HOME >> 鉄道模型工学 > 重連特性 小型の蒸気機関車の重連を楽しむ
小生のコレクションでは、ミニレイアウトにマッチする小型の蒸気機関車が揃ってきた。 しかし、小型車であることが足かせになっている点もあり、何とかしたいなとあれこれ対策を考えてみた。 不満な点は、限界のある集電機能のためにクロス線路やポイント部分で機関車が止まってしまうことと、牽引力が小さいために登り坂を登れない事である。
その対策のためには、レイアウトの単純化が有効であるが、それでは面白くない。 小さいスペースでぐるぐる巻きの路線や、高低差のあるレイアウトで楽しみたいのである。 手取り早い対策は、機関車を重連させたり補機を連結させて、未通電区間の通過性や登坂能力を高めれば良いのである。 そのためには、手持ちの小型の蒸気機関車は、どれとどれを重連させる事が出来るのか。 あるいは、どの車両を補機として使用出来るのか検討してみることにした。
■ 小型の蒸気機関車のリストと走行特性
手持ちの小型の蒸気機関車を下に示す。
車 両 | 速度(Km/h) | 速度特性式 | |||||
分類 | 形式 | メーカ | 車両名 | 4V | 7V | a | b |
蒸気機関車 | B6 | KAWAI | 2157 | 34 | 69 | 11.74 | 12.69 |
KAWAI | 2286 | 27 | 65 | 12.594 | 23.655 | ||
KAWAI | 2286改 ※1 | 71 | 171 | 33.127 | 61.086 | ||
KAWAI | 2120 | 33 | 66 | 11.169 | 12.133 | ||
トーマ | 2272 | 53 | 109 | 18.526 | 21.135 | ||
C | ワールド工芸 | 南薩5号 | 93 | 246 | 51.077 | 111.66 | |
A8 | ワールド工芸 | 600 | 93 | 235 | 47.315 | 96.032 | |
C56 | MICRO | C56-125 | 67 | 152 | 28.081 | 44.992 | |
KATO | C56-144 | 47 | 92 | 14.882 | 12.635 | ||
C12 | MICRO | C12-164 | 86 | 172 | 28.657 | 29.05 | |
補機用機関車 | ED | MICRO | ED141 | 39 | 84 | 15.037 | 20.911 |
アルナイン-KATO | ED292-F ※2 | 100 | 192 | 30.786 | 23.037 | ||
ED292-R ※2 | 94 | 185 | 30.547 | 28.59 | |||
DD | アルナイン-KATO | DD351-F ※2 | 75 | 163 | 29.324 | 42.349 | |
DD351-R ※2 | 82 | 171 | 29.44 | 35.299 | |||
EF | Bトレ-KATO | EF611-F ※2 | 93 | 182 | 29.806 | 26.323 | |
EF611-R ※2 | 92 | 188 | 31.809 | 35.045 | |||
DD | Bトレ-BANDAI | DD511029 | 89 | 184 | 31.727 | 38.404 |
これらの機関車の補機として連結出来る小型のELやDLを下に示す。
これらのリストを右の表に示す。
機関車を重連させる場合には、その速度を合わせることが重要である。 この事は、我が鉄道模型工学概論でも検討し、単機平坦路走行での速度が重要であることを結論付けた。
重連時の相性を判断するために、複数の速度をXY座標でグラフ表示させる工夫をしてみた。
そのためにはまず、これらの機関車の単機平坦路走行での速度特性を測定し、その係数である a と b を表に記載する。 例としてトーマの2272号機の測定データ(左のグラフ)より、車速と電圧の近似式を求め、その式より係数 a と b を求める。 車速 y は、電圧を x とすると、y = a x - b で求められる。 即ち、近似式より、a = 18.526、b = 21.135 を得る。
この係数を使って、電圧が 4Volt と 7Volt の時の速度を計算し、上記の表に記載した。 今回対象とする小型蒸気機関車では、ゆるゆる走行するKAWAIのB6 から、すっ飛び走行の南薩5号など、速度の違いが大きいので、二つの速度として、4Volt と 7Volt のスケールスピードを使用した。
また、リストの中の※1で示す 2286改 は、2286号機のモータと内歯車減速部を取り外し、KATOのチビ凸用動力ユニット(11-103)のモータとウォームに取り換えたものである。 これは、ゆるゆる走行を改善しようと工作したものである。
※2 は、Bトレやアルナインの車体にKATOの小型車両用動力ユニット(11-105など)を組込んだ車両で、その構造上、前進と後進の速度が異なった経験が有ったので、前進と後進の状態を測定したものである。また、BトレのDD511029号機はBANDAIの動力ユニット3 を使用している。
■ 重連の検討
上の表より求めた 4Volt と 7Volt の時の速度データをもとにして作成した 「4V・7V速度特性」 グラフを下に示す。 やや低めの電圧である4Volt 時でも、ワールド工芸のSLやBトレ類は、100Km/h のスピードが出ているの対し、 河合製のB6 では30Km/h のゆるゆる走行である。 このB6 は 7Volt でやっと70Km/h のスピードとなるが、 ワールド工芸のSLやBトレ類は、200Km/h 以上の新幹線並みのスピードが出てしまう。 Bトレ類は新幹線モデルもあるので、この様な設定でもうなづける。
グラフの縦軸は増速割合と考える事が出来るので、重連の相性を検討する場合は、4Volt 時の横軸を主体に考えれば良いであろう。
少しぐらいの速度差は許容されるので厳密に一致させる必要も無いし、また、汚れやコジレなどによって電圧降下や摩擦抵抗の増加などが発生するので、その日の模型車両の調子を観察する必要もあるが、このグラフを見ていると重連出来そうな相手車両が一目了然であろう。
ここでは、グラフの中に示す丸で囲んだ四つのグループにまとめて見た。 これらは重連可能であると共に、その近くの車両とも重連出来そうと考えている。
河合製のB6 は、トーマのB6 やKATOのC56 と近いし、マイクロのED141を補機としても使えそうである。 また、ワールド工芸の南薩5号とA8 は特性が全く同じであり、そのまま重連可能であるし、補機としてはBトレ類の機関車を使うことが出来る。
河合製のB6 を改造した 2286改造号は、本当はトーマのB6 の相手になるようにと狙ったのであるが 、それを飛び越してしまったようである。 また、Bトレ類の前進/後進の速度差は殆んど無かったので、前後を気にせずに連結すれば良い事も分かったので安心した。
■ 走行試験
試しに走行テストを実施してみました。 ワールド工芸の南薩5号とA8-600号を重連させ、さらにED292 を補機として連結させ、ミニレイアウトを 3Volt 程度の低速で走行させました。 ポイントやクロスでの停車もなく、坂道もゆっくりと登って行きました。車体の揺れは殆んどなくスムーズに走っていました。
色々な組合せで走行させ、動画で撮影して記録しておくのも必要かも知れません。また、重連時の牽引力特性も測定しておきたいですね。
■ まとめ
今回の測定とまとめによって、ミニレイアウトと小型SLでの楽しみが増えたました。 走行させる車両編成が容易に選択する事が出来、走行中の停車やスタックもなく、ゆったりとした気分で眺めることが出来るようになりました。
■ 追加: 重連走行の動画
色々な重連状態の走行動画を次に示す。 問題無く走行している状態を確認下さい。
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