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鉄道模型実験室 No.148  ポイント駆動回路の検討 その2

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■ はじめに

 先日、登山鉄道の新自動運転システムにおいて、運行不具合の対応状況を報告した。 しかし、問題となったポイント駆動回路について、自分としてはまだ理解が不充分であることを知ったので、自分なりに納得できるようにいろいろ実験をしてみることにした。 今回は、素朴な疑問点に対して、実験で確かめることにしよう。

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■ 電圧と電流の時間遅れは?

 この回路はコンデンサとコイルで構成されているLCR回路である。 このため、時間遅れや位相差など難しい現象が生じているものと思われ、その作動の解説では微分積分の難しい数式を使って説明されている。 門外漢には理解できない領域なので、簡単な実験でごまかして自分なりに納得するkとにする。

 まず、電圧と電流は本当にずれていないのか確認しよう。 オシロの測定子の位置を右に示す。 DC電源は TOMIXのパワーユニット用ACアダプタ( 12V 1.25A仕様で電圧は E = 12.27volt)を使い、コンデンサは 2200μF、負荷はKATOのポイントである。

 スイッチのON時とOFF時の波形を下に示す。 横軸の時間軸は少し拡大して測定している。 一目盛が10msec である。 CH1はシャント抵抗の電圧差即ち電流に換算できる。 CH2はコンデンサのマイナス電協側(=コイルの上流側)の電圧を測定している。 コイルを流れる電流は何処を測っても一緒と考えられるので、コイルに掛かる電圧とその時の電流を計測されているのだ。

ON OFF コメント

CH2に示す電圧に対して、CH1で示す電流は、その立ち上がりがわずかに遅れていることが分かる。

その遅れ時間は 2〜3 msec と読み取れる。

ONの場合でもOFFの場合でも同じである。

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 このデータより、時間遅れは発生しているがそれはわずかな時間であることが分かる。

 

■ 負荷としてコイルでなくて抵抗を使うと?

 しからばコイルの代わりに抵抗を付加として用いると時間遅れは無くなるのだろうか? 今度は、ポイントの代わりに抵抗を用意した。 抵抗は12Ω1Wの酸化金属皮膜抵抗を2個直列につなげて、ポイントの代わりに接続した。 下左の写真。 測定装置は下右の写真のとおりである。

 実験順番は前後しているので測定子の位置が上記の実験とは違っていますので悪しからず。 右のイラストを参照ください。

 測定結果を下に示す。 

ON OFF  
ON時:電流=100mV ⇒ 0.43A
OFF時:電流=105mV ⇒ 0.46A
電流の立ち上がりは遅れていない。
I = 12.27v/24.5Ω = 0.50 A とほぼ同じであると言えよう。

 電圧の変化に対して電流もピタリと変化している様子が観察されました。 即ち、電流の応答遅れはありませんでした。 そして、その時の電流値もほとんどオームの法則の計算通りでした。 わずかな違いは測定誤差と考えています。

 即ち、この様なコンデンサ駆動回路では、単純なコンデンサの応答回路と見なせるので、その計算方法を応用すれば良いものと考えられます。 ネットではコンデンサと抵抗の組合せの過渡応答に関する説明が多数ありますが、数式での説明が多くて ( 自分にとっては ) 難解です。

 

■ コンデンサ両側での電圧変化は?

 こうなると、色々な実験をしてみたくなるのです。 次の疑問は、コンデンサのプラス側とマイナス側の挙動です。 測定子の位置を下記の様に変更して測定しました。

 即ち、コンデンサの充電時と放電時の両極の電圧変化を観察することになる。

ON OFF コメント

コンデンサのプラス側に充電する時はコンデンサのマイナス側もプラスとなる。
放電する時は逆にマイナスに振れる。
いずれの場合も、コンデンサのプラス側はパルス状に推移するが、コンデンサのマイナス側は緩やかに推移する。

 この様な作動についてはネット上で、イラスト付きの詳しい解説が多数存在するので説明は省略するが、コンデンサのマイナス側がプラスとマイナスに振れる事を実感したのだ。 このコンデンサに関する基本機能をしっかりと認識しておこう。 

 そして、この現象を使ってポイントのコイルを正逆に駆動しているのである・・・・・・・・・・!。   ヘウレーカ!

 

■ それでは電流はどうななか?

 コンデンサの両側の電圧については分かったが、電流についてはどうなのだろうか。 コンデンサ内部は電気的に切断されているので、その流れ具合は異なっている事はないだろうか? 今回作った実験装置では、コンデンサの両側に電流を測定するためのシャント抵抗を設けているのでこれを使って観察してみよう。 しかし、測定の上では問題があるのだ。 オシロの測定子において、そのGND接点は内部で接続されているので、一ヶ所でしか接続出来ないのである。 このため、シャント抵抗の差圧を同時に二ヶ所では測定出来ないのだ。 そこで、上流と下流に分けて測定することにする。

  

 最初に上流側の電流値の測定結果を示す。

ON OFF コメント
CH1はシャント抵抗R1の電圧差、即ち電流を示し、CH2はR1の下流側の電位を反転して示す。
ON時:電流=130mV ⇒ 0.57A
OFF時:電流=135mV ⇒ 0.59A
ただし、電流の立ち上がりは電圧よりも少し遅れている。

 次に下流側の電流値の測定結果を示す。

ON OFF コメント
CH1はシャント抵抗R2の電圧差、即ち電流を示し、CH2はR1の下流側の電位を示す。
ON時:電流=130mV ⇒ 0.57A
OFF時:電流=135mV ⇒ 0.59A
ただし、電流の立ち上がりは電圧よりも少し遅れている。

 コンデンサのプラス側とマイナス側に於いて、電流の流れの大きさと方向は全く同じである事が分かる。 立ち上がりの遅れ具合も同じだ。 そして、OFF時は電圧が変転するように電流も反転しているのだ。 納得である!

 さらに言い換えれば、コンデンサは電流の直流成分はカットするも、変化分 (即ち、交流成分) は流すことが出来ると言うことではないだろうか。

       これまた、ヘウレーカ!

 

■ リレーのあった部分に抵抗があった場合は?

 それでは、最初の疑問に戻ることにしよう。 切替スイッチの部分の抵抗はどのような影響をもたらすのであろうか? そこで、切替スイッチとコンデンサの間に抵抗を挿入して電圧と電流を観察することにする。 電流はコイルの下流で測定してもOKであることは、上記の実験で確認済みである。

  

 DC電源はTOMIXの 12.27 volt、コンデンサは2200μFと5500μFの状態で測定している。

R ON F1 コメント
12Ω
5500μF
ON時: CH1=84mV I=0.37A
OFF時: CH1=86mV I=0.37A 
ポイント作動OK。
50Ω
5500μF
ON時: CH1=40mV I=0.17A
OFF時: CH1=40mV I=0.17A 
ポイント作動せず。
24Ω
2200μF
ON時: CH1=62mV I=0.27A
OFF時: CH1=62mV I=0.27A 
ポイント作動せず。

 今回の作成した実験回路のDC+ からDC- 端子間の全抵抗は、コンデンサの部分を除いて、スイッチON時に 21.1 Ωであった。 これに上記の挿入した抵抗を加えた状態での電流値をオームの法則に従って計算してみた。

となり、測定値とピッタリと一致する。 また、KATO製ソレノイドの有効電流 360mA をギリギリ越えている 12Ωの状態が作動確保の限界となっていることも納得である。

 

■ まとめ

 今回の実験で多くの事を学習した。 そして、リレーがダウンした理由はやはり未解決のままであるが、一番疑わしいのは信頼性不足ではないかと推察している。

 また、コンデンサ方式のポイント駆動回路に於いて、

 との知見を得て、今回の実験のまとめとする。

 

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 2019/1/25 作成