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鉄道模型実験室 No.159  室内灯のチラツキを低減したい -- 問題点はどこか?

 車両整備の一環として、テープ式LEDによる室内灯工作を実施したが、走行時のチラツキがひどいため手が止まってしまいました。 ヤードの新しい操作盤工作から車両の整備と工作内容が変化してきたのですが、ここに来て、興味の対象が室内灯のチラツキ防止に移行してしまいました。

 でも、このテーマは避けて通れないので、少し首を突っ込んでみたいと思います。

 

■ 問題点はどこにあるのだろうか?

 室内灯のチラツキ防止にのためには、多くの方が工夫されています。 車両のメンテナンスを充分にせよ、とか、コンデンサを付けよとか・・・・。 もっともな事ですが、いつもメンテナンスばかりでは限界が有りますので、何とか工夫したいものです。 また、最近ではポポンデッタから、チップコンデンサをずらりと貼り付けて、”エネルギーチャージャー付”と銘打ったLED室内灯が発売されています。

 あれ? コンデンサを付けても問題無いのか? との疑問符をつけて見ていたのですが、チラチラの改善には、やはりコンデンサなどの工夫が必要なのかと、ネットで皆さんの工夫状態を探しましたら、貴重な情報を発見しました。

 悟鉄道の部屋さんの「テープLEDを使った室内灯を常点灯化する」の記事です。 コンデンサを追加するとPWMのデューティー比が変化するのは、ダイオードの ”逆回復時間” が原因とのことでした。  今まで、ダイオードによってコンデンサからの逆電流は防止されているはずと思い込んでいたので、コンデンサの影響が不思議だったのですが、目からウロコの思いです。 そして、この逆回復時間に関係するいろいろな情報を探り、チラツキ改善の手掛かりをつかもうと言う訳です。

 

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 ここで問題点を整理しておきます。

       LEDとコンデンサの関係で、どこが問題なのでしょうか?

 右のイラストに示す様に、室内灯のチラツキを防止にする電気的な方法として、蓄電システムとしてのコンデンサが必要と考えます。 LEDは白熱電球(麦球など)と違って応答性は抜群であるため、電気のON/OFFには敏感に反応します。 そこで電気を貯める何らかの機器が必要となってくるのです。

 しかし、このコンデンサの存在は、PWM制御にとっては邪魔者なのです。 蓄電機能によってパルス波形に乱れを発生させ、結果として動力車の暴走につながります。 特に最近普及しているコアレスモータにとっては無視できません。 このため、今までは、このコンデンサの使用をためらって来たのです。

 室内灯のチラツキ防止には、風が吹けば桶屋が儲かるのようなこの連鎖のような関係を、どこかで立ち切る必要があるのです。

 

■ チラツキの限界は?

 まず、チラツキについて考えてみることにします。 人間の目には残像効果がありますが、この残像効果は、人の視覚で光を見たとき、その光が消えた後も、それまで見ていた光や映像が残って見えるような現象のこととのことです。 (残像効果 - Wikipediaより) 

 そして、人の目の時間分解能は 約50msから100ms程度 であり、この時間よりも短い光の点滅は、連続点灯しているように知覚されるとのことです。 50msのチラツキとは、20Hz 即ち、1秒間に 20回程度のチラツキについては、人間の目では連続点灯に見えてしまうのです。 映画では30コマ/秒であり、テレビは60/秒のチラツキなのですが、問題ないのです。

 従って、20kHzと言うけた千倍も高い高サイクルによる鉄道模型のPWM制御では、そのパルス制御によるチラツキは全然問題ないのです。 従って、室内灯のチラツキ現象は、集電回路の中の通電切断現象と言い切る事ができます。 そして、その切断時間は 100msec 即ち、0.1秒以上も続いた場合に、チラツキとなって見えてしまうのです。

 先回の報告「東海道を走っていた湘南色電車の整備」(2020/6/29)で工作した車両をビデオで撮影して、そのコマ毎の室内灯の明るさを解析してみました。 これぞ、「鉄道模型の工作実験室」なのだと自負しながら・・・・・・・o(^o^)o !

 このビデオをもとにして、その一部分の連続したコマより、室内灯の明るさ変化を5段階表示で観察して、グラフ化したものを次に示す。

 ビデオのコマは、1秒間に30コマ送っていますから、一コマが0.033秒となります。 グラフの横軸の目盛は3コマ、即ち0.1秒間隔です。 なんと通電切断時間が多い事と、そのレベルもいろいろある事が分かります。 実際に見ていた場合よりも変化が多いのは、ビデオの場合の残像効果は殆どゼロであるからですかね。 でも、PWM制御によって、LEDがOFFになった時間に撮影してしまっているかも知れない・・・・・・・といる疑問も湧いてきます。 ビデオ撮影時のシャッター時間は? よく分かりません!

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 話しを戻します。 ここで、0.1秒程度の蓄電効果があったとしても、少しはチラツキを改善できそうですが、完全とは言えない事が分かります。 もし、通電遮断が発生したとしても、せめて、0.5秒程度は電気を貯めておいてくれないと、チラツキは改善出来ないような気がして来ました。 ・・・・・・・・無理かな?

 尚、このビデオを見ていると、車体を少し押し付けて走行させると、チラツキが無くなっていることに注目しました。

 集電回路の中で、通電遮断が発生する箇所は、レールと車輪の間、車軸と集電子の間、集電子と集電板の間の3ヶ所です。 これらは複数の箇所が並列に配置されていますので、並列回路が全滅するチャンスは少ないと思われるのですが、これは程多く発生するとは厄介の現象であることは確かです。

 何かの対策があるようなきがしますが・・・・・・・・。

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 少し観点を変えてみます。 Nゲージの鉄道模型の世界での、0.1秒とは? 

 ここで、スケールスピード 100Km/h で走行している電車を考えましょう。 この時の実際の速度は、 V = 100/0.54 = 185 mm/sec の速さで進んでいます。 従って、0.1秒の間に電車は 18.5mm レールの上を進んだことになります。 また、直径φ5.5mm の車輪では、Nd = 100/(0.54×π×5.5) = 10.7 回/sec 回転していることになり、0.1秒ではほぼ1回転していることになります。

 この0.1秒の間、即ち車輪が1回転する間に、少しでも通電しているとチラツキとは感じないといることになるのですが・・・・・!  即ち、車輪円周の一部分でも通電していると、残像効果によってチラツキにはならない・・・・・・・・・・?  エー!  本当なのかな?

 

■ 現象を観察しよう

 何が問題なのかを認識するために、取りあえず、現象を観察することにします。 PWM制御とダイオード、およびコンデンサの関係を観察しました。

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 実験状態を上に示します。 使用した機器と部品は、

 なお、ブリッジダイードとテープLEDは、上記の車両に取り付けた部品と同じものです。

 

 

 

 コンデンサを付ける事によって、ブリッジダイードの上流側にも影響が出ている事が観察されます。 これがコンデンサに蓄電された電気が逆流しているのであれば、その流れは連続したスムースな流れである筈ですが、ある一定時間後には急に下がっています。

 パルス幅が大きくなった時間は、約10μ秒ですが、これがいわゆる ” ダイオードの逆回復時間 ” と認識しました。 今までパワーパックから流れていた電流が、パルスがOFFになってしまうとコンデンサに貯められた電気が、逆流してパワーパックに戻ろとしているものと考えます。 この逆回復時間を経過すると、ダイオードの逆流防止機能がやっと機能して電流を止めてしまうので、回路にたまった電気は急激に放電していき、ゼロになっていくのです。

 このパルスの変形が、モータの暴走などの現象として影響しているのである。

 

 この逆流防止機能を瞬時に働かせるためには、ダイオードの逆回復時間をゼロにする必要があるのですが、電子の動きにも慣性があるようで、この時間は、

とのことで、千倍近くも改善されているとのことらしい。

 従って、これらのダイードを使用することが、この逆流による影響を防止することが出来るとの事です。

 

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 2020/7/2 作成