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鉄道模型実験室 No.175  傾斜台の傾斜角測定ユニットの較正

 傾斜台の傾斜角を測定するユニットの工作が終わったので、この測定システムの較正を実施した。 しかし、いろいろ不具合があったので、あれこれ修正する必要であった。

 

■ 較正のための準備

 測定方法の較正作業は、今までの苦労が報われるのか、あるいは泡となってしまうのかの、期待と不安が入り混じった楽しみの作業なのである。 ます、最初に床面の水平状態を確認しておこう。 測定台の使用場所が傾いていては元も子もないのである。

 水準器を持ち出してチェックする。 左右を入れ替えてもピタリと水平を示していた。 さすがにトヨタホームさんである。

 次にスマホの傾斜角測定アプリもゼロ点較正を実施しておこう。 そして、作業に必要な配線類を測定台の底の穴から外に取り出しておく。 システムの電源ようコード、模型車両を走行させる給電線、およびArduino からのシリアル通信を取り出すUBSコードである。

 較正に必要な機器を下に示す。 ノートパソコン、安定化電源、ノート、そして高さを測るスケールである。

 このスケールは、傾斜台側面に印をつけた十字線のポイント高さを測定するもので、測定台の両端の、それぞれ20mm の位置に記入している。 このポイント間の長さは丁度 1,060mm であった。 床からの高さは、 135mm である。

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 較正方法は、右の写真のように動力車を使って測定用専用台車を牽引させ、測定ゲートを通過させて Arduino から測定データを送信させる。 動力車が周回路を一周することに給電スイッチをON/OFF させて傾斜台を少しずつ上昇させたり下降させたりする。

 動力車手停止している状態のときに、シリアルモニタに表示されている送信されたデータを読み取る。 そして、傾斜台の両側の十字線のポイント高さを読み取ってノートに記入する。

 この作業を順次進めてシステムの全範囲を測定して行く。

 

■ 測定のトライ

 最初に、どのような具合なのか試しに作動させると、ゼロ点の位置が測定外の位置であったことと、測定途中で測定上限に達してしまっていた。 ゼロ点位置はレバーの設定を変更することにするも、測定上限、即ち可変抵抗器からのアナログ電圧をAD変換したデジタル値が、746で頭打ち状態になっていたのである。

 これは、Aruduno のAD変換では1024 まで行けるのであるが、途中で信号を増幅しているオペアップの上限に引っかかっているのである。 「傾斜角測定ユニットの製作」(2013/3/16)参照。

 これは、オペアンプの増幅率が今回のリンク構成に於いては適切でなかったので、オペアンプの増幅率を低減することにした。 今までの増幅率は3.96倍であったので、出力側の10KΩと5.1KΩの直列部分から、5.1KΩの抵抗を取り去って、増幅率を、

   ( 5.1 + 10 )/5.1 = 2.96

倍にした。 修正工作は5.1KΩの抵抗を取り去ってジャンパー線でつなぐのみである。 下左の写真。 

 

■ 較正作業の実施

 上記の手順で較正作業を実施した結果を下に示す。 ノートに書き止めたデータをExcel 上で処理し、十字ポイントの高さデータから傾斜台の勾配をパーミル、即ち1/1000の勾配で表示させた。

 上昇時(UP)と下降時(DOWN)、および駆動装置の限界以上は下左の写真のように手動で持ち上げた状態(OVER)を別々にプロットした。 上左のグラフ。 オペアンプの限界はなんとかセーフであった。 また、上昇時と下降時の差もほとんど無いようであったので、まとめてグラフにしたのが上右のグラフである。

   

 このグラフを見ていて、直線近似ではよりも次数近似のほうがしっくりといくのではないかと思い、2次曲線などを当てはめてみた。 この時注目したのは、ピアソンの決定係数 R-2乗値である。 1次よりも2次曲線のほうがこのR2 の値が高い、即ち相関が高いと言うことで、較正式としてはこちらを採用すべきである。 データは真中で少し凹んでいる状態なのである。 リンク構造なので非線形となるのは当然であるのだ。 また、3次より高くしてもほとんど変わらないので、式は簡単な方が良いのである。

 

■ 参考としてスマホのアプリも検証した

 便利なスマホのアプリでも同時に測定していたのでそのデータをまとめてみた。  下のグラフ。

    

 二つの線が重なっているが、手前側と奥側の傾斜を測定したが、0.2%ほど差があったが原因はよくわからない。 それにしてもなんだこの曲線と言いたいね。 途中でセンシングゲインが変化しているのではないかと思われる。 このグラフを見て、アプリの信頼度は落っこちたね。 これからは参考程度にしておこう。

 

■ 補助フラッパの効果

 昇降駆動装置でなくて、手動で傾斜台を持ち上げた場合でも傾斜角を測定出来るように補助フラッパを設けているが、この場合のセンシングデータの較正も実施したが、そのねらいは同じ較正値で測定出来るかどうかである。

 較正方法は上記と同じであるが、補助フラッパを作動させるため、昇降駆動装置であるとこまで動かし、そこからは手動で持ち上げた。 持ち上げの保持は角材を隙間に噛ませて保持した。 下の写真。

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 測定結果を右のグラフに示す。 スタート位置を変えてケース1とケース2として表示している。

 補助フラッパを作動させ行くと、通常のラインからだんだん離れていく事が分かる。 これではそれぞれのスタート位置の情報が無いと、正確には追っていけないので面倒な事になりそうである。

   少し気楽に考えていたが、やはり駄目のようだ。

 各フラッパの支点の位置と、傾斜台に接触する位置などを厳密に合わせないと較正曲線は一致しないのだ。 当然と言えば当然であるが、もう少しごまかせると思っていたのである。

 駄目だと判断したので、この方式を放棄した。

 

■ 改良案その1

 補助フラッパが駄目なら昇降駆動用のフラッパにロッドの端部を接続して、傾斜角をするべく構成を下の写真の様に変更した。

 しかしこの案もすぐに放棄した。 理由は、ロッドがフラッパの筋交いに干渉してプラスチックのレバーが曲がってしまうのである。 ロッド端部の固定位置を手前の方に移動させると干渉は無くなるが、リンク構成としてはかなりの異形となってしまう。

 そこで、直観的に判断してこの案も放棄した。

 

■ 改良案その2

 次に実施したのは、ロッド端部を直接傾斜台に固定する方法である。 これは、当初から考えていた方法で一番確実な方法なのだ。 でも最大の欠点は、傾斜台を容易に開くことが出来なくなり、傾斜台裏側に設置している各機器のメンテナンスが不可能となる。 これは、ロッドの長さが短いため、傾斜台をわずかしか持ち上げられないので、メンテナンスのためにはこのロッドの固定をいちいち分解する必要があるのだ。 

 この様な不便を解消するため工夫してきたのであるが、 下手な考え休みににたり!  否、無駄骨であったのだ。 今後のアイディアに期待して今回はとりあえずこの方法を採用することにした。 分解容易のために蝶ナットを使う程度の配慮である。 下の写真。

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 上記同じように較正作業を実施した結果を右に示す。 ゼロ点の位置とオペアンプの限界点は、丁度良い具合になっていたので、この状態で合格とした。

 また、較正のための近似式は、今回は3次式が最適と判断した。

 傾斜角の小さいゾーンの微妙な非線形具合がうまくマッチしているのが分かる。

 なお、傾斜の状態を理解しやすくするためパーミル表示で説明してきたが、測定された傾斜角から牽引力を計算する場合には、パーミルではなくて sinθの値を使用するので、こちらの変数での較正式を示しておく。

 

  これで傾斜角の較正はOKとしたので、次は電圧と電流測定の較正を実施する。

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 2020/10/2 作成