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鉄道模型実験室  サテライト・ユニットの作動について

■ いきさつ

 先回、SLの動輪の動きを捕えようとして2回に分けて報告してきたが、このプロジェクトは失敗に終わった。 しかし、宿題となっていたサテライト・ユニットの作動を確認し、問題となった自己発振の様子をもう少し詳しく調査して今後に役立つような知見としておきたい。

 このサテライト・ユニットは、測定車から赤外線通信で送信されてきたモータ回転数やクロスヘッドのパルスの受け手であるが、実験中から、ユニット自体が自己発振している可能性があるのではと疑っていたからである。 そこで、サテライト・ユニット単品についていろいろ調べてみる事にした。 

 

■ サテライト・ユニットのは発振状態

 まず、サテライト・ユニットの発振状態を確認するため、下の写真のように、サテライト・ユニットとArduino だけでその作動を確認した。 そして、サテライト・ユニットはArduino から電源を受けた状態であるが、自分自身で勝手にパカパカしている状態を確認した。 ただし、作動状態の確認のために橙LEDが点灯する様、Q1端子を出力側に接続した状態にしている。 この様子を動画でもアップしたので確認下さい。

 ビデオの後半では、パソコンのそばに置いてみたが、発振状態がやや早くなっている。

 

■ 発振状態の波形をみよう

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 この発振状態における回路の作動状態を観察するため、オシロにてその波形をみてみよう。 実験は下に示すような部品を使用し回路を構成した。 サテライト・ユニットの電源はArduino の5ボルト端子から供給し、Vin 端子からオシロ用Arduino の電源を取っている。 ACアダプターは9ボルト仕様である。

 まず、出力パルスを出しているQ1端子をオシロのCH2 に接続して観察したのが、右の画面である。 CH1 はまだ接続していない。

  オシロのスイープ軸は、500ms/divで表示している。 パルス出力は1.7 ボルトと読み取れるが、オシロシールドの分圧を換算すると、その3倍の5.1ボルトとなるので、供給電圧のフル出力状態と言えよう。 パルス波はランダムに発生しており、横枡のひと目盛りは0.5秒なので、5秒間の間に長さがまちまちのパルスを12個も送信していることが観察される。 赤外線のノイズを拾っているのか、回路上の発振なのかは不明である。

 次に、受光ユニットの出力端子をCH1 に接続した状態を下左の画面に示す。 CH2 は接続したままであるが、出力電圧はゼロとなってしまっている。 その理由は先回の報告で検討している。 受光ユニットの出力電圧は0.65ボルトで、0.025ボルトの凸ノイズあり。 さらに、途中に0ボルトまで落ちるノイズあり、このノイズはランダムに通り過ぎていく。 出力電圧の0.65ボルトは実際の電圧に換算すると1.95ボルトと計算される。

 回路の都合上、受光ユニットの出力端子とQ1端子が同時に表示出来なかったので、その間の関連を確認できなかった。 発生頻度からすれば関係無い様な気もするのであるが、パルスの発生状態は多かったり少なかったと気ままな状態であったので、関係無いとは言い切れないのである。 良くわからない! このため、Q1端子から出てきたランダムパルスが、受光ユニットの出力端子のランダムパルスに全て起因しているとは言い切れないのである。

 この状態において、オシロのスイープ時間を短くしたもの( スイープ軸を20ms/div で表示 )を上右の画面に示す。 受光ユニットの出力端子のノイズの様なパルスは、さらに細かなパルスの集合体である事が分かる。 約15ms毎に固まって発振しているようだ。 しかし、パルスは上側に発生し、その高さが揃っている。 シールドの分圧から逆算すると、0.06 ボルトのパルスと読み取れるが、このオシロの分解能の限界とも思われるので、これ以上検討しても無駄な様な気がする。

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■ 電源を安定化電源に変えてみる

 前の報告でも紹介したように、サテライト・ユニットの電源をいつも使用している安定化電源に変えてみた。 実験の準備状態を下に示す。

 サテライト・ユニットの供給電圧を 5.0 ボルトにセットし、Q1 端子をオシロのCH2 に、受光ユニットの出力端子をCH1 に接続してオシロで波形を観察した。 その画面を右上に示す。 Arduino の電源を使っている場合と比べて、全く静かであることが理解できよう。 さらに、途中に0ボルトまで落ちるノイズは観察中は認められなかった。 

 この比較から

 この状態を観察して、受光ユニットの出力端子のノイズ低減のために、0.1μFのパスコンを受光ユニットの出力端子に挿入することにした。 しかし、前記のようなノイズは少なくなって効果があったものの、完全とは言えなかった。

■ リモコンの影響

 もうひとつ気になっていたテレビ等で使用されているリモコンの赤外線の影響を調べておくことにした。 同じ38KHz のキャリヤ波による赤外線通信なので、もろに影響されるものと覚悟しているが、その状態を確認しておく。

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 もう一度、Arduino の電源を使っている状態に戻し、Q1端子をCH2に接続するも、受光ユニットの出力端子はCH1に接続しない状態で、出力パルスを観察した。

 近くにあったテレビ用のリモコンのボタンをポン、ポンと押した状態を上左の画面に示す。 また、ボタンを押し続けた状態を、右に示す。

 リモコンのボタン操作には確実に反応しており、すこし離れた位置からでも信号を受信していた。 パルス信号はコード化されているとのことであるので、ON/OFFの複雑なパルスと思われる。

 次に、Q1端子をCH2に接続したままで、受光ユニットの出力端子をCH1に接続した場合の波形を右の画面に示す。 受光ユニットの出力端子も信号を受けて、綺麗なON/OFFの複雑なパルスを出力している事がわかる。

 このサテライト・ユニットは、リモコン信号にも確実に反応する事を確認出来たし、その信号は実験データにも確実に影響することは容易に想像される。 しかし、このパルスはリモコンのボタンを押した時だけに発生し、機器がやたらに雑音を発して、雑音外乱のようになっていないこと事が分かったので、まずは一安心である。

 すなわち、実験中はリモコン操作を実施しなければ良いのである! 

    クーラーの自動運転中は要注意であるが・・・・。

 

■ 対策はどうしようか

 ランダムな外乱(内乱かも?)に対する対策はどうしたらよいのか、その知識がないので、これまた手探りの実験を始めてしまった。 まず、自己流の平滑回路の検証から始めることにした。

 

◆ 現状の確認

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 最初に、Arduino からVin と5volt 電源が取れるように、オシロシールドを少し加工した。 これによって、ひとつのArduino からサテライト・ユニットの電源 5 ボルトが供給できるようなった。 下の写真の赤色リード線である。 この他にブレッド・ボードを用意して、色々な回路をテストすることにする。

 Arduino への供給電源に何も加工しない状態の波形を、右上に画面に示す。 供給電源のプラス端子をCH1に、Q1端子をCH2に接続して状態である。 電源には小さな波があり、Q1からは時々パルスが発生している状態である。

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◆コンデンサを入れてみる

 電源のプラス側に色々なコンデンサを入れてみた。 まず、10μFのコンデンサを入れてみると、パルスの発生頻度は通常の状態よりも増えたので、今度は100μF を挿入すると、逆にグーンと減ってしまった。 たまに流れていく程度である。 0.1 μFにしても同様に時々発生する程度であった。 手持ちのコンデンサの種類が少ないので、下の写真のように、10μFを並列に挿入してみた。

 10μFのコンデンサが一個の時の波形が、上右の画面である。 パルスが増えている事が分かる。 2個の場合は下左の画面である。 パルはかなり減少している。 さらに3個の場合は下右の画面である。 発生頻度がさらに減少している事が分かる。 回路中に、ある容量のコンデンサを挿入すると発生頻度が変化すると言うことは、どこかに共振する状態が作成され、そこで共振現象が発生するような気がするのである。 しかし、これ以上究明する知識も技術レベルも無いので、電源の形態が怪しいとしか判断出来なかった。

 また、コンデンサを挿入することによって、5ボルトの供給電圧の変化は画面上からは分からなかった。 これだけパルスの発生状況が変化するので、何らかの影響を与えていると考えていたが、その差を見いだせなかった。 勘ぐって見ると、電源電圧の僅かな刺激が回路の中のどこかを刺激して、ランダムなパルスを発生させているのだと考えてしまうのである。

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◆ 平滑回路にしてみる

 先回実施した自己流の平滑回路を構成してみた。 今回は、Arduino Vin 端子から 1.8kΩの抵抗を通してサテライトユニットに接続する。 そして、抵抗の後ろに 10μFのコンデンサを通してGNDに接続させる回路を構成した。 いわゆる CRローパス・フィルタで、計算サイトでカットオフ周波数を計算すると fc = 8.8 Hz であった。

 しかし、この回路を通すとサテライトユニットが作動しないのである。 Q1からパルスが出なくなってしまった・・・・・・・・。 素人にはチンプン・カンプンである!

 作動しなければこの方法は採用出来ないので、この選択を放棄した。

 

◆ 手で覆って見た

 赤外線は人体からでも出ているとの素人考えで、ためしに受光ユニットを手で覆ってみた状態が左の画面である。 ブレッドボード部のコンデンサ類は全て取り去った最初の状態に戻しているが、パルスの発生は増加している。

 もしかして、受光ユニットの温度が影響しているのかと思って、ドライで温めみたが、これと言った原因をする事は出来なかった。 そして、対応策もアイディアも無くなった状態に陥った。

 

◆ 乾電池を電源にしてみる

 電源の影響であるならば、いっそのこと乾電池にテストしてみよう考えた。 乾電池には、ノイズとなる交流成分が無いはずである。

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 この実験状態を下に示す。 単1電池を用いたのは、たまたま単1用の乾電池ボックスを2個も持っていたからであるので、単1である必要はないであろう。

 そして、オシロの画面を右に示す。 CH2 のQ1ラインは、ピクリとも変動しない一直線のままである。 

 本当に作動しているのか心配になってたので、リモコンを操作すると確実に反応してくれた。 これでユニットの作動は正常であると確認することが出来た。 でも、実際の回路に採用するには、すこし躊躇している。 ここまでする必要があるのかと考えてしまうのである。

 

■ まとめ

 自分の知識レベルでは、これ以上検討出来るレベルでは無いので、これで今回の調査を終了する事にした。 そして、

  1. 赤外線式のリモコン受光ユニットを使ったこのサテライト・ユニットは、リモコン操作の外乱をもろに受けるので、実験中は注意して測定すること。
  2. 作動中に原因不明のパルスが度々侵入してくること。
  3. そして、これらの影響をもろに受けない処理アルゴリズムを採用すること。

 と言う事を結論としておこう。 本当に困ってしまったら、乾電池による電源を採用すれば良いという最終手段があるのである。