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鉄道模型実験室  新しい測定方法を検討する

 

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■ はじめに

 右の写真は、最近測定したC12形機関車の場合の測定時の状態である。 小ぶりな機関車に比べて、測定車両はコンパクト化したとは言え、大袈裟の装置となっている。 また、センサーからの配線もぐるぐる巻きであり、もっとスマートにならないかと、「カイゼン、カイゼン・・・・」の声がだんだん大きくなって来た。

 そんなある日、ふと浮かんだアイディアが次に説明する「8字レイアウト」である。ポイントは、有線通信が可能であることである。

 

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■ 8レイアウトと有線通信

  まずは、アイディアを絵にした状態を右のイラストに示す。 その内容は、測定対象車両に取り付けたモータ回転数センサとモータ端子電圧センサの信号線を柔軟な細い線で取り出し、上に設置した「釣り竿」につるす。 そしてその信号線を測定処理装置の Arduino まで、有線で接続するのである。

 この時の問題点は、単なる小判型のレイアウトでは、接続線がぐるぐる巻きになって行き、どこかで回転逃げを設ける必要があったのである。 このような回転逃げの処理はスリップリングなどの機構が必要となり、ノイズの発生や信号の断絶などが発生するのでセンサ信号線としては不適切な構造であると考えられる。 このため、この方法は、まず不可能と考えてて良いであろう。

 今回思いついてアイディアは、測定用のレイアウトを8字形にして走行させる事である。 これによって接続線のぐるぐる巻きの発生を防止出来ることに気がついたのである。 右回転と左回転が交互に実施されるので、ねじれはせいぜい1回まで、巻いては戻しの状態が連続的に続くので、信号線の捩れは防止されるのである。

 有線通信が可能になると、無線通信のXBeeや、赤外線通信が不要となり、測定のために牽引していた測定車両も不要となってしまうのである。 折角苦労して開発してきたご自慢の測定車ではあるが、無線基地局としてのシールドや、赤外線通信受けのサテライトユニットも不要となってしまうのである。 そのメリットは大きいと思われる。

 

■ 課題の検討

 そこで、アイディアを実現させるために、予想されるいろいろな課題について検討してみよう。

 1)Arduino の処理は可能か。
モータ回転数センサとモータ端子電圧センサの信号処理については、Arduinoの端子に直接入力して信号処理を考える。 まず、端子電圧はArduino のアナログ端子をもう一つ使用する。 回転数センサは、一定時間に内のパルス数をカウントするのか、あるいは規定パルス数の経過時間を計るかによって処理方法が異なるが、Arduino のデジタル端子でパルス数をカウントする場合には、新たに割り込み処理のプログラムを検討する必要があるだろう。 いずれにしても処理は可能であろう。
 2)8字レイアウトが測定台の上に構成出来るか。
半径280mm の曲線をつないで本当に8字が構成出来るだろうか。 測定台のサイズが間に合うだろうか。 これが一番の問題と考える。
 3)信号線を上から吊るすので、現在の測定ゲートが使えない。
現在、車速を測定している光ゲートのアームは車両の上側を跨いで設置しているので信号線が引っ掛かってしまう。 このため、線路下を通す構造に作り直す必要がある。
 4)牽引力と速度を測定する専用車両はどうか。
有線通信が出来るのであれば、信号線を増やす事も可能となる。 ならばと、カプラー部に小さな荷重計を仕込んで、動力車と測定車間の牽引力を直接測定することも可能になるのではないか。 また、トレラー車の車輪の回転数を計測すれば、走行している時の車速も測定で切るのでは? これによって、任意の場所での車速と牽引力を連続して測定出来るので、曲線部走行時の状態なども測定できるメリットがある。 また、傾斜台を連続的に動かしてその間に測定を実施すれば、測定時間の短縮なども可能となるのではないだろうか。

■ 8字レイアウトの検討

 最大の課題である8字レイアウトを検討する。 使用する線路は、TOMIX製を基本にし、旋回部の半径は標準的な 280mm として検討した。 なお、現在の測定台のサイズは、外枠の内側寸法で 1175×625mm である。 検討した順番に記載して行くので、その考察過程が読み取れるでしょう。

NO 特徴 パターン図 備考
30度クロスを使用した8字パターン サイズは2800×700必要で、長すぎる。 ×
30度クロスを使用した8字パターンの長さ方向を圧縮 サイズは 2100×700 必要で、やはり長い。 これ以上縮めると測定のための直線部が取れない。 ×
90度クロスと280・30ポイントを使用した小判型+8字パターン

サイズは1500×700 でOKである。

測定は直進部で実施する。

ポイントはある一定状態にセットしておき、戻り側ではスプリングポイントの機能を使用する。

しかし、電気の極性が反対になる処が発生し、ショートしてしまう。

×
90度クロスとカーブポイントを使用した小判型+8字パターン

サイズは1500×700 でOKである。

ポイントはある一定状態にセットしておき、戻り側ではスプリングポイントの機能を使用する。

しかし、電気の極性が反対になる処が発生し、ショートしてしまう。

曲線状のクロス線路が欲しい!

×
複線を利用した2重パターン

サイズは1800×750 でやや大きい。

測定は直進部で実施する。

電気的なショートは回避されている。

複線を利用した2重パターンの変形

サイズは1800×750 でやや大きい。

測定は直進部で実施する。

電気的なショートは回避されている。

90度クロスを使用した8字パターン

単純な8字パターンに戻って検討。

サイズは1500×700 でOKである。

測定は45°の斜線路で実施するが、途中にクロス部分があるため、測定での外乱となる恐れがある。

60度クロスを使用した8字パターン

サイズは1800×700 でやや大きい。

60度クロスは市販されていないので自作となるが、果たして工作できるか疑問あり。

×
90度クロスを使用した8字パターンの変形

サイズは1800×700 でやや大きい。

15度傾いた直線路で測定する。

10 30度クロスを使用した8字円形パターン

サイズは1800×700 でやや大きい。

傾斜台と平行な直線路で測定する。

11 30度と90度クロスを使用した2重の8字パターン

曲線部でのクロス線路を検討する。

サイズは1400×900で縦方向が大きくなった。

測定のための直線部も長くとれているが、二つの直線部の進行方向が同じとなっている。

 ⇒ 駆動側と制動側の牽引力は傾斜台をプラスとマイナスに傾けなけらばならないか、あるいは、進行方向を逆にさせる必要がある。 これは光ゲートの測定方法を変える必要がある。

12 3重旋回パターン

曲線部に15度クロス線路を検討する。

サイズは1600×950で縦横方向共に大きくなってそまった。

測定のための直線部4ヶ所に増やしたが、進行方向に偏りがあり、複雑化したメリットが無い。

×
13 3重旋回パターン変形

サイズは1500×950で横方向を少し小さくできたが、やはり大きいサイズである。

複雑化したメリットが無い。

×
14 自動制御運転式の小判型+8字パターン

行き詰ったアイディアを打開するために、No.3 のパターンに自動運転制御を取り入れる。

8字のリバース線を入れる事によって進行方向を変えて測定する。

サイズは1420×620 でOKで、現行の測定台と長さが少し長くなる。

                                    

 

■ まとめ

 やはり単純な8字パターンは無理であった。 曲線部の半径をもっと小さくすると、現行のサイズでも可能であろうが、それは最後の手段としておく。 最終的にはNo.14 の自動制御運転を取り入れた「 小判型+8字パターン」に落ち着いたが、その運転制御方法も検討したので、次回に報告しよう。