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鉄道模型実験室  小型蒸気機関車の重連 (その1) 2286号機と2272号機

■ はじめに

 小生のコレクションでは、ミニレイアウトにマッチする小型の蒸気機関車が揃ってきた。 小さいスペースでぐるぐる巻きの路線や、高低差のあるレイアウトで、機関車を重連させたり補機を連結させて楽しんでいる。 その小型の蒸気機関車の幾つかの重連組合わせについて紹介しよう。

 

■ 2286号機と2272号機の重連

 小型蒸気機関車の重連組合わせについては、「小型蒸気機関車の重連」(2013.12.6作成)にて紹介したデータをもとに検討した。 まず最初に河合製B6を改造した2286 改造機と、トーマ製のB6である 2272号機の重連組合せを紹介する。 この組合わせでは、速度特性は一致しないものの、2286改造機の牽引力特性がゆるやかなので組合わせ可能であると判断したものである。

 重連時の動力特性を測定し、単独での特性と比較しながら重連時の色々な動きを考察することにする。 これらの動力特性の測定は安定化電源を使用した自動測定システムにて実施する。 また、それぞれの車両の特性データは、「マイコレクション」の「2286改造 B6 機関車」と「2272 B6 機関車 空制化前モデル」のデータを流用している。 

● 速度特性の測定

 平坦路を客車などを牽引しない状態の無負荷状態で、線路への供給電圧を変えて、速度と電流を測定したグラフを右に示す。

 平坦路単機走行状態に於いて、2272 号機と2286改造機では、30%以上も速度差がある。 そして、2286改造機の方が足が早いので前に連結させる。 即ち、本務機を2272号機とし、2286改造機を前補機として重連させた。

 車速・電圧特性を見ると、重連時の速度は、遅い方の2272号機に殆んど重なってしまうのである。 即ち、5Volt 時には前補機とした2286改造機が100Km/h のスケールスピードを出すのに対して、 本務機の2272号機は70Km/h しか出ないのであるが、この状態で重連させると、70Km/hでの走行に落ち着いてしまうのである。

 また、電流特性を見ると、重連時の消費電流は、各車両の消費電流の合計よりも余分に電流を消費していることが、グラフから読み取れる。 これらの理由は、次の牽引力特性を見ると理解出来るであろう。


● 牽引力特性

 重連させた場合の牽引力特性を右に示す。 今回は供給電圧は5Voltの場合だけを測定している。

 少しデータはバラツイており、電流値データは途中で一部分が膨らんだ特異な特性を示している。

 このデータにそれぞれの車両の5Volt 時のデータを重ねたグラフをその下に示す。 このグラフから色々な事が読み取れるのであるが、その見方を紹介しよう。

 はじめに、重連時の制約として、線路からの供給電圧は、重連する二つの車両とも同じであることである。 これは当然であるが、このためには、同じ電圧の動力特性を用意しておくことに他ならない。

 次に、重連時の牽引力は二つの車両の牽引力の合力となるので、たし算をすれば良いのであるが、牽引力はプラスで、制動力はマイナスとなることに注目しておくこと。 同様に電流値も並列回路となるため、これもたし算となる。

 ただし、重連状態では、二つの車両の速度は全く同一であるという条件を満たす必要がある。

 これらの事項を念頭に置いて、グラフを見て行こう。

 まず、牽引力・車速グラフでは、車速が同じと言う条件は縦線で示されるので、この線上での牽引力のたし算は可能である。

 まず機関車だけでの重連走行では牽引力ゼロの状態であるので、上のグラフの(イ)の車速で表わされれる。 この時、前補機の2286改造機は3グラム程度の牽引力を発揮しているものの、本務機の2272号機がマイナスの3グラムのブレーキ力を出している状態で走行しており、これは「連結部での引張やっこ」の状態で走行している状態である。 この時の電流値を見てみると、右のグラフに示すように、車速条件が隠れているので牽引力ゼロの点を単にたし算すると云う単純な計算とは行かない。 連結部で引張やっこしている分の力が余分に必要なのである。

 それぞれのデータは同時に測定していないのでデータの値が少しズレているような気がするが、これも車両側の要因であったり、あるいは測定誤差であるかも知れないが、ホビーの限界として容赦頂きたい。

 車速(ロ)では本務機と前補機が力を合わせて牽引している状態であり、この状態で走行させるのが理想である。 車速(ハ)では本務機あるいは前補機がスリップ状態(ニ)に入り、車速(ホ)では本務機がマイナス、即ち制動状態でのスリップ状態(ヘ)に突入しているので、それぞれ不安定な状態が始まっていることになる。 このように5Volt の設定時には、車速(ハ)と車速(ホ)で走行出来るような負荷状態で走行させれば、安定な重連走行が可能となる。 ただし、「連結部での引張やっこ」は発生しているので、間にトレーラ車を挿入するなどの設定は止めておいた方が良さそうである。

 

 また、2286改造機の特性がなだらかであるため、2272号機のスリップ限界の範囲を充分にカバーすることが出来ていることより、この重連の組合せが成立している事がうなずけるのである。

 なお、重連させた場合の牽引力特性において、電流値データが途中で一部分が膨らんだ特異な特性を示しているが、その原因をチェックするために、同じデータを縦軸を電流に、横軸を車速に取ってグラフ化してみたのが右のグラフである。 横軸を車速に取っているので、縦軸上で電流値のたし算が可能となるのである。

 このグラフを見ていると、重連時の消費電流はそれぞれの車両の消費電流+αで、αは連結部での引張やっこ分であるが、一部分が膨らんだ特異な状態は、それよりも消費電流が少ない状態となっている。この様な事は通常は考えられないのである。 それぞれのデータは同時に測定していないので、同一状態を表わしている訳ではないことを考慮すると、2286改造機の走行状態が少し変化したために、消費電流も変化したと考えるべきであろうか。 

● 重連走行の動画

 この重連状態の測定中の走行状態と、ミニレイアウトを走行状態の動画を次に示す。 問題無く走行している状態を確認下さい。

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 2013.12.19 作成 M.T.