HOME >> 鉄道模型実験室 > 粘着特性を測定しようU やっと出来たぞ
先回まで、直線路を使ってすべり率のデータを測定していたが、この測定方法では”小さくて緻密なNゲージ模型を、単にいじめいる状態なのだ” と考えて、中止することにした。でも、振り返って考えてると、小型のターンテーブルを使った測定装置でも同じような状態で測定できることに気が付いた。即ち、性懲りも無く、また始めてしまったのです。
■ はじめに
再開するにあたって、先回までの経験を生かして、次のような方針で実施することにした。
使用した車両は、鉄コレ用の動力ユニットTM-04 <15m級A> である。幸いにも、このユニットのストック品があったので、これを使用してテスト車両に仕上げた。片台車駆動方式で、フライホイール搭載、ミニカーブレール対応品である。
でも、テスト車両を仕立てて測定を開始するも、今回もいろいろなミスが重なって四苦八苦してしまった。無駄な2週間であったがその様子は後日報告・・・・・・、否、失策の記録メモとして報告することにして、とりあえず結果だけを速報として報告しよう。
■ 測定結果
一番欲しかったグラフをまず示そう。下左のグラフである。横軸をすべり率とし、縦軸を粘着力で示す。そして、プラス側が駆動状態であり、マイナス側が制動状態である。また、動力車のモータに給電する電圧は一定にして測定しているので、その時の電圧をパラメータとして表示している。電圧を変えると引張力特性が変化するので、車速による粘着力の変化が表されると考えたからである。
そして、下右のグラフは、横軸を車速にとり、縦軸をすべり率として表示したグラフである。

まず、左のグラウより、供給電圧を変化させても、粘着力とすべり率の関係は、ひとつの綺麗なカーブを描くことが分かる。粘着力を台車の軸荷重で割ると粘着係数となるが、特性カーブの状態は変化しない。即ち、このカーブ特性が、かのμカーブ特性と言える。
そして、Nゲージのトラクションタイヤの無い動輪とレールの間のμカーブ特性は右上がりの特性となることが分かる。
また、電圧を変えても同じ曲線に乗ってくるので、この特性は電圧に影響されないことが分かる。これは、車速には影響されないとも言えるのだ。ちなみに右のグラフを見ると、すべり率と車速の関係は、他の要因が大きく影響していることが分かり、単純には関係付けが出来ないことが分かる。
■ 測定の様子
今回の実験装置と測定時の状態を下に示す。測定台は小型のターンテーブル測定装置を使用した。そして、動力車の給電は安定化電源を使用し、記録装置としてノートパソコンを使用した。測定は、リアルタイムモニタとしてノートパソコン上に表示されるグラフを見ながら、測定条件をいろいろ変化させたて実行した。
テスト車両の状態を下に示す。動輪は後ろの台車だけでなのでここに集中的に重りを載せている。
また、写真では分かりずらいが、カプラーは台車カプラー方式なので、台車の中心、テーブルの中心、引張力が作用するピンの位置、ロードセルレバーの中心など、その位置関係はほぼ直交する位置になるようにしている。「小型のターンテーブル式実験装置を作ろう 牽引力の測定部」(2023/9/22)を参照ください。
すべり率を計算するためには、動輪周速度と車速の計測が必要である。この動輪周速度は動力車モータの回転数をセンサで検知して動輪周速度に換算する。また、車速はターンテーブルの回転速度を計測して換算する算段である。
粘着力は、台車カプラーに長い引張棒を連結させ、レバーを介してロードセルに接続して引張棒引張力を測定している。
なお、未だに用語が混乱しているのでご容赦ください。ここで使用している ”粘着力”、”引張棒引張力”、”牽引力”は、厳密にいうと異なるのであるが、他の車輪の摩擦抵抗力などを無視しているので、同一の内容として使っています。・・・・・・・・・・今までの経緯上慣用的に使ってしまっています。ごめん。
■ その他の測定項目
この装置で測定可能な項目も同時に測定しているので、その結果を下に示す。なお、粘着特性は上に示したグラフと同一である。



今回の測定は、スタック領域での状態を執拗に追っていたので、低速域での特性が綺麗に観察できました。
牽引力と車速の関係を示す左のグラフを見ると、データのバラツキはあるものの、今まで追求してきた模型車両の牽引力特性(=引張力=粘着力)が綺麗に出ていることが分かります。駆動領域と制動領域でのすべり状態や遷移点の様子が分かります。また、牽引力と電流の関係を示す中央のグラフからは、その遷移点がクッキリと現れています。なお、電圧によって電流値が少しずつ左にドリフトしてしているのが分かりますが、これは動力機構部の当たりが付いて来たのではないかと考えています。それは、測定の順番が、4v→5v→3vと実施したので、測定ごとに少しずつ左にズレていることから推察しましたが・・・・・・・・。
■ まとめ
今回のトライにて、ターンテーブル式測定装置でも粘着特性が測定できることが確認できました。しかし、測定には多くの制約がありますので、どのようなモデルでも測定できるとは限りません。そこで、動輪をトラクションゴムに替えたり、荷重を変えたりしながら、いろいろな実験してみたいと考えています。
また、今の状態では車速がゼロの時、即ちスタック時の状態で測定できないないので、すこし工夫してみることにします。でも、とりあえずは、今回の失策の記録をメモとして報告することにしましょう。
2025/10/28