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鉄道模型実験室   トーマ製B6のミニカーブレールへの挑戦

 

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■ いきさつ

 先日、トーマ製のB6型蒸気機関車について、分解調査と動力特性を調査したが、このトーマ製2272号機は低速までもなかなか安定した走りを見せているので、なんとか我がミニレイアウトでも走行できないか検討してみることにした。

 

■ トーマ製のB6型蒸気機関車とミニカーブレール

 トーマモデルワークス製のB6 2120形蒸気機関車(品番:0452)の車輪構成は、動輪が3軸と従輪が1軸で、すべて固定軸となっている。 

 このため、曲率の小さいカーブレールを走行する場合には、両端の固定軸の車輪について、移動出来るようにしなければならない。 動輪部はロッドが連結されているため大きな軸移動は不可能なので、従輪で対応するしかない。 一般には、この車輪を支持する台車を首振り構造にして対応しているが、このモデルの場合は、改造が不可能と思われる。 首振り化は無理なので、固定軸である従輪の軸移動量をなんとか大きくする必要がある。 このため、右下の写真に示すように、従輪の移動を妨げているダミーフレームを凹ませて、車輪の動きを確保することにする。

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 まず、必要な移動量を概算で求めておくことにする。

 関係式は、右の図にしめすように、動輪部の固定軸距をL1、そこから従輪まで軸距をL2、カーブの曲率半径をRとすると、従輪の軸移動量Xは、

      

で求められる。

 このトーマ製2272号機の寸法をあたって見ると、およそ L1= 25.5、L2 = 15であった。 この値をもとにX値を計算してみると、 R = 280mm の場合では 1.4mm、 R = 177mm の場合では 2.2mm、 R = 140mm の場合では 2.8mm と計算された。 今でも 280mm を走行出来ているので、後わずかと意気込んで、ダミーフレームの側面を強引にへこます事にした。 

 下に示す写真がへこました状態である。 更に内側の動力フレームには、左側車輪からの電気が通電されているので、ショートしない様にネジの頭をセロテープを貼ってショート防止対策とした。

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 この車両を再組付けして、期待をもって我がミニレイアウトを走行させたが、177mm のミニカーブレール部分は無事走行できたものの、140mm のミニカーブレール部分では見事に脱線してしまった。

 ダミーフレームはかなり凹ましているので、これ以上の作業は、あちこち削り取る必要があり、いちかぱちかの危険な工作となってしまうと思われた。 失敗すると走行不能の車両にしてしまう恐れあり!

 そこで、現在の状態では、140mm に対して何処まで近ずいているのか知りたくなり、いろいろの曲率のミニカーブレールで走行テストをしてみることにした。

 

■ 試験レールの製作

 その方法は、自分で試験用レールを作って走らせようと言うものである。 まず、ストック箱を漁ってフレキシブルレールの残りを探し出し、これを適当なベニヤ板の上に釘付けして作成した。 フレキシブルレールはカトー製のレールである。

 右の写真は、その試験レールとパワーユニットの状態を示す。 この状態で前進させると、左回りの前進走行状態、後進させると右回りの後進走行状態をテストできるし、車両の向きを変えると、左回りの後進走行状態、後進させると右回りの前進走行状態のテストとなる。 この間を脱線などの異常がなければ走行OKと判断する。

 まず、試験用レールの作成状態を紹介しよう。 金指、簡易コンパスを使用して、白い表面のベニヤ板に基準となる中心線を引き、140 mm、150 mm、160 mm、170 mm の半円を鉛筆で描く。  下左の写真のように、その中心線に従って、フレキシブルレールの釘打ち用穴を使って釘を打っていく。 この時、カーブの曲率がきついので、φ1.0 のドリルで中間部にも釘穴を増やしている。 下右の写真はベニヤ板の裏側を見たもので、釘の先が出ているのが判る。 試験後は、釘を抜いてしまうのでこのまま釘先が出たままにしている。

 上の写真は、線路上面から写したもので、緩和曲線部無しに直線路からいきなり曲線路を構成している。 レール長さが少し足りなかったので、助走路の直線部は継ぎ足し状態となっているが、何ら影響は無いものと判断している。 また、色々な時に写真を撮影したので、異なり半径の状態の写真となってしまっているが、170mm から初めて、160mm 、150mm の状態を作り、それぞれテストしている。

 

■ 試験走行の実施

 試験用レールが出来あがったので、早速半径170mm から走行テストを始めた。 トーマ製2272号機は問題無くスムーズに走行出来た。

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 その時の走行動画を示す。

       ⇒ 170mm 走行

 次に、曲率を160mm に作り直して走行させる。 走行途中で脱線するので様子を見るため、上部のタンクを取り外した状態にして走行させた。

       ⇒ 160mm 走行

 車両を再び分解し、ダミーフレームの側面を限界近くまで凹まして再度走行テストを実施すると、今度は無事走行させることが出来た。

       ⇒ 修正後の 160mm 走行

 ここで、河合製のB6 形 2120 号機を持ち出し、 同様に160mm での走行テストを実施した。

       ⇒ 河合製のB6 形 2120 号機の160mm 走行

 この2120 号機も、問題無く走行出来る事を確認する。 その独特な走行音(走行騒音?)にも注目して下さい。

 ここで、試験レールを作ったので、どうせなら他のSLも走行テストを実施して見ることにした。 マイコレクションの蒸気機関車リストで示した各車両を持ち出し、走らせて見た。 177mm と 140mm は、TOMIX のミニカーブレールを使用した。

 これらの試験結果は、「SLのミニカーブレールに対する走行性」として、別のレポートを作成中なので、近日中に報告しよう。

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 ところで、トーマの2272号機は、カワイの2120号機と同じく、次のステップの150mm カーブで脱線を連発してあえなく走行性はNGとなってしまった。 どうやら限界は、160mm までの様である。 これ以上の改良は車両側では無理と判断する。

 

■ まとめ

 トーマの2272号機は、半径160mm の曲線路が限界と判断する。 このため、スラックスを付けたり、ガードレールを付加しているとは言え、140mm の曲線部を持つ我がミニレイアウトの走行はこのままでは不可である。 実際に走行させても脱線してしまうのである。 残念!

 しかし、諦めてはいません。 140mm の曲線部が無ければいいのだ。 あるいは140mm の曲線部を通過しなければいいのだとの考えで、言い換えれば「逃げるが勝ち」の論法で対応しようと、幾つかのアイディアを検討中である。 成功した場合には報告しよう。