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マイクロのC56を加工する

■ はじめに

 コアレスモータなどの最新技術を搭載したKATOのC56が昨年発売されたため、先行していたマイクロのC56型蒸機は影の薄い存在となってしまった。 しかし、このマイクロのC56モデルは捨てがたい特徴が有ったので、これを生かす方法を検討していた。

 それは、先に報告した「C56のバック走行を調べる」において、

第1動輪にトラクションタイヤを履いたMICRO-ACE製C56は、バック走行で坂道を走らせよ!            

との知見を得ていたので、この力強いバック走行を生かして貨物列車を編成することした。

 しかし、バック走行させるためには、前面のダミーカプラーを実際に使用出来るカプラーに交換する必要がある。 さらに、前面のライトは消灯する必要もあり、かつ、テンダー側に新しくライトを設置することも必要となって来た。 そこで、思い切ってこれらの工作を実施することにした。 その対象として、C56-125 号機を選定する。

 

■ 前面のカプラーの加工

● 前面のカプラーの加工には、いろいろなアイディアがネットで紹介されているが、自分もあれこれ工作した経験より、見た目より使用可能性を優先することにした。

 そこで、ネットで紹介されていたシンキョー・カプラーを使用するアイディアを今回は使ってみることにし、早速カプラーを加工してダミーカプラーと取り替えて走行させてみた。 しかし、相手の車両が脱線してしまい、カプラー交換の効能が発揮出来なかった。

 その様子を観察してみると、曲線部において、車両のオーバーハングにより、カプラー部の横移動が足りなくて、相手の車両を横に押しやっていたためと判明する。 即ち、このC56モデルでは、カプラーの首振りが必要と判断した。 先台車にカプラーを取り付ける場合には、カプラーを固定してもOKの様であったが、ボディに取り付ける場合は、首振りが必須のようである。

● そこで、下記の様な加工を実施した。 まず、下の左の写真のようにシンキョー・カプラーを分解し、ナックル側にある二つの固定軸のうち、手前の軸を切り取る。 そして再び組合わせて、軸を切り取った側の穴をガイドにしてφ0.5mm のドリルで穴を開ける。 右の写真。 既に開いている製品の穴をガイドにするので、容易に加工出来た。

● 次に、尻尾の出っ張りや左右の出っ張りも切り取り、軸の幅と同じ幅にする。下左の写真。 次に、ドリルを抜いて下側の出っ張りをやすりで削って行く。 この作業は、ダミーカプラーの挿入されていた穴の寸法をチェックしながら実施すると良いであろう。 右の写真は、下側を加工中であるが、φ0.5mm の軸を挿入して加工具合をチェックしている。 この場合には、まだ水平がでていませんね。 

● 次にボディ側には、φ0.5mm のドリルで穴を開け、0.45mm の真鍮線を回転軸にして加工してカプラーを取り付ける。 下左は上から見た写真で、下右は下から見た写真である。 このとき、カプラーの首振りが出来るかどうか確認しておこう。 動きが固かったら干渉部分を削っておくこと。 カプラーがフラフラしない程度の固さでも良さそうである。 真鍮線は上下で少し曲げて抜止めとしておく。

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● カプラー本体への穴を開ける位置は、もっと前方にしてもよいが、幅が狭いのでその中心にあけるのは、至難の技であった。 さらに、横移動を確保するためには、首振り部の長さも必要なので、既に開いている一方の穴を活用したのである。 また、黒色のカプラーがあれば良かったのであるが、手持ちには灰色しか無かったので、黒マジックで黒く塗って誤魔化している。

● 完成したカプラーをC56-125 号機に装着した状態を右に示す。 しかし、これで完成した訳ではないのである。 問題は、このカプラーの高さである。 その様子を下の左の写真に示す。 相手の2軸貨車には、カトーカプラーが装着されているが、カプラーの高さがこれだけ食い違っているのである。

● このことは事前に予測しており、対策は考えていた。 その例を下右の写真に示す。 これならばOKであり、走行テストでも、自然解放も無く、280mmの曲線路も問題無く走行出来たのである。

● 下の写真をご覧頂くと理解出来ると思う。 A車とB車は小細工した車両で、C車は通常の車両である。 A車とB車は一方のカプラーの高さがやや高めになるように加工したもので、通常は下の写真のように、A車とB車をセットで使用するば良い。 C56のバック走行の場合には、どちらかの車両を使用してやや高めのカプラーと機関車を連結させれば良いのである。

● 即ち、C56のバック走行専用の車両を作ったのである。 その工作を下に紹介する。

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● バック走行専用の車両を作るため、その候補車両を手持ちの中から探していたらカワイの「ワム123606」が目に付いた。 この車両は、シャシーをアルナインの「とても簡単な木造2軸客車」用に使用したためジャンク品となっていましたが、 ポケットライン「たのしい街のSL列車」の客車をボギー台車化した際に残っていた台車を活用して復活させたものである。 この車両を復活させる際に、2軸貨車用カプラーポケット(Z08-0034)を使用してカプラー部を工作していた。 そして、取付面との高さ調整のために厚さ 2mm のプラ板を使用していた。

● そこで、そのプラ板を取り外すと、簡単にカプラーの高さを上げることができてしまったのである。 このままでは、車両が軽いままなので、水草の重りを貼り付け、重量がやや重めの13.5グラムなる様にした。 脱線防止対策である。

● 同じ工作をセットの他の車両「ワム91656」にも応用使用としたが、「たのしい街のSL列車」の客車はもう手持ちはないのである。 そこで、ジャンク箱を探すと、動力車のシャシーがあったので、この部品を使用することにした。 その時の工作写真が上の写真である。 動力車であったため、車輪には歯車が付いているのである。 この車両の車輪は、φ6.4mm と少し大きいので、代わりの車輪が無かったのである。

● これでバック走行専用の車両を2両確保した。 高さの高いカプラー側には目印として、白ペイントでマーキングしている。 上の写真参照。 なお、この工作に気を良くして、同じマイクロ製のC56-160 号機にも、同様のカプラーの加工を実施した。

 

■ 前面のライトをLED化する

● バック走行時には前面のライトを消灯したいので、その工作を実施することにした。 このC56-125 号機には、電球式のライトが装着されているが、極性がないため、前進走行で点灯するのは当然であるが、後進走行でも点灯してしまうのである。 装着状態を下の写真にしめす。

● 工作するならついでにLED化してしまおうと慾をだしてしまったが、その工作に四苦八苦してしまった。 下の写真のように色々な形状のものを試してみた。 左の写真は上側から見てもので、右の写真はそれを裏側から見たものである。 機関車に装着するが、点灯しないのである。 グーと押さえると点灯するが、手を離すと消えてしまうのである。 上手く行ったと思っても走行中に消えてしまう場合もあるので、使い物にならなかった。

● 上左の写真に示す基板を使用したものは、Bトレ動力のジャンク品から、拝借した基板を切り取って工作したものであるが、これも失敗作である。 原因は、機関車の溝にはめ込む部分にあると睨んだのである。 溝にはめ込むだけでは接触不良となってしまうのである。 オリジナルの部品を観察すると、やはり溝にはめ込むだけでは接触不良となっており、ハンダで膨らんだ部分を溝の端部に押しつけて初めて機能している様であった。

● そこで、溝に挿入する部分は、0.1mm のリン青銅板を使用してバネ作用で接触保持することにした。 こうすると基板を溝にはめ込む必要がないので、市販の厚い基板が使用出来る。 その細工をした部品を右上の写真に示す。 そして、その裏側の写真を下左に示す。 リン青銅板はしっかりと基板にハンダ付け出来るし、CRDやダイオードもハンダで固定することが出来た。 さらに、チップLEDもしっかりとハンダ付けするこも出来た。 下右の写真。

● 機関車に取付た状態を下に示す。 基板を上下逆にして装着出来れば、下の写真の様に傾けて取り付ける必要が無く、水平に装着できるのであるが、使用したチップLEDの極性のため、基板の裏側にしか装着出来なかったのである。 車両の「右プラス前進」に合わせると右側をプラス極に持ってくる必要が有ったのである。

 

■ テンダー車にもライトを新設する

● 前面のライトのLED化成功に気を良くして、テンダー車にもライトを新設することにした。 テンダーを分解して何処にどうやって装着するか、いろいろ考えてみた。 上記のチップLEDの工作にならって、早速応用することにした。

● まず、LEDユニットの工作を紹介しよう。 下の写真は、切り出した基板にCRDとダイオードをハンダ付けしている工程である。 「右プラス前進」に合わせて部品を配置する。 

● 次に裏側のハンダ面をやすりで削って水平にすると共に、少しでも部品を薄くしておくためである。 そして、チップLEDの片側をセロテープで固定して、一方をハンダ付けを実施する。 その後セロテープを剥がして、反対側もハンダ付けを実施する。 チップが固定されているのでハンダ付けが容易である。

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● 使用したチップLED は、左の写真のように、高輝度サイドビュー白色LED NSCW008AT である。 

秋月のサイトによると、このチップは高輝度チップLEDで、 日亜のサイドビューLEDの中でも1個単価が安いモデルとのことです。
( 主な仕様 )
  ◆発光色:白色
  ◆サイドビュータイプ、発光面がサイドビューで取り付けて側面が発光するタイプ。
         チップの大きさが比較的大きく、ハンダ工作がし易いのである。
  ◆VF:3.6V@20mA
  ◆逆耐圧:5V
  ◆輝度:600mcd@20mA
  ◆販売単位:1パック20個単位の販売です、1パック注文すると20個届きます。
     1個あたり10円のお買い得LEDです。
● 出来あがったユニットを車両に取り付ける。 まず、ダイキャストブロックの上面に溝を掘ってユニットが挿入出来るようにする。 ヤスリ工作でコリゴリと力仕事であった。電極は、一方をブロックに直接接触するようにした。 溝の間でバネ作用によって接触するようにしている。 他方の電極はリン青銅板を細工して下側まで伸びるようにしている。 ブロックとの絶縁が必要な部分は、全てセロテープを貼り付けている。

● ブロックの裏側の配線は下左の写真の様に、リン青銅板で端子を作り、他の電極は、φ2.0mm の穴をドリルで掘って、カプラー用のスプリングを挿入している。 下右の写真は、テンダー車の上面部品を装着した状態である。 

● 下左の写真は、さらに中間部品を組付けた状態であり、細工した電極が見える。 この部品をテンダーのシャシーにはめ込んだ状態を下右に示す。 この時はテンダーの上面部品を外した状態で撮影している。

● もう一度上面から見ると、ユニットの下側にチップLED が覗いているのが判る。 また、 テンダーの上面部品については、ライト部分にφ2.0mm のドリルで真っ直ぐに穴を開け、内部のネジ部のボスを貫通させている。 この場所は、外部の部分とギリギリであったため、下右の写真のように接着剤で盛り付けているが細工は下手くその一語につきるが、気にしない事にした。

● 導光材として、φ1.0mm の光ファイバーを使い、内径1.5の熱収縮チューブを使ってファイバーの回りを遮蔽してから、ライト部分に挿入している。 ライトの入り口は、φ1.8mm のクリアレンズをはめ込んでいる。 これは、ガンダム用プラ工作のコーナーで見つけたものである。

● ライトの点灯状態を確認しておこう。 下左の写真はテンダーの上面部品をまだ取り付けていない状態であり、右の写真は完成状態である。 綺麗に光っており、この工作が大成功であったことを確認出来た。

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■ マイクロ製C56による貨物列車のバック走行

● 完成した車両を我がレイアウトで走行させてみた。 列車は2軸貨車を18両連結して、凸凹車両の昔懐かしい貨物列車として構成する。

● 我がレイアウトは、機関車庫の外側を回る部分の周回路部分が最大勾配で設計しています。 設計上は40パーミルですが、出来あがった状態は計測出来ませんので、これよりも大きいかも知れません。 この坂を登りきれる最大貨車数を調べてみました。

 

● マイクロ製C56-125号機のバック走行ではビデオでも紹介したように、18両の貨車を牽引して下左の写真の様に坂を登りきります。 貨車の重さや走行抵抗がバラツキますが、この編成からマイクロ製C56バック走行専用の貨車を取り外した17両編成にし、KATO製のC56で牽引させたところ、下右の写真の位置でスタックしてしまいました。

● そこで先頭から貨車を一つずつ抜いていくと、10両になっても下左の写真に示す位置でスタックしてしまいます。 9両に減らすとやっとこさで坂を登りきることが出来ました。 マイクロ製とKATO製のC56型には、左上の写真と右下の写真に示すように、これだけの違いが有ります。

 

■ まとめ