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鉄道模型実験室   モータの回転変動

 

 モータのトルク特性の測定中に気が付いた、回転変動の状態について報告しよう。 このモータの回転変動には幾つかの状態があり、遭遇した状態をについて説明する。

 

■ モータの共振(?)による回転変動

  特性を測定中に、モータ回転数を上げると共振現象が現れる場合がある。 この共振現象は、測定台に共鳴してビリビリといった音も伴っており、この時には回転数や電流値も少し変化している。 多くのモータで観測されているため、測定台の問題かとも思われるが、まずは特性測定を優先していたため共振点などの現象をしっかり把握していない。 原因としてモータの危険回転数による発振現象とも考えられるので、詳しく観察していく必要があるが、今後の課題とする。

 今回は、EF510-1のモータを再測定している途中で、少し寄り道して観察してみた。 

 

 測定は上の写真に示す様に無負荷状態で実施している。 この無負荷状態での回転数と電流のグラフを下に示す。  4 volt 付近でビリビリと共振しているが、データを良く見ていると電流値が直線近似部分からわずかに下がっていることが分かる。

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 また、回転数のグラフを見ていても、直線近似線よりも上回っていることが観察される。 DCマグネットモータでは、これらの特性は線形であるとされているが、非線形要素よって崩れているとされる一つの例であろう。 この直線近似線からのズレを計算してみたのが、左のグラフである。

 回転数特性は、4 volt 付近を頂点として、山形に変形していることが分かる。 もし、共振であれば、山形の外側が一定値になるはずであるが、両方に下がっていることは、共振点前後で特性の勾配が変化して事になり、単なる共振ではなさそうである。 

 次に、電流値を見て見よう。 縦軸を拡大して表示したのが下の左のグラフで、直線近似線からのズレを計算したのが、下の右の写真である。 4 volt 付近が特異点であることが理解できるであろう。 そして、4 volt 付近を谷底として、両側のデータもV字谷を形成しているようである。 このことは、回転数と同様に、特性の勾配が変化してと考えるべきであろう。

 今回は、電圧を何度も行ったりきたして変化させ測定しているが、良く見ると4 volt 付近でも前後の前後の直線上に乗っかるデータもあることが分かる。 これは、共振していない場合なのだろうか? この時のビリビリ音の有無も記録しておけばよかったのだが・・・・・・・・。

 また、この直線近似では無く、多項式近似させた場合をさらに下のグラフで示す。 何次かの近似を当てはめて見たが、2次近似が最もよく合っていた。 でも、しっくり来ないね。 

 

 

 今までの測定では、直線近似のためのデータが取れれば良しとしてきたが、今回の様に詳しく見てくると、いろいろな現象が見えてくる。 共振現象の原因もまだ不明であるが、共振点付近では電流は低下し、回転数はアップすることは分かったものの、何故なのだろうか? もし、機械的な原因であるのであれば、ここでは無負荷の状態のため、モータ内部の摩擦抵抗が小さくなったことを意味するのだが?  「共振によって摩擦抵抗が減少する」ということか? 有り得る事ではあるが・・・・・・・・・。

 しかし、全体として見た場合、その変化の割合は小さいと言える。 鉄道模型として運転している場合には、 ビリビリと音を発生しない限り、その変化に気がづくことは無いであろう。 でも、モータにはこの様な変動が有ることは覚えておこう。

 

■ ブラシ不良による回転異常

 次の例は、EF65-511モータの再測定中に見付けたものである。 モータ支持方法を改善した方法で測定していたが、次の様なデータに出くわした。

 

 電流値がどうもおかしいし、回転数も一部飛び出している。 そこで、このデータを測定順に線で結んでグラフ化したのが下のグラフである。

 

 測定は 3 volt から始めているので、最初の頃のデータとその後のデータとは異なっていることが推定される。 モータの温度変化なのかと思ってみた。 しかし、電流値がほぼ一定値のままで、今までのデータ傾向とは異なっている様である。 何か変だなあと思い、すこしいたずらをしてみた。

 

 モード1は、上記の状態である。 モード2は、両側の軸受けに外側からオイルを一滴ずつ垂らして運転したものである。 なんと、電流は下がり、回転数はアップするではないか。 半信半疑でしばらくそのままにし、およそ2時間後(昼食時間休憩なり)、再測定したのがモード3である。 元の状態に戻っている。

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 原因が良く分からないままに、温度変化についても確認するため、モータを連続運転させて、回転数の変化を測定した。 これまた、頭と共に、モータも充分に冷やして実施しました。

 5ボルトと4.5ボルトで測定した結果を右のグラフに示す。 回転数は、しばらくの間は上昇するものの、その後は下降して一定値に落ち着くようである。

 しかし、気になるのでモータを分解することにした。 分解と言っても、ブラシ部分しか分解できないのであるが、そのブラシの状態を見て、異変に気が付いた。

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 左の写真がブラシの端面を写したものである。 写真は、3mm 厚さの発泡プラ板に穴を明け、その中にブラシを差し込んで、スキャナで1,200dpi で取り込んだものである。 小さな部品の拡大写真はこの方法に限るね。

 整流子に接するブラシ端面は、半円上の綺麗な接触跡が銀色に輝いているはずであるが、なんど、真っ黒な状態でいびつであった。特に写真の上側のブラシは、半円形状が崩れており、山の部分に接触跡があった。 写真の下のブラシは半円形状ではあるが、黒い状態であった。 また、ブラシ取付穴から整流子を見ると、黒いすすが付着しており、接触跡が均一ではなかった。 

 ブラシと整流子との接触状態が正常では無かったと思われるが、何時からなのだろうかは判断出来なかった。 そこで、ダイヤモンドの小径丸やすりで軽くブラシの端面をなぞって、半円形状に修正し、再組付けを実施した。 整流子部分は綿棒とクリーナーで掃除した。

 再組付け後の測定データを下に示す。 ブラシ修正の効果なのか、正常位置にセットしたためなのかは分からないが、電流値は下がり、やや右上がりのいつもの傾向を示しているので、この状態が正常なデータと思われる。 ブラシの折損例では経験していたが、ブラシのチョットした不具合でも、回転数や電流値がこれほど変化するとは思ってもみなかった。 

 

 また、測定順にデータを線で結んだグラフを下に示す。 全体的に一直線では無さそうであるが、このモータでは、回転数のふらつがやや大きいように思われるので、作動が不安定なモータのためだとも考えられる。

 

 

■ 時間経過によって変化する回転数 

 ブラシを修正したEF65-511のモータについて、その回転数の時間変化を測定した。 下のグラフである。 左のグラフは縦軸を拡大して表示し、回転数の変化が良く分かるようにしたが、右のグラフはゼロ点を原点にして表示している。 今度の測定では、あたかもデータロガーのように時間経過をなるべく細かく測定するようにしたが、いかんせん手作業による記録なので、細かい変化は読み取れなかった。 モータの回転数は緩やかに低下する傾向を示しているが、5〜10秒サイクルで回転数は常に変動しているのである。 この現象は大小はあるものの、どもモータでも見られるが、このEF65-511のモータは少し大きいように思われた。

 

 

 この回転数の変動幅を記録したくて、上限と下限のデータを読み取ったのだが、正確ではないことをお断りしておく。 リアルタイムで測定してパソコンで処理できれば良いのであるが、まだそのレベルまで知識と財力が無いのである。

 時間経過による回転数の安定化は、10分では何とも言えない状態である。 無駄な電流が流れなくなったので、モータの温度上昇が緩やかになったということかな?

 この測定結果より、ブラシの修正は効果が有ったようだと言える事と、モータの安定化には時間が掛ること、そして、モータは常に変動しているということが言えるであろう。

 このモータ変動は、細かく見れば気になるが、上の右のグラフの様に、値の全体から見れば、5%程度と見る事が出来る。 測定誤差と考えれば神経質になる必要もないだろうし、まして、模型車両での走行には全く問題とはならないであろう。

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 しかし、この現象は、車両特性の測定時には注意しておかなければならない。

 車両特性は、小判型の周回路で測定しているが、第4コーナーを回ってホームストレッチの最終端で速度や電流などを読み取っている。 そして、曲線走行中は曲線走行の抵抗があり、直線部に入るとその抵抗が抜けるので、車両の負荷が減少してスピードが上がるであるが、モータのフライホイールの影響で少しアップダウンを繰り返す。 悪いことにモータの変動と重なってしまうと、そのデータ(電流値)はかなりふらついた値となってしまう。  低速では、直線路の安定走行まで充分に時間があるが、高速走行ではふらついた電流計の値を読まなければならない。

 このため、曲線から抜け出したあと、測定端までは距離が長くて、レールの継ぎ目が無いことが求められる。 継ぎ目では電流が振れることを経験済みである。

 この対策として、標準直線路4本分もある TOMIX の複線レールDS1120 ( 1,120mm の長さのロングレール) を持ち出して来て測定することにした。 右上の写真を参照してください。 この長さになると平坦路走行しか測定できないが、それでも少しは改善できるはずと考えている。

 実際の測定で観察してみると、曲線からの抜け出し部分の影響は少なくなった気がするが、電流の振れはゼロにはならなかった。 どうやら蛇行走行か、モータ自身の振れがあるようである。 まあ、これもホビーでの限界と言うことにしておこう。