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鉄道模型実験室 No.144  TOMIXの自動運転ユニットNを調べる その1

■ はじめに

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 ラズパイを使用した自動運転システムの開発を進めてきたが、今だに完成したとは言い切れていない状態である。 そしてこのままラズパイでの改善を進めるか、あるいはArduino に乗り換えてシステムを作り替えるか、思案中なのである。

 一方、TOMIXから新しい自動運転ユニットの発売が予告されています。 どの様なシステムなのかは興味があり、この新しい自動運転ユニットに手を出して、登山鉄道の自動運転に応用するのもひとつの解決策ですが、価格的に高そうであること、単にシステムをセットするだけなので、システム開発の面白さは期待出来ないと考えて、手を出さないことにしましょう。

 ところで、当方には、旧製品となる現在の自動運転ユニット5563を2台所有しており、路面電車路線と登山鉄道路線の自動運転に使用していました。 このユニットを勉強台にするのも参考になるのではと考えて、この自動運転ユニット5563の内容をもっと知ろうと考えました。 例えば分解調査によって回路構成を見てみるとか、出力される波形なども調べることによって、システム開発の参考になるのではと思っています。

 今回は、まず分解調査から実施することにしました。

 

■ ユニットを分解する

 分解したユニットは、TOMIX 製のTCS自動運転ユニットN (品番: 5563)で、2008年に購入しており、説明書は ver.2 2007/04 の物である。 さっそく分解してみた。

 上下のカバーを取ると基板が出てきた。 背面のコネクタ部分は基板に直接取り付けるのでは無くて、見慣れたコネクタをそのまま使用していた。 特注品でなく、共通部品を上手く活用していた。 次に基板に注目してみよう。

 基板は両面基盤を使用し、整然と部品が配置されていた。 主要な部品を追って行ってみよう。

 まずリレー部品であるが、同じものが2個使用されていた。 OMRON の G5V-2 12VDC である。 その横には大きな電解コンデンサがあった。 4700μF である。 リレーとコンデンサの組合せはポイント駆動回路を推測するが、駆動させるポイントは2系統ある筈なのに、コンデンサは1個しかない。 回路の解析が楽しみである。

 次に、見たことにある部品を見つけた。 モータドライバIC の TA7291P である。 その横には大きなダイオードが4個の並んでいる。

 このユニットの心臓部と思しき IC を見つけた。 PIC16F819 、即ち、PICマイコンである。 ここに制御のためのプログラムが内蔵されているのである。 裏側の基板に、細い配線であちこちに接続されていた。 次に、MC78M05CT DC5V 三端子レギュレーター である。 下左の写真。

 また、コンデンサの傍には、FET1と記された小ぶりなIC の TPC8405 を見つけた。 上右の写真。 電界効果トランジスタ とのことである。 その横にはモード設定用のスイッチS1が配置されていた。

 加減速率設定ダイヤルと停車時間設定ダイヤル用の可変抵抗を上に示す。 また、4個のセンサと接続するポートも綺麗に整列して取り付けられていた。下左の写真。

 

■ 回路の解析

 電子回路の素人が探るので大した解析は出来ないが、配線をたどると大まかな構成が理解出来るので、まずは部品のつながりを調べることにする。 問題は部品に隠れて見えなくなっている部品下の回路であるが、テスターを使ってつながりを確認しながら調査した。 まず右上の写真をベースにしてその上に配線状態を線で描きながら、最後には写真を消してまとめたのが下のイラストである。

 PICへの配線はゴチャゴチャになるので省略しているし、部品の下になっているため不明の箇所もあるが、大筋の配線は読み取れたと考えている。 注目している機能について、回路図に落としてみた。

◆ 全体の構成

 このユニットは独自の電源を持たないので、TCS出力端子のあるパワーユニットから電源を供給して貰っている。 その12Volt 電源を使ってポイント駆動回路とフェーダー回路を構成している。 また、PIC マイコンのための電源やその入力信号のために、三端子レギュレーターを使って 5volt 電源を供給している。

◆ ポイント駆動回路

 推定したポイントの駆動回路図を右に示す。 駆動させるポイントは2系統あるが、一つのリレー、一つのコンデンサ、およびFET素子によって構成している。

 リレーは、駆動するポイントP1とP2の切替用である。 それでは直進と分岐を切り替えるスイッチは何処にあるの?

 どうやらそれは MOSFET のTPC8405 が受け持っているようである。 12volt 電源からコンデンサへの充電と、GND への放電を実施するスイッチの役割を実施しているものと解釈する。

◆ フィーダー駆動回路

 電車の走行方向と速度を調整するフィーダー駆動回路を右に示す。 当初はリレーと4個のダイオードの役割が理解できなかったが、回路を眺めていてやっと理解出来た。

 まず、モード設定ダイヤルの手動運転モード(スルーモード)がある事に注目してください。 パワーユニットからの電力をそのままスルーするもので、FEEDER in から入力されて電力を、FEEDER out A & B に直接接続するモードです。

 この状態と自動運転ユニットが制御するモードをリレーで切り替えています。 このためにリレーの駆動回路にはモード選択スイッチS1 からの信号が入力されるのです。

 すると、4個のダイオードの役割が見えてきました。 パワーユニットからのFEEDER in から入力されてプラスマイナスが反転する場合がある電力を、ユニットが制御出来るように、プラスとマイナスを統一するブリッジ回路だったのです。

 LED室内灯用のブリッジ回路と同じですね。

 こうして取り出された電源をモータドライブ用IC のTA7291 に供給し、PIC から制御するようにしていると解釈しました。

◆ センサー回路

 センサーと接続する回路は作成していませんが、三端子レギュレーターからの 5volt 電圧とプルアップ回路で接続して、PIC への入力信号としています。

 

■ まとめ

 充分な調査とは行きませんでしたが、概要は理解出来たと思っています。 ユニットの制御はPICマイコンが握っているのでその内容を知る事は不可能です。 このため、ユニットの動きを把握するには、その出力状態、即ち波形を観察してみる必要がありそうです。

 でも、ポイント駆動回路に、4700μF のコンデンサを使用していることに納得しました。 確実な駆動にはこれだけの容量が必要なのですね。

 

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 2017/8/26 作成