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153系に室内灯を組込む

■ 153系について

 

 予約しておいた急行形電車153系を2012年6月3日に入手した。 昭和30年台の学生だった頃、帰省や旅行などでは、鈍行列車は勿論であるが、準急あるいは急行なども利用していた。 特に東海道本線・山陽本線を利用していた小生は、このだいだい色とみどり色の、いわゆる“みかん色”には懐かしさがある。 115系か153系かは定かでないが、「準急比叡」「準急東海」などは我が青春時代の鉄道の思い出である。

 この車両セットに、手作りの室内灯を組込む事にしたので、その製作状況を報告する。 今回、単純な作業上のミスを二つも犯してしまったので、反省を込めて記録に残しておくことにした。 また、今年になって旧製品の153系を中古ジャンク品として入手しているので、構造上の進歩を見て見るのも楽しみにした。 旧製品は、「新・鉄道模型考古学N2」によると、初代か2代目の品番が「415」の6両セットであり、室内灯は勿論、ヘッドライトやテールランプも付いていない状態である。

 今回、室内灯を組み込んだ車両セットは下記の仕様のセットである。

■ 室内灯の見本を作る

 車両を分解してみて、あれ?と思った事がある。 このセットは新規の発売であるにも関わらず、天井を取り外す古い構造である。 窓を形成する車体(ボディ)は床側と一体成型され、その中に座席シートが組み込まれているし、台車を支持しているシャシーは別体で構成されているため、床面は3重の構造となっている。 このシャシーの下面に刻印されている品番は“415”や“417”であり、品番が「415」の旧製品と同じなのである。 そこで、両者を並べて比べて見ると、形状は殆んど同じで、一部、樹脂型を修正して利用した様子が伺える。 成型用の樹脂型は古いけれど、サスペンション機構を取り入れた台車支持や、モータ車の駆動系などは、最新の技術が盛り込まれている様である。 この新旧の比較も面白そうですね。

 さて室内灯の工作であるが、モハ153をモデルに見本として1台を作成する。 方法はあの「夕庵式」を基本に、自分なりの工夫した方法で作製した。 下の写真は室内灯を組み込んだ状態である。

 両側を拡大したものを下に示す。 この写真を見て、賢明な読者の方は、すぐに変だなと気付かれると思いますが、悲しいかな自分は見落としてしまいました。 このため、大きなチョンボをしてしまいました。 

 照明板の端は、通常、銀紙を貼って光の漏れを防ぐだけですが、この見本車両の場合、座席シートの妻板と天井の隙間が小さかったため、照明板を短くし、さらに、照明板の室内への落下を防ぐために、厚さが 0.3mm のプラ板を貼り付けています。 これもチョンボのひとつでした。

 上の写真は、ブリッジダイオードとLEDなどの結線状態です。 ここにもミスが潜んでいましたが、それとは知らずに、この見本をもとにして他の6両分を一気に作成することにしました。

 

■ 工作内容

 見本車両をもとに、他の6両分の室内灯の製作状況を説明します。

 まず、照明板は厚さが 2mm のアクリル板を使います。 290×210 mm のサイズで、100 円ショップで売っていましたが 210 円でした。 この板から、幅は 8mm 、長さは 90mm を6本(見本車両の物を含めると7本)切りだしました。 左の写真は切り出した残りの板ですが、あと 40 本は切り出せそうです。 今までの分まで含めると60本ぐらいは切り出せそうなので、一本当たりの単価は 3.5 円となります。 右の写真が切りだして整形したものです。 あとから判明した事ですが、照明板の長さはあと 15mm は長くてもよかったのですが、後の祭りでした。

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 整形は、切り出した端面をやすりで綺麗に削りました。 あえてスリガラス状にしておくと綺麗に光ってくれます。 勿論上面と下面は傷を付けないように丁寧に扱い、LEDから光を受ける端面は磨き上げる必要があります。 やすりで切断時の傷を取り去った後に、タミヤコンパウンド(仕上げ目)をめがね用のクロスに付けて磨きました。 透明度が上がると照明板の完成です。

 次に、集電シューを作ります。 上左の写真の様に、0.1×100×180 mm の燐青銅板を使用しました。 @340.-。 これから、2×40mm を1両当たり2本分を切り出し、KATOの純正品を参考にして上右の写真の様に折り曲げています。 金属ハサミで切りだした時に板が反ってしまいますが、適当な反りは問題ないのでそのままです。 切り出し後のバリ取りはけが防止のために実施しています。 一本当たり2円ぐらい。

 また、集電シューの押さえも、板厚 1.0mm のプラ板から切り出しました。 左の写真の様に、サイズは、14×7mm で、中央部には高さが 3mm の切り込みを入れています。

 次に電子部品を揃えます。

 左下の写真は、見本で作った室内灯と、残りの部品一式です。 また、ブリッジダイオードの入力側の足を下右の写真のように折り曲げておきます。

 いよいよ半田付けの作業です。 何時も使用している板きれの上で、LEDとCRDを並べてセロテープで固定しておき、半田付けを実施しました。 このように、一度に多量 (?)生産は初めてですが、ここにも落とし穴がありました。

 次に、ブリッジダイオードに取り付け、さらにコンデンサーも半田付けしました。 下右の写真は半田付けが完了した状態です。 ここで、点灯試験を実施して機能を確認しておきました。 全品合格でした。 この後、リード線の不要部分をカットして半田付け作業は完了です。

 次に、照明板に取り付けます。 銀紙を適当な大きさに切り出し、照明板の透明に磨いた端部に密着させて銀紙を巻きこみます。 ショートの危険性がるため銀紙と LED のリード線が接触しないように注意しなければなりません。 完成した照明ユニットを下右に示します。 なお、下左の写真は、このシーンの撮影を忘れていたので後から撮影したものです。 CRD の取り付け位置が左右反対になっていますが、これは問題ありません。 なお、LED の裏側(リード線側)はあえて銀紙で覆っていません。 デッキ側の照明になればと積極的に光を漏らしています。

 いよいよ、車両に組み込みです。  集電シューを車体に取り付けます。 押さえは座席シートの上から差し込みシューを固定します。 それでもやや不安定なので、セロテープを使用して固定しました。 シューの切りだし時に反りかえった状態は、少し修正しておきます。 屋根裏には、銀紙を貼り付けておきます。 そしてシャシーとボディーを組付けます。

 そして、見本車両の様に室内ユニットを取り付けます。 見本車両の場合は座席板の妻板と天井の隙間が小さかったのですが、他の車両は充分な隙間があり、照明板を延ばしていても問題無いようでした。 逆に、照明板の端部が垂れ下がってしまい、窓の外から照明板が見えてしまっています。 見本車両としたモハ153だけが、寸法が違うなんて変だなあと思いつつ、とりあえずそのまま組付けてみることにしました。

 

■ 試運転の結果

 全車用の室内灯が組み上がったので、レイアウト上で試験走行をしてみる事にしました。 通電を開始すると動き出す前から光り出し、全車両の点灯を確認しながら走行を開始しました。 ちらつきも無く、いい感じに点灯していました。 しかし、コントローラのダイヤルを回して速度を上げていくと、なぜか室内灯がひとつずつ消えて行き、ついには全車両とも消えてしまいました。 エーと思いつつ、ダイヤルを上げたり下げたりしましたが、もう点灯することは有りませんでした。

 車両を分解してLEDを見て見ると、焼き切れていました。 なぜ?

 

■ 第1のドジ

 なぜLEDが全部焼き切れてしまったのか原因が判りませんでした。 夕庵さんの解説書を読み返したり、部品の仕様書を見て見ましたが分かりませんでした。 LEDには高い電圧を掛けないことなどの注意書きも有りましたが、電流を流し過ぎるなとは書いてないし、CRDには一定の電流に制限する機能はあるものの、電圧を制限する機能は無いのではないかなど、電気に弱い小生には色々疑問が湧いてきました。

 そこで、以前作ったユニットを持ち出して来て、電圧を掛けて見ましたが異常は有りませんでした。 その日の夕方、愛犬との散歩の途中で、ふと気が付いた点があり、家に帰ってからさっそくチェックしました。 その時チェックした状態を再現したのが右の写真です。

 定電流ダイオード CRD と普通のダイオードを持ち出し、作成したユニット比較したものです。 一番下の部品がCRD 、その上が 普通のダイオードです。 なんと、普通のダイオードをCRDと思いこんで組付けてしまったのです。

 ドジ・・・・・・! ドジドジ・・・・・・・!!  ドジドジドジ・・・・・・・・!!!

 LEDが残り2ケだったのでさっそく WEB で追加注文して待つ事にしました。

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 部品を入手後、原因が判ったので気を取り直して再組付することにしました。 ブリッジとコンデンサは再利用しました。 今度は1セットづつ作業し、点灯を確認しながら作業を進めました。 勿論最高電圧まで掛けても焼き切れない事を確認しております。 不良品を作ったCRD(ほんとは単なるダイオードであった)の配置は、ゲンを担いて反対側に設置した。 右の写真は完成した7個のユニットです。

 

 

■ 第2のドジ

 再組付け中に、1両だけ座席シートの妻板がドアの位置に重なっている車両を見つけました。 良く見ると座席シートを前後反対に組んでいたのです。 格好が悪いので修正して組付けてハタと気が付きました。 座席シートの妻板と天井の隙間が広くなっているのです。 そうです、この車両は見本として最初に組付けた車両だったのです。 その証拠の写真も最初に記載したようにバッチリと撮影していました。

 座席シートを前後逆に組付けるとボディーと干渉し、座席シートが浮き上がり、妻板部分と屋根との隙間が小さくなってしまいます。 右のイラストを参照してください。 正常に組付けると、2mm の照明板が充分に設置出来る隙間が出来、照明板を更に延長させることが可能であり、かつ、照明板の垂れ下がりも防止できるのです。

 やはりドジですね!

 

■ 完成状態

 組付けを完了したトレーラ車を線路上に置き、通電時での点灯状態を下の写真に示します。 丁度良い明るさで、ほぼ均一に光っています。 右の写真は、照明板の端が垂れ下がった状態で、照明板の光が直接見えてしまっている状態です。 何か対策が必要ですね。 第2のドジで、余分な手間が掛ってしまいました。

 部品代はミスった部品を除いて、1両当たりおよそ 110 円でした。 安さもさることなるが、工作する楽しみを味わえたのも幸せでした。 

 参考になれば幸いです。