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鉄道模型工学 台車の荷重移動 台車マウントの場合 その2

 ボギー形式の動力車において、台車のピッチング・モーメントによる車輪の浮上がり現象に注目してきた。 しかし解析を進めてきたものの、意外とややこしくて、まとめることに四苦八苦した。 そして、台車マウント方式のボギー車については誤魔化しながらも、解析結果をまとめることが出来ようになったので、目的としていたパラメータスタディを実施した。 即ち、GM製コアレスモーター動力ユニットの諸元を使って、

  1. 支持部の高さの影響はどうか
  2. トラクションタイヤの位置を変えると特性はどのように変わるのか
  3. ボディーマウントの場合と比較するとどれだけ違うのか

を検討したのである。

 

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■ 実験結果との比較

 解析を容易にするための前提条件はボディーマウントの場合と同じと考えておこう。

 計算方法は先回と同じ方法で進めるが、比較のために、実験結果と比較した先回の解析結果をグラフにして右に再掲載する。

 実測データとは少し離れているが、計算式が違っているのか、あるいは、スベリ率から計算したμtとμoが違うのかは判断出来ない。 しかし、傾向は合っているとして計算モデルは妥当であると判断することにしよう!

 

 とのいい加減な判断のもと、次のようなパラメータ・スタディを実施した。

 

■ 支持点の位置の違いによる特性の変化

 台車を支持している支持点の高さ H の違いによって、特性がどのように変化するのか解析してみた。  GMコアレスの場合の H = 15.6mm を始めとして、旧モデルの時の値である H = 11mm、他社のモデルのような H = 8mm の場合を計算した。

 その結果を下のグラフに示す。

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 支持点が高いほど、駆動時と制動時の間が開いていくのが分かる。 そして、開きが大きくなることは、下り坂でのブレーキ力は弱まるものの、登坂の登坂力がアップすることなので、ユーザーにとっては嬉しいような気がする。

 でも、このグラフを見る時の注意として、縦軸の大小よりも横軸の大小に注目してほしい。 例えば同じ摩擦係数 0.3 の場合、登坂時は 0.2 のスベリ率であったものが、下り坂では 0.5 のスベリ率となる。 2.5倍の違っているのである。

 

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 これは、同じ勾配の坂道を登ったり下ったりする時に、必要な摩擦力は同じなのに、スピードが違ってくるという事である。

 登り坂では滑る分だけ速度は遅くなり、下り坂では滑る比率で速度は速くなるのである。

 登りはゆっくり登るものの、下りは転げ落ちるような早さで下っていく事を示している。

 牽引力の測定データである右のグラフからもその傾向がはっきりと読み取れる。 小さな丸の点がスベリ率ゼロの場合の速度であるので、登り坂と下り坂の違いが確認できる。

 

 電車の場合は、前の台車にも力が掛かるので、特性がどの様に変わるのかも興味があるが・・・・・・・・・・・・・・。 ややこしい解析となるので、手が出せない!

 

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■ トラクションタイヤの位置を変える

 次に、トラクションタイヤの位置を内外逆にした場合の特性変化を見てみよう。 支持端の高さは H = 15.6mm のオリジナルの高さである。 解析結果を右にグラフに示す。 トラクションタイヤが内側の制動時のグラフが見えないが、これは駆動時TR外の水色のグラフとピッタリと重なってしまったからである。

 トラクションタイヤの位置を変えると、駆動時と制動時の特性が逆転しており、駆動力は、およそ1.5割も低下している事が分かる。 制動力は逆にしっかりと効くようになっているのだ。

 この事より、GM製コアレスモーター動力ユニットの場合は、トラクションタイヤの位置は、内側に小着することが必須であると言えよう。

 

■ もし、ボディマウントであったら

 このGM製コアレスモーター動力ユニットのカプラーを、ボディ側に取り付ける様に改造した場合の効果について検討してみよう。

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 カプラーに掛かる力や坂道抵抗は全てボディーに集約されるので、最初に検討した「ボディーマウントの場合」(2019/10/7)と同じ計算式が適用できるのでその結果をグラフにした。

 μ1の線が後ろの台車が発揮する摩擦係数で、トラクションタイヤが浮く方向にモーメントが働くために摩擦係数が小さくなっている。 一方、μ2は前の台車が発揮する摩擦係数で、トラクションタイヤに荷重移動が発生しているので、摩擦係数が増加して様子をグラフは示している。

  車両トータルとしての摩擦係数μは、この二つの平均であるので、ちょうど中間の位置を示している。 また、駆動時と制動時は力の掛かり方が丁度対象となるので、結果としての特性は同じことになる。 従って同じμの値となる。

 最初に示した、台車マウントの場合と比較してみよう。 ボディマウントにすると、駆動時は台車マウント時よりは小さくなっているが、制動時は向上していることが分かる。 これは、駆動時と制動時の特性が平均化されているためなのだ。

 

 

 

■ まとめ

 今回のパラメータスダディによって分かったことをまとめてみよう。

  1. 台車支持部の線路からの高さ H を大きくすると、駆動時の摩擦力は向上するが、制動時の摩擦力は低下するので坂道からの転げ落ちの傾向となる。
  2. 台車支持部の線路からの高さ H を小さくしたりが、ボディーマウントにすると駆動時の摩擦力は低下する。 しかし、制動時の摩擦力が向上するので坂道からの転げ落ちの傾向は緩和される。  
  3. トラクションタイヤの位置を、外側の車軸に配置すると、駆動力と制動力の摩擦特性が逆転する。 この特性は好ましくないため避ける方が無難である。
  4. ボディーマウントにして使用する場合は、いろいろの使われ方をしても、摩擦特性は安定するので使い易いであろう。 しかし、駆動力の向上は期待しない事。

 検討前に考えていた、メリットのある方法ではなかったので、現在のの状態で使用を続けることにしよう。