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鉄道模型工学 粘着特性を測定しよう 蒸気機関車の測定

 以前実施したすべり率データのある車両について、データ補間のために追加測定を実施している。今回は蒸気機関車シリーズとして、いくつかのモデルを用意したが、トラブル発生によりこのシリーズの測定を中止し、プロジェクトも完了することにした。

 

■ C62-2B号機を測定する

 粘着特性測定の15番手として、蒸気機関車のKATO製のC62-2B号機を測定した。測定装置は今までと同じ装置である。

 モータの回転数を計測するためにはセンサをフライホイール部に取り付ける必要がある。このため、ボディ部分の分解しなければならないが、その方法を忘れていたので四苦八苦した。でも何とか分解できました。下左の写真。

 白黒マークを付けたフライホイールなどは、ギリギリの設計でしたので、センサが干渉しないよう様に取付部にスペーサを入れる必要がありました。下右の写真。

 スペーサを固定し、その上にセンサユニット5号を取り付けます。下左の写真。そして、センサユニットを固定後に、取り外した部品の重さを補充する重りを取り付けました。

 測定状態にセットした様子を下に示す。

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 測定は何時もの通りに実施し、その結果を右のグラフに示します。今回のデータはやけに下回っていたので、ゴムがかなり劣化しているなと思いながら測定を終了しました。走行中の異常も感じませんでした。

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 そして、車輪の様子を撮影している時に気が付きました。下の写真。

      トラクションゴムの片方が外れている!

 

 片方のゴムは正常でしたが、これでは十分な機能は発揮出来ないのは当然ですね。

 

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 トラクションゴムの弾性は充分に残っており、このまま使用できると判断してセットし直しました。回りの部品が邪魔になるので、一部を分解しての作業です。

 そして、追加の測定を実施しました。その測定途中でも数回タイヤの外れが発生しましたが、そのたびに再セットしました。タイヤの外れは、データが急に小さくなるので気を付けておればすぐに発見出来ました。不思議と右側の動輪だけでしたのは何らかの要因があるようです。

 発見前のデータについても、データの推移から発生した時点を想定して選別し、追加実施した正常状態のデータと共に、右のグラフに示すように分類してプロットしました。

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  ゴムが良好な状態では、以前のデータを補間していると見ることが出来ます。また、滑走領域では、バラツキが大きいものの、ほぼ一定の値であることが分かります。でも、やや上昇気味のようにも見えますね。

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 測定後の車輪の様子を下に示します。

 

■ C59-123号機を測定する

 粘着特性測定の16番手として、蒸気機関車のKATO製のC59-123号機を測定した。このモデルはC62型と同じコアレスモータを使用しているが、構造が異なっています。

 センサユニットは同じ5号を使用してセットしました。

         

 そして、測定を開始したのですが、3個目のデータを測定しようとしたとき、機関車が突然にも脱線転覆してしまいました。測定点は過去のデータをうまく補完している状態でしたが、転覆した車両を見て思わず息を呑んでしまいました。

 その状態を下左に示します。右側の動輪のクランクピンが外れてしまい、連結ロッドがバラバラになっていました。左側のロッド類は無事でした。

 スタック時など滑走状態が激しい場合は、動輪が躍っているようでしたの、無理な力が掛かっていたのかも知れません。

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 C62-2B号機の場合ですが、測定中の様子を動画で紹介しましょう。

 ロッド類が激しく動いており、車体も大きく揺れています。このような状態ですので、華奢なメカ機構であればいろいろなトラブルが起きても仕方がないです。そして、模型がかわいそうですね。

 

■ まとめ

 電気機関車で実施してきた粘着特性の測定ですが、蒸気機関車の測定を始めて、この測定方法は、”小さくて緻密なNゲージ模型を、単にいじめいる状態なのだ” と考えて、中止することにしました。特にロッド類のある蒸気機関車には無理を押し付けている気がしました。

 

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 そして、粘着特性を測定して結果を総括しておき、このプロジェクトを終了とすることにします。

  1. Nゲージ鉄道模型における粘着特性は、山なりのカーブとは言い難い。
    自動車工学でいうタイヤと路面に働く力の特性であるμカーブや、鉄道車両における車輪とレールの関係でも同様であるが、すべり率のある値を超えると、率の増加によって摩擦力は減少していく傾向を示す。この特性は、走行特性に悪影響を及ぼすので、ABSや再粘着制御などの高等な制御システムが開発されてきたのだ。その傾向を模型でも確認したいと思って実験を進めてきたが、確認することが出来なかった。逆に増加傾向を示す例もあったのだ。
     
  2. 自分が仮説としてきた内容が、やっぱり証明できなかった。
    トラクション・タイヤの有無を比較する (解析)」(2015/1/12) の報告で述べた、
          【仮説】  鉄道模型の動輪のμカーブは、右上がりのカーブである。
    について、今回の実験でも証明することはできなかったが、 逆に否定する事象も証明することも出来なった。
     
  3. 動輪とレールの間で大きなすべりが発生している滑走領域では、その力の発生のバラツキが大きく、不安定な状態である。 測定方法の違いはあると言えども、粘着領域のデータはバラツキも小さく安定した力を発揮していると言える。
     
  4. 滑走領域での走行状態は、模型には過酷な状態であり常用する領域ではないと痛感する。カリカリとスタック気味の状態では、大切な模型を痛めている状態なのでこの状態を避けて鉄道模型の走行状態を楽しもう。

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 興味津々で、今回のプロジェクトに取り組んできたが、期待した結果を得ることが出来なかった。でも、また新しいアイディアが湧いたら挑戦してみたいテーマである。