HOME >> 鉄道模型実験室 > 新しいテープ式室内灯を作る FCOBテープライトの特性調査
テープ式LEDを使った室内灯ユニットは、多くの方がいろいろな工夫を凝らして工作されている。最近では、新しい製品であるCOBや5ボルト仕様のテープLED、さらには高容量のチップコンデンサを使った工作を目にするようになった。これらの情報より、ふとあるアイディアが横切ったのです。
そして、この、COBテープ、5ボルト仕様、高容量のチップコンデンサをキーワードとして、改良型のテープ式室内灯を検討することにしました。
■ キーワード
新しい商品について、その特徴を考察してみよう。
COB テープLED:
5ボルト仕様:
高容量チップコンデンサ:
今回、特に注目したのは高容量チップコンデンサの出現である。DCバイアス特性はまだ改善されていないのであるが、5ボルト仕様のテープLEDと組み合わせれば容量低下を抑えることが出来て、目標とする実質100μFのコンパクトなコンデンサシステムが構築できるのではないかと考えたのである。その上にCOBテープを使うとより均一に光る室内灯に仕上がるメリットもありそうだ。
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■ チップコンデンサのDCバイアス特性
このアイディアを実施するためには、チップコンデンサのDCバイアス特性について再認識をしておこう。まず、今回、秋月から入手した村田製の47μFチップコンデンサのデータシートより、特性グラフを無断で右に転記します。
コンデンサの実質容量は、DC5voltでは約60%の28μFに、DC12voltでは約20%の9μFに低下してしまいます。でも、DC5voltの場合はDC12voltの3倍近く効果が上がっているのです。
即ち、このメリットと高容量チップコンデンサの出現をかけ合わせるとコンパクトな室内灯ユニットが出来そうな気がします。
尚、このDCバイアス特性による実施容量の低下現象は、チップコンデンサの材料であるセラミック材による影響なので、電解コンデンサでは見られない特殊な現象であるとの事である。
■ 入手したCOBテープLEDの内容
最初に、アマゾンにて入手したCOBテープLEDの構造と特性を調べることにします。まず、製品の仕様です。
なお、FCOB とは、Flexible Chip On Board LED の頭文字を取ったものと推察します。
そのパッケージの外観と、USBコンセントに接続して点灯させた状態を下に示します。
そして、テープを切り出してサイズを測定した状態を下左の写真に示します。切断可能な位置は12.5mmの位置ですので、10cm当たり8個の小片に切断することが出来ます。
今回は、実験のために10cm の長さに切断しました。Nゲージ車両用として想定した長さです。しかし、リールに巻かれた状態でしたので巻き癖がついていたので、アイスキャンディーの芯棒に固定しました。上右の写真です。接続のためのリード線も半田付けしています。
■ 電流-電圧特性を調べる
この部品を使用するにあたり、その特性を把握しておく必要があります。このため、最初にテープLEDの基本特性である電流−電圧特性を測定しました。
測定回路は、安定化電源の直流出力端子のプラス側をテープLEDのプラス端子に接続し、テープのマイナス端子と安定化電源のマイナス側との間には電流測定用のデジタルテスタを接続しました。下左の写真。
安定化電源の出力電圧を少しずつ上げてゆき、その時の電流値を読み取っていきます。その時の電圧は安定化電源のモニタに表示された電圧値を、電流はテスタの値を読み取り、パソコン上のExcelにそのデータを入力させて行きました。点灯状態を上右に示します。
充分な電圧を掛けると、上左の写真のように一様に綺麗に発光しています。そして、電圧を絞って弱い光にすると、LEDの部分が確認できます。上右の写真。表示されている切断可能な位置をひとつのブロックとすると、それぞれのブロックの中には各4個のLEDが確認できます。即ち 4×8ブロック=32個/10cmとなり、1m では320個のLEDが使われています。仕様で示された320LEDs/m の意味と合致します。
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■ 測定結果
計測した電流と電圧の関係を右に示すようにグラフにしました。2.5ボルト付近から光り出し、電流も増加しました。電圧5ボルトではおよそ120mA の電流が流れます。
この電流特性は、テープの長さが 10cm の状態での測定値です。このため、2.5cm でのブロック単位や任意の長さの場合は、比例計算で算出してください。並列接続ですので電流特性は長さに比例します。立ち上がり部分の電圧は変化しません。
これを1mの長さに換算すると、この10倍の電流が流れます。従って5volt電圧で使用した場合、120×10×5=6,000mW=6W と計算されます。 仕様で示された 5V 6W/m と合致します。
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鉄道模型の室内灯として使用する場合、フルに5ボルトを掛けてしまうと眩しすぎます。このため、穏やかな光り具合にするには、適応する車両に合わせる必要がありますが、おおよそ 20〜30mA 程度の電流値で充分と思われました。
この様な電流値に制限するためには、制限抵抗を設け、適切な抵抗値を設定する必要があります。この場合には、下に示すようなグラフを描いて判断しています。
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電流制限抵抗による電圧降下量を E1 とし、電圧降下後の電圧を E2 とすると、
E1 + E2 =12volt
となります。この時、抵抗R1に流れる電流を I とすると、E1 の値は、
E1 = R1 * I
となるので、
E2 = 12 - R1 * I
となります。このE2と I の特性を線図で表すと、右のグラフに示す様に右下がりの直線となります。
抵抗とLEDを直列に接続した場合、E2と I の値はテープLEDの特性と合致します。即ち、グラフに赤丸で示すポイントが抵抗とテープLEDを直列に接続した場合の状態を示すことになります。
即ち、制限抵抗が330Ωの場合は、27mAの電流が流れることになり、470Ωの場合は、19mAの電流が流れ事がわかります。また、電源電圧が12volt よりも低い場合は、直線のスタート位置を左にズレせば良いので簡単に求めることが出来ます。
このように、グラフに表示させて検討すると、LEDの特性が非線形の場合でも容易に検討することが出来ます。さらに、各仕様が変化したとしても、その変化の影響具合を目で見て考察出来るので、電気の門外漢である小生には理解しやすい道具となっています。
■ ブロックの構成
切断可能なブロック部分を切断して、内部構成を観察することにしました。
上部に形成されている蛍光シリコン部材は半円形の蒲鉾状態になっています。弾力があるので柔軟に曲げることが出来ます。下左の写真。でも半透明なので内部の様子が分かりませんし、形成されている回路状態も分かりません。そこで、この蛍光シリコン材を剥がして見ました。下右の写真。
よく見ると、このブロックには4個のLEDと、2個のチップ抵抗が半田付けされていました。表面のコーティングを削り取って回路構成を観察しました。
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どうやら左右対称の構成で、2個のLEDと1個のチップ抵抗が一つのユニットを構成しているようです。
どこが光るのかリード線を半田付けして電圧を掛けてみましたが残念ながら点灯しませんでした。蛍光シリコン材を剥がした時に、チップLED や配線も剥がしてしまったようです。一つぐらい点灯してもよかったのですが、全滅していました。
さらに表面のコーティング被覆を剥がして回路構成を観察しました。右の写真。
2個のLEDをまとめて、ひとつのチップ抵抗を介してGNDの接続していました。LEDの接続方法としては良くない方法ですが、LEDの特性が揃っているとの前提で設計されているようです。
チップ抵抗の抵抗値をテスタで直接測定してみると、約 270Ωでした。テープ10cm 当たりでは16個の抵抗となるので、抵抗だけの合成値と考えると 270/16 = 17Ωとなります。
上記の電流−電圧特性のグラフより、上昇部の勾配は、R = 2V/100mA = 20Ωと計算されるので、合致していると判断できます。
■ まとめ
テープLEDの内容と特性を把握することが出来ました。そして、電流制限抵抗も設定することが出来るようになりました。即ち、510Ωを使用することにし、実際に模型車両に組み込んで様子を見ることにします。
そして、いよいよチップコンデンサとの組合せ実験に取り掛かることにします。
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2024/2/18