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マグネマグネティック・カプラーの装着

■ はじめに

 「物置部屋レイアウトのレイアウト変更第2期工事」によって、立派な機関庫が出来上がりました。 これに従い、機関車の切り離しを行うマグネティック・カプラーの車両への装着作業が必要となってきました。 以前、採用していたことがあるため、気楽に作業を開始したのですが、思わぬ事実に出くわし、新たな知見を得ることができました。 その内容を紹介しましょう。

 なお、入手したマグネティック・カプラーは、以前から売り出していたアメリカ製のマグネ・マティックカプラーと、最近売り出されたマグネティック・ナックルカプラーがありますが、ここでは、前者を“KDカプラー”、後者を“MNカプラー”と呼ぶことにします。 リストを下に示す。

マグネ・マティックカプラー (KDカプラー) マグネティック・ナックルカプラー (MNカプラー)
MT-7 11-710 在庫品: 少々 OS 28-088 在庫品: 4個
MT-10 11-711 在庫品: 多数 S長 28-149 新規購入:16個
スカートボディマウント用 No.2001 11-712 在庫品: 少々 S短 28-150 新規購入:16個

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■ 気楽に始めた作業

 

 最初に始めた作業は、以前、採用していたことがある車両の復活でした。 蒸気機関車の何台かと旧形客車や貨車について、KDカプラーを復活していきました。

 主に、アーノルドカプラーポケットに装着出来るMT-10タイプを使用していきましたが、カワイの貨車については、苦労した覚えがあります。

 カワイの貨車のカプラーポケットは小さいため、MT-10タイプが装着出来ませんので、No.2001型のショートタイプを使用しています。 右の写真にその様子を紹介します。 一番右の車両には、カトーN を装着しています。 これはポン付けが可能です。 中央の車両は、以前にKDカプラーを装着したもので、カトーN に戻す時にステンレス線で固定したものです。 これは、No.2001型を装着するために、取付部を削ってしまったため、元の状態に復帰出来なかったからです。 この様な車両を見つけ、以前と同様に、No.2001型をゴム系接着剤で固定したのが、左の車両です。

 カワイの貨車には、この様にNo.2001型を接着しましたが、KATOの貨車は、さすがにKDカプラーを容易に装着することが出来ます。 下右の写真。

 また、MN-OS形のナックルカプラーを専用のカプラーポケットを使って装着した貨車もありますが、これもポン付けでした。

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 これらの車両を走らせて、機関車の切り離しと走行テストを実施しました。 切り離しは上手く行ったのですが、走行中に自然解放が発生した例がありました。

 その時のカプラー連結状態を観察すると、カプラー同士が上下にズレている状態がありました。 左の写真はその状態を再現したものです。 レイアウトのチョットした段差や凸凹で噛合いが外れて自然解放が発生するものと推定しました。

 この対策として、MT-7やMT-10の場合、ナックルシャンクを挟んでいるアダプターをペンチで挟み、(下左の写真) グーと力をいれて、シャンクとアダプターの隙間を無くします。 力を抜くとスプリングバックによって、固着することはありません。

 つぎに、カプラーポケットとの固定方法ですが、これまでは説明書に従ってゴム系接着剤で固定していました、作動不良を恐れて充分に塗布しておりませんでした。 このためどうしても、上下方向がゆるくなるためズレが発生したものと考えています。 そこで、今回は、接着剤付きアルミ箔で上側から覆ってしまい、カプラーポケットにアダプターを固定しました。 この接着剤付きアルミ箔は、台所の流し類の隙間をふさぐためのもので、安価で強度もあり、変形加工にも充分耐えられる。 このため、段差部分をマイナスドライバーで押し込んでアルミ箔を変形させ、アダプターを固着させています。 下右の写真。 これで、カプラーの上下のガタが非常に小さくなりました。

 

■ マグネティック・ナックルカプラーの取付

 今度は、電気機関車など、ナックルカプラーを装着している車両にマグネティック・ナックルカプラーを取り付ける作業を始めました。

 

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 まず手持ちのOS 形カプラーをEF66に装着し、スタンダードゲージで高さをチェック、コンテナ車両とも連結させてOKとしたのですが、ワムと連結すると、高さが合いません。 原因が良く解らないままに、新規注文したマグネティック・ナックルカプラー (MNカプラー)の到着を待つことにしました。

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  手持ちの殆んど車両はKATO製の電気機関車であるため、カプラーはナックルカプラーを装着させています。 このため、トリップピンがついているとは言え、ナックルカプラーと同一寸法(と思っています・・・・)ですので、ポン付けで変更できました。

 しかし、カプラー高さがどうも変です。 そう言えば、ネットでも、高さが云々と言っていたことを思い出しました。 そこで、色々な車両を使って、高さ具合をチェックしてみました。すると・・・・・・・。

 下の写真に色々な組合せをトライしてみました。 皆さんは、この違いを理解できますか?  自分にはチンプンカンプンでした。

 組合せは、カトーN、ナックルカプラー、およびS短形MNカプラーです。 ナックルカプラー同士でも段差があることに不思議とは思いませんか。

 スカートの取り付けが甘いと思ってみたのですが、スカートとフレームとの取付には何ら問題はありませんでした。

 

■ カプラー高さを測る

 疑問に思ったら測定開始とばかりに、最初に測定道具を作りました。 ジャンク箱の中からストラクチャの一部(駅の階段部分)を取り出し、切り込みをいれて、物差しをはめ込んだ簡単な道具です。 これをカプラー部分に当てて線路面からの高さを目視で測ろうとするものです。 

 まず、EF510-1号機です。 ナックルカプラー(1エンド側)の中心高さは、5.5mm のようです。 MNカプラー(2エンド側)では少し垂れ下がっています。

 ED79 11号機でも、同じ値です。 カプラー高さは、7.0/4.0 mm の様です。

 しかし、EF65 1124 号機では、様子が異なってきました。 カプラーの高さが、およそ 1mm 低くなっています。

 最新の形式である EF57 8 号機では、カプラー高さは、7.0/4.0 mm の様です。

 EF15 79 号機や、EF58 60 号機も7.0/4.0 mm の様です。 また、EF15 79 号機とED16 3 号機については、MN-SS 形を装着させましたが、カプラーがポケットの内部で引っかかって上手く動きませんでした。 そこで、カプラーの両側の角の部分を切り取って装着しました。 この車両にはCSナックルが装着されていましたので、本当はトリップピン付きのCSナックルが必要の様です。

 また、最新の蒸気機関車であるC56 144 号機も、7.0/4.0 mm ですね。

 

 今回、装着作業を実施した車両のリストと、その車両のカプラー高さをまとめて見ました。

 カプラー高さは、線路面からの高さを、写真に示したメジャーで、目視で読み取っているため、0.3mm 程度の誤差があるかも知れません。 また、ナックルカプラーの厚みは、3.0mm、KDカプラーの厚みは、2.5mm として読み取っています。

 なお、カトーカプラーN(品番:11-702、11-707)を装着した車両を何台か測定してみましたが、カプラーの厚みが 2.0mm で、高さは殆んどが、6.0/4.0mm前後でした。

 

 良く見ると、ある時期のボディマウント式カプラーを採用している車種のカプラー高さが、低い事が判ります。

 

 また、リストにも示していますが、メーカー(KATO)が取扱い説明書などで記載している推奨するカプラーについて、標準装着を含めて分類してみると、これらの疑問を解決するヒントになります。

 KDカプラーを推奨している車種をピンク色に、ナックルカプラーを推奨したり標準装着している車種を緑色で塗ってあります。

 

 このリストの中には、TOMIXの車両が一台も入っていません。 カプラー取り付けにはかなりの改造が必要となるため、手を出していません。 もともとTOMIX製の機関車は数台しかもっていなし・・・。

 

 

 

 

 

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■ 考察

 これらの疑問を解決するヒントをKDカプラーの説明書の中に見つけました。 スカートボディマウント用 No.2001の説明書の一部を右に示します。

 この中で、カプラーの中心高さは、5.5mm であり、スカートのボディマウント部の底は、高さが 3mm であることを示しています。 カプラーナックル部の厚さを 3mm とすると、ナックル部の下側は、線路面からの高さが 4mm となります。 これは、ナックル部と取付部がおよそ 1mm の段差が付くことになります。

 カトーのナックルカプラーを見ると、この段差がありません。 従って、ここで高さの違いが出来ているのです。 ナックルカプラーとKDカプラーNo.2001を同じ高さに置いてみた写真を下に示します。 ナックル部の高さが異なっている事が理解出来ます。

 では、なぜこの様な事になったのでしょうか。 その理由を上に示したリストが教えてくれました。 

 

 以下の内容は小生が推定したもので、メーカー側の理由と異なるかも知れませんので、ご容赦下さい。 そして、これはトリップピンの有無の問題では無くて、ナックルカプラーの問題であると判断しています。

 

 1) スカート式ボディマウント方式を採用するにあたり、メーカーはKDカプラーを使用することを前提に設計した。 このため、KDカプラーNo.2001採用すれば、カプラーのナックル部の中心高さは、ピッタリと5.5mm になるようにスカートを設計した。

 2) その後、 メーカーは独自にナックルカプラーを開発するも、形状の単純化(?)のため、取付高さを 1mm 上げた構造を採用した。 このとき、KDカプラーとの互換性をあきらめたものと思われる。 その後、このカプラーにトリップピンを取り付けてマグネティック・ナックルカプラーとした。

 3) それぞれの設計に対応したカプラーを使用すれば、ナックル部の中心高さは、ピッタリと5.5mm になるが、新旧の部品を、それぞれ異なるスカートに装着すると、互換性が無いため、既定の高さを確保することが出来ない。

 4) アーノルドカプラーポケットに対応するナックルカプラーについて、カプラー底部と接するポケットの高さは上記と同じく 3mm であるが、ナックルカプラーが登場してもこの寸法は変更する必要はなかった。 同一寸法で対応している。 このため、この形式のナックルカプラー「ナハフ11かもめナックルカプラー」は、KDカプラーと互換性があり、当然カトーカプラーN とも互換性がある。 設計上の高さ関係寸法は問題にならないが、取付上の不安定さが発生しているので、その注意が必要である。

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 このナックルカプラーに関する高さ違いは、設計変更した場合の、新旧部品の互換性の問題であり、製造業では生産手配や、補給品の関係で、常に問題となっている事である。 製品を改良していく過程では設計変更は避けられない問題であるが、その互換性は細心の注意を払うも、性能や信頼性の向上や、あるいはコスト優先で実施され、互換性が犠牲にされる場合も多い。 この場合は、周辺の部品とセットで互換性を持たせ、通常はセットでの取り替えを実施するよう対応するはずである。

 また、ナックルカプラーの形状について、KDカプラーと同じ高さ寸法を踏襲した場合には、その首部に段差が必要となり、蛇が鎌首を持ち上げた様な格好になっていたはずである。 実際の車両の連結機により合致させた形状にするためには、この鎌首形状は許容し難く、互換性を犠牲にしても、単純な直線的形状を採用してのではないだろうか。 鎌首形状のナックルカプラーについて、実際に装着している例を、上に記載している写真に見ることが出来る。 手始めに始めた、手持ちのOS 形カプラーをEF66 に装着した写真である。 やはり格好が悪いですね。 また、単純化したナックルカプラーのすっきりした状態は、リストに示す客車(品番:5175-3、カニ24 17)のボウディマウントに採用された例をみると理解出来ると思う。 ここに、メーカーが決断した理由を伺うことができる。 やはり、次世代のカプラーを考えている様である。

 

 これらのカプラーについて、取付部底面とナックル部の段差寸法、およびナックル部厚さを、しょぼつく老眼とノギスで当たってみたので下記に記す。

名称 カトーカプラーN KDカプラー No.2001 EF66前期形 ナックルカプラー かもめナックル
側面
段差寸法  1.0 mm  0.8 mm  - 0.2 mm  0.5 mm
ナックル部厚さ  2.2 mm  3.0 mm  3.0 mm  2.8 mm

 ナックルカプラーの段差寸法が、他とは異なることが一目了然である。 そして、かもめナックルが 特異であることも、明らかである。 このかもめナックルの段差は、0.5mm 程度で、少し小さいと思うが、リップシャンクを挟み込む構造上の制約のために、これ以上高く出来なかったのではないかと推察する。

 ここで、ふと思いついた。 このかもめナックルを使用すれば、旧式設計であるスカート式ボディマウント方式でも、対応できるのではないかとひらめいた。 さっそく実施してみたが、うまくいないもんですね。 かもめナックルは長さが短いため、トリップピンがスカート部分に干渉してしまいました。 連結間隔が短くなるようで、一石二鳥かと思うのですが、今回はあきらめました。

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 あるネット販売店で、マグネティック・ナックルカプラーOSタイプ(かもめナックルにトリップピンを付けたもの)の説明に、アメリカ形車両に使用されているので日本形車両には高さが高くなるとのことであるが、今回の調査により、その理由がおかしいのではないかと思うようになった。

 アメリカ形車両については、全然知識が無いので大きなことは言えないが、かもめナックルはアーノルドカプラーポケット対応であるので、ナックルカプラー対応のスカート式ボディマウント方式では、1mm 近くは高くなるのは、上記の理由で明らかで、このことを言っているのではないかと想像する。 アメリカ形車両云々では無く、ナックルカプラー対応かどうかの問題ではないのかと思うのであるが、皆さんはどう思われますか?

 

■ まとめ

 機関車の切り離しを行うために、気楽にはじめたマグネティック・カプラーの車両への装着作業であったが、思わぬ深みに入り込んでしまった。 しかし、KATOカプラーNに変わる標準カプラーとして、機関車などに標準装着されつつある戦略製品としてのナックルカプラーについて、メーカーが選んだ設計変更の戦略も、垣間見ることが出来たつもりである。 以前、ナックルカプラーの種類を調査した時(KATOのナックルカプラーの一覧表  2011.5.18)には、この寸法に関する問題には全く気が付かなかった。

 ナックルカプラーの高さに関しては、設計変更による製品の互換性を犠牲にしたため、設計変更前の旧製品には旧部品(KDカプラー)を、設計品行後の新製品には新部品(ナックルカプラー)を使用すべきであり、旧製品に新部品や新製品に旧部品を組付けるクロス互換は出来ないと認識しておけば、対応に混乱することは無くなるはずである。 それでもナックルカプラーを使いたいと思うのであれば、少しの我慢(見た目の悪さや自然解放など)と、自己責任による切った、貼ったの加工を施せばよいのである。 それにしても、この様な事情は、小生の怪しげな調査・解析より、メーカー側から正式に説明しておいてくれたら、より正確に理解出来ると思いますが、皆さんは如何でしょうか。

 ところで、これらのマグネティック・カプラーを装着した車両達について、まだ充分に走り込んでいません。 一部の車両には、 “ 旧製品に新部品を組込んだ ” 状態がありますが、その走行具合を今後チェエクしていくつもりです。 もし、自然解放などのトラブルが多発するようでしたら、“旧製品には旧部品を”の原則に立ち返るか、自己責任による切貼リ工作を実施すれば良いと思っています。