設定してある。 このため、他のNゲージ車両と混在しても違和感がない。 電圧が 4.0 Volt 近辺でスケールスピードが およそ80 Km/hに設定されている。
  2. 製品のバラツキはあるものの、重連させるには問題の無いレベルと思われる。
  3. 付属する補重用の重りを使用した標準的な状態では、粘着領域での牽引力(粘着牽引力)を見てみると、ユニット2ではおよそ4グラムであり、やや力不足である。 また、ユニット3ではおよそ6グラムあり、パワーアップされている。 さらに負荷による速度低下も少なくなり、メーカーのうたい文句に偽りは無さそうである。
  4. 出力の割に動輪系の摩擦抵抗が大きいため、 牽引力特性は制動領域の終端近くまで一直線に落ち込んでいる。 モータのパワーを浪費しているとも言えるが、 速度変化領域が広くなるため、 重連時の協調運転範囲が広くなったとも言えるので、これも特徴のひとつと言えるだろう。
  5. 消費電流はBトレにしてはやや大きく、 何台も重連させる時にはパワーユニットの選定に注意する必要がある。
  6. ユニット3では、ユニット2で見られた大きな作動音が改善され、静かになっている。

■ 動力特性の計測の方法

 

 速度特性と牽引力特性は、改良版の傾斜台式測定装置で測定した。 負荷としては、Bトレのコンテナ車を使用し、コンテナの中に、水草の重り(鉛が主成分か?)などを詰め込んで重量を稼いでいる。

 また、動力ユニット2に於いては、通常1エンド側と呼ばれている前側をトレーラ台車側として測定しており、 “前進”とは駆動台車が後側にある走行状態を示している。 動力ユニット3に於いては全輪が動輪なので、モータに直列に挿入された抵抗が見える側を公式側として、前進方向を仮に定めた。

  個別の車両構成と測定データは、マイコレクションの 小型動力車両 リストに示すページにて、それぞれ記載するので参照下さい。

 

■ 動力ユニット2の特性

◆ 動力部の構成

 まず、動力ユニットの外観と分解写真を示す。 中央の写真は前後を反対にして写してしまいました。



 構造はKATOの動力ユニットと類似しており、参考にしたと思われる個所が随所に見られた。 モータは前方に配置され、ジョイントを介して台車に軸支されるウォームシャフトに連結されている。 トレーラ台車は「走行台車T」と同じ製品であり、共通使用されている。 トラクションタイヤは左右2輪に履いている。

 なお、付属する補重用の重りは、動輪側台車に効果的に作用するように取り付けて動力特性を測定している。H形ブロックが2.3グラム、2個あるブロック形が一個で2.5グラム、細長ブロックが1.4グラムあり、合計で8.8グラムあった。 ちなみに動力ユニット本体は、12.2グラムである。

 

◆ 速度特性

 まず、車速特性から測定した。 この特性は、平坦路単機走行状態での特性であるので、傾斜台を水平状態にし、動力車単体で走行させたものである。 この時の、供給電圧と電流、および速度を測定しグラフ化した。

 車速・電圧特性から見て見よう。

 電圧4Volt で、スケールスピードがおよそ 80Km/h に設定されているのは、標準的なNゲージ車両と同じレベルである。 前進と後進では、すこし傾向が異なっているのが気になる。 動力構成が前進と後進で非対称であるため、差異が生じても不思議ではないのだが。

 次に、電流・電圧特性を見てみよう。

 単機走行中の消費電流は、およそ 30mA 近辺から2倍近くも増加しているのは、何故なのだろうか。 KATOとは傾向が異なっているようである。 また、KATO製より電流値が大きいのは摩擦抵抗が大きいためと思われる。

 

◆牽引力特性

 次に、牽引力特性を見て見よう。 まず、牽引力・速度特性を下記に示す。 供給電圧は 4 Volt に統一している。

 牽引力特性について、制動領域の全域までだらだらと勾配が続いているユニットは初めてである。 これは、駆動系やトレーラ車輪の摩擦抵抗が大きいからと思われる。 それにしても、粘着領域での牽引力が4グラム程度なのに、この摩擦が3グラム程度まであるとは、もったいない設計である。 この粘着牽引力が4グラム程あるが、これはトラクションタイヤの効果よりも、補重による効果ではないかと思っている。

 また、KATO製で見られたような、制動領域、即ち下り坂でのノッキングやギューギュー音は認められなかったが、逆に通常のギヤ音はかなり大き目であった。

 次に牽引力・電流特性を見て見よう。

 消費電流は、制動領域でもグングン下がり、15mA 近くになってやっと落ち着いてくるが、すぐに粘着限界に達している。 この事は、摩擦抵抗が3グラム程度まであることを証明していると判断できる。

 

■ 動力ユニット3の特性

◆ 動力部の構成

 同様に、動力ユニット3の外観と分解写真を示す。



 この動力ユニット3は、ユニット2とは全く別設計である。 同じ部品は補重用の重りだけの様だ。 構造はシンプルであり、電気配線系も細かな配慮がされている。 台車は90°回転させて脱着させるなど、組付け方法も新しいアイディアが取り入れられている。 トラクションタイヤは片側1輪だけであり、通常のNゲージ動力のように対称形に2輪履かせることをしなかったのは、牽引力に自信があったためなのだろうか。

 モータと直列に挿入されている抵抗の目的は? 速度調整のためなのだろうか。 抵抗値の表示には詳しくないが、実測では1.2Ωであった。

 少し不満なのは、カプラー交換である。 カプラー押さえてとシャシーが干渉していて容易に外せない。 台車まで分解すれば良いが、その台車の取り外しも全部を分解しないと取り外せないため、容易ではない。 そこで、干渉部分の曲がりを期待しての力技が必要であった。 分解調査後、いつもの通りに、カトーカプラーNに交換している。

 

◆ 速度特性

 まず、車速特性から測定した。 なお、補重用の重りは各車両の用途に応じて取り付けている。 詳しくは個別のページを参照ください。

 車速・電圧特性から見て見よう。

 電圧4Volt で、スケールスピードがおよそ 80Km/h に設定されているのは、標準的なNゲージ車両と同じレベルである。 後進側の測定は、構造的に対称形であると考えて省略した。 速度勾配はほぼ同じ様であるが、立ち上り点が少しバラツイテいる。 補重用の重りの違いかも知れないが・・・。

 次に、電流・電圧特性を見てみよう。

 この単機走行時の消費電流は、3台毎のバラつきが大きいく、その値もKATO製より大きいのは、やはり摩擦抵抗が影響しているものと推察する。

  そこで、追加の実験として、No.81とNo.83のユニットをばらしてモータ単品状態にし、無負荷状態での電圧と電流を測定してみた。 その電流値はほぼ 20mA で同じであった。従って、ASSY状態での電流値の差は、駆動系の摩擦抵抗の違いと言える。 なお、直列に挿入されている抵抗も含めて測定している。 

 

◆牽引力特性

 次に、牽引力特性を見て見よう。 供給電圧は 4 Volt に統一している。

 やはりユニット3も、制動領域まで一直線で下っている特性を示していた。 メーカーの設計思想かも知れない。 モータのパワーを浪費しているとも言えるが、速度変化領域が大きくなるため、重連時の協調範囲が広くなったと言えるので、これも特徴のひとつと言えるだろう。 

 制動領域、即ち下り坂でのノッキングやギューギュー音は認められなかった。 走行時の音も動力ユニット2よりもずっと静かであり、“改良されたな!” と感じる点の一つである。

 また、No.82やNo.83では、1回目の測定では凸凹していた特性が、2回目ではまっ直ぐとなっている。 当たりでもついてきたのだろうか? あるいは、メカ機構のなかで何かの状態で変化しているようでもあるが、こんなに違うケースも珍しい。 測定ミスではないかと疑いたくなる。

 次に牽引力・電流特性を見てみよう。

 ユニット2と同様に、制動側の粘着領域まで直線的に落ち込んでいる。 そして、消費電流の値はBトレにしては大きく、何台も重連させる時にはパワーユニットを選定する必要がある。

■ こだわりの調査

 動力ユニット3の摩擦抵抗の大きさが気になるたので、追加で調査してみた。

 まず、動力系を遮断するため、台車のアイドラギヤと集電子を外してフリーに走行できるようにした。 そして、モータの無いシャシー状態、モータを載せた状態、車体も載せた状態と、3種類の重量状態を作り、傾斜台で走り始める勾配を測定した。

 この時、指でつついて走らせ、継続して走行し始めるパターンをA、台をトントンとたたいた時に走り始めるパターンをB、何もしないで勾配をどんどんあげて行き、走り始めるパターンをCとして計測した。 その結果を右のグラフに示す。

 当初は、軸受の摩擦抵抗が影響しているとみなして測定したが、台車の集電子が車輪を押さえている影響も大きいのではないかと推定し、この状態でのテストを追加した。 アイドラギヤの代わりにウォームホイールを外し、集電子やアイドラギヤを組み込んだ状態で測定したのが、SA、SB、SCとして測定したもので、その結果をグラフに追加した。

 予想通りに、動輪系の摩擦抵抗は4グラム以上もあり、車両重量の影響よりも、軸受や集電子の構造が大きく影響している事が分かる。 この摩擦抵抗に関しては、KATO製のピポット式軸受に軍配を上げる。

 

■ ユニット3による重連走行

 牽引力特性を見ても重連には適した特性を持っていると考えているので、実際に走行させて見た。

 車両は 小型動力車両 リストに示す名鉄7000系、名鉄1000系、やくも 381系の3編成を重連させ、40パーミルの勾配を走行させた。 やや高速とやや低速で走らせたが、非常にスムーズであった。 Bトレのオフィシャルサイトで宣伝している 「N700系16両フル編成の動力化」に示された4M12Tの編成でも問題無いものと思われる。

設定電圧: 6.3 Volt
勾配: 40 パーミル
登坂時の速度: 20.4 cm/s ⇒ 110 Km/h
登坂時の電流: max 280mA

 なお、先頭車両同士を連結させる場合に、車両が干渉するので、後ろ向きに連結しています。

設定電圧: 4.0 Volt
勾配: 40 パーミル
登坂時の速度: 9.8 cm/s ⇒ 53Km/h
登坂時の電流: max 245mA

  

■ 牽引可能な車両数

 ユニット3を使用した場合、牽引するトレーラ車の足を同じBANDAI の走行台車Tを使用するとして、牽引可能な車両数を計算してみよう。 計算式は、

 

  動力車の粘着牽引力 > (動力車の重さ+トレーラ車の重さ×台数)×勾配 + トレーラ車の走行抵抗×台数

 

 勾配は、平坦地のみの走行であれば、ゼロでよい。 正式にはsinθで計算しなければならないが、θが小さいので勾配表示のパーミルならその 1/1000 として計算すれば良い。  BANDAI の走行台車Tを使用したトレーラ車の場合、手持ちの車両より推定し、車両重量は 13.5 gf 、走行抵抗は 0.7 gf と仮定する。 また、 動力車は車両重量が 26.5 gf、粘着牽引力を 6 gf として計算してみよう。 

 オフィシャルサイトでの説明のように、動力車1台に対しトレーラ車は3台程度で編成すれば、問題無く走行出来るようである。

 

■ まとめ

 Bトレ用の動力として、BANDAI 製の動力ユニットは有用である。 最近発売されたユニット3は作動音も改善され、かつパワフルと言えよう。

 しかし、自分としてはKATO製にするか、BANDAI 製にするか、迷うところである。 一番の問題点は走行台車の摩擦抵抗である。 トレーラ車用としてはKATO製を使いたい。 すると台車レリーフが制約されるので動力車もそれに合わせるにはKATO製になってしまう。

 室内灯や前照灯を細工しようとすると集電機能のあるBANDAI 製台車を使いたい。 ユニット3を使えば4両編成程度までなら走行出来るようになった。 しかし、室内灯などの細工をしないのであれば、何もKATO製からBANDAI 製に取り換える必要もない。

 来年の春にカシオペアのBトレが発売される。 自分も予約したが、その機関車の動力としてBANDAI 製を使うつもりは無い。 牽引数の計算結果のように、平坦路でも牽引可能な台数は8台程度である。 まして勾配のある我がレイアウトでは、動力車が3台もいる事になる。 自分には、既に、もっとパワフルなS系の機関車を用意してあるのだ。 コンテナ列車にしても同じである。

 

ページトップへ戻る .


 2011.10.21 作成 2011.10.23 追記 2012.3.6 再編集 2016/5/4 追記