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鉄道模型実験室 No.202  逆向き点灯の防止について

 新しく作った登山鉄道のレイアウトを楽しむために、いろいろな小型電車を持ち出してきました。 ただ単に走らせるだけなく、前照灯と尾灯を装着すべく工作も実施してきました。 しかし、例の逆向き点灯の現象が発生しており、未対策のままでした。 今回は、この課題に取り組んでみる事にしましょう。

 

■ 逆向き点灯の現象とは

 前照灯(ヘッドライト)は進行する車両の前面で点灯し、尾灯(テールランプ)は最後尾の車両の後ろ側で点灯するのが正常な状態である。 しかし、鉄道模型に於いては、その逆の場合でも点灯したり、チラチラとする現象が発生する場合がある。 この、後進時の前照灯の点灯や、前進時の尾灯の点灯現象を今回取り上げてみる事にした。

 この現象やその防止方法についてネットで調べると、「逆向き点灯の防止」、「後ろ向きのヘッドライトのチラツキ防止」、「後方ヘッドライトのチラツキ」、「逆起電力チラツキ防止」、「逆起電流によるヘッドライトのチラツキ防止」、「走行時の反対側のライトが点灯する」などの表現で、記述されていました。 まだまだ、用語が統一されちないようですが、ここでは「逆向き点灯」と言う用語を使用する事にしました。 

 そして、その対策として、「スナバ回路」と言う手法が提案されています。 このスナバ回路とは、急激な電圧の上昇を抑える回路の事で、snabber とは急停車させると言う意味とのこと。 その構成は抵抗とコンデンサを直列に接続したシンプルな回路でもある。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 以上はネットでの情報です。

 

■ 気になる情報・・・・・逆起電力

 ネットを調べている中で、気になる情報が有りました。 それは、この現象が、「モータの逆起電力によって引き起こされている」 と解説されていた情報です。

 自分の知識としては、この逆向き点灯の現象は、流れている電流の回路を瞬間的に切断した場合、コイルの性質として流れようとする電流によって電圧がマイナス側に急激に上昇する現象により、反対側のライトが点灯する現象と理解していました。 それが、モータの逆起電力とは・・・・・・・・・?

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 そこで、再びコイルの場合の現象を調べてみると、「自己インダクタンスに比例する起電力が発生する」とか、「電流の変化→磁場の変化→電磁誘導→逆起電力、これが自己誘導です」などの解説を見つけ、こちらの現象でも逆起電力といる用語を使用していました。

 そして、逆起電力と呼ぶ場合、別の現象を指している場合があることを勉強しました。 それは

  1. モータが回転している場合は、発電機としての機能もあるので、それによって発生する電力を逆起電力と呼ぶ場合
  2. 電流遮断時にコイルの自己誘導によって発生する急激な電圧上昇を逆起電力と呼ぶ場合

がある事です。 発生する原理は同じフレミングの法則によるものと理解していますが、現れる状態に違いあると認識しました。

 

■ 実感した実験

 この現象を実感した実験を紹介しましょう。 詳しい内容は後日報告するとして、要点だけ説明します。

 実験の様子を下に示します。

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 モータ付きの動力ユニットの配線をブレッドボード上に構成しました。 前照灯と尾灯も設置し、コントローラからの給電回路中に、回路遮断のためのジャンパー線を設けました。 このジャンパー線を手で引っこ抜いて瞬間的に回路を遮断しようとするものです。

 この時の現象をオシロで観察したものが上記の波形なのです。 波形観察のトリガは、電圧がダウンする場合に設定しており、その後の電圧変化を見ています。 電源は一定の電圧を供給する古いタイプのコントローラを使用しました。 新しいパルス制御方式の電源では、パルス波によってトリガが掛かってしまい、狙いとする実験が出来ないのです。

 

■ 現象には、ふたつのゾーンがある

 波形を見ると、ふたつのゾーンがある事が分かります。 回路遮断時に、マイナス側に大きく落ち込んだスパイク状の電圧波形と、その後、プラス側に戻るも順次減少して行く波形が綺麗に見て取れます。

 そして、最初のスパイク部の現象をとらえるために時間軸を変えて観察したのが右上の画面ですが、スパイク状の波形が綺麗に観察できました。 時間軸は、一目盛50ms から100μs に、即ち500倍に拡大しています。

 そして、どちらの現象も同じ逆起電力による現象と説明されているのです。

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● フリーホイールダイオード

 最初のスパイク状の波形は、コイルの自己誘導によって発生する急激な電圧上昇であり、モータのマイナス側電極に発生します。 この現象はモータだけでなく、コイルを有するリレーや、PWM制御が可能なモータドライバなど瞬断が生じる回路で発生しており、その対策としてフリーホイールダイオードが採用されています。

 リレーの駆動回路の場合は、「システムの構成要素 ポイントの駆動回路」(2019/8/15)にて採用済みですし、モータドライバの場合は「モータドライバとPWM制御 他のドライバ」(2021/5/18)などでその存在を知る事が出来ます。 逆流するスパイク電流をこのダイオードで元に循環させているので、急激な電圧の発生を防止しています。

 しかし、この効果的な手段を、電極のプラス・マイナスが交代する鉄道模型のシステムでは、残念ながら採用出来ないのです。 その代案として検討されたのがスナバ回路なのです。

 

● モータの回転による逆起電力

 もう一つの現象は、発電機としての機能よって発生する電力です。 これは、回転数によって発電電圧が比例するもので、フライホイールを持ったモータが電力遮断によってだんだん速度を落とすにつれて電圧も低下して行きます。 オシロ画面の波形では、200m秒を掛けて綺麗にゼロ電圧まで減少しているのが観察できます。

 この現象は、「動力特性の基本式 モータ特性」(2010/12/15)にて説明しています。 モータの基本特性なのです。 そして、逆向き点灯現象に関係する屁理屈が見つから無いので、今回の現象とは関係ない事象であると判断しました。

 

■ 今後の進め方

 今回、このテーマを始めた理由はスナバ回路の定数を探る事です。 抵抗とコンデンサの最適な値は何かを調べようとするものです。 このため、まず、この逆向き点灯の現象を把握しておきたかったのです。 そして、次のような項目を検討して行きます。

  1. レールを介さずに直接給電すると逆向き点灯の現象は起こるのか?・・・・・・・・・・・・・・・・これは、回路の遮断がどこで起きているのかを検証するためです。
  2. モータを持たない車両では逆向き点灯の現象は起こるのか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これは、本当にモータと言うコイルの自己誘導によって発生する急激な電圧上昇が原因なのかの検証です。 モータを持たない車両では起きないはずです。
  3. どこのどの現象を測定すればスナバ回路の効果を把握することが出来るのか?・・・・・・・これは、抵抗とコンデンサの値を変えて、上記のスパイク電圧の値を測定すれば判断出来ると推察しているからです。 マイナス電圧はLEDが点灯する電圧以下であればOKなのである。
  4. 自分が常用しているパルス制御(PWM制御)の電源では、影響がないだろうか?・・・・・・・これも重要な評価項目であり、相反する結果となるのでは無いかと予想しています。 スナバ回路によって、パルス波形や平均電圧に影響するようであればNGなのである。

 さて、結果的のどうなるか分かりませんが、乞うご期待・・・・・・!

 

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 2022/4/5   作成