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登山鉄道自動運転システム  レールエンドの処理回路の改良

■ はじめに

 今回は、まだ残っていた問題点の改良を検討した。 それは、レールエンド処理回路について反対側のLEDがチラチラ点灯する問題である。 モータのフリーホイール電流によって、本来とは反対側のLEDが点灯してしまうのだ。 これはパワーユニットがPWM制御になってから発生した、機関車の後方ライトがチラチラと点灯する件と同じ問題であるので、対策案としてスナバ回路を追加することを検討してみた。

 

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■ スナバ回路の検討

 反対側のLED点灯は、PWM制御による矩形波電力により、電車のモータにフリーホイール電流が発生するため反対側のLEDが点灯する現象である。

 パワーユニットの場合は、このフリーホイール電流をパスさせれるためのフリーホイール・ダイオードが挿入しているが、前後照明用のLEDではこのダイオードが使用できないのである。 片方のLEDを殺してしまうことになるからである。

 そこで、マニアの間ではスナバ回路を追加加工しているし、メーカーでは何らかの細工がしてある様子である。 ここでは、そのスナバ回路を追加してみることにした。

 なお、スナバ回路とは、抵抗とコンデンサを直列に接続した回路である。 右の回路図を参照してください。

 実験は、作成した制御ボックスからフィーダー線より電源を供給し、「緩衝器付エンドレールでの自動停止装置」にて工作した残りの2本のレールエンドを使用した。 回路はブレッドボード上に構成し、オシロにて波形の観察を実施した。 なお、このレールエンドは、スイッチバック部と頂上駅に使用するものである。

  まず、スナバ回路無しの現状から実験を始めた。

(1) スナバ回路無し: 鉄コレ電車

 下に示すオシロ画面は、左から、入線時、停止時、出発時の波形を示す。 入線時にプラスとなる右レールをチャネル1(黄線)に接続し、マイナスとなる左レールをGNDにしている。 そして、レールエンドのブロックで遮断される左奥のレールは、チャネル2(青線)に接続した。

 上左の入線時の波形は、プラスとなる右レールの黄線がPWMの波形を示し、左奥のレール(青線)は左レールとつながっているのでGND状態である。 上中央の波形は、車両がレールエンドに接触している状態なので、左奥のレールと左レール切断されている状態である。 このため、左奥のレールは電車のモータを通して電流ゼロであるが、右レールと同一電圧となっているため、黄線と同一の波形となっている。 上右の波形は、出発時の波形であるが、右レールと左レールの極性は反転しているものの、オシロ上では左レールをGNDとしているので、右レールがマイナス電圧として表示される。 波形の形は入線時と同じでパターンで上下が反転しているのである。

 周波数は 880Hz と表示されているが、トリガレベルの調整を忘れていたので、表示されているデューティ比は正確に計測されていない。

 肝心の電圧波形であるが、PWM 制御の矩形波を呈しているものの、OFF 時には、モータのフリーホイール電流によって、反対側にも大きな電圧が飛び出ている。 そのピークは15V にも達しているが、これによって反対側のLED が点灯するものと推察する。 この飛び出している反対電圧を無くする必要があるのだ。

 

(2) 51Ωと10μF によるスナバ回路: 鉄コレ電車

 使用する抵抗とコンデンサは、ネットなどの情報から、10〜20Ωの抵抗と1μF程度のコンデンサが良さそうな気がしていたが、その仕様の部品は手持ちには持ち合わせがなかった。 そこでまず、手持ちの抵抗とコンデンサを使ってスナバ回路を構成した。 

 スナバ回路によって反対側の飛び出し具合が小さくなっているのが分かるが、完全には無くなっていない。 そして反対側のLED はまだ少し点灯していた。

(3) 51Ω×2個(並列)と10μF によるスナバ回路: 鉄コレ電車

 抵抗を小さくするために 51Ωの抵抗を並列に並べて半分の値とした。

 飛び出し量はさらに小さくなっており、反対側のLED は少しチラチラする程度に低減していた。

(4) 51Ω×2個(並列)と10μF×2個(並列)によるスナバ回路: 鉄コレ電車

 コンデンサを2個並列に接続して容量を大きくした。

 反対側のLEDはまだ少しチラチラしているが、小さなヒゲは無くなっていた。

(5) 51Ω×2個(並列)と10μF×2個(並列)によるスナバ回路: 登山電車

 今度は電車を変えて測定する。 速度調整ダイヤルはやっと動き出すていどまでボリュームアップしている。

 電車を走らせるためにデューティ比を上げているのが波形でも分かる。 そして飛び出し量も増えており、LEDのチラチラも大きくなった感じがする。 モータが大きくなったためと思われる。

 

■ コンデンサだけの回路ではダメなのだろうか

 スナバ回路の抵抗とコンデンサの値をいろいろ変えながら実験したが、この程度の実験ではその最適値が見つけられなかった。 そして、ここに挿入する抵抗の目的はなんだろうかと考えてみた。 コンデンサに流入する電流を制限するものと解釈するが、するとフリ−ホイール電流の強さによって最適値が変化するので、対象とするモータがいろいろ変わる場合には、その対応が難しいことになる。

 もう一度、改善しようとする目的に振り返ってみると、フリ−ホイール電流による反対電極への電圧の飛び出し対策なのである。 そこで、コンデンサだけでも対応できないのかと検討してみた。

(6) コンデンサ 10μF のみの場合:  鉄コレ電車

 まず、抵抗を抜いてコンデンサだけにしてみた。

 飛び出し量は見事に無くなっていいる。 その代わりにパルスの波形が崩れている。

(7)  10μF×2個(並列) の場合:  鉄コレ電車

 さらに、コンデンサ容量を増やしてみた。

 波形はさらに崩れてきた。

(8)  10μF×2個(並列) の場合:  鉄コレ電車

 今度は速度設定ダイヤルを最小に絞てみる。

(9)  10μF×2個(並列) の場合:  登山電車

 電車を変えてみる。 速度調整ダイヤルはやっと動き出すていどまでボリュームアップする。

(10) 10μF×2個(並列) の場合: 12m級鉄コレ電車

 速度設定ダイヤルを最小に絞る。

(11) 10μF×2個(並列) の場合: Bトレ電車

 モータが変わると波形も違ってきましたね。

(12)  10μFの場合: Bトレ電車

 コンデンサをひとつにして確認する。

 反対側への飛び出し防止は、コンデンサの追加だけで充分に対応できるではないか! 反対側のLEDチラチラ対策はスナバ回路で との格言が頭にあったので寄り道してしまったのだ。

 ではなぜこのような結論で良いのだろうかと考えてみた。 今回のシステムはバイポーラ形のモータドライバーを使用しているためにPWM制御の周波数は、1000Hz と低周波に設定している。 このため、コンデンサによる影響は上記の波形が示す様に、まだ悪さをしていない状態なのだ。 コンデンサによってPWM制御の特徴である矩形波パルス波形が多少崩れても、その効果は出ていると考える。 でも心配なので、確認することにした。 なお、低周波によるPWM制御のために、モータのうなり音が気になるところであるが、仕方が無いとあきらめている。

■ PWM制御具合の確認

 10μFのコンデンサを1個と2個の場合の速度調整具合を確認するために、下に示すような回路を構成した。 電車を連続して走行できるように小判型のレイアウトにしている。 そして、LEDの点灯状態と速度調整具合を確認した。

 10μFのコンデンサを1個の場合、鉄コレ電車や登山電車の速度調整は問題なく実施できた。 また、LEDのチラチラは、極めて低速時には多少認められたものの、通常走行では発生しなかった。

 10μFのコンデンサを2個の場合、両車両とも速度調整は問題なく、LEDのチラチラも無くなっていた。 しかし、モータの小さいBトレや 12m 級鉄コレでは、低速での調整が効かくなっていた。 コンデンサを1個に戻すとごく低速まで調整可能であった。

 試しに 0.22μF のコンデンサを取り付けてみたが、 LEDのチラチラはしっかりと発生していた。 ある程度の容量が必要なのだ。

 

■ まとめ

  1. 当然の事ながら、走行する電車の種類、即ちモータの種類によって状況が変わる。 従って、スバナ回路の定数を決めるには妥協する必要がある。
  2. 前照灯のように電車側に設置する場合は、原因となるモータとセットなので最適値を決めやすいが、当システムでは妥協するしかない。
  3. 矩形波を保つ程、波形のヒゲは発生する。 これも当然のことか。
  4. コンデンサだけではPWM制御の矩形波が崩れてしまう。 しかし今回は、1000Hz と低周波なので多少の崩れによる影響は少ないようであった。

 そして、結論としては、LEDチラツキ対策として10μFのコンデンサをひとつ追加することにする。

 

【追記】

 今回、「緩衝器付エンドレールでの自動停止装置」の報告を読み直していると、TOMIX のエンドレールE(LEDタイプ2・ノイズキャンセリラー付、品番:1423)には、スナバ回路と思しきものが挿入されていることに気が付いた。 510Ωの抵抗と1nF のコンデンサが 直列に接続されており、説明にはノイズキャンセラー付となっている。 車載カメラシステムを使用する際のノイズキャンセラー機能とのことであるので、結構な高周波成分に対応する仕様と思われる。

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 2017/6/4 作成  M.T.