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鉄道模型実験室 No.199  テープLEDの特性を数式化しよう

 先回はテープLEDの電流・電圧特性を測定してグラフ化した状態で、いろいろの現象を解析しました。 しかし、グラフでの表示でなく、近似式で数式化出来ないかとトライすることにしました。

 

■ チップLED単体での特性式を求める

 先回も報告していますが、使用してテープLEDは、2020/8/4に Amazonにて購入もので、Kaito Denshi ((海渡電子)製の「LEDテープライト 5m 300灯 12V 両端子 1チップ 薄型 非防水 単体 電球色」 です。 このテープLEDの切れ端を使って、チップLED単体での特性を測定した先回のデータから、近似式を求めてみました。

 その様子を上に示します。 LEDの特性は湾曲した非線形であるので、より正確かな近似式を求めようとしても無理なのです。 そこで、実用的な使用範囲である 2mA 〜 15mA の範囲にあるデータを使って近似式を求めることにしました。 そのデータが、「直線部分」と表示したデータと近似式です。 上左のグラフが線形近似式を適応した場合で、上右が4次式を適応した場合です。

 こうして求めた近似式のデータですが、その数値が意味するものを考える時、何だかピンときません。 そして、電気回路での基本式である 電圧=電流×抵抗 の式を思い出し、この式から容易に現象を理解できないかと思いつきました。 と言うのは、電圧をY軸に、電流をX軸に取ると、抵抗はその直線の勾配として表示されるのです。

 そこで、グラフの縦軸と横軸を交換して表示させたのが下のグラフです。

 直線部分として、2mA 〜 15mA の範囲にあるデータから求めた直線近似式をグラフ上に示していますが、嬉しくなりますね! Y切片の値は立ち上がりの電圧値を示し、勾配値は抵抗分の値を示しています。 ここでは電流値の単位を mA で示していますので、抵抗値の単位をΩでなくてKΩと読み取れば良いのです。

 即ち、直線近似の場合は、電圧立ち上がりが、2.8volt、抵抗分が、24Ωと近似されると示唆しているのです。

 また、多項式での近似をトライしたのが上右のグラフです。 式としての近似精度は上がりますが、数値の意味するものは、かえって分からなくなってしまいます。 このため、直線近似式を求める方が有効である考えます。 より精度の高い近似式を求めるのが目的ではないからです。

 即ち、チップ単体での電圧降下 Et は、

         Et = 0.024・I+2.76 volt   (ただし、電流 I の単位はmAである)

で近似される。

 

■ 3灯(3連LED)の場合

 この製品は、LEDが3連毎にセットとなっており、このセットに切断して使用する事ができる。 そして、この中には、3個のLEDと150Ωの抵抗が直列に配置されている。 そのセットの特性を測定値から求めてみよう。 方法は上記の方法と同じである。

 近似特性式は、

         Es = 0.204・I+8.39 volt   (ただし、電流 I の単位はmAである)

となった。 また、単体の近似式から計算すると、直列配置なので各電圧降下量は単純に加算される。 即ち、

         Es' = (0.024・I+2.76)×3+ 0.150・I = 0.222・I+8.28 

となるが、測定誤差や製品のバラツキを考慮すると、計算によって求めた式と実測値からの近似式が合致していると言えよう。

 

■ 6灯(3連LED×2)で使用する場合

 6灯、即ち、3連LED×2 で使用する場合も同様に近似式を求めた。

 測定データから近似した特性式は、

         Es2 = 0.102・I+8.39 volt   (ただし、電流 I の単位はmAである)

となった。

 この場合は、3灯がセットとなっている3連LEDのセットを2個並列接続で使用している状態である。 このため、3連LEDの場合と電圧降下量は同じであるが、消費電流が2倍となるのだ。 このことは、Y切片の値は同じになるものの、勾配、即ち抵抗成分は1/2になるのである。 両者の近似式を比較すると、この事をピッタリと証明しています。

 

■ あとがき

 測定データをグラフを使って整理すると、その特性を理解できる近似式を求める事ができた。 この知見を応用すれば、4灯や5灯の場合でも、失敗なく対応できるであろう。

 なお、これらのデータは、メーカーやその仕様、さらに生産ロットによって異なってくるので、自分が使用するロットのデータを把握しておく必要があります。 しかし、この製品はリールに巻いてある 300灯もの長いテープを切り取って使用していますが、その中でのバラつきはほとんど無いものと思っています。 未確認です。 そうでないと、全体が均一に光らないので、商品としては不良品となるはずです・・・・・・・・・!

 

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 最近、鉄道模型愛好家のある方が 5volt 仕様のテープLEDに注目されていた。 乗用車用のD.I.Y.を狙った12volt 仕様の物でなく、パソコンのUSB仕様(5volt 仕様) に対応したテープLEDの様である。

 このテープLEDは、5volt 仕様であるため複数のLEDを直列に並べられないのである。 そこで、一つづつ並列に組み合わせた回路構成になっていた。 しかし、このデメリットを、どの位置でも切断できるとのうたい文句にしていた。

 確かにこの商品は使い勝手は良さそうである。 必要な個数のLEDに対応して、切断して使用可能である。 でも、個数に応じた適切な電流制限抵抗を選択しないと、明るさがバラバラになる事は上記の知見から明らかである。

 貧乏症の自分は、まだ、12volt 仕様の物を多数持っているので当面はまだ、12volt 仕様の製品を使っていきます。

 

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 2021/12/12 作成