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鉄道模型実験室  測定車を作る

■ はじめに

 移動式測定車の工作内容を報告する。 この測定車は、動力車に搭載されているモータの端子電圧と回転数を測定し、そのデータを無線通信と赤外線通信を使って測定台のArduino に送信し、 そこからパソコンにデータを送信するための起点となる部分であるが、Nゲージサイズの大きさに納めることや、移動中に作動することなどの制約がある。 出来れば軽くして走行抵抗を少なくさせると共に、走行中でもそれなりの信頼性のある測定器として、使えるものにしたいと考えている。

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■ 車載ユニットの作成

 まず、組み込むべき測定モジュールの回路図を紹介する。

 モータ端子間電圧の取り込み方法で検討したオペアンプ回路と、赤外線通信で検討した発振回路を使い、無線通信モジュール XBeeと赤外線LEDを発光させる回路をコンパクトにまとめる必要がある。

 ここで、赤外線通信用の発振回路では、二つの抵抗値を可変にして、周波数を調整するようにした。 予備実験んでは、232Ωと51Ωでうまく発振したが、もう少し微調整すればデューティ比が改善されるだろうと期待したのである。 また、この発振回路は不安定と思われるので、測定の度に微調整が必要になるのではないかとの不安もあったからである。 しかし、200Ωの半固定抵抗も欲しかったが、無かったので100Ω固定抵抗をはさむことにした。
  この回路図より、実体配線を何枚も書き直した。 Nゲージの車幅の制約のため、思わぬ苦労をさせられた。 少しずつ広げていき、やっと23.5mm で納める事ができた。 実体配線図は、5mm 目の方眼紙を使い、書いては消して、書いては消しの作業であったが、考えている時は楽しかった。 基板外の部品との配線はコネクタを使用したかったが、スペースが無かったので、回転センサと乾電池以外との配線は、固定配線とした。 

 左上の写真は、最初に部品をあてて様子を見た状態である。 左側のICソケットはオペアンプ用で、右のICソケットはタイマーIC用である。 当初は楽々配線のつもりであったが、途中から取付ネジ用の穴とその周りのスペースや、スイッチON の時に点灯するLEDを追加したため、だんだん窮屈になってしまった。 左上と右上の写真で、少し変更されている部分があるのが判るだろうか。 

 キチキチに詰込んだので、裏側のハンダ付けも四苦八苦し、下手な作業が余計見苦しい状態となってしまった。 ジャンパー線の取り回しは、裏と表の利用できそうな部分を最大限利用したつもりであり、こんなに詰め込んだ配線は初めてであった。

 

■ フレームの作成と仮組み付けの実施

 次に、測定車のフレームを作る。 以前、走る電源車として、単3を3個乗せるように作ったフレームがあったので、これを活用することにした。 GM の板キットの残りを使い、5mm 角のプラ棒で補強したものである。 XBeeモジュールの取り付けのために中央部に穴を開けている。 また、基板を固定するために、M2のネジを4ヶ所設けようとしたが、一ヶ所はXBeeモジュールと干渉するため、3ヶ所となった。 そして、基板裏側のハンダ部分を逃げるために、2mm 厚さのプラ板で取り付け面をかさ上げしている。

 また、一方の台車取り付け部には、レール電圧を測定するために、集電子付き台車が取りつけられるように窓を開けている。

 

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 ユニットを搭載した状態を上に示す。 XBeeモジュールは、プラ棒を挟んで取り付けるため、特に固定する必要もなくピッタリとはめる事が出来た。 また、アンテナの高さも低く抑える事が出来た。

 しかし、電池ボックスの幅が、27.5mm もあり、ゲートの幅30mm とキチキチである。XBeeモジュールの幅は24.5mm 、ピッチ変換基板が25.5mm であるので、せめてこれ以下にしておきたい。 そこで、最終的には紐で括り付ける方法などを検討する事にしよう。

 この測定ユニットが形になってきたので、今後はこのユニットを使って実験をすすめることにした。

 

■ 機能確認テストの実施

 最初に、電圧を測定する回路の確認作業を実施した。 オペアンプ回路が正しく配線されたか、さらにその作動は正常かどうかをチェックするため、安定化電源から電圧を付与し、オペアンプの出力端の電圧をテスターで測定した。 その実験の様子を下に示す。

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 測定結果を右のグラフに示す。 緑色のプロット点がモータ端子電圧、青色のプロット点がレール電圧の出力である。

 プロット点は、リニアであり、かつ殆どゼロ点を通っているので、入力と出力が比例している事を示している。 そして、入力 10 ボルト時点で出力が 1.2 ボルト以下であり、設定どうりの値となっている。

 この事より、配線は正しく実施されており、機能も正常であることが確認出来た。

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 次に、無線通信を使って、この測定データをパソコンに送り込み、電圧データが正しく送信されたかどうかを検証することにした。

 このころ、前後して無線通信の確認も実施していたが、その結果、アナログデータは2本も遅れない事が判ってきたので、レール電圧の測定は放棄することにした。

 ただし、折角作業した配線は残して置くことにした。 モータ端子電圧の測定とレールの供給する電圧の測定は、場所や測定方法が異なるために大きな誤差が生ずる恐れがある。 モータ端子電圧も欲しいが、レールとモータ間の電圧降下量も正確に測定してみたい希望は残っている。 この時には、モータ端子電圧とレール電圧の差圧を測定してそのデータを送信する手段を残しておこうと考えたからである。 回路は一部修正すれば対応出来そうなので、配線はこのまま残すことにしたのである。

 無線通信を使っての検証は、先回の報告で説明済みなので、ここでは省略する。 この結果、無線通信でのデータ送信は正常に作動している事が確認された。

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 次に、赤外線通信での確認を実施した。 その内容は次回報告する。

 

■修正と仕上げ

 確認作業中に幾つかの手直しを実施した。 ひとつは、センサと電源のコネクタ部が不安定であったので、背の低いコネクタから背の高いコネクタに取り換えている。 そして赤外線LEDの光りを邪魔しないように少し斜めに取りつけている。 また、発振回路において、二つの半固定回路の間の100Ωの抵抗を二つに増やしている。 また、測定端子部なども工作した。

 下の左の写真は、工作した全部品を並べたものである。 下右の写真は、測定ユニットとXBee用ピッチ変換基板である。 これらは配線でつながっている。

 測定ユニットは、しっかりと部品を詰め込み、何本ものジャンパー線が走っている。 右の写真の左下の隅にはスイッチが見える。

 無線通信用のXBeeモジュールである。 ルータとして設定している。 ピッチ変換基板とは、フレームの角材を挟んでセットし固定するようにしている。

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 フレームにセットされた測定ユニットとXBeeモジュールを上に示す。 ピッタリと隣り合わせにしている。 上右の写真は裏側から見た写真である。 さらに、横から見た状態を左に示す。 レール電圧検知のための配線まで実施しているが、このままにしておこう。

 そして、モータの回転を検出する測定ユニットを下左の示す。 その内容は、先に報告した「反射式回転センサーを使う」で説明している。

 車載測定ユニットの電源は単4を2個使用する。 消費電力を少し心配しているがなるべく連続使用を控えるようにして使用して行こう。

 最後に、これらを組付けた状態を下に示す。 

 さて、実際に使用してみて、正常に作動するかまだ心配であるが、ここまで来たので仕上げるしかないと思っている。 しかし、まだ、ゴールは遠いようである。