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鉄道模型実験室  SLのモータ回転数を測定しよう その2  リモコン受光ユニットの失敗

 

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■ 大ポカをやってしまった!

 C55-62号機のモータ回転数を測定するセンサユニットの取り付けが完了したので、作動確認もそこそこに、いつもの測定台で性能測定を実施する事にした。 そして測定機器をセット中に大ポカをやってしまった。 赤外線通信を受信するサテライト・ユニットとメイン制御部とを接続する時、 Arduino からの電源を送るVs端子とGND端子の接続を間違えてしまったのである。 右の写真の部分。

 サテライト・ユニットには 5volt とGND 端子を接続すべきところを、GND線をArduinoのVin 端子に、5volt 線をArduinoのGND端子に接続してしまったのである。 Arduino にはACアダプタから +9volt が供給されているので、この電圧がサテライト・ユニットのGND線に流れてしまったのである。 電流はどの様に流れたのかチェックしていないが、なにも気が付かずに、実験準備を進め、走行テストを始めてしまった。

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 測定システムは当然作動しないので、どこがおかしいのだろうと考えながら、あちこち見ていたが、何か焼けるような匂いがして、上の方で僅かに煙の様なものがかすかに見えてきた。 そこで慌てて電源を全て切って、接続を再チェックし、始めて接続ミスに気が付いた。 そして、リモコン受光ユニットを触ると少し熱くなっていた。 正常な接続に戻して作動チェックを実施するも、サテライト・ユニットはダンマリの状態であった・・・・・・・・・・。

 サテライト・ユニットのフレームには、左の写真のように、接続先を明記していたのに、何たる様だろうか?D4とD5の接続には充分に気を使っていたのだが、肝心の電力線への認識が甘かった。 何を勘違いしていたのか猛反省するも後の祭りである。

 人間のミスを避けるには、注意書だけでは不十分であるので、可能な限りのポカヨケを施しておくこと・・・・・・・・・・・・・現役時代には嫌と言うほど言われていたではないか!

 この場合のポカヨケ対策は、専用にシールドを作ることである。

 サテライト・ユニットを取り外し、各部品の機能チェックを実施した。 LEDは生きている事が確認出来た。 トランジスタは不明で確認出来ない。 バイナリカウンタはストック品に取り換えた。 問題の受光ユニットもストック品があったが、足にハンダの跡があったので不安ながら取り付けて、サテライト・ユニットのベンチテストを実施した。 TVのリモコンを使って機能チェックしたが、無しのつぶてであった。 オシロで確認するも反応なしである。 受光ユニットの足の部分をドライバでショートさせるとカウンタは作動するので、やはり、この受光ユニットが不良であると判断した。

 そこで、ネットで発注することにした。 今回選定したのは、秋月の赤外線リモコン受信モジュール PL-IR0101(38KHz)シールド付きである。 ノイズ防止のシールドが付いていること、価格が安かったことなどから選定した。

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■ 新しい受光ユニットの取り付け

 この際、色々なメーカーのユニットをチェックしてみたところ、SHARP 製のカタログに記載されていた、CRフィルターを実装すると良いとの記述を見つけた。 メーカーは異なるものの、ノイズ対策になると考えて採用してみることにした。 その回路を右に示す。

 今回のポカの再発防止のためにArduino との接続のための専用のシールドを作ることにした。 在庫として保管していたユニバーサル基板の切れ端を使って、ピンヘッドをハンダ付けした簡単なシールドであるが、Arduino への装着は、ただ単にはめ込むだけでいいので、ポケーとしていてもミスることはなそうである。

 サテライト・ユニットの基板には、47μFのコンデンサと、51 Ωの抵抗を使ったCRフィルター回路を実装した。 また、リモコン受光ユニットの足には、カプトンテープを巻いた上に、アルミ箔を巻いて簡易的なシールドとしたが、効果があるかどうかは不明である。

 なお、CRフィルタを設置するなら、ついでにカウンター回路も含めるように考えたが、ICの消費電流による電圧降下が無視出来ないと判断して、受光ユニットだけにした。

 

■ ベンチテストの実施

 この新しいサテライト・ユニットの機能チェックを実施した。 オシロシールドを使用して、サテライト・ユニットに +5 を供給するとともに、カウンタのQ1出力を観察した。

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 テスト回路を上に示す。 赤外線の発光はTVのリモコンを使用した。

 カウンタのQ1出力をシールドのCH2 に直接接続した。 すなわち電圧ゲインは1である。 この時のオシロ画面を右に示す。

 リモコンのボタンを押すたびに、Q1出力端子からは綺麗なパルスを出している事が判る。 また、何回かボタンを押すと赤LEDも点灯し、カウンタのカウントも正常に機能していることも確認された。 やれやれである。

 

■ 走行実験の実施 ・・・・ 不思議な現象?

 サテライト・ユニットが正常に作動しているようなので、C58-127号機を走らせて、赤外線通信の確認を行った。 通信状態はLEDの点灯状態で確認できるので 測定制御用Arduinoとパソコン間は接続していない状態で実験した。

 パルスのカウントはRESET信号にて制御されるが、RESET信号がLOWの状態では緑のLEG を消灯させると共に、パルスのカウントを実施するのでパソコンとの接続無しでも正常に作動できるのである。

 期待を膨らめて実験を始めたが、様子がおかしいのある。 測定車の電源を入れて走行させている時はカウントを実施しているが、

すぐにそのカウントを止めてしまう        

のである。 何度やっても同じであり、始めて経験する現象である。

 オシロを持ち出して各部をチェックしてみた。 最初に電池の電圧低下を疑ったが電圧を測定するも、電圧の低下は認められなかった。

 測定車から正常なパルスが出ていない・・・・・・?

 新しく追加したCR回路が影響している・・・・・・・・・・・?

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 いろいろな疑問が湧いて来たが、原因が良くわからないので、もう一度、各部の作動状態をしっかりとチェックする事にした。

 

 

■ 測定車ユニットの機能確認

 最初に、測定車ユニットからの機能を再確認する事にした。

 まず、モータの動力を供給する方法としては、先回の実験と同じ方法を使った。 右の写真参照。 また、モータ回転パルスのチェックのために、ICの足を使うのではなく、新たに信号取り出し端子を追加して容易に接続できるように加工した。 右の写真の(1)パルス信号の端子である。

 オシロでの観察は、(2)のキャリヤ波を含む信号で増幅前に状態と、(3)の増幅後の状態も観察することにした。 ベンチ実験の状態と配線状態を下に示す。

 まず、CH1 には(2)を、CH2 には(1)を接続した時の信号波形を下左に示す。 心配していた様に、低い山の時はパルスが発生していない上に、高い山でもパルスの幅が狭い状態である。 トランジスタによる信号処理後の波形を下右に示す。 CH1 は(3)に接続しているので信号は反転しているが、赤外線LEDを光らせるパルスがか細いのが心配である。

 そこで、従来から使用していた電気機関車用のセンサを持ち出して、同様にチェックしたのが下左の波形である。 山の高さには差異があるものの、どちらの山も確実にパルス化している事が判る。 すなわち、小型の反射型フォトセンサはそれなりの出力がされているものの、測定車上の2.4ボルトといる限られた電源では、充分とは言えないを判断した。 そこで、再びトランジスタの増幅回路を挿入することにした。 また、ジーと観察していると何時までもパルスを発生しており、途中で発信を止めるような現象は見られなかった。

■ トランジスタで増幅させる

 ブレッドボードに増幅回路を構成して、再び実験を行った。 トランジスタは手持ちの(これしか持っていない) 2SC1815 を使用し、ベース側に1KΩ、エミッタ側に3.3KΩを接続し、プルダウン回路を形成して信号を取り出した。 この時の波形を上右に示す。CH1 は(3)に、CH2 は(1)を接続した。 この波形より、トランジスタの挿入効果は充分にあり、さらに電気機関車用のセンサ(上左の波形)よりもしっかりとしたパルスを出している事が判る。

 また、今回もジーと観察していたが、何時までもパルスを発生しており、途中で発信を止めるような現象は見られなかった。

 この状態で、時間軸を変えて観察した結果を下に示す。 まず、1ms/div に拡大した状態を左に示す。 二つの山が表れているが、その形状は異なっているものの、確実にパルス化しているのが観察される。 そして、200ms/div に設定した時の状態を右に示す。 CH1の波形が途中で消えてしまっていることに注目しよう。

  途中でパルスが止まっている! と早合点してはいけません。  単なる表示の問題なのですから。

 時間軸表示を 50ms/div 以上の表示にすると、この様に途中からパルスが消える現象が現れ、 20ms/div 以下の表示にするすると何時まで経ってもパルスが消える事は無いのです。 グラフ類などの細かい線で描かれた線画を画面に表示する場合に起こる現象で、過去にも経験しており特に縦の線や横の線に発生します。 ドットで構成された画面にデータを圧縮して表示する場合、もとのデータを間引きして表示するためにデータが消えてしまうのです。 平均値を取って間引くと、データの線がぼけてしまうので、このオシロソフトは、ONかOFFかの判断で線を表示しており、間引き具合によっては消えてしますのです。 上記の例では、キャリヤ波を含む信号の場合は、細い縦の線の塊ですから、このような現象が発生しています。 

 

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■ サテライト・ユニットの通信チェック

 送信側では問題無い事が確認出来たので、受信側も使って赤外線通信のチェックを実施した。 その状態を右の写真に示す。 作動状態はLEDの点灯と共に、カウンタのQ1出力をオシロのCH1に接続して確認する。  リセット信号を示す緑色のLED は消灯している状態なので、パルス信号が入るとカウントする状態であるが、

 やはりおかしい?                      

1) 受信を開始して赤や黄のLEDを点灯して間もなく、カウントを停止してしまう。

2) 手で受光ユニットをさえぎり、そのあと手をよけると再びカウントを開始する。 何度も確認するが同じであった。

 これって、受光ユニットはタイマーが働くのだろうか?   

 CH2に受光ユニットの出力をつなぐと、その出力パルスでも、途中で停止してしまう現象を確認することができた。 これは新しく追加したCRフィルター回路が影響しているのではと思って、回路を取り去って見たが、同じ現象であった。

 自分の得た結論は、 「この新しいリモコン受光ユニットが怪しい。 一連のパルスセットをある時間受光するとタイマーで停止する。 そして、新しい赤外線信号を受けると、リセットされて再び受信作用を再開する。 しかし、連続パルスの場合はリセットが作用せずその後の信号を受け付けない。 タイマーで切れてしまうのである。」 と考えるようになった。 この怪しい受光ユニットについて単品でチェックしてみた。

 

■ 受光ユニット単品で受信させる応答

 受光ユニット単品をブレッドボードに差し込み、その出力端子の波形を直接観察することにした。 下の写真を参照。 C58-127号機のモータ回転数をセンシングした信号をトランジスタで増幅させ、測定車ユニットから赤外線パルスを連続発光させる。 そのすぐ前に受光ユニット PL-IRM0101を置き、その信号を観察した。

 その時の波形を下に示す。 受光ユニットのVcc 端子にはArduino の5ボルトを供給し、Vout 端子はオシロシルールドの1/3分圧を通してCH1に接続している。 回路構成は「オシロ用のシールドを作る」を参照下さい。 出力電圧は0.5目盛なので、0.5×3=1.5ボルトの出力であることをしめしている。 カタログ値より小さい?

 信号波形から判るように、ある時間が経過すると出力がピタリと止まってしまうのである。 手で赤外線をさえぎり、手をもとに戻すとまた出力が開始される。 この信号を受信してから停止するまでの時間は、左の画面では1.2sec で停止しており、時間軸を変更した右の画面では、1.4secでピタリと止まっている。

 次に、リモコンからの反応を調べたのが下の画面である。 左の画面はあるボタンを押しつ付けている状態の場合である。 ボタンは押したままであるが、パルスは一連のセットを断続的に送信しているのが判る。 このひとつの塊の中にコード化された信号が発信されているもの思われる。 オシロのトリガー機能を設定してひとつのパルスセットを観察したのが右の画面である。

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 このデータが示すように、リモコンからの反応は正常に作用し、途中で受信を停止するような事態は発生していない。

 

■ まとめ

 やっと原因を掴む事が出来た。

 選定したリモコン受光ユニットは、自分か実施しているシステムには適切ではなかったのである。          

 新しく選定したユニットは、TVなどのリモコン用として機能を進化(?)させており、連続パルスは拒否する機能が備わっていると判断した。 この機能は昔から備わっていたのかも知れないが、最初に選定したユニットにその機能が備わっていなかったので、我がシステムは問題無く作動したと考えると、ラッキーだったのかも知れない。 もし今回使用していたユニットを最初から使っていると、原因が判らずに右往左往して、システムが完成出来なかったかも知れない。

 もう一度、カタログに記載されている説明を読み返したが、対応コードなどの記述があるもの、このようなタイマー(?)機能の説明は見当たらなかった。 ただ、他製品(SHARPのGP1UXC4xQSシリーズ)のカタログでは、使用上の注意として、

本赤外線リモコン受光ユニットをワイヤレスリモコンに採用するに当たっては、送信機の信号フォーマットとして1ブロック送信時間Tのデータ部時間Tdataが100ms以下で、休止時間Toffが25ms以上のフォーマットのものを御使用下さい。

の記述を見つけた。 「1ブロック送信時間Tのデータ部時間Tdataが100ms以下」であり、かつ「休止時間Toffが25ms以上」のフォーマットである事を述べているが、まさに、上記の実験より会得した内容にマッチしているのである。 やはりそうなのである! 休止時間の無い連続パルスは途中から受け付けを拒否するのである。

 そして、説明書の回路ブロック図には、積分器のブロックが出力近くに挿入されているので、これば作用しているものと推定する。 今回使用してユニットにはブロック図の表示がないので判らないが、以前使用したユニットのブロック図には、このような「積分器」は見当たらなかった。 こじつけかな?

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 対策は明確である。 以前の受光ユニットを使用する事!      早速、追加注文を実施した。