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鉄道模型実験室 No.113  モータ特性を測定しよう その3 トルク測定部

■ はじめに

 今回は、当初のアイディアに従って、トルク測定部の構成を検討したので紹介しよう。

 

■ トルク測定部の制作

◆ 張力プーリー部の工作

 まず最初に、回転トルクを張力に変換させる張力プーリー部を工作する。 プーリーの中心となる適切な円筒部材を色々な場所をあさって探し回った。 直径は 5〜10mm ぐらいのもので、摩擦で摩耗しないように金属製の円筒が良いだろう、などと考えながら探していたらぴったりの物を発見した。 直径がφ6.0mm で内径がφ5.0 長さが 16mm のステンレス製?の円筒である。 下の写真。 これは廃棄しようとしたビデオカセットを、興味半分で分解した時に取って置いた部品である。 磁気テープの案内部分のため、非磁性体のステンレスの様である。 表面がピカピカで真円度、円筒度などは問題無いと判断する。

 さて、もう一つのポイントなるベアリングは、ミニ4駆用の部品コーナーから TAMIYA のグレードアップパーツシリーズNO.111 のベラリングを使用する。 内径はφ2.0 、外径はφ6.0 外輪の幅は 2.0mm である。 さらに、モータと連結するカップリング部はKATOのジョイントを使用するとすると、φ1.5mm の軸が必要である。

 これらの部品を一体化するために、外径 2.0mm、内径 1.55mm の真鍮パイプをメインの軸として使用し、外径 3mm×内径 2mm と 外径 5mm×内径 3mm の透明なプラパイプを使ってステンレスの円筒を固定することにした。 その両側には M3 用のワッシヤーを接着し、プラ製の小さなプーリーも固定させて回転数検知用のプーリーとした。 これらは、瞬間接着剤で固定している。

 ボールベアリングは、外径 3mm×内径 2mm のプラパイプが内輪のストッパとなるようにしており、外径は厚さ 2mm のプラ板で保持し、外側に飛び出さないように 1mm のプラ板でフランジを構成した。 全体のベースは、これまた廃材庫(ストック品入れなのだ!)からぴったりの木片を探して使用している。 マジックで何やら書かれているが気にしないことにする。 ボールベアリング部にはグリースをたっぷりと塗布して回転をチェックする。 回転は滑らかであり、満足できる仕上がりであった。

◆ 支柱の工作

 次に、この張力プーリー部や供試品のモータを支える部分の工作を実施した。 測定台の上に張力プーリー部の中心が所定の位置に来るように設定して、 186×45×12mm の板を立てて張力プーリー部を固定した。 さらに与圧レバーの中心軸も固定した。 線形がφ2.0mm の真鍮線を使った。 そして、この支柱の裏側には供試品のモータを支える台をスライド可能なL字金具で固定した。 この金具は回転やスライドが自由なのでモータの回転軸位置の微調整が可能である。

 この支柱の表と裏を下に示す。

 また、モータ取り付け台とその裏側を下に示す。

◆ 与圧レバーと張力バランスレバーの工作

 張力バランスレバーは計画図に従って下左の写真のように、厚さ 1mm のプラ板で工作した。 軽量化を意図して肉抜きも実施している。 また、レバーの左側には M2のネジを切り、小さな四角いプラ板をネジ止めしているが、これは張力用の糸の長さを調整して固定するための細工である。 このレバーの形状がいびつなので、左右の重さのバランスも狙たものであるが、まだ少し右側の方が重かった。

 次の与圧レバーは、張力を掛けるための力を作用させるために、力による変形が発生しないように考慮してレバー部を2重にしている。 裏側のL字レバーは厚さ 2mm のプラ板で、表のレバーは厚さ 1mm のプラ板で工作している。

 回転中心部には、TOMIX の 島式ホームセット(近代型)に使われていた売店の残品をスペーサーとして使用した。 使える物は何でも使用するのが我が流儀である。 そして、二つのレバーの組み付け状態を下に示す。 バランスレバーの中心軸は線形がφ1.0mm の真鍮線を使った。

 これらのレバーを支柱部に取り付けた状態を下に示す。

◆ 機能テストの実施

 今回のアイディアによって本当に微小トルクが測定できるのか、試しに試験運転をしてみた。 上右の写真のように張力用の糸を張り、与圧レバーには輪ゴムを使って引っ張るようにセットし、荷重測定部には台秤も置いた。

 さらにテスト用モータをセットして回転させてみた。 張力プーリーはスムースに回転し、与圧レバーの荷重を増やすと台秤の値が増加するのも確認できた。 数値はともあれ、機能的には作動することが確認できたのので、まずは一安心である。

 

◆ 張力の差 儺 の調査

 次に、この張力プーリーに発生する張力の差 儺 の値と台秤の荷重の関係を調査する。 もしうまく行けば測定データの校正値ともなるが、ここでは課題出しのためのテストと位置付けている。

 まず、レバー関係を所定の位置にセットして、張力プーリーの部分よりテスト荷重を掛けることにした。 テスト荷重としてはいつもの一円玉を重りとして使用する。 その時の様子を下に示す。

 与圧レバーの荷重が張力プーリーに作用しないようにレバー下側にプラ板をかましておく。 すると張力用の糸はたるんで張力ゼロの状態となる。 そして、一円玉からの糸を張力プーリー部を介して、バランスレバーの左作用点に引っ掛けた。 張力プーリー軸は勿論、モータ軸とは接続を外している。 上右の写真。

 こうして、一円玉の荷重が台秤に作用するようにして、一円玉の個数と台秤の数値を下のグラフに示す。

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 一円玉は一つずつ増やし、10個目からは逆に減らしていく動作を2回繰り返した。 上左のグラフはその時の様子を連続折れ線で示し、右のグラフはこれらの値を近似直線で示したものである。 このグラフより、ドリフトの様子が確認されるし、レバー比が約15倍であることも読み取れる。

 次に、このグラフの縦軸と横軸を逆にして、台秤の数値からバランスレバーの左作用点に作用する力、すなわち張力プーリーの接線力を推定する推定式を求めることにした。 そのグラフを右に示す。

 このグラフより、張力プーリーの接線力Y と、台秤の数値 X との関係は、

    Y = 0.06618*X - 0.20388

であることが分かる。 この推定式をもとにして計算した重さと、一円玉の重さの差を計測誤差とみなしてグラフ化したものを下に示す。

 グラフは、誤差の値とパーセント表示のものを示すが、パーセント表示の分母はその時の一円玉の重さとしている。 計器の場合、誤差のパーセント表示は一般的にはフルスケールに対する誤差の値で定義するものであるが、ここでは計測値のもっともらしさを表現するために、このような比率で計算したものである。

 推定値のバラツキは大きい様に見えるが、主な原因はドリフト現象であると見る。 このため、値の小さい部部では誤差の比率が高くなっている。

 そこで、測定順になるようにグラフの横軸を変えてみたのが下のグラフである。

 このグラフより、初期設定のゼロ点か狂っていたと判断しては間違いです。 測定のゼロ点はしっかりとゼロに合わせています。 推定式は全体の平均から求めているので式の Y 切片が - 0.20388 となっただけなのです。 即ち、測定が進むにつれてゼロ点がマイナス側にどんどん進んだと言うことである。

 このドリフトの原因は何であろうか? この台秤は永年使用しているのでこのようなドリフト現象はおかしいと言える。 数値的には、僅かにはドリフトを発生するも、0.1〜0.2グラム程度である。 このグラフにしめされた 0.4 グラムのドリフトは、台秤でみると 0.4×15 = 6.0 グラムものドリフトが発生しており、台秤に起因するもので無いと断言できる。 原因はレバー構成にあると判断する。 ちなみに測定後のゼロ点は 7.0を示していた。

 レバー類を外した後は、78.6グラムを示していたのでこれだけの重さがゼロ点と思っている状態で作用していたことになるが、これも問題かもしれない。

 

■ まとめ

 今回の実験で、当初のアイディアどうりの構成によって、モータの微小トルクが測定できそうであるとの感触を得ることが出来た。

 今後は、レバー構成の改善と荷重計測部の電子化、およびパソコンへの取り込みなどを検討して行こう。 ちなみに、Amazon で見つけた定格荷重が100グラムのロードセルの発送連絡はあったものも、海外からの発送のために、届くのは10月7日頃の予定とか。 それまで気楽に待つことにしよう。

 

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 2016/9/22 作成