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鉄道模型工学 KATO EF510の新旧比較

■ はじめに

 

 カシ釜を親子にしたくて新規購入した親釜の性能測定中に、やけに消費電流が小さいことに気が付いた。

 カタログなどでは、「さらにパワーが向上した新形動力を搭載」 と記載されている。 このシリーズは昨年に発売されており、今さらながらの感も否めませんが、 ここにその調査結果を報告します。

 このKATOのEF510シリーズは、2006年に発売された品番が3051のシリーズと、 2010年に発売された品番が3065のシリーズがあるようです。 同じ構造のシリーズであれば、KATOさんの場合、サフィックスで対応していますので、今回の場合には、新規設計のようである。 試しに、ボディを取り外して中を見てみることにしました。

 

 左側が動力ユニットを上から見た写真です。 モータが良く分からないのでライトユニットを取り外した状態が右の写真です。 モータが違うのがはっきり確認されます。 もしかしてコアレスモータかな? と期待しつつ分解しましたが、残念ながら、通常のブラシ付きマグネットモータでした。 でも小さいくなっていますね。

 

 

■ 比較した車両

 

KATOの新動力機構を搭載したリニューアルEF510と、従来機構のEF510の動力特性を比較する。

品名 品番 車両番号 購入時期 備考
EF510-1 3051-1 EF510-1 2007年12月27日 新品購入 前照灯点灯
EF510 500 カシオペア色 3065-2 EF510-510 2011年3月2日 新品購入 前照灯点灯

 

 

■ 速度特性

 まず最初に速度特性を比較してみましょう。

 車速・電圧特性に於いては新動力のEF510-510号機の方が少し遅いが、大きな違いは見られない。 使い勝手は変わらない様である。次に、電流・電圧特性を見てみると、新動力は消費電流がぐっと小さくなっている。 ちなみに、取扱い説明書での記述では、

EF510-1   ⇒  消費電流 DC12V時 : 0.36A
EF510 500  ⇒  消費電流 DC12V時 : 0.12A

と記述されており、 自信作であることが伺える。

 

■ 牽引力特性

 次に、牽引力特性を見てみよう。

 電圧は、E = 4.5 Volt 一定状態でそれぞれ測定した。 新動力の510号機はやや遅いが、牽引力/速度の勾配は、ほぼ同じである。 負荷が大きくなった場合、旧動力の方が20グラムを超えたあたりで限界に達しており、新動力では30グラムを超えるあたりまで力を出している。 幼稚ともいえる測定機で測定しているため、このあたりの測定値にはあまり自信がないが、 「さらにパワーが向上した新形動力」 と言えそうである。 このスリップ限界での牽引力は車輪に掛る荷重と摩擦係数で決まるので、車両重量などを比較してみる。

品名 車体重量 トラクションタイヤ
EF510-1 96.4 グラム 第2と第5動輪の片輪ずつ
EF510 500 カシオペア色 102.8 グラム 第1と第6動輪の片輪ずつ

 スリップ限界での牽引力の差は、重量の差以上にあるので何かほかの要素があるようである。 自分としては納得できないでいる。

 次に、消費電流では、全体的に新動力が低くなっているのが判る。 それは、無負荷での差が大きく、牽引力/電流の勾配はほぼ一緒で、ほぼ、1.5 gr/mAとなっている。  モータの設計技術は分野外なので分からないが、このあたりが設計技術者の腕の見せどころの様な気がする。

 また、KATOの新D51で採用されているコアレスモータでは、さらに低電流設計となっており、20grの牽引力を得るのにわずか 40mAしか消費していない。 牽引力/電流の勾配はほぼ同一で、ほぼ、1.5 gr/mAであった。

    ⇒ KATO D51の新旧比較


■ まとめ

  自分で測定した牽引力データから見ると、今回の構造面でのモデルチェンジについて、そのうたい文句である、「さらにパワーが向上した」 新形動力については、 “どの程度?” と疑問符をつけておく事にする。 ただし、消費電流を大きく低下させ、よりコンパクトにまとめたモータの技術進化には、おおいに注目している。

 さらに、KATOさんの技術陣では新D51で、コアレスモータの技術を確立されております。 電気機関車では十分なスペースがあるため、サイズの制約もSL程ではない。 消費電流をさらに小さくしても、エコをうたい文句するニーズも無い。このため、電気機関車では、あえて高価なコアレスモータを採用する必要がないので、電気機関車へのコアレスモータの展開は無いのではないかと思われます。

 進化する鉄道模型を開発し続ける技術陣の努力に感謝し、さらなる発展を期待しつつ、今後もファンのひとりとして応援して行こうと思います。