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鉄道模型実験室 No.286  直結式慣性円盤のテストを実施

 目標としした摩擦抵抗が10グラム以下の回転円盤が出来たので、機能テストを実施した。実験データとしては得ることが出来るのが、慣性と摩擦の比率に差が少ないようなので慣性力を増やすことにする。

 

■ テスト方法

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 機能テストは、「物理実験を始めよう」(2026/2/21)と同じ方法で実施した。 但し、ロータリエンコーダの処理は、「直交ロータリエンコーダを作る」(2026/2/25)で工作した二つの割込み処理を使ってパルスをカウントするようにした。

void loop() {
  int start;
  unsigned long t1;
  
  start = digitalRead(START_PIN);
  while (start == HIGH) {           // スタートスイッチを待つ
     start = digitalRead(START_PIN);
  }
  t1 = micros();           // 測定時刻
  update_value();
  String buf = String(t1)+","+String(value);
  Serial.println(buf);
  delay(20);
}

 このため、Arduinoのプログラムであるスケッチも「ロータリエンコーダを使ってみた その1」(2026/2/8)で使用した直交エンコーダ用を参考にして少し手を加えた。メインループ部分を左に示すように、20msec 毎に時刻とカウント数を送信する設定にしている。

 また、データの受信と計算処理はExcel のData Streamer によって記録し、データを加工した。

 まず、スタートと終了の間だけのデータを切り出して、ゼロ点を修整しておく。そして、パルスカウントのデータである count の値の差分を計算し冂ount とする。このデータはバラツキが多いので、前後の9個のデータの平均を取る事にした。

 この差分平均のデータの差分をさらに取り、刧冂ount とし、これも前後の9個の平均を求めた。こうして得られた値をグラフに表示させた。

 即ち、count のデータは回転角度を示し、冂ount は回転角速度を、 刧冂ount は回転角加速度を示すことになる。巻付けた糸から見れば、距離、速度、加速度になる。

 

■ 実験データ

 まず最初に、籠の重さを含めて重りの重さが 10.3gf の状態で実験を実施した。

 距離のデータは綺麗に取れていますが、速度のデータではかなり変化していることが分かります。そして、加速と減速の領域がはっきりと判別できるし、速度の変化が直線的でない事もわかります。さらに、加速度のグラフからは、デジタルデータのデメリットが明白に出ていて、これから加速度のデータを読み取るのは無理であることが分かります。

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 次に、重りを増やして実験してみました。今度は、20.8gf の状態です。

 落下時間が早くなり、速度が速くなっているのが分かります。速度カーブもかなり直線的になって来ました。

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 次に、重りをさらに増やして実験してみました。今度は、29.2gf の状態です。

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 今回は、速度のカーブがより直線的になっていることがわかります。加速度のデータはバラツキが小さくなったものの、時間と共に小さくなっていく傾向が明らかです。

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●近似曲線を使う

  このように、カウントデータの差分から加速度を求めるのは困難と判断しました。そこで、重りが着床する前後を分割し、そのデータに2次曲線を近似させて加速度項を計算することにしました。解析方法は「物理実験を始めよう」(2026/2/21)と同じです。近似曲線は右のグラフより求めました。この近似式の2次項の係数を使用して加速度に換算します。

 グラフのプロット点を太めに表示していますが、近似曲線とピタリとは一致していないことが見て取れます。これはExcelの解析限界ですね。

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 まず、単位系をSI単位系の基本単位に換算しておくことにします。ドラム径はφ17.5mm であり、エンコーダ1回転当たり 32×4 = 128 パルスなので、パルス数を距離に換算すると、1パルスで 0.430mm になります。距離の分解能はかなり向上しました。そして、SI単位系の基本単位であるmに換算すると、1パルス=0.000430 m となります。また、時間に関しては 1msec = 0.001 sec ですね。

 次に、質量M は秤で測った重さと同じですから 0.0292kg です。そして力Fは 0.0292×9.807 = 0.2864 N となります。

 グラフの近似式より、2次曲線の係数は、加速側が 0.00008044、減速側が -0.00007319 となります。これを加速度に換算すると

   α1 = 2 × 0.00008044 × 0.430 × 1000 = 0.069178 m/sec2

   α2 = - 2 × 0.00007319 × 0.430 × 1000 = 0.062943 m/sec2

 先回と同様の計算を実施すると、 f = 0.1355 N = 13.8 gf    m = 2.15 Kg  となります。

 また、この値を使用して重力の加速度 g の値を計算すると、g = 9.8032 m/s2 となります。なかなかいい線をいっていますね。

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■ 考察

 この実験結果より、

  1. 糸を引っ張る力Fと摩擦抵抗 f の値が近い場合には、慣性体に掛かる力が減少し、その速度は遅くなります。この傾向はデータからも読み取れます。
  2. 問題点は、速度変化が一定とはなっていないことにあります。このことは、これをさらに微分してその加速度を求めて糸を引っ張る力とすることに無理があることを意味します。この時の摩擦力が糸を引っ張る力や速度によって抵抗が変化している事を示しているからです。
  3. という事は、摩擦抵抗が一定値であるとして計算する方程式が適切ではない事も示唆しているのでは?・・・・・・・・・・・・・・・・。
  4. もし、より正確に求めるとするならば、糸を引っ張る力Fと摩擦抵抗 f の値の差を大きく取る必要があります。このことは、上記の実験結果からでも判断できます。
  5. でも、求めた重力の加速度 g の値はなかなかいい線を行っています。しかし、重さ10.3gf の籠単体でも落下するのに、最後の実験より求めた摩擦力が13.8 gfとは、矛盾した結果となっています。どこかにまだ問題があることが分かります。
  6. 実験の最終目的は重力の加速度を求めることではないのです。機関車が慣性体を引っ張って発進していく様子を観察したいので、摩擦力よりも慣性体の慣性力を大きくしておきたいのです。引張力は張力計でダイレクトに測定するするつもりなので、測定精度は問題にしておりません。
  7. 機関車の引張力は20gf 前後なので、慣性体の大きさを増やしておく方が良いと判断しました。慣性能力はギヤ比の2乗で効いてくるので、今回ギヤ比を2.57から1に減少させました。ドラム径を小さくすることがその減少分をカバーしようとしましたが、結果的には小さくなっています。

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 次回の報告は、慣性体の大きさを増やした場合の実験を報告します。

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 2026/3/5