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■ 車速測定ユニットの構想

 車速測定ユニットについては、まず発光部と受光部の素子を検討した。 発光部の素子は室内灯などの工作で手掛けているLEDを使用するものとし、受光部に適した素子をネットで調べた。 小さくで応答性が良く、かつ素人でも容易に使用出来るものとして探した結果、浜松ホトニクスのフォトICダイオードに注目した。 データシートを見ても良く判らないが、サンプル回路を見ていると簡単そうであり、応答時間も短そうであるので使ってみる事にした。

 フォトICダイオードは浜松ホトニクス製で、品番:S9648-100 、@¥120.-。 秋月より購入する。 視感度に近い分光感度特性でフォトダイオードと同じで使いやすいとの事である。

 次に、この素子を使用するとして、光のスリットをどの様に構成するかを検討した。 アルミの丸パイプを使って、光のチャンネルを作る案や、光ファイバーが使えないかなど、いろいろ考えたが、光のチャンネルとして、車両の通過を判断するには、幅の狭いスリットが有効であろうし、かつ有る程度の光量も必要であるので、縦長のスリットが出来ないか検討してみた。

 

 その結論として、プラスチックの板を使用し、その上に薄板を積層して光のチャンネルを作るアイディアを採用することにした。 その構想図を右に示す。 薄板を積層するので、素子としては四角形の素子が使いやすい。 室内灯用として四角形のLEDを持っているのでそれを使用することにした。 このLED は、「153系に室内灯を組込む」にて使用しているもので、小型角型クリアレンズ白色LED、Linkman 製、品番:LSQLED-W4020、サイズ:3×4×2mm 、@35.-である。 厚さが 2mm で600mcd の明るさを持っている。

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 これらの素子の写真を左に示す。

 この小型角型LEDの厚さ 2mm に合わせて、光チャンネルを作ることにした。 その素材は、黒色の不透明なプラ板を使用する。 下の写真参照。 これも、室内灯の工作を始めた頃に、赤色尾灯用のボックスを作るために探した素材である。 物持ちがいいですね。

 アクリルサンデー社の塩ビ板で、厚さ 3mm の低発泡塩ビ板、製品名:FOREX、と、硬質塩化ビニール板の 1.0mm と 0.5mm 、製品名:サンデーシートである。  厚さ 3mm の板は表面の光沢は無いが、1.0mm と 0.5mm の方は光沢があり、光を反射する。 そして、接着剤は塩ビ板専用の物を使用する。

 光チャンネルの中心に LED の光軸が来るように、0.5mm 、1.0mm 、0.5mm と順番に積層して厚さを2.0mm とし、1.0mm の部分を光チャンネルとする。 この厚さを2.0mm の層の両側を 厚さ 3mm の低発泡塩ビ板で挟みこみ、一方の塩ビ板を構造体のベースとして利用する構成にした。

 この構成により、幅が1.0mm 、高さが3.0mm の光のチャンネルを作ることが出来、さらに発光側と受光側を同じベース板の上に作ることが出来るので、チャネルの直進性も容易に確保出来るのである。 そして、スリットの高さは、線路道床の底面から 20mm の高さに設ける事にした。

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■ 車速測定ユニットの製作

 早速、寸法に合わせてプラ板を切り出し、1セット目を作ってみることにした。 切り出したブラ板の写真(上右の写真)には、何やらφ1.0mm の真鍮棒が写っているが、 これは組付け時に、治具として使用するものである。 組み上げたユニットの写真を下に示す。 

 発光側と受光側の組付け状態や、光チャンネルのスリット状態も確認できると思います。

 この状態のユニットを使用して実際に作動するかどうかテストすることにした。 ブレッドボードを使って電気回路を構成して、DC9Volt 電源にて発光を確認し、受光側の発生電圧を計測した。 下左の写真。 LED は発光し、チャンネルを通って受光側に届いているのに、受光側から電圧が出ない? もう一度説明書を良く見ていたら、接続が逆であった。 LED を組付ける時、そのプラス・マイナスを間違えないように、足の長い方に赤色マジックで印を付けるようにしており、フォトICダイオードも同様に足の長い方に赤マジックを付けで、プラス側に接続していた。 説明書ではカソード側に+電位が加わるようにバイアスして使用してくださいと明記してあるのに、この逆バイアスの意味を理解していなかったのである。

 説明書どうりに接続すると、電圧計は振れたので一安心である。 次にその電圧を測定したが、2Volt 弱であった。 電圧不足なので抵抗値を変えて実験する。 40kΩでは5Volt 強、30kΩでは4Volt 強であったので、 30kΩを使用することにした。 指で光をさえぎると電圧は殆んどゼロとなった。 また、明るい窓際に持っていくと、5Volt 以上の電圧が出てしまうので、フォトICダイオードの裏側は封鎖する必要があった。

 一番心配した作動が確認できたので、必要な数のスリットを作ることにした。 切り出した素材を右上の写真に示す。 

 まず@に示すように、ベースに0.5mm のピースを貼り付け、次にAのように1.0mmのピースを貼り付ける。 この時、φ1.0mm の真鍮棒3本を使って、ピースの端面が一直線になるように接着する。 接着部を拡大した状態を右上の写真に示す。

 次に、この上に再び0.5mm のピースを貼り付ける。左上のBの写真。 この状態で真鍮線を抜き、光チャンネルの直進性をチェックする。 そして、LED が収まる事を確認する。 右上の写真のBの状態。 そして、最後に3mm のピースを接着したのがCの状態である。

 次に、フォトICダイオードを挿入する穴をあけるため、万力に挟みこみ、端部をやすりで削って平らにして、ドリルでφ5mm の穴をあけるのである。 万力を使用するのは部品の固定と共に、ドリル加工時に折角接着した積層部分が開かないように用心したものである。 1mm ×3mm のスリットの中心とドリル穴の中心が一致するように、径の小さなドリルから順番にあけて行き、穴を少しずつ大きくして行くのであるが、これがなかなか注意を要する作業であった。 うっかりすると中心がズレてしまうのである。 作製した4セットのうち、ひとつが1mm ほどズレってしまったが、まあいいだろうと思ってそのままにしておいた。 しかし、後から実施した作動デストで NG !を食らってしまったのである。

 また、LED 回りには、まだ 0.5mm の隙間が残っているので、プラ板の切れ端を使って埋め、最後に各端部の整形とバリ取りを実施して完成させた。 この時に使用した道具類を右上の写真に示す。

 次に、このスリットのセットを木製の台に取り付ける。 木工ジャンク箱をあさって、適当な材料を探し出し、長さが100mm となるように切りそろえた。 そして、 設計図どうりの高さ 20mm に取り付けるのであうが、ここでも真鍮線を使用した。 光チャンネルに3本の真鍮線を差し込み、高さが 20mm の木片に当てて高さを規制し、木ねじで固定した。 下左の写真。 完成したユニットが右下の写真である。

 完成したユニットの出来栄えをチェックしておこう。 再び真鍮線を通し、木製の本体との直角度をチェックすると共に、スリット間の距離を測定しておく。 第1ユニットと第2ユニット共に、スリットの中心間距離は 108.0 mm であった。

■ 電気工作

 次に電気工作に移る。 抵抗を取り付ける基板を本体の背面に設置することにした。 72×47mm 基板は大きいので半分に切断して使用する。 当初計画していた10kΩの抵抗は、20kΩの抵抗を直列に接続して、30kΩとして組立てた。 配線は左右のスリットのために対称形に配線している。 表の配線を左下に、裏側のイモハンダ状態を右下に写真に示す。 なかなか上手にはなりません。 中央ユニットとは、4線のシールド線を使用して接続することにした。

 車速測定ユニットの本体に組み込んだ状態を下に示す。 シールド線は本体にしっかりと固定し、LED 等との配線接続部には、熱収縮チューブを使ってカバーしている。そのうちに、カバーを作って保護したいものである。

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 作製した二つのユニットについて作動チェックを行った。 電源はDC9Volt のACアダプターを使用し、DC ジャックを加工した補助配線でコネクタに接続した。 この補助配線はブレッドボードでの実験の時にも使用したものである。 出力電圧もコネクタから取り出してテスターにつないだ。

 4ヶ所のスリットからの出力は、約5.5Voltのものが3カ所で、あとの一ヶ所は、わずかに1Volt程度であった。 光をさえぎるとゼロまで落ちるので、一応は作動している様である。

 電圧の足らないスリットについて、テスターで電圧を探って行ったが、よく判らないので、フォトICを取り出してみたら電圧がアップする事が判った。 照度不足だったのである。 良く見ると、スリットの中心とフォトICの取り付け穴の中心が1mm近くズレていた。 光軸が外れていると判断し、取付穴をルータなどで削り、隙間の出来た方にはプラ板をはめ込んで光軸を移動させた結果、他のスリットと同様の出力が出るようになった。 いい加減な工作では、性能は出ないぞという警告と受け取っている。

 出力電圧が、5volt を超えてしまってはまずいので、電圧を下げる必要があります。 予備実験では、4Volt 強だったのにと言っていてもはじまらないので、配線してしまった抵抗のどれを外そうかと思案していましたが、 ふと思いついて、電源電圧を DC 5Volt に落としてみることにしました。  ACアダプターを取り替えるだけだったのですが、みごと電圧は、4Volt 強に下がり、これで行くことにしました。 修正個所は、中央ユニットのシールドの配線を "Vin " から "5V " に変えるだけで対応することにしました。

電圧測定ユニットについて、なぜオペアンプを使用しようとしていたのかと言う事を、この時に思い出しました。 例え予想していた電圧よりも高い電圧が掛ったとしても、オペアンプの出力は、電源電圧よりも高くはならないので、Arduino のアナログ入力端子は保護されるのである。 抵抗だけの分圧回路では、その保護が出来ないのである。 今回の車速測定ユニットの場合は、回路の電源を 5Volt に下げるので一安心である。 電圧測定ユニットについては、何時の日か改良することにしよう。

 

 さて、車速測定ユニットも完成したので、いよいよ測定台での走行テストに進みます。