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鉄道模型調査室   ポイントの通電特性を測定する その1

 

■ いきさつ

 鉄道模型のポイントは、切替作動が確実に動作する事も大切ですが、動力車に電力を供給するためにレールを介して通電させる機能も大切な機能です。 この通電性能を判断する方法や実際のデータを見た覚えがありません。 鉄道模型界ではこのようなテーマに対して、「通電不良だ」などの感覚的表現しかありませんでした。 そこで、データ的に特性を表現する方法を検討してみる事にしました。

 

■ ポイントの通電特性とは?

 切替作動は、トングレール部が確実に動き、相手側のレールに密着するかどうかは目で見て判断出来ます。 しかし、通電特性は動力車を走らせせて見て、その速度変化によって初めて気が付きます。 極端の場合には停車してしまいます。 これは、ポイント内部の電気的なスイッチの作動が不十分であるからですが、ポイントの出入り口間の電気的な抵抗値が大きくなったり、スイッチ作用が不十分で通電が切れていることが原因です。 そこで、この抵抗値に注目して評価できると思い、この抵抗値を測定してみる事にしました。

 なお、フログレールなどの中間部の通電性が悪くなって、途中で停車してしまうような現象は、今回は検討外とします。 まずは、出入り口間の通電性に注目するkとにします。

 

■ ポイントの抵抗値を測る

 ポイントの出入り口間の電気的な抵抗値は、テスターを使って測定すれば簡単ではないのか、と思って測定してみました。 その結果、レールに充てる測定子の当て方によってフラフラと値が変化するのも当然ですが、静かに当てていてもテスターの数値は安定しないのです。 そして数Ω単位の抵抗値ですから、テスターの測定限界ともなっていました。 他の測定方法を検討する必要がありました。

 そこで、シャント抵抗を測定したように、レールの電流を流しながら、その電圧降下量を測定することにしました。 その方法を紹介します。 下左に実験した全体を示し、下右の写真は、ブレッドボード部の様子を示しています。

 また、ポイントの両側に接続したレールの様子を下に示す。

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 実験の様子を写真にしておくと、後から再実験する時や、データを検証する場合に役立ちますので努めて記録しておくようにしています。 そして、私のデータはこのようにして測定したデータですとのアッピールにもなるのです。

 写真では分かりにくいので、簡単なイラストにしてみました。 右のイラスト参照。 電源はいつもの安定化電源を使用しました。 測定対象のポイントへの接続は接触の安定化を狙って短いレールを使用し、レールには太めの電線をハンダ付けしています。 そして、回路の負荷として 50Ωのセメント抵抗を使用しています。

 ポイントの通電抵抗は数Ω程度と推定していますので、回路の抵抗はこのセメント抵抗でほとんど決まります。 即ち、この回路に 100mA の電流を流すと電圧降下は 5volt となります。 そして、イラストに示したようなテスターで電圧を読み取ると、ポイントの両端での電圧降下量が測定できます。 そして、レールの接続部のジョイナー部の抵抗も含まれることになります。

 使用した安定化電源は、古いKIKUSUI の MODEL PAB 18-1A のもので、 最大18Volt 1A 仕様ですので、ちょうどよい設定値となります。 そして実際にポイントを使用する状態を想定した場合には、最大でも 200mA 程度流れると考えていますので、適切な負荷抵抗と考えました。

 

■ ポイントの抵抗特性を測定する

 最初に、上記の示した状態で、電流値を変えてポイントの電圧降下量を読み取って見ました。 電流値は安定化電源の表示を電流値表示にして読み取っています。

  

 測定手順は、

  測定された電圧降下量を左のグラフに、この電圧降下量より抵抗値に計算したものを右のグラフに示しています。 グラフからも分かるように、いかに状態が安定しないか分かります。 そして、100mA の電流を流している時は、200〜500mV の変化が有り、ポイントの通電抵抗が 2〜5Ωまで変化していることが分かります。

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■ KATO製ポイントの通電特性の測定 その1

 実際のポイントを幾つか測定してみました。 KATO 製ポイントは最初の頃のレイアウト製作で多用していましたので、ストック品は右の写真のように多数持っています。 そしてこれらのポイントの通電特性を測ってみました。 状態はストック状態のままで、クリーニング等のメンテナンスを実施していない状態です。 レイアウト解体時のままですので、長年(?)の経年変化状態を観察できると考えています。

 電動ポイント4番(右) EP481-15R 品番が 20-221 の14本を測定しました。 先回の報告で調査したように、このKATO 製ポイントは選択式と呼ばれている内側の線路のみの切り替える構造です。 このため、内側の線路の両端の電圧降下を測定しました。

  測定時の通電電流は、100mA に設定しています。

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 その結果を左のグラフに示す。 まず、ポイントスイッチが切替動作を何回作動させて、長年の埃や異物(?)を取り除くと共に、作動状態を確認しました。 すべての個体は快適な切り替え音と共に作動は異常ありませんでした。 次に正位状態と反位状態をそれぞれ3回ずつ実施して、その時の電圧降下量を読み取り、3回のの平均値を計算しました。

 グラフには個別の値を小さな丸で、平均値を大きな丸でプロットしています。 これによってデータのバラツキ具合を表現してみました。 また、色を変えて正位と反位の違いも表示しています。

 そして、1200mV 近くのプロット点は、グラフに表示するための数値であり、実際は通電ゼロの状態か、1200mV 以上の状態でした。 即ち通電不良の個体が2個あったことを示しています。

 また、個体間のバラツキも大き事が分かります。 しかし、購入時期や使用経歴の記録がないために、その要因を調べる事は出来ませんでした。

 ちなみに、スイッチの無い外側のレールを測定してみましたが、 21 〜 95mv の間で、平均して 50mV 程度でした。 これはレール本体よりも2ヶ所のジョイント部の抵抗ではないかと思われます。

 

■ KATO製ポイントの通電特性の測定 その2

 次の電動ポイント4番(左) EP481-15L 品番が 20-220 、電動ポイント6番(左) EP718-15L 品番が 20-202、電動ポイント6番(右) EP718-15R 品番が 20-203 の測定に当たり、 負荷抵抗の位置を変えた測定方法に少し改良してみました。 これはTOMIX 製のポイントを意識したものです。

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 その回路図のイラストを上に示す。 TOMIX 製のポイントの新しいタイプは、完全選択式と呼ばれ構造を採用しており、外側のレールもスイッチによって切り替える事が出来るようになっています。 このため、ポイントの通電抵抗を測定するには、片側だけの抵抗を測定しても、意味が無い事になります。 パワーユニットから供給された電力は、片側のレールを通って動力車に伝わり、同じレールの反対側を通ってパワーユニットに戻っているからです。 この戻り側のレールもスイッチを介しているため、通電抵抗は往復で測定する必要があると考えてからです。

 しかし、今回のKATO 製ポイントの測定は、片側レールだけを測定していますのでテスターの測定点を図のような状態にして測定しました。 往復時の抵抗は、テスターのマイナス側を安定が電源のマイナスが側に移動すれば、そのままの状態で測定できることになるからです。

  

 上左のグラフが電動ポイント4番(左)で、右のグラフが電動ポイント6番の右と左のデータです。 こちらの場合も、すべての個体は快適な切り替え音と共に作動は異常ありませんでしたが、6番(左)の一つに通電不良がありました。

 通電電流が100mAに設定した場合の電圧降下量は相変わらずバラツキが大きく、1000mV 近くもある不良直前と思われる個体も有りました。 ただし、実際のレイアウトのヤード等で使用する場合には、この程度の電圧降下では運転に影響無いのではないかと判断されます。 しかし、ホーム等の本線上で使用する場合には、その影響が表われるものと推察します。

 比較のためには、TOMIX 製ポイントの通電特性の測定も必要となりました。 また、メンテナンス後の通電特性の変化具合も調べて見たいと思います。 

     ***************    つづく! *************

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  2017/11/11