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鉄道模型実験室 No.200  KATO製室内灯ユニットのチラツキ防止加工は可能か

 またまた、室内灯のチラツキ防止の実験です。 さるサイトからヒントを得て、KATO製の室内灯ユニットを使ったチラツキ防止方法を実験しましたので報告します。

 

■ きっかけ

 先日、ネットで興味ある報告を見つけた。 それは、 「KATOの旧LED室内灯を加工してテープLEDの室内灯を作る」です。 そうなのだ! こんな手もあったのだと感心しながら拝見させて頂きました。 そして、いろいろなアイディアが湧いてきました。 コンデンサを追加してチラツキ防止の細工が出来ないかと・・・・・・・・・!

 なにしろ我がストック箱には、多くの室内灯ユニットが眠っています。 テープ式LEDを使った室内灯加工によって、現役を引退したものです。

 このままでは、最終的にはゴミとして廃棄される運命ですが、ユニットの部分だけでも再利用出来ないかと考えました。 問題は、ダイオード部分の逆回復時間です。 このダイオードの特性がナノ秒オーダーであれば、コンデンサを追加してもPWM制御への影響を与えないので、パルス方式のパワーユニットを使っても動力車の暴走を防止することが出来るのです。 その上、コンデンサを追加することによってチラツキ防止の細工が可能となると考えました。

 

■ 調査開始

 そこで、調査開始です。 まず、このユニットを観察してみる事にしました。

 基板には、560Ωのチップ抵抗と6本脚のIC、および側面発光のチップLEDが取付けられていました。 メインは6本脚のICと思われますが、これがブリッジダイオードと思われます。 足は4本でなくて6本もある・・・・・・・・! 品番を拡大してみると、R12 と判別でき、Rの記号は見たことがあります。 ローム株式会社の製品と推察してホームページから該当しそうな製品を探してみました。

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 すると、UMR12N という製品にたどり着く事ができましたが、この製品と同一かどうかは分かりません。 端子の間の配線から、この製品にほぼ間違いと推察します。

 そして、ダイードはやスイッチングダイオードである事より、逆回復時間の記載がパスされているものの、ショットキーバリアダイオードと同様にナノ秒オーダーであるとおもわれ、期待できます。

 そこで、この情報をもとに回路図を描いてみました。 さらに、その回路構成の確認のために、テスターを使ってダイオートテストを実施してみました。 でも、抵抗やLEDが付いているとその影響があるため、右の写真の様にチップ抵抗とチップLEDを取り去った状態で、チェックを実施しました。  ただし、チップ抵抗があった部分は導線を使ってブリッジ形に接続しています。

 チェック結果を下の表に示します。 ポート1と4、およびポート2と5は基板の回路で連結されていますので同じポートとしています。 また、OLは通電しないと言う意味だと解釈しています。

チェック方向 1、4 → 2、5 1、4 → 3 1、4 → 6 2,5 → 1,4 2,5 → 3 2,5 → 6 3 → 1,4 3 → 2,5 3 → 6 6 → 1,4 6 → 2,5 6 → 3
電圧
1.345v
0.683
0.683
OL
OL
OL
OL
0.747
OL
OL
0.747
OL

 このデータより自分が書いた回路構成は間違いにと確信しました。

 

■ オシロでの波形確認

 最初に、何が問題となるのかを復習しておきます。 ブリッジダイオードにPWM制御によるパルス波形を入力させ、出力側のLEDには電流制限抵抗 510Ωを挿入し、かつチラツキ防止のためのコンデンサを並列に挿入します。 パワーユニットはTOMIXの N-1000-CL を使用しました。 この時の各部のパルス波形を観察します。

 パルス波形の比較のために、通常のブリッジダイオードショットキーバリアダイオードブリッジを用意しました。 そして、KATO製室内灯ユニットから、チップ抵抗とチップLEDを取り外した修正ユニットのテスト1号品も準備しました。 下の写真。

 

● 通常のブリッジダイオード DI1510 の場合

 まず一般的なブリッジダイオードである DI1510 のパルス波形を観察しましょう。

 観察されたパルス波形を下に示します。

 左の波形は、コンデンサが無い場合で、CH1(黄色)の波形はブリッジダイオードの入力側の波形です。 CH2(青色)の波形はブリッジダイオードの出力側の波形で、入力側とほとんど同じ波形です。

 中央の波形は、10μFのセラミックコンデンサを挿入した場合です。 パワーユニットのダイヤルは変化させていないのに、入力側パルスのONj時のパルス幅が 15μ秒はど広がっています。 これは、 リッジダイオードの逆回復時間が長いために、コンデンサの電気が上流側、即ち供給側に逆流していることを示しています。 逆回復時間を過ぎて逆流が防止されると、電圧はゼロに低下しますが、このパルス幅の増加は、平均電圧を上げることになり、パワーユニットのダイヤルで設定した以上の効果を与えることになります。 言い換えると低速が効かず、動力車が暴走する原因となるのです。 一方で、出力側の電圧は高止まりとなって、最大電圧が常に出力されることを示しています。 これが本来のコンデンサの効果なのですが・・・・・・・・。

 右の波形は100μFのコンデンサを使用した場合で、10μFの場合と殆んど同じです。 でも、追加するコンデンサは10μFで良いのだと早とちりしないでください。 別の大事な項目があるのです。

 これが、逆回復時間の長い通常のブリッジダイードの場合の問題点なのです。

   ・・・・・・・・  コンデンサ追加による上流側のPWM波形への影響が無い事が必須条件なのです。  ・・・・・・・・・・・

 

● ショットキバリアダイオードブリッジの場合

 次に、ショットキバリアダイオードブリッジの場合の波形を観察しましょう。 使用したのは SDI2100 です。

 観察されたパルス波形を下に示します。

 左の波形は、コンデンサが無い場合で、CH1(黄色)の波形はブリッジダイオードの入力側の波形です。 CH2(青色)の波形はブリッジダイオードの出力側の波形で、入力側とほとんど同じ波形です。

 中央の波形は、10μFのセラミックコンデンサを挿入した場合です。 入力側の波形は少し裾が広がっているようですがデューティ比はコンデンサが無い場合と殆んど変わっていません。 コンデンサの影響は上流側には及ばないと言うことです。 ダイオードの逆回復時間がはやいため、電流の逆流をしっかりと防止しています。 

 右の波形は100μFのコンデンサを使用した場合で、10μFの場合と殆んど同じです。

 

● 修正ユニットの場合

 つぎに、KATO製の室内灯ユニットを細工した修正ユニット テスト1号品の場合を観察してみましょう。

 観察されたパルス波形を下に示します。

 条件は前記の場合と同じですが、期待外れです。 波形は少し変形しているようですが、コンデンサの効果が全く認められません。 

 ここからは、ウロウロでした。 この様な波形になる理由が分かりませんでした。 大きなコンデンサを付けて目で観察しましたが、確かに消灯時間は伸びているのです。 そこで実験ミスと考えて再実験もしましたし、他の方法をテストしたのですが分かりませんでした。 そして、もう一度同じような細工をしたユニットを使って実験してみました。

 その時の波形を下に示します。 テスト3号品です。

 同じような状態にしたつもりですが、多少の違いがあります。 今度は、前記のショットキバリアダイオードブリッジの場合の波形と同じ傾向です。 コンデンサによって電気を貯めることが出来ていますが、上流のパルス波形には影響を及ぼしていない事が分かります。

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 今回の実験の結論として、

     KATO製の室内灯ユニットは、電流の逆流防止機能かバッチリと働くので、コンデンサを取付けても、PWM制御には影響しない。

と言えると判断しました。

 

■ テスト2号品を作る

 テスト3号品の実験の前のいろいろな探索の中で、テスト2号品を作っていました。

 工作内容は、チップ抵抗の位置をチップLEDのマイナス側の下流に直列に挿入し、それを挟んでリード線を取付け、コンデンサに接続しました。

 まず、上左の写真の様に点灯出来ることを確認してから、上右の写真のように細工無しのユニットも取付けて、ふたつの消灯具合を比較しました。 その様子を動画で紹介します。

 コンデンサの追加によって、回路への電気の供給が遮断されたとしても、ずいぶんと長い間点灯している事が分かります。 これは、車輪からの集電が一時遮断したとしても、室内灯は点灯し続けることになります。 即ち、チラツキを防ぐ効果が期待できるのです。

 一方、給電側のパルス波形への影響もチェックしておきました。 パワーユニットのダイヤル位置を変えて実験しています。

 CH1(黄色)のパルス波形が変形していない、即ち、影響を受けていない事が分かります。

 この2号品のテスト結果により、1号品のどこかが変であると判断し、3号品を工作したのですが、同じようなテストをしている筈なのに、それぞれ波形が微妙に異なり、疑問が沸いてきますが、原因はよく分かりません。

 また、この工作によってコンデンサをユニットから離して設置する方法もある事に意を強くしました。 例えば、客車の床下に空気ボンベのような形態にして取付ける方法もありそうですね・・・・・・・・・・・・・・。 フムフム!

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 さらに、消灯時間の様子を計測し、コンデンサ容量との関係を実験しましたので、次回報告しましょう。

 

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 2022/2/20 作成