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鉄道模型実験室 No.237  新しいテープ式室内灯 チラツキの限界を探る

 パルス信号を使ってテープLEDのチラツキ状態を観察している。今回はチラツキの限界を探るべく回路を工夫して状態を観察した。さらに、照明器具でのチラツキ関連としてのフリッカーに関する資料をもとに比較してみた。

 

■ チラツキの限界を探る実験方法

 今までの実験回路を工夫して次のような実験回路を組み、観察を試みた。

 発生させるチラツキパルスとして、パルス幅の変更は今までの実験回路でよいのであるが、パルスの落込みレベルを調整する方法をいろいろ試みた。プログラムを変更する方法もあるが、まず、トランジスタを使った回路でいろいろテストしてみた。しかし思うような結果が得られなかったので、単純に上の様な回路にした。

 VR2の回路にてパルスの底の電圧を調整し、それにパルス回路であるVR1の回路を加算させるようにした。そして加算された電圧値が点灯時の電圧になるように調整するのである。LEDに流れる電流は、R3の抵抗の電圧降下量を計測して換算するようにした。このR3の抵抗値はテスタで測定すると R3 = 325Ωであった。

 この回路による実験装置を下に示す。

 チラツキの観察は、オシロの画面を見ながら実施した。

 

■ 実験結果

 実験の手順を紹介しておく。

  1. パルス底の電圧Y2をVR2を調整して設定する。
  2. 点灯時の電圧Y1をVR1を調整して設定する。
  3. XY表示を変更して立下りのタイミング X1を 0 にする。
  4. チラツキの様子を見ながら、パルス幅を調整する。
  5. この時の立ち上がりのタイミングであるX2を読み取る。

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 こうして、パルス底の電圧を変えながら、チラツキが無い場合、わずかに認められる場合、パッチリと感じる場合について、そのパルス幅を計測した。

 電流値は抵抗値と電圧降下量から換算し、横軸をパルス幅( msec )に、縦軸をパルス底の電流に取ってグラフにし、その結果を右に示す。

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 自分は、LEDの明るさを測定する手段を持ち合わせていないので、ここでは、LEDの明るさはLEDを流れる電流値に比例する と言うもっともらしい仮定のもとで屁理屈を進めています。

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 パルス底の電流値はチラツキによる減光具合を示しているので、落込み量の大きさでチラツキの認識が変わってくることを示していいる。落込み量が大きいと、短時間でもチラツキが感じられるということである。

 何だか、今までの認識と違ってきているので、少し不安になって来ました。

 

■ 照明機器のフリッカーの問題

 先回の報告でも述べた照明機器のフリッカーについては、今回のテーマであるチラツキに関係していることが分かった。そこで、ネットでいろいろ調べてみると、この問題は蛍光灯が普及し始めたズーと昔から問題となっていたのだ。そういえば昔の蛍光灯はチラチラしていましたね。興味のあった資料は、このフリッカーに関する安全規格があることである。それは、IESNA(北米照明学会)やIEEE Std. 1789-2015(視聴者の健康リスクを軽減するための高輝度 LED の電流変調に関する IEEE 推奨実践方法)などである。

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 そして、そこで取り上げられている数式や基準値を参考にして、自分の実験結果と比較することにした。この検討にはいくつかの大胆な仮定を設定しています。
  安全規格では、交流の様に変化する場合を想定しているようですので、周波数の考え方が前提となっているようです。 でも、室内灯のチラツキ問題は単発のパルスと考えているので、パルス時間を周波数に換算する必要があるのです。このため、左のイラストの様に考えることにしました

 今回実験したパルス波形は、イラストの太い実線の形状です。ここで、落ち込んだパルス波形を連続したパルス波形の一部と考えることにします。すると点線で示した連続パルスの一部分であることになり、パルス波形から周波数に換算出来るようになります。

 即ち、パルス間隔を x msec とすると、それに対応する周波数 f は、

       f = 1000/2x   ・・・・・・・・ (1)

となります。そして、規格の判断基準となっている 90Hz は、パルス幅に換算すると、x = 5.6msec となるので、この範囲での検討を実施することにします。

 また、安全規格では、照明の強さの平均値として、Y1+Y2 の値を使用していますが、単発パルスでの平均値は、2*Y1 を使うことにします。上記の規格では、安全基準の元となる値として、パーセントフリッカーなる値を定義しています。

   パーセントフリッカー = 100 *(波形の最大値 - 波形の最小値)/(波形の最大値 + 波形の最小値)

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 即ち、我が変数を使用すると、

      Pf = 100 * ( Y1 - Y2 ) /2*Y1   ・・・・・・・・ (2)

となる。そして、生物学的影響を低リスクにする場合の最大パーセントフリッカーは、

   maxPf = f  * 0.025    ・・・・・・・・ (3)

であり、生物学的影響を防止する場合の最大パーセントフリッカーは、

   maxPf = f  * 0.01    ・・・・・・・・ (4)

とのことです。

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 この(3)式と(4)式の条件を計算して、我が測定結果のグラフに重ねたのが右のグラフです。結果は期待外れでした。この考えが適応できないようです。

 でも、照明の強さを電流値で評価しているので、自分の考えはあながち間違いではないと思われるし、実験データももっともらしいので、次のように考えることにしました。

 

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■ 新たな評価方法の検討

 蛍光灯などに採用されている評価方法を鉄道模型の室内灯のチラツキ問題に適応させるのは無理があるようです。 でも、同じような考え方で評価できるのではないかと考えて、評価の式をそっくり頂き、係数値だけを我が実験結果に対応してみることにしました。 即ち、

   maxPf = f  * α    ・・・・・・・・ (5)

として、係数αの値を探りました。

    近似1:  α=0.12

    近似2:  α=0.22

とすると、右のグラフのようにほぼピタリト近似出来ることが分かります。

 

■ まとめ

 LEDのチラツキ現象、即ち、フリッカーについては学会では研究されつくしていると思われます。そして、チラツキを感じるのは明るさの変化具合とその時間が関係することや、その大まかなレベルも今回の実験で分かりました。

 しかし、自分の観察結果とは大きくかけ離れていたので、自分なりの評価関数を探りました。これで、一歩前進です。 でも、自分としてはまだ問題は解決していません。まだまだ困難な問題が残っているのです。

  1. 先回報告した、100μF電解コンデンサと18mAのCRDの組合せの場合の電流推移線図と、今回得られた線図をどう組合せてチラツキ程度を判断するのか、屁理屈がまだ分かりません。どちらも、時間と電流の2次元の線図なのですので・・・・・・・・・・。
  2. 鉄道模型の実走行時においては実際にどうなのか? チラツク要因となる電流変化やその時間の頻度データが無いのです。
    ある問題の対策を検討する場合、最初に現状把握を実施するのが常套手段なのですが・・・・・・・・・・!  これが難問なのです。その測定方法から検討する必要があるのです。

 今回は、またひとつの手掛かりを得たが、次の攻めどころを暗中模索中である。

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 この原稿は3/15に書き上げたのですが、先が見えなかったので保留しておりましたが、やっと動き出しました。

 

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 2024/3/25